建売住宅を売るには?売却の流れやポイントを解説!

建売住宅は注文住宅よりも売却時の需要が高い傾向があります。売却価格は物件の状況によって異なり、築年数や構造、設備の劣化状況などによって変化します。今回は、建売住宅を売るときの流れやポイントについてご紹介します。

目次
  1. 建売住宅は売却しやすい?
  2. 中古住宅の価格相場
  3. 売却の流れ
  4. 売却時に必要な書類
  5. 売却時にかかる費用
  6. 売却を行ううえでのポイント
  7. 迷ったらプロに相談しよう!
記事カテゴリ 売却 一戸建て 土地
2022.11.21

建売住宅は売却しやすい?

不動産売却を検討している人にとって、「我が家はスムーズに売れるのか」というのは最も気になるところでしょう。売却する物件が一戸建ての場合、建物の建て方で大きく「建売住宅」と「注文住宅」の2つに分かれますが、建物の建て方によって売れやすさの違いはあるのでしょうか?

建売住宅

実は、中古の一戸建てを売却する場合、注文住宅よりも建売住宅のほうが需要が高い傾向があるといわれています。その理由は大きく以下の4つです。

スタンダードで万人受けしやすい

建売住宅とは一般的に、既に完成している、または完成予定の建物と土地を一緒に販売している住宅のことを指します。一方注文住宅とは、既に所有しているか、新しく購入した土地に、設計段階からかかわり、自分好みの建物を建築する住宅のことです。

建売住宅は多くの人に住みやすいスタンダードな間取り、デザインになっており、万人受けしやすい設計になっています。一方で、注文住宅は建築主の好みや個性を反映した特殊な設計になっていることがあり、なかには、個性が強すぎて世間一般のニーズにマッチしているとはいい難い物件も存在します。

中古時の販売価格が抑えられる傾向にある

建売住宅は複数の建物を同時に建てる際、「一貫したデザインによる建材の画一化」「建材のまとめ買い」、「計画的に職人を手配することによる人件費の抑制」などによって、注文住宅よりも建築コストが抑えられます。新築時の価格が抑えられたことで、中古として売却する際にも売却価格を無理に高くせず抑えることができ、購入者にとっては価格の面でハードルを下げることが可能になります。

補修や修繕がしやすい

建売住宅では、使用している建材や設備が普及品であることが多く、特殊な素材や設備を使った注文住宅に比べると、補修や修繕がしやすくなっています。中古として購入する買主にとっては、こうした点も買いやすくなるポイントの1つです。

敷地境界線のトラブルが少ない

さらに、建売住宅は不動産会社が販売することが多く、基本的に隣地との土地の境界をきちんと確定してから販売しているため、隣地との敷地境界線をめぐるトラブルの発生リスクが低いというのも、建売住宅が売りやすいといわれる1つの要因といえます。

このように、売りやすいといわれる建売住宅ですが、実際に建売住宅をスムーズに売却するためには、売却のステップや諸費用などを知っておくことが大切です。そこで本記事では、建売住宅の売却を成功させるために必要な基礎知識について、分かりやすく解説していきます。

中古住宅の価格相場

まず、中古住宅の価格相場を把握してみましょう。

住宅金融支援機構の「2021年のフラット35利用者調査」※1によると、中古の一戸建ての平均購入価格は、全国平均が2614万円です。地域別に見ると、首都圏では全国平均トップの3152万円となっており、それに続いて近畿圏は2434万円、東海圏は2252万円、そのほかの地域は2104万円であることが分かります。

ちなみに、中古住宅の価格は築年数に大きく左右されます。一般的には、中古住宅となってすぐに、新築購入時の価格に対して1割から2割下がるといわれています。また、築年数が経過するほど建物の価値は下落し、築年数が古い建物ほど価格も安くなってしまうのです。

築年数による価格の下落は、木造や鉄骨造といった建物構造の違い、購入後のメンテナンスの状況、経年による外装や設備の劣化状態でも異なってきます。また、土地の価格、生活利便性や治安といった周辺環境なども考慮して、中古住宅の価格は決まります。

積み木の家とグラフ

売却の流れ

家の売却を成功させるためには、売却の大きな流れをあらかじめ把握することが大切です。ここでは、家の売却における6つのステップと、各ステップで意識しておきたいポイントを解説していきます。

