住宅ローンを払えないとどうなる?対処法や返済方法、住み続けることは可能か解説

住宅ローンを借り入れした後、収入が不安定になってしまい、払えなくなってしまう人もいます。今回は、何らかの事情で「住宅ローンの負担率が収入の20%以上になっている」という方や、「支払いがつらい」と感じている方に向けて、対処法をご紹介します。

目次
  1. 住宅ローンが払えない人の割合
  2. 住宅ローンが払えなくなる原因とは?
  3. 住宅ローンを払えないとどうなる?
  4. 住宅ローンの支払いが困難な場合の対処法
  5. 既に住宅ローンを延滞している場合の対処法
  6. シニア世代となり住宅ローンが厳しくなった場合の対処法
  7. 住宅ローンが払えない場合の注意点
  8. 住宅ローンが払えなくなる前に金融機関に相談を!
記事カテゴリ 売却 ローン
2023.11.20

住宅ローンが払えない人の割合

住宅ローンの返済が難しくなり、家計が回らなくなってしまう「住宅ローン破綻」は、珍しいトラブルではありません。住宅金融支援機構の調べによると、2021年度のリスク管理債権の割合は3.17%と、100人のうち約3人は返済が滞っている状況です。

決して他人事とはいえないこうしたトラブルに陥った際には、その原因や自らの状況に合わせて対処しなければなりません。この記事では、住宅ローンが払えなくなる原因やその対処法について解説します。

住宅ローンが払えなくなる原因とは?

住宅ローンが払えなくなる理由にはさまざまな要因が考えられます。「自分には関係のない話だ」と思うかもしれませんが、意外にも誰にでも払えなくなる可能性があるのはご存じでしょうか?ここでは住宅ローンが払えなくなる原因を3つ紹介していきます。

LOANの文字の積み木

無理のある返済計画

住宅ローンの負担率は、手取り収入に対しておよそ20%以内が理想といわれています。手取り収入で計算する理由は、30・35年と長期間にわたって返済するケースが多い住宅ローンを、無理なく支払うためです。

額面収入で計算すると、税金が引かれる前の収入で返済計画を立ててしまうことになります。加えて働き方改革による残業削減や、業績によるボーナスカットなど、このような不確定要素が残る収入を負担率に加味してしまうのも確実とはいえません。

また、負担率が20%を超えている場合や、定年後も長く払い続けるといった返済計画を立てている場合、これまでの収入や支出に変化が起きたときに返済が難しくなります。返済負担率を20%程度に抑えたり、無理のない返済期間を設定したりするなど余裕を持った返済計画を立てることが大切でしょう。

●無理のない借り入れについて詳しくはこちら
一般社団法人 全国銀行協会 | しまった!とならないために住宅ローンの返済可能額を知ろう

住宅ローン返済に悩む女性

病気といった突然のアクシデントによる収入の減少

住宅ローンを払えない原因として、病気や入院、突然のリストラで職を失ってしまうなどのケースも考えられます。このような予期のできないアクシデントによって収入が減り、返済計画が崩れる可能性があるため、保険への加入といった備えをしておくと安心です。

予期せぬ支出の増加

住宅ローンを借り入れた時点では予期できなかった支出が重なってしまうと、返済が滞る原因となります。予期せぬ支出の例としては以下が挙げられますので、貯金といった備えをしておきましょう。

・けが・入院
・介護
・家や車の修繕・修理
・冠婚葬祭
・家電製品の故障・買い替え
・市況の変化(住宅ローン金利の上昇)

入院中の女性

住宅ローンを払えないとどうなる?

住宅ローンを支払えなくなったり滞ったりしてしまうと、以下のような流れで最終的には競売にかけられ、住んでいる家を差し押さえられてしまいます

[ 1 ] 1~2か月延滞すると「督促状」が届く
[ 2 ] 3か月以上滞納すると一括返済の請求が届く
[ 3 ] その後も延滞すると「競売」にかけられる

ここからは、住宅ローンを滞納し続けるとどうなってしまうのかを、段階ごとに詳しく説明していきます。

住宅ローン返済のために家計の見直しをする様子

1~2か月延滞すると「督促状」が届く

住宅ローンの支払いが1~2か月滞ると、銀行や金融公庫といった金融機関から「期日までに未納金額と延滞損害金をお支払いください」という旨の督促状が届きます。ここで支払いの見通しが立たない場合は、早急に金融機関・不動産会社へ連絡しましょう。なぜなら、住宅ローンを一度でも延滞すると、金利が跳ね上がることがあるからです。

通常、住宅ローンの金利は、金融機関の店頭で公表している金利と比べて割安になるように優遇されていますが、住宅ローンを延滞するとその優遇が受けられなくなる場合があります。ローンの金利が跳ね上がると、返済総額が大きく変わってしまうため注意しましょう。

