【移住を考え始めたら】事前に知っておくべきこと・考えておくべきこと

近年、地方移住に関心があるという人が増えています。実際に移住すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、今の持ち家や移住先の住まいはどうしたらよいのでしょうか?今回は移住を決める前に、知っておくべきこと・考えておくべきことをお伝えします。

目次
  1. 移住への関心が上昇中!
  2. 失敗しないか不安…移住のメリットと注意点
  3. 今、国内で人気の移住先は?
  4. 移住で気になる住まいの問題
  5. 移住をする前に、お試し体験がおすすめ
記事カテゴリ 売却 購入 費用
2021.07.09

移住への関心が上昇中!

「最近、都会の暮らしよりも、自然の多い田舎での暮らしに憧れる…」「いつかは自然のなかでゆったりと生活したい…」そんな想いを抱く人が都心で増えています。

田舎道を散歩する親子

内閣官房の調査によると、都心に住む人のうち、約5割が地方移住に関心がある、という結果が出ています。この調査から、地方での暮らしに関心を持つきっかけとなったのは、将来のライフプランを考えたこと、現在の仕事や生活に違和感や限界を感じたことが多いことが分かります。

また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、多くの企業がリモートワークを導入し始めたほか、国も「働き方改革」として多様な働き方の推進や地方創生・地域再生の一環としてさまざまな事業の支援を行い、都心への集中から地方への分散を進めています。

こうした社会的な変化を受けて、移住を考え始めた人が増えているのかもしれません。

では、実際に移住すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、今の持ち家や移住先の住まいはどうしたらよいのでしょうか?今回は移住を決める前に、知っておくべきこと・考えておくべきことをお伝えします。

植物の苗を差し出す手

失敗しないか不安…移住のメリットと注意点

移住先での新しい暮らしを想像すると、うきうきした明るい気分になると同時に、移住先にはどんな暮らしが待っているのか不安を覚えることもあるかと思います。

移住をスムーズに実現するためには、移住のメリットと注意点を知っておくことが大切です。

移住のメリット

では、地方に移住した場合に得られるメリットについて見ていきましょう。

広々した住まいに手が届きやすい
また、地方では面積の広い物件に手が届きやすいというメリットもあります。

地方は都心に比べて土地が安く、家賃も安価なため、広い家を都心部よりもリーズナブルな価格で購入したり、低い家賃で借りることができます。

庭付きの一軒家であれば、家庭菜園で野菜を育てたり、家族でバーベキューをしたり、都会暮らしではなかなか叶わなかったことを楽しめますね。

開放感ある暮らしができる
都心から離れることで、ストレスの多い混雑した都会での暮らしから解放された日々を送ることでしょう。移住先で勤務する、あるいはテレワークを活用することで毎日の通勤ラッシュから解放され、豊かな自然や四季の変化を感じながら暮らすことができます。

自分の趣味を思う存分楽しみたいシニア世代や子どもを自然の中でのびのびと育てたい子育て世代にとっては、魅力的なメリットですね。

賃貸でもリフォームできる住まいが見つかりやすい
地方は、都心部に比べると空き家が多く、都心部ではなかなか見つけにくいリフォームできる賃貸物件を見つけやすいという点もメリットの1つです。賃貸でありながら、自分好みの空間にリフォームした一軒家を見つけやすいのも地方ならでは。

自分の思い通りにデザインした家に住みたいという人は、賃貸住宅でもリフォーム可能な住まいを探すのがおすすめです。

食料品が都心と比較し安い
地域にもよりますが、野菜や果物、鮮魚など地元産の食品は都会に比べて驚くほど安いことも。都心への輸送費、中間卸など余計な費用がかからないので、非常に安くて新鮮な食料品が手に入ります。食費が抑えられるのは、地方ならではのメリットの1つですね!

