不動産競売とは?リスクやメリット、回避策を解説!

競売とは、債務者が支払わなかった債権を回収するために、債権者が法律に沿って裁判所のもとで不動産を売却する手続きのことです。一般的には、住宅ローンの返済が一定期間滞った際に行われます。この記事では、競売の流れや債務者にとってのリスク、メリット、回避する方法についてご紹介します。

目次
  1. 競売とは?
  2. 競売の種類とは?
  3. 不動産競売の流れ
  4. 競売のメリット
  5. 競売による債務者の不利益
  6. 競売を回避するためには?
  7. 売却のことなら迷わずプロに相談しよう!
記事カテゴリ 売却 ローン
2023.08.23

競売とは?

競売とは、債務者が契約通り支払っていない債権を回収するために、債権者が法律に沿って裁判所のもとで不動産を売却する手続きのことです。

住宅ローンを組むときには通常、債務者が住宅ローンを払えなくなっても債権を回収できるように、債権者が「不動産を担保にする権利」(抵当権)を設定しています。もしも、住宅ローンの支払いが滞った状態が続いた場合、抵当権に基づいて債権者である金融機関により裁判所へ競売の申し立てが行われ、競売が開始されます。不動産における競売は、住宅ローンの返済が滞ったことが理由で、裁判所によってその不動産が売却されることがほとんどです。

ハンマーを持つ手と家の模型

競売が開始されると、裁判所が売却の準備を行い、競り売り方式で購入者を決定します。競売にかけられた場合、債務者の意志とは反する形で不動産を手放さなければいけません。今回は競売の流れや競売にかけられる際の債務者へのリスク、メリットを回避方法と併せて解説します。

●抵当権に関する記事はこちら
抵当権とは?基礎知識から抹消手続きまで分かりやすく解説

●根抵当権に関する記事はこちら
根抵当権とは?抵当権との違いや売却時の注意点についても分かりやすく解説

競売の種類とは?

競売には、「担保不動産競売」と「強制競売」の2種類があります。担保不動産競売は、抵当権または根抵当権が設定されている不動産が競売にかけられ、債権が回収されることです。日本で競売の対象とされている物件の多くが、この担保不動産競売にあたります。

一方強制競売は、抵当権でなく債務名義に基づいて債権が回収されることです。債務名義とは裁判所が発行する公的文書のことで、抵当権を持たない債務者に対しても債務名義があれば強制競売にかけて債権を回収できます。裁判によってローンの支払いを命じられたにもかかわらず債務者が支払いを行わなかった場合に行使される方法がこの強制競売です。

なお、競売とよく似た言葉に「公売」があります。公売とは、国税や地方税などの税金を滞納した際に、国税庁や地方自治体が不動産を差し押さえて強制売却する手続きです。

競売は金融機関の申し立てによって裁判所が売却を行うのに対し、公売は不動産を差し押さえた国税庁や地方自治体が、国税徴収法や地方税法に基づいて不動産売却の手続きを実行します。

悩む人のシルエット

不動産競売の流れ

競売にかけられ立ち退きを迫られるまでの流れは、大きく9つの段階に分けられます。1つずつ見ていきましょう。

[ 1 ] 住宅ローンの一括返済を求められる

一般的に、住宅ローンを3~6か月滞納すると金融機関から「住宅ローンの一括返済」を求められます。住宅ローンの一括返済を求められた場合、それまで分割払いにしていたとしても、分割支払いの権利が剥奪され、残債を全て一括で返済しなければなりません。これが「期限の利益喪失」です。このタイミングで債権者は競売の手続きに入ります。