しかし、この段階で適切に動けば、大きなダメージは避けられるかもしれません。払い忘れなど、ミスによる滞納の場合はきちんとその旨を伝えれば許してもらえる場合もあります。

3か月以上滞納すると一括返済の請求が届く

支払いの延滞が3~6か月にわたると、「期限の利益の喪失」によって一括返済を求める請求が届きます。期限の利益とは、「住宅ローンを分割で返済できる」という利益のことを指し、支払いが滞ることでその利益がなくなってしまうのです。

しかし、毎月の返済が滞っているなかで一括返済できる可能性は低いので、多くは期限の利益が喪失されると保証会社が一括返済を行い、債権者が金融機関から保証会社へと移り変わることになります。そのため、その後は新しい債権者である保証会社に対して住宅ローンの残債を支払わなければなりません。

なお、債権者が保証会社に変わったとしても、借入額を一括で請求される場合が一般的です。ただし、現実的に支払えない状態であることがほとんどであるため、保証会社のなかには期間猶予や分割払いなどの相談に乗ってもらえるケースもあります。

催告書を開ける女性

その後も延滞すると「競売」にかけられる

期限の利益が喪失され、一括返済にも応じられないと「催告書」という最終通告が届きます。催告書には、金額と支払い期限、支払いが確認できない場合は法的手続きに移行する旨が記載されているのが一般的です。もし記載通りに入金できなかった場合、家が競売にかけられます。

競売とは、裁判所による強制的な売却のことです。「約束のお金を支払ってもらいたい」と金融機関が裁判所に申し立てをし、裁判所がそれを受理すると、競り売りの形で売却が行われます。競売にかけられると家は差し押さえられ、債務者は立ち退かなければなりません。そのうえ、競売の売却益を充ててもローン残債が返済しきれない場合は、自己破産することになります。

自己破産とは、裁判所に破産申立書を提出して免責許可をもらうと、ほぼ全ての債務が免除されるというものです。自己破産すると返済の請求はなくなりますが、代わりにクレジットカードやローンを5年以上利用できなくなったり、財産を処分しなければならなかったりといった制限をかけられます。

なお、連帯保証人がいる場合、連帯保証人にも返済の請求が求められます。連帯保証人も債務者と同じく、住宅ローンを返済する義務を負っているため、連帯保証人の資産も差し押さえの対象となり、最悪の場合は連帯保証人の家まで競売にかけられることもあるので注意が必要です。

このように、住宅ローンの支払いが滞ると連帯保証人にも迷惑がかかるので、延滞が続く場合は、連帯保証人も含めて今後どのように返済していくかを早めに話し合いましょう。

●自己破産についての法律(破産法)はこちら
法令検索 | 平成十六年法律第七十五号 破産法

住宅ローンの支払いが困難な場合の対処法

住宅ローンの支払いが滞ると、最悪の場合は競売にかけられ、自分の家から強制的に追い出されることになってしまいます。そのような事態を避けるには、早急かつ適切な対処が必要です。

ここでは、まだ住宅ローンを延滞していない場合の対処法をお伝えします。この先の支払いの見通しは立たないものの、まだ延滞をしていないという場合は、以下の対処法を検討してみましょう。

ローンの返済プランと家計を見直す

住宅ローンを支払う見通しが立たない場合は、返済プランを再検討しましょう。住宅ローンを借りている金融機関に、一定期間の返済猶予や返済期間の延長を相談したり、より金利の低い金融機関への借り換えを検討したりすることで月々の負担を軽減できるかもしれません。また、同時に家計の見直しも行い、無駄な出費がないかどうかチェックしましょう。

住宅ローン借り換えのパンフレット

保険の保障範囲を確認する

住宅ローンを組んだ際に加入する団体信用生命保険は、特約によって疾病時に住宅ローン残債が保障されるケースもあります。保障される病気の種類や金額は契約によって異なりますが、なかには入院一時金の給付もあるので、契約しているプランの保障内容を確認してみましょう。

●団体信用生命保険について詳しくはこちら
住宅金融支援機構 | 機構団体信用生命保険特約制度のご案内

家を売却する

住宅ローン返済プランの再検討ができなかった、もしくは再検討をしても支払いのめどが立たなかったということであれば、家の売却を検討してみてもよいでしょう。家の売却代金よりローンの残高が少ないなら、家を売却することで住宅ローンを完済できます

家の売却を検討する場合は、まず不動産会社に物件の査定をしてもらい、家の売却価格を試算しましょう。三井のリハウスでは100万件を超える取引実績を生かした査定を行っており、高精度な査定が可能です。無料で査定を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

