いらない不動産はどう処分する?放棄・寄付・売却・活用など処分方法を解説!

不要になってしまった不動産。使っていなくても固定資産税の支払いをはじめ、所有者にかかる負担は多くあります。ここでは、いらなくなった不動産の処分方法を詳しくお伝えしていきます。

目次
  1. いらない不動産を処分するには?
  2. 不要な不動産を所有するリスクとは?
  3. 不動産処分方法[ 1 ] 売却する
  4. 不動産処分方法[ 2 ] 活用する
  5. 不動産処分方法[ 3 ] 寄付する
  6. 不動産処分方法[ 4 ] 相続放棄する
  7. さまざまな角度から検討して、処分の方法を探そう!
記事カテゴリ 売却 シニア
2022.12.15

いらない不動産を処分するには?

実家を相続したり、または離婚したりといった理由から、建物や土地などの不要な不動産を抱えてしまうケースがあります。不要ながらも不動産の処分方法が分からず、そのまま所有している人は多いのではないでしょうか。あるいは、売りに出してみたもののなかなか買い手が見つからず、諦めてしまったという人もいるかもしれません。

しかし、たとえ不要で使っていない不動産でも勝手に放棄することはできません。不動産の所有権放棄は、法的に認められていないからです。つまり、所有者がしかるべき方法で処分をしなければ、使っていない不動産でも所有し続けることになってしまいます。不要な不動産を所有し続けることには、固定資産税の支払いをはじめ、実は多くのリスクが潜んでいるのです。

そこで今回は、いらなくなった不動産をスムーズに処分する4つの方法をご紹介します。

ノートPCに向かう女性

不要な不動産を所有するリスクとは?

不要な不動産の処分方法をご紹介する前に、所有し続けているとどのようなリスクがあるのかをまず理解しましょう。主なリスクには「固定資産税がかかる」「管理に手間がかかる」「損害賠償の恐れ」の3つが考えられます。ここからは、3つのリスクについて詳しくお伝えしていきます。

税金がかかる

固定資産税は、所有している不動産にかかる税金です。また、不動産がある地域によっては都市計画税という税金も徴収されます。使っていない不動産であっても、持っている限りはこれらの税金を払い続けなければなりません。

都市部ではない地方の土地の場合は、固定資産税を決める不動産の「評価額」が低い傾向にあるため、税額も安くなる傾向があります。しかし、土地が広ければ負担額は大きくなり、管理にも手間がかかってしまうため、所有者にとっての負担は大きくなるでしょう。

住宅が建っている土地は、税負担軽減の特例を受けることができますが、住宅が建っていない土地の場合、その特例は適用されません。また、住宅が建っていても管理が不十分で、国から「特定空き家」と指定されてしまうと、特例の対象外となってしまいます。

管理に手間がかかる

土地や家の管理にはかなりの手間がかかります。たとえば、土地は定期的に管理をしないとあっという間に雑草が生えてきてしまいます。特に春から夏にかけては、雑草の成長が早く、こまめな手入れが必要です。

また、雑草を放置しておくことで、害虫が発生したりごみが捨てられてしまったりすることがあり、近隣の人からクレームを受けることになるかもしれません。さらに、害虫には健康被害を与える危険性もあるため、そうした場合には「土地の管理不足」として所有者の責任になってしまいます。

本の上の家の模型

損害賠償の恐れ

不動産を放置していると、故意ではなくとも周辺の人に損害を与えてしまう場合があります。

たとえば、地震で崩れた屋根や塀が近隣の住宅を傷付けたり、崖地を所有している場合には、崖崩れによって他人の住宅に被害が出てしまったりする恐れがあります。このような場合には、損害賠償の支払いが必要になることがあるので注意しましょう。

また、放火や失火(過失から火事を起こしてしまうこと)でも損害賠償を負うことがあります。放火や失火で近隣の住宅がもらい火をした場合、住宅の持ち主が責任を問われることは一般的にはありません。ただし、こちら側に重大な過失があったときには、損害賠償を問われることがあります。

ほかにも、放置しておくことで不法占拠をされる恐れや、近隣住民から治安の観点でクレームが入ることも考えられます。このように、不要な不動産は放置しておくと周囲の人に損害を与えてしまうリスクがあることを覚えておきましょう。

上記のようなリスクを避けるには、不要な不動産はなるべく早く処分したほうがよいでしょう。それでは、具体的な処分方法について次からご説明しましょう。

家の模型と悩む人

不動産処分方法[ 1 ] 売却する

ここからは、不要な不動産の具体的な処分方法を紹介します。まずは、不動産を売却する方法です。不動産を売却する際、一般的には不動産会社に仲介を依頼します。仲介を依頼する際は、査定を行い契約を結んで売却活動を行います。

売りにくい物件を売却する方法

所有している不動産によっては、田舎にあって需要が低い、建物の老朽化が進んでいるなどの理由で、なかなか買主が見つからないかもしれません。そのような売りにくい物件は一度、以下のように見直しをしてみることをおすすめします。