なお、実行のタイミングや流れは金融機関や契約内容ごとに異なります。そのため、詳細は該当の金融機関と金銭消費貸借契約を確認するようにしましょう。

●住宅ローン滞納に関する記事はこちら
住宅ローンを滞納するとどうなるの?競売回避のための対処方法を解説

電卓と家とお金

[ 2 ] 保証会社が代わりに返済を行う

住宅ローンの一括返済ができない場合は、金融機関の求めに応じて保証会社が金融機関の残債を返済します。これが「代位弁済」です。保証会社が代位弁済を行うと、債務者に対し、「代位弁済を行いました」という旨の代位弁済通知が届きます。これ以降は、保証会社が債権者となるため、保証会社に一括返済をしなければなりません。ここで残債を一括返済できれば、競売にかけられることを回避できますが、金融機関の一括返済の要求に応えられなかったのに保証会社の求めに応じることは、非現実的といえるでしょう。

[ 3 ] 裁判所へ申し立てされる

保証会社に返済ができない場合、保証会社が裁判所に対して、競売の申し立てを行います。裁判所の調査の結果、申し立てが正当であると判断されると競売が開始されます。

裁判所

[ 4 ] 競売開始の通知書が送られてくる

競売が始まると、裁判所から債務者に対して競売を開始する通知書である「競売開始決定の通知書」が送られてきます。

[ 5 ] 現状調査が行われる

競売を進めるにあたって、該当の不動産がどういった状況なのかを調べる「現状調査」が行われます。現状調査をもとに不動産に関する評価書が作成され、その後、評価書は、裁判所へ提出されます。具体的な調査方法や内容は、以下の通りです。

一戸建ての場合
・物件の前の道路幅や、隣家との境界線など
・室内の状態を確認、写真撮影
・間取り図を作成
・修繕履歴
・居住者に関する聞き取り調査

マンションの場合
・室内の状態を確認、写真撮影
・間取り図を作成
・修繕履歴
・居住者に関する聞き取り調査

悩む人

[ 6 ] 期間入札の通知が送られてくる

裁判所から「期間入札の通知」が届くと「入札」が始まります。入札とは、複数の契約希望者が発注機関に対して条件や金額を記した札を提出することです。入札書が入った入札箱を開けることを「開札」といい、開札し、入札した人のなかから、競売物件に最も高い価格を付けた人が落札者(購入権利を得た人)となります。

[ 7 ] 売却許可を決定する

落札者が決定すると、落札者に対する購入審査が行われます。審査によって、落札者の購入が認められると、売却へと進みます。競売の申し立てを取り下げる場合は、売却代金が納付されるまでが最後のタイミングです。取り下げる方法としては、一括返済を行うか、任意売却を行うかのどちらかです。任意売却について、詳しくは後ほどお伝えします。なお、落札者が代金を納付した場合は、競売の取り下げはできません。

売却予定地

[ 8 ] 代金の振り込みが完了する

落札者が購入代金を裁判所に支払います。金融機関や保証会社などの債権者は、その代金から住宅ローンを回収します。

[ 9 ] 立ち退きが強制執行される

落札者が代金を支払うと、その不動産の所有者は落札者となります。そのため、債務者はこのタイミングで立ち退きをしなければなりません。

倒れるドミノを止める手

競売のメリット

競売は債務者にとって不利益になることがほとんどですが、あえてメリットを挙げるのならば以下のようなものがあります。

売却の手続きが楽

競売の場合、裁判所が流れに沿って売却を進めるため、債務者が売却手続きをする必要がありません。ですので、不動産会社と契約をして進める一般的な売却や任意売却と比べて、手間が少ないといえます。

引越し準備の期間を確保できる

住宅ローンを滞納してから競売が行われ、退去するまでに1年程度かかるのが一般的です。そのため、新たな住居を探すための時間を十分に確保できます。しかし上記でお伝えした通り、新たな所有者が決まった場合には速やかに退去する必要があるため注意しましょう。

引越しの準備をする女性

競売による債務者の不利益

ここまで、競売のメリットをいくつか紹介してきましたが、やはり競売は債務者にとって不利益となることがほとんどです。不動産が競売にかけられると、具体的にどういった不利益があるのでしょうか?ここからは、不動産が競売にかけられる場合の不利益について見ていきます。