近隣との関係が濃い
地方では近所付き合いの文化が今でも普通のこと。何か困ったときには近所の人に相談すればアドバイスをくれたり、助けてくれたりすることがあるでしょう。

縁側でくつろぐ家族

移住の注意点

ここからは移住の注意点についてお伝えします。

生活費が思っているよりかかる
「地方へ移住すると、毎月の生活費を安く抑えられるのでは?」と考える人も多いかもしれませんね。しかし、実際は地方での暮らしも思った以上に生活費がかかることを覚えておきましょう。

たとえば、バスや電車などの公共交通機関の運賃が都心と比較し割高になったり、水道代が高い地域があったりします。また、都会では家電やドラッグストアなどさまざまな量販店がありますが、地方ではそうした店舗が少ないです。そのため、家電や生活用品などは都会よりも高くなってしまう場合があります。

ガソリン代や光熱費が高くなることもある
地方では移動手段として車は必需品です。都心部のように電車やバスが頻繁に運行しておらず、ちょっとした買い物でも車を使うことが多くなります。そのため、ガソリン代が高くなるでしょう。

また、地方にはマンションのようなコンクリート造りの物件は少なく、木造の建物がほとんどです。また、家が広くなる分、光熱費がは高くなる傾向にあります。

就職先や買い物先が都心に比べ少ない
地方では都心と比較し就職先が少なくなります。地方で暮らす場合、まず先に仕事はどうするかを考えて移住することをおすすめします。

また、都心に比べて飲食店やスーパーなどのお店や公共機関、病院、銀行などの施設も少ないことも注意しておきたい点です。買い物に関しては、ネットショッピングを利用すれば、それほど困ることはないかもしれませんが、自分の暮らしに必要なものは何か、考えておくことが大切です。

住まいの模型と計算機

今、国内で人気の移住先は?

近年注目される地方移住。ここからは、NPO法人ふるさと回帰センターが公表する、人気の3つの地域について紹介します。

雄大な自然が魅力の長野県

国内の移住先で人気が高い地域としては、3年連続トップで長野県となっています。※1

日本アルプスをはじめとする山々に抱かれた豊かな自然があり、国内でも健康長寿の県として知られています。

北陸新幹線を使えば、軽井沢から東京まで1時間半、高速道路を使えば諏訪から新宿まで2時間半。都心へのアクセスのよさも人気の理由の1つです。

●長野県の移住支援
東京、大阪、名古屋の三大都市圏に移住者向け相談センターを設けています。また、長野県の移住者向けのポータルサイト「楽園信州」があり、住まいのほか仕事や支援制度を紹介しています。また、「楽園信州ファミリー」という長野県へ移住したい人や二地域居住を望む人を応援する無料会員制度もありますよ。

住まいに関しては、「楽園信州空き家バンク」を設置しており、地域の住まいを検索できるようになっています。

冬の北アルプス

食材やものづくりに富んだ広島県

2番目に人気があるのが、広島県です。

広島県は、中国山地と瀬戸内海があり、自然が豊かです。県内は高速道路網や鉄道網が充実しており、都市部から山や海へ、「街」から「田舎」へと1時間程度で移動ができるのも魅力といえます。

また、山と海のある環境からお米に野菜、果実や畜産物、牡蠣といった水産物など、食材が豊富。製造業も盛んで、自動車や造船、精密機器、家具に至るまでものづくりの県でもあります。

●広島県の移住支援
東京・有楽町にある「ひろしま暮らしサポートセンター」では、移住の相談を受け付けており、住まいや仕事などいろいろと相談することができます。

また、情報発信についても、移住者の声などを発信する「ひろしま移住メディア」というサイトや移住を総合的に支援するためのサイトとして「広島暮らし/広島県交流・定住ポータルサイト」を運営しています。

広島県尾道

温暖な気候と富士山が人気の静岡県

3番目に人気があるのが、静岡県です。温暖な気候に加えて、富士山や太平洋など豊かな自然環境が人気です。東海道新幹線や高速道路で東京方面からも関西方面からもアクセスしやすいことも魅力の1つです。

●静岡県の移住支援
東京圏から静岡県内へ移住して、中小企業などへ就業または起業した人に最大100万円が支給される「静岡県移住・就業支援金」という制度があります。

また、住まいに関しては、空き家の情報が一度に検索できる「空き家バンク」があり、希望条件に合わせて、売買、賃貸いずれも調べられます。さらに、さまざまなイベントや地元の移住相談員と現地を巡る「まち歩き案内」、パソコンで参加できる「オンライン移住相談会」、移住体験ツアーなどが用意されています。

富士山と新幹線

移住で気になる住まいの問題

移住するにあたり、大きな問題となってくるのが、今の家をどうするか、新しい家をどう探すかということです。具体的に移住を進めるとなると、現在の持ち家をどうするのか、移住先の新しい家をどう探すか、ということを考えなければなりませんね。

今の持ち家をどうする?