売り出し価格を見直す
既に売り出しているのに買い手が見つからない場合は、売り出し価格を見直してみるとよいでしょう。買い手が見つからないということは、需要に対して価格設定が高過ぎるということも考えられます。

そのため、不動産会社の査定を受けて売却想定額を把握すると同時に、自分でも周辺相場を把握しておくとよいでしょう。自分でもある程度相場を把握していれば、価格設定が適切かどうかの判断ができるはずです。

更地にする
建物付きの土地の場合、思い切って更地にして売却することも方法の1つです。更地にすることで土地を探している人の需要にマッチし、売却できる可能性があります。ただし、更地にするためには解体費が必要です。解体費を払っても、利益があるかどうかを検討して判断しましょう。検討の際は、不動産会社への相談がおすすめです。

売却にかかる費用

売却は、不要な不動産を処分する方法としては理想的といえますが、一方で費用もかかります。

不動産会社に売却活動を依頼する場合は、仲介手数料が必要になります。不動産のローンが残っている場合には、ローンの一括返済、また抵当権の抹消費用も必要です。さらに、売買契約書にかかる印紙税もかかります。土地を測量する場合には測量費用、土地を更地にする場合には解体費用も必要になります。

売却を行う際は、このような費用もシミュレーションしたうえで進めるようにしましょう。

家の模型と硬貨

不動産処分方法[ 2 ] 活用する

不要な不動産は、活用して収益を得るという方法もあります。立地に関係なく活用できる方法もあるので、手放す前に検討してみるとよいでしょう。

土地活用を考える

土地活用する方法の1つは、マンションやアパート、一戸建てを建築し賃貸する方法です。古い建物が建っている場合は解体費、そしてマンションやアパートを新たに建てる建設費がかかるため、初期投資は高額になりますが、住居者が見つかり、賃貸することができれば長期的な利益になる可能性があります。

利用者が多い場所であれば、駐車場やトランクルームとして活用する方法も利益が見込めるでしょう。土地の面積が少ない場合には、コインロッカーや自動販売機、広告掲載などにも活用できます。「今、足りていないものは何か?」「あったら便利なものは何か?」というように、近隣で生活している人や、利用する人の需要を考えてよりよい活用法を見つけましょう。

反対に、アクセスが困難で人が少ない場所は、太陽光発電で利用することもよいアイデアです。しかし、太陽光発電の装置を設置するには多額の費用がかかるので、運用期間やその間の収支のシミュレーションなどを踏まえ、よく考えて決断しましょう。その土地が太陽光発電に適しているかどうか、専門会社による事前調査も必須です。

考える人

土地信託を利用する

「土地信託」とは、土地の運用を信託会社に任せ、配当金として、収益の一部を受け取るものです。そのため、自己資金なしで収益を得られる可能性があります。土地活用を希望しているものの、労力をかけたくないといった人におすすめの方法です。

土地信託を利用する際、信託期間中の土地の所有権は信託会社に移転されます。信託期間が終わると信託会社が建てた建物の所有権も地主に移る「賃貸型」と、信託期間が終わると土地を売却する「処分型」の2種類があります。処分型の場合、信託期間中に建物を建てる、開発するなどされて土地に付加価値が生まれるため、高値での売却が可能になることもあります。

ただし、土地信託は全ての物件が契約できるというわけではありません。信託会社が「収益が見込めない」と判断した場合には、契約を断られるケースもあります。また、収益の保証はなく、市場にも左右されるため、失敗する恐れもあることを把握しておきましょう。

土地活用にかかる費用

土地を活用する際にかかる費用は活用方法によって異なりますが、ほとんどの方法で初期費用はかかります。利益を得られず損をしてしまうことがないように、リスクを想定しつつ活用方法を検討するようにしましょう。

不動産

不動産処分方法[ 3 ] 寄付する

買い手が見つからない、または活用しても収益が見込めないといった土地の場合は、寄付するという方法もあります。寄付する相手は自治体、個人、法人などさまざまです。それぞれのケースについて詳しく説明していきます。

自治体へ寄付する

寄付先として一般的なのは自治体です。条件を満たせば、無償で引き取ってくれることもあります。ただし、自治体にとっては固定資産税を失うことになるため、自治体側がその土地を使用する目的がなければ、引き取ってもらえません。どんな土地でも簡単に寄付できるわけではないという点には注意しておきましょう。

自治体へ寄付する際は、まず窓口で相談し、土地の調査後に決定されるといった流れが一般的です。相談時には、対象の土地情報が分かる公図(土地の位置や形状の図面)や謄本(その土地のこれまでの所有者情報や現状が記されたもの)、写真を用意しておきましょう。ちなみに、自治体への寄付の手順は自治体によって異なる場合があるので、事前に確認しておくと安心です。