[ 1 ] 相場を調査する

マイホームを売却する際は、不動産会社に相談する前に、まずは自分で中古住宅の相場を調べてみましょう。立地や築年数などの条件がマイホームと似ている物件の売り出し価格を事前に調べておくことで、マイホームのおおよその相場が分かり、不動産会社からの査定金額が相場から大きく外れたものでないかを判断できます。

●不動産相場を調べる方法に関する記事はこちら
不動産の相場を知りたい!サイトを利用して自分で調べる方法

[ 2 ] 不動産査定を受ける

次に、マイホームの売り出し価格を決める判断材料とするため、不動産査定を受けましょう。不動産会社が行う査定には「簡易査定」と「訪問査定」の2つがあります。

「簡易査定」とは、築年数や立地といった不動産の情報をもとに、不動産会社が過去の取引データから似た条件の不動産の実際の売買価格から査定額を算出する方法です。

簡易査定は、訪問査定よりも手軽に依頼でき、敷居の低い査定方法です。Webサイトや電話でも査定を依頼できるうえ、早いときでは当日中に査定結果を得られます。また、一度に複数の不動産会社に査定依頼できるサービスも存在することから、マイホームのおおまかな相場価格を素早く知りたい人におすすめの査定方法です。

一方で、「訪問査定」とは、不動産会社のスタッフが実際に現地に赴き、家の状態を細かく確認して査定額を算出する方法です。訪問査定では、家の状態やインフラ設備の状態、周辺環境などを実際に目で確認したり、所有者からヒアリングを行ったりして、不動産の現況を確認していきます。こうした現地調査からしか知りえない物件固有の評価ポイントを調べて、査定を行います。

訪問査定は、査定結果が出るまでに1週間程度かかることがあり、簡易査定よりも時間を要しますが、査定の精度が高く、売り出し価格を決める際の重要な指標になります。そのため、本格的に家の売却を検討している人には実施してほしい査定方法といえるでしょう。

●家の売却査定と事前に確認しておきたい注意点に関する記事はこちら
家の査定とは?不動産査定の注意点も解説

電卓を持った女性

[ 3 ] 不動産会社と媒介契約を結ぶ

いくつかの不動産会社へ査定を依頼した後、実際にマイホーム売却の仲介を依頼する不動産会社を決めたら「媒介契約」を結びます。媒介契約とは、不動産を売却する際に不動産会社と結ぶ契約のことです。媒介契約は、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類に分類されます。

「一般媒介契約」は、複数の不動産会社に仲介を依頼できる契約です。 また、依頼者自らが買主を見つけた場合も売買をすることも認めており、ほかの2つの媒介契約に比べ、売主は自由に売却活動を行えるという特長があります。

一方、「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」は、いずれも契約を結んだ1社のみと売却を進めていく契約となります。

このうち、専任媒介契約は、一般媒介契約同様に依頼者自らが買主を見つけた場合に、不動産会社を介さず直接買主と売買をすることが可能です。一般媒介契約のように複数の不動産会社への依頼はできませんが、その分1社から手厚いサポートを受けられるのがメリットです。

専属専任媒介契約が専任媒介契約と異なるのは、依頼者自身で買主を探して売買契約を行った場合も、媒介契約した不動産会社へ仲介手数料を支払う必要があるという点です。

●媒介契約についての概要と押さえておきたいポイントに関する記事はこちら
媒介とは?仲介や一般媒介などの違いを一挙解説!

[ 4 ] 売却活動を行う

媒介契約の締結が完了したら、住宅の売却活動を進めていきます。売り出し価格は、不動産会社からのアドバイスを参考に売主が決定します。その後、不動産会社は、不動産流通機構が運営するコンピューターネットワークシステム「レインズ(REINS)」に登録し、不動産業者間で情報を公開するとともに、自社のホームページや不動産ポータルサイト、チラシといった媒体を活用して物件情報を公開するといった宣伝を行います。そこから問い合わせや内覧の申し込みがあれば、売主へ進捗を報告します。

購入を検討している人が室内を見学する「内覧」の際は、売主として内覧者に物件の状態やアピールポイントを説明する機会があります。内覧時は、物件の第一印象が大切なので、水回りや、汚れが気になる箇所は事前に掃除を済ませ、なるべくきれいに整っている状態で内覧者を迎えられるようにしておきましょう。

赤い看板と家の模型

[ 5 ] 売買契約を結ぶ

購入希望者は、購入を決めたら、仲介する不動産を経由して購入の申し込みを行います。この申し込みに対して、売主と買主双方が金額やほかの条件について承諾すれば、売買契約を結びます。

