土地売却の必要書類とは?査定から売却後までの必要書類を解説
土地を売却したいとき、事前に必要な書類を把握しておくとスムーズに手続きを行えます。本記事では、土地売却で必要となる書類を、査定から売却、確定申告までのステップごとに詳しくご紹介します。
土地を売却するには多くの書類が必要
土地の売却を決断しても、「何から手を付ければよいか分からない」と戸惑う人もいるのではないでしょうか?土地の売却を進めていくうえで必要となる書類は多く、入手方法もさまざまであるため、書類の収集を難しい、煩わしいと感じることもあるでしょう。
しかし、裏を返せば、準備する書類を事前に知り、売却の手続きに先立ち余裕を持って用意することができればスムーズに取引に対応できます。必要書類への知識を持っておくことは、実は、土地売却を成功させる秘訣の1つといえるのです。
土地売却の必要書類を知る前に、まずは前提として、土地の売却のステップを確認しておきましょう。本記事では、土地売却のステップを以下のように分類したうえで、それぞれの場面で必要となる書類を解説していきます。
・査定のとき
・媒介契約のとき
・売買契約を結ぶとき
・引渡しのとき
・売却後の確定申告のとき
なお、相続した不動産を売却したい場合は、査定を受けるに先立って、登記上自分の名義になっているかを確認しておきましょう。もしも自分の名義になっていなければ、速やかに所有権移転登記を行い、自分の名義への変更が必要です。
●土地売却に関する記事はこちら
土地売買を完全攻略!手続きの流れや必要書類、注意点を一挙に解説!
●相続に関する記事はこちら
相続登記とは?必要性や自分で申請する手続きの流れについて
●所有権移転登記に関する記事はこちら
所有権移転登記とは?かかる費用と必要書類、手続き方法について解説
査定や売買契約締結での必要書類
査定時
査定には「簡易査定」と「訪問査定」の2種類がありますが、結論からいうと、どちらの査定も書類なしで受けることが可能です。ただし、訪問査定を受ける際に、手元にあることが望ましい書類がいくつか存在します。
簡易査定では、インターネットや電話で伝えた土地の住所や面積といった情報をもとに査定価格を出してもらいます。簡易査定で用いられる土地の情報は、口頭ベースで提供できる程度の簡単なものですから、簡易査定では書類は不要となります。
その一方、訪問査定では、不動産会社の担当者が物件を訪問して調査を行い、簡易査定よりも精度の高い査定価格を導き出すことが求められます。この際、所有者情報や境界確定状況が分かる資料が手元にあれば、訪問査定をスムーズに進めることができます。訪問査定を受ける時点で用意しておくほうが望ましい書類としては、以下のようなものが挙げられます。
書類 | 取得場所 |
---|---|
登記済証(権利証)または登記識別情報通知書 | 売主が既に保有しているもの |
確定測量図 | 売主が既に保有しているもの (ない場合は測量会社に依頼) |
「登記済証」や「登記識別情報通知書」は、不動産の権利者であることを証明するものです。これらは、所有権移転登記をした際に法務局から渡され、所有者本人しか保有していない書類になります。
査定時に以上の書類が必要な理由は、査定の依頼者が本当の不動産の所有者かどうかを不動産会社が確認するためです。不動産の売買では、所有者ではない人が売主を装って売却する地面師詐欺というものがあります。地面師詐欺を防止するために、不動産会社は登記済証や登記識別情報通知書を見ることで、真の所有者であることの最低限の確認を行っているのです。
「確定測量図」とは、全ての境界が確定しているときのみに発行される実測図のことです。宅地の取引の場合、確定測量図があることが引渡しの条件になることが一般的となっています。確定測量図の作成には時間がかかるため、不動産会社がすぐに売れる物件であるかどうかを確認するために必要になるのです。
確定測量図がない場合、良心的な不動産会社であれば確定測量図を作成するように指示してくれます。なお、山林や農地の売却では、確定測量図を作成せずに売ることも多いため、原則として確定測量図は不要です。それぞれの詳しい説明は後述します。
●不動産査定に関する記事はこちら
