事故物件を売却するには?告知義務や売却のコツを紹介

事故物件を売却すると、一般的に通常の物件価格よりも低い価格で取引されます。また、事故物件の売却には、通常の不動産売却とは違った注意点やコツがあります。今回は、事故物件の定義から売却をスムーズに進めるコツまでご紹介します。

目次
  1. 事故物件の条件とは?
  2. 事故物件の売却価格相場は?
  3. 事故物件を売却するコツは?
  4. 誠実に告知することで納得できる売買を実現させよう!
記事カテゴリ 売却
2022.03.07

事故物件の条件とは?

所有している不動産が事故物件となってしまった人の場合、「早く手放したい!」「できれば売却したい!」と考えている人は多いでしょう。実際、事故物件は売却できるのでしょうか?もし売却できるとすれば、どれくらいの相場で売却できるのかも気になりますよね?

そもそも事故物件とは、事故や事件で人が死亡したなど、住むことに心理的な不安を抱かせる物件を指します。一般的には売却が難しいとされますが、売却をすること自体は可能です。
しかし、売却をする際には注意すべき点がいくつかあります。今回は、事故物件の基礎知識、売却する際のコツや注意する点をご紹介します。

家の模型

法律で定められた定義はない

事故物件という言葉はよく耳にしますが、実際には事故物件を定める法律はありません。一般的に事故物件とは、対象となる不動産に心理的瑕疵(しんりてきかし)がある、またはその恐れがある物件のことをいいます。

事故物件も含め、欠陥や欠点のある物件を瑕疵(かし)物件といいますが、瑕疵には「心理的瑕疵」「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」の3種類があります。それぞれについて簡単に説明しましょう。

心理的瑕疵
心理的瑕疵とは、不動産を取引する際に、買主や借主が心理的な抵抗を感じる恐れがある欠陥のことをいいます。たとえば、殺人や自殺、自然死でも特殊清掃が必要になった場合は、心理的瑕疵があることになります。このように、心理的に住みづらさを感じてしまう瑕疵のある物件が心理的瑕疵物件で、事故物件といわれます。

また、心理的瑕疵のなかでも、取引の対象となる不動産の周辺環境に住みづらさを感じる欠陥を環境的瑕疵ということがあります。たとえば、墓地や火葬場などが近くにある物件、また反社会的勢力団体が近くに居住しているような場合、心理的(環境的)瑕疵があるといえます。

物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、その不動産にある物理的な何らかの欠陥のことを指します。たとえば、シロアリや床下浸水などの影響で建物の構造上にある欠陥や、過去に火災があり建物を改修した、土地に産業廃棄物が埋まっていたなど土地や建物に何らかの物理的な欠陥、あるいは欠陥になる恐れのあるものが物理的瑕疵になります。

法律的瑕疵
法律的瑕疵とは、建物を建築する際にクリアしているべき建築基準法や都市計画法などの法律を満たしていない欠陥のことを指します。たとえば、建築基準法上の規制を満たしていない、建物の建築が認められていない市街化調整区内に建っているなどがこれに該当します。

今回ご紹介する「事故物件」とは、3つの瑕疵のなかでも心理的瑕疵のあるものにあたります。なお、前述した3種類のどの瑕疵であっても、不動産の取引上、契約を交わす際は重要事項として説明が必要です。

事故物件

売却の際はガイドラインに沿った告知が必要

売却する不動産が事故物件の場合は、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」に沿って、売却する際に物件内で発生した事件や事故の事実を告知しなければなりません。

このガイドラインの制定には、事故物件について法律的に明確な基準がないため、不動産の取引において現場の判断が難しく、円滑な流通や安心できる取引が阻害されていた背景があります。たとえば、室内での自然死や事故について、何年前のものまで告知するかといった判断が現場の判断となり、似たようなケースでも告知されることもあれば、告知されない場合もあるなどあいまいでした。

こうした状況を受け、国土交通省が2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。このガイドラインは、取引の対象不動産において過去に人の死が発生した場合において、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき告知義務の解釈について取りまとめたものです。裁判例や取引実務に照らして一般的に妥当と考えられるものが整理されています。

このガイドラインが、人の死が関係する心理的瑕疵の告知について一定の判断基準となります。具体的にどのようなケースで告知義務があり、逆に告知義務がないのか、ガイドラインの内容について見ていきましょう。

売買の場合で告知義務のあるもの
以下のものは、取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼすと考えられるので、原則として告知が必要とされます。したがって、これらの物件が事故物件に該当するといえます。