売買契約書や重要事項説明書など、契約時に必要な書面は不動産会社が作成してくれます。契約書に記された内容と認識の食い違いがないか、契約を締結する前によく確認することが大切です。特に契約全体で自身の不利益になる記載がないか、売買物件の金額表示に誤りがないかについては、再度注意深く確認するように心がけましょう。

なお、売買契約の締結は、仲介をしている不動産会社の事務所で行われるのが一般的です。不動産会社の宅地建物取引士が一連の説明を行い、売主と買主双方が署名、捺印すれば契約が成立します。

また、売買契約時には、売主が売買代金の一部を「手付金」として受け取るのが通例です。手付金とは、契約が成立した証拠として支払われるもので、中古物件なら売買代金の5%~10%が目安とされています。

[ 6 ] 決済・引渡しを行う

買主が住宅ローンを利用する場合は、そのローンの正式な承認を待ってから、決済・引渡しの日程を決定します。なお、売主に住宅ローンの残債がある場合は、決済までの間にローンを借りている金融機関と抵当権抹消に関する手続きについて確認・相談しておく必要があります。

決済・引渡しの日は、残代金や各種清算金の授受と物件の引渡しを行います。決済は、買主が住宅ローンを利用する金融機関や仲介する不動産会社の事務所で行い、当日は売主と買主、仲介する不動産会社のほか、司法書士が同席するのが一般的です。

所有権を売主から買主に移す所有権移転登記の手続きや、売主の住宅ローンによる抵当権が設定されている場合の抵当権抹消手続きは、決済・引渡しと同じ日に行われることが一般的です。不動産登記は、買主や売主が自らの分を自分で行うこともできますが、売買では相手があり、正確を期す必要があるので、専門家である司法書士に手続きを依頼するケースがほとんどです。

決済や引渡し、所有権移転登記を行う前には、登記済権利証や固定資産税評価証明書などの書類をそろえておく必要があります。不動産会社の案内に従い、抜け漏れのないように準備を進めましょう。

住宅 引渡し

住宅の売却には、不動産の査定から引渡しまでおおよそ3か月〜半年ほどかかるのが一般的です。住宅の売却についての不明点がある場合は、その都度不動産会社へ相談しながら進めていきましょう。

●住宅の売買がうまくいかない理由と対処方法に関する記事はこちら
家が売れない…その理由と対処法を徹底チェック

売却時に必要な書類

不動産売却にあたっては、さまざまな書類を用意する必要があります。発行までに数日かかるものも存在するため、あらかじめどういった書類が必要になるのかを確認しておくことが大切です。

マイホームの売却を行う際に必要な書類は以下の通りです。

必要書類

概要

印鑑証明書

発行から3か月以内のもの

本人確認書類

運転免許証や保険証など

登記済権利証または登記識別情報

売買や相続等で不動産を取得し、登記を済ませた人に対して、法務局から交付される書類
※紛失した場合でも再発行されません

固定資産納税通知書

毎年4月上旬ごろに、本拠地の市区町村より郵送される書類

固定資産評価証明書

所有している不動産の固定資産の評価額を証明する書類

境界関係の資料(土地測量図・境界確認書など)

隣地との境界線を明確に記載した証明書等

設計図面等(建築確認通知書・検査済証・測量図など)

建物や設備の概要について記載された資料等

実際に売却を行う際には、上記の書類のほかに実印が必要です。また、場合によっては上記以外の書類も必要になる可能性があるので、事前に案内される不動産会社の指示に従って、不足なく準備するようにしましょう。

売却時にかかる費用

家の売却の際には、以下のような費用が発生します。

必要費用

概要

仲介手数料

物件売却の際に売主と買主との間に立ち、諸手続きを行う不動産会社へ支払う手数料。不動産の売買の場合、仲介手数料の上限は宅地建物取引業法により決められている

印紙税

課税文書の作成者が納める必要のある税金。国税庁の定める税額の収入印紙を文書に貼り付け、税務署に提出する
※売主は売買契約書、領収書に貼り付けます

登記費用

不動産の所有権移転、抵当権設定、抹消といった不動産登記に必要な費用
登記費用には、登録免許税や司法書士の報酬などが含まれる

金融機関の手数料

住宅ローンの残債を支払う際にかかる金融機関の手数料
※不要な金融機関もある

譲渡所得税

不動産を売却した際の利益にかかる税金
※売却した翌年に行う確定申告後に支払う

概算の費用ではなく、実際にかかる費用を知りたい人は、不動産会社へ相談してみるとよいでしょう。

●不動産売却の際にかかる手数料相場に関する記事はこちら
不動産の売却には手数料がかかる?仲介手数料の相場やポイントを解説

売却を行ううえでのポイント

建売住宅を売却する際に、ぜひ押さえておきたいポイントを4つご紹介します。スムーズかつ納得できる形で売却を成功させるために、以下の点を意識して売却を進めていきましょう。