●査定のお申し込みはこちらから

競売物件と赤鉛筆

既に住宅ローンを延滞している場合の対処法

現在、既に住宅ローンを滞納していて返済する資金の当てがない場合、早急に対処する必要があります。ローンの返済のためには以下の対処法を検討しましょう。

任意売却する

任意売却とは、住宅ローンを借りている金融機関の合意を得て、ローン残債がある家を売る方法です。住宅ローンを利用して購入した不動産には、その不動産を担保にできる抵当権が債権者によって設定されており、ローンを完済して抵当権を抹消できなければ不動産を売却することはできません。

一般的には家を売却して得たお金で住宅ローンを完済しますが、住宅ローンの残債が売却代金を上回る場合は、家を売っても残債を払いきれず、抵当権を解除できないという問題が起きてしまいます。

このようなときに金融機関の同意のもと、住宅ローンを完済できない家の抵当権を解除してもらい家を売却する方法が任意売却です。任意売却は、競売と違い市場価格に近い価格での売却が可能となります。また、売却代金の配分を金融機関と相談できるので、交渉次第では引越し費用を捻出できる可能性があるといったメリットもありますが、任意売却をしてしまうと信用情報に登録されてしまうため、慎重に検討しましょう。

●任意売却に関する記事はこちら
任意売却とは?住宅ローンの支払いが厳しくなったら知っておくべき基礎知識を解説

リースバックで家を売却する

リースバックとは、家を買い取ってくれるリースバック業者や不動産会社と賃貸契約を結ぶ方法です。この方法なら、リースバック事業者に家賃を払って元の家に住み続けることができます。また、リースバックの場合は家を買い戻せることもあります。

注意点は、リースバック方式で不動産を売却する場合、通常の仲介による売却と比べて売却価格が安くなる場合がある点です。

●リースバックに関する記事はこちら
住まいのリースバックとは?メリットやよくあるトラブルへの対策を解説

裁判に使うハンマー

シニア世代となり住宅ローンが厳しくなった場合の対処法

定年を迎えて収入が低下したために住宅ローンの支払いが滞っている場合は、「リバースモーゲージ」を利用して毎月の返済額を減らす方法があります。リバースモーゲージとは、自宅に住みながら、その家を担保にして老後の資金を借りられるシニア向けのサービスで、対象年齢の多くは55歳から、あるいは60歳から80歳までです。

住宅ローンの残債がある場合、まずリバースモーゲージに借り換えを行います。毎月の生活費の融資、もしくは一括で融資を受け、借入期間中は毎月、利子だけを支払います。利子を支払うだけですから、毎月の返済負担が軽減されるでしょう。そして、契約者が死亡すると契約が終了し、その時点で担保の家が売却されて、元金が一括返済されます。

リバースモーゲージは家を担保に資金を借り入れするサービスなので、慎重な検討が必要です。最終的な判断は、不動産会社やファイナンシャルプランナーといった専門家に相談してからにすることをおすすめします。

住居確保給付金の申請書と家の模型

住宅ローンが払えない場合の注意点

住宅ローンが払えない場合、やみくもに新たな借り入れを行うことは避け、早めに金融機関に相談しましょう。実際、キャッシングやカードローンで住宅ローンの支払いをすると、金利が高いため利息が膨らんでしまいます。これにより返済がより困難になる可能性が高まり、自己破産のリスクが伴うでしょう。さらに、今後住宅ローンの借り換えを行う際に、キャッシングやカードローンの利用履歴があると、審査に通りにくくなってしまうため注意が必要です。

また、住宅ローンが支払えなくなったからといって夜逃げすることもやめておきましょう。夜逃げした場合でも競売は実行され、借金は引き続き残ります。夜逃げとは違い、「任意売却」や「自己破産」などは残債の圧縮や免責が可能となるため、それらの選択肢を検討しましょう。

住宅ローンについて相談している男性と営業担当者

住宅ローンが払えなくなる前に金融機関に相談を!

「住宅ローンの支払いが滞るかもしれない」と思ったときは、督促状が来る前に金融機関(銀行)に相談することが大切です。住宅ローンの返済は、家計全般や人生設計に大きな影響を及ぼします。今後の生活を見据えたお金の見直しをするならば、ファイナンシャルプランナーに相談するのもよいでしょう。ファイナンシャルプランナーは、住宅ローンの返済を含めて、総合的な家計の見直しについてアドバイスしてくれますよ。

また住宅ローンの滞納でお困りの場合は、先述の通り自宅の売却も選択肢の1つです。まずは査定を受けて、売却代金で住宅ローンの残債を返済できるかどうか確かめてみるのはいかがでしょうか?

三井のリハウスでは無料査定を受け付けています。売却を検討している方や、査定額を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。

●査定のお申し込みはこちら

●自宅の売却を検討中の方はこちら

村田洋一

らくだ不動産 不動産コンサルタント。宅地建物取引士、行政書士。消費者にとっての最良の不動産取引を目指し、多岐にわたる不動産トラブルの相談を受ける。
https://www.rakuda-f.com/