・他殺
・自殺
・事故死(日常生活における不慮の事故といえないもの)
・その他原因が不明な死
・自然死、不慮の事故でも特殊清掃が行われた場合

告知義務のないもの
ガイドラインでは告知の必要がないものとして定めたものもあります。

[ 1 ] 対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)
※ただし、特殊清掃等が行われた場合については告知が必要。
[ 2 ] 対象不動産の隣接住戸、あるいは日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した[ 1 ] の死と、特殊清掃等が行われた[ 1 ] の死

なお、特に賃貸取引では、以下の場合も告知が不要となります。

[ 3 ] 対象不動産、あるいは日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した[ 1 ] 以外の死と、特殊清掃等が行われた[ 1 ] の死について、事案発生から3年間が経過したもの

上記により、賃貸取引の場合は3年を経過すると告知義務がなくなると示されたことになります。

このガイドラインでは宅地建物取引業者の心理的瑕疵の調査義務の範囲も示しており、宅地建物取引業者が媒介を行う場合、売主・貸主・管理業者に対し告知書で過去に生じた事案についての記載を求めることで、媒介活動に伴う通常の調査義務を果たしたものとされています。

説明を受ける夫婦

ガイドラインにもとづくと、売買取引の場合は3年以上時間が経過していたとしても、事故物件であることを告知する必要があるでしょう。過去の判例として、売買の数十年以上前の事件について告知しなかったことが告知義務違反になったケースもあるので、売買の場合はケースバイケースで時間の経過によって告知義務がなくなるとは一概にいえません。

また心理的瑕疵の告知義務が発生するのは、物件の室内だけでなく、マンションをはじめとした集合住宅の共用部分で発生した事故や事件の場合も該当します。しかし、日常生活において通常使用しない共用部分で発生したものは告知義務がないものとなっています。

万が一、告知しなかった場合、売主は損害賠償を請求されたり、契約解除となるリスクがあります。そのため、売主は事故物件となる瑕疵について把握している場合は必ず告知するようにしましょう。

事故物件の売却価格相場は?

ここまでどういったケースが事故物件となるかについてご説明してきました。では事故物件となった場合は、実際に相場に対してどれくらいの価格で売れるのでしょうか?ここからは、事故物件を売却した場合の相場価格を見ていきましょう。

和室の襖

一般相場の10%~50%程度減額になる

事故物件の売買価格は、その瑕疵の状況や心理的な嫌悪感の度合いによって異なってきます。また、事故物件そのものの取引は、不動産の取引全体から見ると非常に少ないので、事故物件の相場というものはありません。

ただし、不動産取引の実態としては、通常の物件価格よりも10%〜50%程度安くなるとされています。たとえば、自然死で特殊清掃が必要になった場合は約20%~30%程度、自殺の場合は30%~50%程度、殺人の場合はおおむね50%ほど安くなる傾向があります。いずれも原因とその状況、それに対する嫌悪感の度合いで異なってきます。

多くの人が嫌悪感を抱くケースであればあるほど、一般的な物件の相場と比べると価格は安くなるといえるでしょう。しかし、価格はあくまでも取引できて初めて決まるので、事故物件の売り出し価格については、状況を説明した後、実際に物件を見てもらったうえで不動産会社に査定してもらうことをおすすめします。

●一般的な相場を知りたい人はこちら
【三井のリハウス】不動産売却・査定・相談

営業からの電話、店舗への訪問必要なし!Webだけで簡単にマンション売却価格を知る方法とは?

事故物件も物件の条件によって価格は左右される

事故物件の場合も物件の立地や周辺環境によって価格が変わってきます。事故物件となってしまうような心理的瑕疵があったとしても、ターミナル駅の近くや周辺にスーパーや銀行、病院など生活利便施設があるなどもともとその物件が持っている魅力が大きい場合、大幅に価格を落とさずに売却できる可能性が高くなります。

購入希望者の考え方によって物件の価格も変わる

前述のように事故物件は、買手の心理的瑕疵に対する受け止め方で物件の印象が大きく変わってきます。したがって、売買価格もその印象次第で変わるといえます。
たとえば、亡くなった原因が自然死であれば、室内であっても気にしないという人もいれば、駐車場や庭など屋外での事故死であっても許容できないという人もいるためです。

事故物件は、通常物件に比べて売却価格が安くなる傾向にありますが、その減額幅は購入希望者の考え方次第で、場合によっては大幅な値下げをしなくても売却できるケースもあります。そのため、事故物件の売却の際には不動産会社と相談して、相場よりやや低い金額から売り出しを始め、様子を見ながら価格を調整して(下げて)いくとよいでしょう。

●初めて不動産を売る人向けの基礎知識に関する記事はこちら
【家の売却ガイド】初めて不動産を売る人向けの基礎知識

事故物件を売却するコツは?