複数の不動産会社に査定を依頼する

売却査定は、複数の不動産会社へ依頼するのがおすすめです。査定での見るべきポイントや比較するデータが不動産会社によって異なる場合があり、査定額も変わってくるためです。

また、査定を1社のみに任せてしまうと、提示された価格を比較する対象がなく、適正価格から大きく外れた価格で売り出しを始めてしまう恐れもあります。

アドバイスをする女性

内覧準備をしっかりと行う

内覧が決まった際には、事前に物件の清掃や整理整頓を行い、内覧者によい印象を抱いてもらえるようにしましょう。特に内覧者の目に付きやすい玄関やリビング、水回りについては念入りに掃除と片付けをしておくと、家の第一印象を高めやすくなります。

ちなみに、業者にお金を払ってハウスクリーニングやリフォームを行うべきかどうかは、事前に不動産会社と相談するのがおすすめです。

特にリフォームは、建物が古く修繕が必要で、かつ既に売主が住んでいない場合に検討することがありますが、リフォームしても買主の趣味と合わなかったり、費用を回収しにくかったりすることから、基本的には行わないことが多くなっています。

ただし、ハウスクリーニングもリフォームも、物件の印象アップには効果的です。ハウスクリーニングを行うことで、自分では取り切れない汚れを取り除くことができますし、リフォームで家の内装や設備が刷新されれば、内覧者の購入意欲が高まるかもしれません。結果として、家の売却価格が高くなる可能性があれば、実施を検討してみてはいかがでしょうか。

契約不適合責任を確認する

契約不適合責任とは、売買契約通りではない物件を引渡してしまった場合の売主の責任を指します。たとえば、契約書に記載のない雨漏りや設備故障などが売却後に見つかった場合、売主は修繕費用を支払わなければならない場合があります。

このようなトラブルを防ぐには、物件の不具合を事前に全て洗い出すこと、それらを包み隠さず買主に伝えて契約書に付随する書面に記載することが大切です。契約書を作成する不動産会社とは、内容をきちんと確認し合い、特約による免責についても話し合っておきましょう。

●不動産売却前に確認しておきたい民法改正後の内容に関する記事はこちら
瑕疵担保責任とは?不動産売買前に知りたい民法改正後の内容について

確定申告を忘れない

家の売却の翌年には確定申告が必要です。確定申告を行うことで、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」などの特例を利用して、家の売却で発生する支出を抑えられる可能性が生まれます。自身がこうした特例の対象に該当するか事前に確認しておき、資金計画に役立てましょう。

電卓と家の模型と人物

●不動産売却時に活用できる控除に関する記事はこちら
居住用財産3000万円控除|不動産売却時に活用できる控除とは?

迷ったらプロに相談しよう!

前述した通り、建売住宅は多くの人にとって住みやすい間取り、デザインになっていることが多いため、中古物件のなかでも売りやすい傾向があるといわれます。

ただし、納得のいく売却を実現するには、マイホームの売却の流れや必要書類、諸費用といった重要なポイントの事前確認が欠かせません。確認せずに進めてしまうと、費用や時間が必要以上にかかったり、売却できても不必要な費用を支払うといった結果になりがちです。

とはいえ、自分1人で調べながら売却を進めていると、疑問や不安がどうしても出てきます。今住んでいる家の売却を検討しているのであれば、まずは一度、不動産売却のプロに相談してみてはいかがでしょうか?

三井のリハウスでは、マイホームの売却を安心して進めていただけるよう、不動産売却をサポートするさまざまなサービスをご用意しています。建売住宅の売却で分からないこと、不安なことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

商談成立の握手

●建売住宅の売却を検討している人はこちら

※1出典:住宅金融支援機構『2021年のフラット35利用者調査』
https://www.jhf.go.jp/files/400361622.pdf
(最終確認:2022年9月20日)

秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。