不動産価格査定とは?売却に向けた方法をご紹介
●土地の査定に関する記事はこちら
土地の査定とは?査定価格の仕組みから実際の流れまでご紹介
媒介契約時
媒介契約とは、不動産の販売活動の仲介を依頼する際に、不動産会社と結ぶ契約のことです。媒介契約を結ぶ際、本人確認書類を提示する以外、特に必要な書類はありません。
売買契約締結時
買主との間で売買契約を締結する際、売主として特に準備すべき必要な書類はありません。
土地を引渡すときの必要書類
売主には、土地を引渡すときに必要になる書類が多数あります。土地を引渡す際の必要書類と取得場所を下表にまとめました。それぞれを見ていきましょう。
書類等 | 取得場所 | 必須レベル |
---|---|---|
本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポート、各種健康保険証など) | 各自で取得 | 必須 |
住民票 | 市区町村役場 | 必須 |
印鑑証明書(3か月以内に発行のもの) | 市区町村役場 | 必須 |
登記済証(権利証)または登記識別情報 | 売主が保有 | 必須 |
固定資産評価証明書 | 市区町村役場 | 必須 |
固定資産税納税通知書 | 売主が保有 | 精算金を計算するために必要 |
確定測量図 | 売主が保有(ない場合は測量会社に依頼) | 宅地の場合はほぼ必須 |
筆界確認書・越境の覚書 | 売主が保有(ない場合は測量会社に依頼) | あると望ましい |
抵当権等抹消書類 | 銀行 | 抵当権が設定されている場合のみ |
本人確認書類
登記手続きを行う司法書士が本人確認をするために必要です。運転免許証やマイナンバーカード、パスポート、各種健康保険証など身分証明ができるものを準備します。土地の名義人が複数人いる場合は全員分用意する必要があるため注意しましょう。
住民票
所有権移転登記のために必要です。住所の変遷が住民票で確認できない場合は、戸籍の付票が必要となります。
印鑑証明書
所有権移転登記のために必要です。実印とは市区町村の役場で印鑑登録をした印鑑を意味し、印鑑証明書とは実印であることを第三者に証明できる書類のことをいいます。印鑑証明書は引渡日から3か月以内に発行したものが必要となります。
登記済証(権利証)または登記識別情報
所有権移転登記のために必要です。登記識別情報とは、物件の所有者であることを証明する書類です。購入時に所有権を移転した際、法務局から交付されたものです。
固定資産評価証明書
所有権移転登記の登録免許税を計算するために必要です。市区町村役場で入手でき、原則として売主しか取得できない書類になります。
固定資産税納税通知書
固定資産税の精算金を計算するために必要です。固定資産税の納税額や評価額が記載された書類のことです。固定資産税納税通知書は、毎年市町村から送付されてきますから、最新の納税通知書を用意しておきましょう。
確定測量図
確定測量図とは、全ての境界が確定しているときのみに発行される実測図のことです。売買契約で確定測量図を引渡すことも条件となっている場合には、必須の書類となります。
筆界確認書・越境の覚書
筆界確認書とは、自分が所有している土地の境界が確定していることを、隣地所有者と締結する書類のことです。一般的には、確定測量図を作成する際に同時に作成されます。確定測量図がある場合には、なくても大丈夫です。
越境の覚書とは、越境の有無や所有権、是正方法について隣地所有者と締結する覚書です。越境物がない場合には、なくても大丈夫です。必須書類ではありませんが、越境物がある場合には作成しておくことが望ましいといえます。
抵当権等抹消書類
抵当権等抹消書類は、ローンを組んでいる場合に必要な書類です。抵当権とは、債権者(銀行のこと)がその担保物件から優先的に弁済を受けられる権利のことです。土地だけの売買の場合には、土地に抵当権が設定されているケースは少ないかもしれません。抵当権が付いている場合には、引渡しと同時にローンを完済して抵当権を抹消する必要があります。抵当権等抹消書類は、抵当権を設定した銀行が保有しています。引渡し時に銀行の担当者に持参してもらうことが必要です。
売却後、確定申告するときの必要書類