事故物件を売却する際には、どういった点に気を付けて売却活動を行うのがよいのでしょうか?
ここからは、事故物件を売却するときに注意したいポイントや上手に売却するためのコツをご紹介していきます。

ハウスクリーニング

できるだけきれいに

事故物件を売却する場合は、原因となった現場を清掃するだけでなく、外観から室内まで通常の物件以上に印象がよくなるように心掛けましょう。通常の物件よりも物件に対する第一印象がよくないため、買手は付きにくいといえます。そのため、よりグレードの高いハウスクリーニングや、場合によってはリフォームを行うようにしましょう。

なかでも、発見が遅れてしまった場合は、汚染物の除去や消臭・脱臭を行うために、特殊清掃は必須です。特殊清掃の費用は、物件の面積や作業内容によっても異なってくるので、自分の物件はいくらかかるのか事前に確認しておきましょう。

また気になるようなら、清掃だけではなく、瑕疵の原因や状況によってお寺や神社にお祓いを依頼することもおすすめです。

一定の期間を空ける

事故や事件が発生した直後は、その印象が強く、売却活動を始めても非常に買手が付きにくい傾向があります。売主の精神的な状況や経済的な状況にもよりますが、可能なら、数年期間を空けて売却するほうが得策といえます。

ただし、期間を空けても売買の場合は、一概に告知義務がなくなるとはいえません。そのため、事故物件を売却する場合は、期間を空けて売却活動を行う際でも不動産会社の担当者にその旨をきちんと告げるようにしましょう。

解体される家とショベルカー

更地にする

誰もが長い間覚えているような痛ましい事件、周辺の人が忘れられないような事故が起きた場合は、いくらハウスクリーニングやリフォームで建物をきれいにしても、マイナスのイメージを払拭できないケースもあります。その場合は、悪いイメージの原因である建物を全て取り壊し、更地にして、物件のイメージ回復を図るのも方法の1つです。

解体する場合は費用がかかりますが、悪いイメージが残っている建物がある状態で売却するより売りやすくなることが多いので、更地とすることを検討する価値はあります。

なお、更地にした場合は、建物があるときよりも固定資産税や都市計画税の税額が高くなるため、できるだけ速やかに売却する必要があります。

とはいえ、記憶に残る事件や事故で、近隣に住む人の物件に対するイメージが払拭できない場合もあります。その場合は、更地にした後、月極駐車場やコインパーキングとして再利用するという方法もあるでしょう。

不動産会社に買い取ってもらう

価格を下げても買手が付かない場合や、周囲の人に売却していることを知られたくない場合は、不動産会社に買い取ってもらう方法があります。不動産会社に買い取ってもらう最大のメリットとしては、売却までが比較的短期間で可能という点です。査定から引渡し・決済まで早ければ、約1か月で済むので、価格よりもなるべく早く手放したいという人に向いている方法といえるでしょう。

また、不動産会社に買い取ってもらうほかのメリットの1つとして、近隣に気付かれずに売却できるという点があります。物件を通常の媒介(仲介)で売りに出した場合、広告されることで情報が多くの人の目に留まるうえに、内覧など必然的に人の出入りが増え、目立ちやすくなります。そういった周囲の目が気になる人は、周りに気付かれずに売却できる不動産会社への買い取りを検討してもよいかもしれません。

さらに、不動産会社に買い取ってもらうメリットとして、不動産のプロであるため、心理的瑕疵についてよく理解したうえで買い取りすることから、売主の瑕疵に対する責任は、一般的な人に売却する場合よりも軽減されるという点があります。ただし、不動産会社が買い取る場合、価格はかなり低くなる傾向があることを覚えておきましょう。

●三井のリハウス 買取サポートシステムに関してはこちら
買取サポートシステム

誠実に告知することで納得できる売買を実現させよう!

通常の市場価格での売却が難しいとされる事故物件ですが、今回ご紹介したように事故物件についての理解を深めたうえで、ご紹介した売却する際のコツを参考にすれば、納得して売却できるかもしれません。

そのためには、自分で事故物件についての売買事例や売出情報を調べることはもちろん必要ですが、事故物件には相場がないため、信頼できる不動産会社、担当者を見つけることが重要です。経験豊富なプロからアドバイスを受けながら、二人三脚で売却活動を進めることで、自分が納得できる売却となる可能性が高くなります。

事故物件に関する正しい知識をもって、売却に際しては、きちんと告知することで買手に誠実に向き合いながら売却を進めるようにしましょう!

秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。