持ち家の場合は、移住した後の家をどうするかは、移住する前にしっかり決めておきましょう。特に、移住後に住む人がいない場合、家を空き家にして放っておくと建物が劣化してしまいます。空き家の管理が必要になってきます。

専門業者に空き家の管理費を支払って維持することも考えられますが、移住する場合の一般的な方法は「売却する」あるいは「賃貸で貸し出す」のどちらかです。売却か賃貸かを悩む場合は、まず、賃貸需要があるかを調べ、家の維持費と家賃収入を比べましょう。

売却する
売却は、移住先への永住を決意している人、また移住の費用を確保したい人におすすめする方法です。すでに住宅ローンの残債がない場合などは、今の持ち家を売却すればまとまった金額を入手できる可能性が高く、その資金が確保できれば、移住費用に当てることができます。

なお、持ち家の売却には、「買取」と「仲介」という2つの方法があります。

●不動産会社が買い取る方法

買取とは、不動産会社が直接不動産を買い取る方法です。買収は、仲介と比較して早く話が進むため、売却を確実に、早く完了できるという特徴があります。

一方で、仲介で売却するよりも売却金額が低くなる傾向にあり、相場は仲介の7~8割程度といわれています。

●不動産会社が仲介する方法

仲介は、不動産会社が買い手を見つけ、契約の成立を助けてくれる方法です。仲介の場合は、相場価格で売却することができます。しかし、不動産会社が買い取るのとは違い、買い手が見つかるまで時間がかかる可能性があります。

賃貸として貸し出す
賃貸として貸し出すのは、いつかは移住先から戻る可能性がある人、移住後も継続的に収入を得たい人などにおすすめします。

ただし、賃貸で貸し出す場合、不動産会社に賃貸の管理を任せたとしても、入居者が変わるたびに原状回復したり、清掃や税金の支払いなど維持するコストがかかったりします。

ただし、住宅ローンが残っている場合は、完済するか、金融機関の許可を得てからでないと人に貸し出すことはできませんので、注意が必要です。

北海道の初夏の青空

移住先の住まいはどうする?

続いて、移住先の住まいについて考えましょう。

まずは、賃貸住宅を借りて住むか、新たに住宅を購入するかということを決める必要があります。

基本的に一戸建てに住むことが多くなるため、マンション暮らしに慣れている人は一戸建て特有の環境に戸惑うかもしれません。まずは、賃貸住宅を借りて環境を知り、生活に慣れてから購入したほうが間違いは少なくなります。

賃貸、購入いずれの場合も、家を探すには地元の不動産会社で探す方法に加えて、自治体に相談して探してもらう方法もあります。地方では特に空き家が増えていることから、空き家を無料で譲り受けることができる「0円空き家バンク」を推奨する自治体もあります。自治体に尋ねて、空き家を活用するのもよいでしょう。

農業体験する女性たちの昼休み

移住をする前に、お試し体験がおすすめ

「実際に移住をしたら、想像していなかったことを体験し、困ってしまった…」「移住先の環境にどうしても馴染めない…」ということにならないために、「お試し移住」を開催している自治体があります。お試し移住は、移住を考えている人に向けて、その土地の住み心地を実際に体験してもらおうという取り組みで、一部の自治体が実施しています。

個人向けの体験のほか、複数人で参加できる体験ツアーもあります。また、農業や漁業などの職業体験を開催している自治体もありますよ。なお、滞在日数や住宅の賃貸料は地方によって異なります。

住んでみたい地域が決まっている人は、その自治体のホームページで確認して、申請してみてくださいね。明確に地域が決まっていない場合は、ネットで「お試し移住体験」と検索してみてはいかがでしょうか?

また、こうしたお試し体験の催しのない地域の場合でも、賃貸住宅を借りて自発的にお試し体験したほうが得策です。短い期間でも実際に滞在することで、旅行気分ではなく「住む」という視点で体験することがポイントになります。

その土地が自分に合っているか、そもそも移住そのものが向いているのかを判断するためにも、お試し移住や賃貸住宅で仮住まいするなどして、地方の暮らしを実際に体験したうえで移住を検討することをおすすめします。

※1出典:2019年移住希望地域ランキング公開;NPO法人ふるさと回帰センター
https://www.furusatokaiki.net/topics/ranking_2019/
(最終確認:2021年3月3日)

秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。