個人へ寄付する

不要な不動産は、自治体ではなく個人へ寄付することも可能です。相手は誰でも構いませんが、希望者はなかなか見つからないかもしれません。その場合は、隣地の所有者が引き取り手として最も相談しやすいでしょう。土地の周辺の環境を把握しているため、土地を有効活用してもらいやすい可能性があります。

ただし、寄付した相手側には贈与税がかかります。贈与税は、毎年110万円の基礎控除を受けることができます。そのため、土地の評価価格から110万円を引いた金額に、税率が課された金額が納付額となります。土地を個人へ贈与する場合は、かかる税金を調べたうえで話を進めたほうが、トラブルを防げるでしょう。

法人へ寄付する

公益法人(社団法人や学校)や企業への寄付も方法の1つです。事業や保養目的など、個人とは異なる利用方法があるため、引き取ってもらえる可能性は高いといえます。ただし、法人に寄付する場合、譲渡所得に課税されることがあるので注意しましょう。

積み木と硬貨

国に引き取ってもらう

これまで、不要な不動産は上記のような方法で処分することになっていましたが、今後は国に引き取ってもらうこともできるようになります。2021年に「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を国に引き取ってもらえる制度で、2023年4月に施行予定です。引き取ってもらうには、相続や遺贈などで得た土地であることが条件となり、相続や遺贈により所有権を取得した相続人による申請が必要になります。

ただし、建物がある土地、担保権が設定されている土地、特定有害物質により汚染されている土地、境界が明らかでない土地、帰属または範囲について争いがある土地は対象外となります。引き取ってもらえる条件をよく確認して検討しましょう。

寄付にかかる費用

不動産を寄付する際には、次のような費用がかかることがあります。

・登録免許税
・司法書士への報酬
・所得税

まず、不動産を売却、寄付する際には、所有権が移るため登記を変更する必要があります。その際に、かかる費用が「登録免許税」と「司法書士への報酬」の2つです。

登録免許税は、寄付する土地や建物、売買なのか相続なのかによって異なり、軽減措置もあります。司法書士への報酬は依頼する司法書士によって異なるため、事前に調べてから依頼することをおすすめします。

また、寄付先が法人の場合、寄付した側には所得税が課税されることがあります。土地、建物などの資産を寄付したときの価格で譲渡があったとみなされるため、これらの資産の取得時から寄付時までに値上がりした分の利益に対して所得税が課税されます。

一方、相手先によっては非課税になる可能性もあります。主に、教育や文化など社会貢献を目的とした寄付が対象となりますが、詳しくは税理士に相談して確認してみましょう。

家系図と家の模型

不動産処分方法[ 4 ] 相続放棄する

相続する不動産が不要な場合は、「相続を放棄する」という方法で処分することもできます。

相続前に相続放棄する

親や親族から譲り受けた土地は、相続の発生を知ったときから3か月以内であれば相続放棄することができます。ここで、注意しなければいけないことは、「相続放棄すると土地以外の所有している財産も全て放棄しなければならない」ということです。遺産の内訳も確認したうえで、よく考えて決断することをおすすめします。

また、相続を放棄した場合、固定資産税の支払いは不要になりますが、土地の管理責任がなくなるわけではありません。つまり、管理をしてくれる人が見つかるまでは、相続人が引き続き管理する義務があるということです。

管理義務をなくすためには、家庭裁判所に「相続財産管理人の選任」の申し立てを行います。不動産を管理してくれる人を見つけることができたら、所有者の管理義務がなくなります。一般的には弁護士が管理人となるケースが多くなります。

ちなみにこの民法は2021年に改正され、管理義務の内容や期限について曖昧だった部分が明確になりました。2023年4月1日から新法が施行されるので、改正内容についてもチェックしておくとよいでしょう。

相続放棄にかかる費用

相続を放棄する際にかかる費用は、主に相続財産管理人を見つける過程で発生します。家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てをし、弁護士が管理人になった場合には、予納金を納めることになるので注意しましょう。

OKサインをする女性

さまざまな角度から検討して、処分の方法を探そう!

ここまで、いらない不動産を所有していることのリスクや、処分方法をご紹介してきました。不要な不動産を所有していることは、固定資産税の負担、管理の手間、費用、また事故が起きた場合の損害賠償などのさまざまなリスクがあることをご理解いただけたと思います。

一方、自分にとっては不要な不動産だとしても、ほかの人にとっては、活用次第で宝物になるかもしれないということも感じていただけたのではないでしょうか。だからこそ、諦めずに可能性を探ってみる価値はあるはずです。

また、さまざまな処分方法をお伝えしてきましたが、なかでも「売却」を行えば、資金を得ながら管理の手間もなくなります。よりよい価格で効率よく売却活動を行うには、信頼できる不動産会社を見つけることが第一です。

不動産の処分を検討している人は、ぜひ不動産会社に相談し、査定を受けるところから始めてみましょう。処分方法をいろいろな角度から検討することで、自分に合ったよい方法を見つけることができるはずです。

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
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