不動産売却後に譲渡所得(売却益)が生じた場合は、確定申告を行う必要があります。譲渡所得とは、資金を譲渡または売却した際に生じる所得です。具体的に計算式にすると以下のようになります。
譲渡所得 = 譲渡価額(売却価格) - 取得費(購入額) - 譲渡費用(売却にかかった諸経費)
土地の売却でも、一定の要件を満たす場合には、特別控除の軽減措置を受けられるケースがあります。譲渡所得税の軽減措置を受けることによって、税金が発生しない場合も、軽減措置を受けるために確定申告を行わなければなりません。詳しく見ていきましょう。
税務署から入手する書類
税務署から入手する書類としては以下が挙げられます。
・確定申告書付表兼計算明細書(譲渡所得の内訳書)
個人が不動産を売却したときは、確定申告書付表兼計算明細書を提出することが必要です。譲渡所得の内訳書は、譲渡所得の計算根拠を示す書類になります。
そのほかの必要書類
次に、自分で準備する必要のある書類は以下の4点です。
・売却物件の売却時の売買契約書コピー
・売却物件の購入時の売買契約書コピー
・仲介手数料、印紙税などの領収書
・特例の利用に必要な書類
仲介手数料、印紙税などの領収書は譲渡費用の根拠となります。
●譲渡所得税に関する記事はこちら
不動産譲渡にかかる税金とは?「譲渡所得税」の基礎知識
書類を集める際の注意点
売主は、土地を引き渡すときに多数の書類が必要になります。ここからは、書類を集める際の注意点をお伝えします。
早過ぎる準備には注意
必要な書類を早めに準備しておくことは、不動産売却の手続きをスムーズに進めるうえで重要です。しかし土地の売却においては、準備するタイミングが書類ごとに異なるため、単に早く用意すればよいわけではありません。
必要書類のなかで、印鑑証明書だけが引渡し日の3か月以内に発行のものという期限があります。印鑑証明書は早めに準備をし過ぎて、引渡し時に期限切れにならないようにしましょう。
登記済証(権利証)または登記識別情報を紛失した場合の対処法
登記済証または登記識別情報通知書は、「所有権」を証明する重要書類のため、再発行ができません。ただし、これらの書類をもし紛失していても、早めに把握しておけば別の方法で売却することが可能です。
所有権を証明するには「事前通知」か「資格者代理人による本人確認情報提供」、「公証人による本人確認制度」のいずれかを利用します。
事前通知とは、登記所が郵送で本人確認のための問い合わせを行う制度のことです。手数料がかからず無料で完結することが利点になります。資格者代理人による本人確認情報提供は、司法書士などの資格者代理人に依頼して本人確認を行ってもらう制度です。事前通知とは異なり、司法書士への費用がかかります。公証人による本人確認制度は、公証役場に出向いて行う本人確認の制度です。公証人による書類策定に一定の費用がかかります。
所有権を証明するためのこれらの手続きは、時間を要することも考えられます。登記済証(権利証)または登記識別情報を紛失している場合には、早めに不動産会社に相談するようにしましょう。
境界が確定できない場合の対処法
隣地所有者が筆界確認書に押印してくれず、境界が確定できない場合もあります。そのようなときのために、何らかの方法で境界を確認した記録を残しておくと安心です。後々トラブルにならないよう、「売主」「買主」「隣地所有者」との間で境界に関する合意書を締結しておきましょう。所有権を確定するためのこれらの手続きは、時間を要することも考えられます。
適切なタイミングで書類をそろえよう!
今回は、土地売却に必要な書類についてご紹介しました。普段使うことのない専門的な書類が多く、集めるだけでも手間や時間がかかるため大変ですよね。しかしながら、スムーズに売却するには、適切なタイミングで書類を用意することが重要です。各段階で異なる書類を知り、早めにそろえておきましょう。また、土地売却の際は不動産会社に相談しながら準備を進めることもおすすめです。ご自身のやり方に合った方法で書類をそろえ、土地の売却を成功させましょう!
不動産鑑定士 竹内英二
株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
https://grow-profit.net/