売却価格が相場よりも低くなる

不動産を競売にかけられた場合に発生する最大の損失は、売却代金が相場よりも低くなる点です。低くなる理由は、基本的に内覧ができなかったり、瑕疵(建物の欠陥や傷)があっても買主の対応になったりといった買主側に不利な条件が多いことが挙げられるでしょう。売却金額が低いことにより、返済すべき住宅ローンの残債額に到達しない可能性があります。

ただし、住宅ローンの返済が厳しい状態でなるべく市場価格に近い金額で不動産を売りたい場合は、後ほどご紹介する「任意売却」という選択肢があります。

家の模型と硬貨

プライバシーが侵害される

競売にかけられた場合、周囲に自分の不動産が競売にかけられていることを知られてしまいます。なぜなら、裁判所職員である執行官が、強制的に不動産の内外を実況見分するうえに、競売情報がネット上に公表されるからです。また、落札を希望する不動産会社が近隣に聞き込みを行うこともあり、近隣に自分の不動産が競売にかけられていることが周知されてしまいます。

強制的に追い出される

不動産の新しい所有者が決定すると、不動産は落札者のものとなるため、家を出ていかなくてはなりません。たとえ、次の居住地が決まっていない状態でも、競売によって次の所有者が決まるとその不動産から出ていかなくてはならないのです。出ていくことを拒否し、不動産を1か月以上占拠している場合は、執行官が強制的に債務者を退去させる断行が行われます。

チェーンと家の模型

競売を回避するためには?

では、競売を回避するためには、どのようにしたらよいのでしょうか?ここからは、競売を回避する3つの方法をご紹介します。

金融機関へ相談

「収入が減った…」「失業してしまった…」などの理由で住宅ローンの返済が「苦しい」または、「苦しくなりそう」という方は、その段階で金融機関へ相談しましょう。借入期間の延長や返済額を一定期間だけ減額するなど、住宅ローンの返済計画の見直しを行うことで競売にかけられる可能性を軽減できます。

残債を一括返済する

もし、住宅ローンを滞納していても、残債を完済できれば競売を阻止することが可能です。しかし、一括返済は経済的に大きな負担が伴うため、資金調達の当てがなければ、非現実的といえるでしょう。

積み木と小銭

任意売却する

任意売却とは、住宅ローンを債務者が滞納した場合、債権者の合意のもと一般市場で不動産売却をする方法です。競売にかけられた場合と比較すると、任意売却は、競売の入札価格よりも高く売却できる可能性があります。

また、任意売却であれば、周囲に知られずに売却を進めることができます。加えて、任意売却を選んだ場合、債務の額や、金融機関との交渉次第では、引越し費用を売却代金から差し引くことも可能です。ただ、上記でお伝えした通り、任意売却の場合は債権者の合意や売却する十分な時間などが必要になります。これらを理解したうえで、少しでも高く売却したい方や、競売にかけられることには抵抗があるという方は、一度、任意売却も検討してみるとよいでしょう。

●任意売却に関する記事はこちら
任意売却とは?住宅ローンの支払いが厳しくなったら知っておくべき基礎知識を解説

ビジネスウーマン

売却のことなら迷わずプロに相談しよう!

住宅ローンは長期的に返済していくものになるため、借入時には予測していなかったような出来事で返済が難しくなることもあるでしょう。住宅ローンの返済が厳しいと感じた場合には、自分の所有する不動産を競売にかけられないためにも、早めに動くことが大切です。

もし、住宅ローンの返済に困っていたり、不安があったりする場合は、迷わずに金融機関に相談しましょう。

また、不動産を売却するのも競売を回避する1つの方法です。売却して得た資金で、住宅ローンを完済できる可能性があります。まずはどのくらいの価格で売却できるか、不動産査定を通じて相場を知ることから始めるのがおすすめです。

三井のリハウスでは、お客さまのご事情に合わせて経験豊富な担当者が最適な売却方法をご提案いたしますので気軽にお問い合わせくださいね。

●三井のリハウスへのご相談はこちらから

●無料査定はこちらから

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
https://www.izumi-ohishi.co.jp/profile.html