登記費用の相場はいくら?不動産登記を自分でするときのポイントや節約方法も解説

登記費用は不動産の相続や売買のときに発生し、その内訳は主に登録免許税と司法書士への報酬です。登録免許税の額は売買、相続など登記の理由によって異なります。今回はそれぞれの状況ごとに費用がいくらかかるかについて解説します。

目次
  1. 登記費用は種類ごとに異なる
  2. 登記にかかる費用と軽減措置
  3. 専門家に登記を依頼する場合の費用相場
  4. 不動産登記費用を安く抑えるには?
記事カテゴリ 売却 購入 シニア
2023.10.11

登記費用は種類ごとに異なる

不動産の売買や相続などで名義変更がある場合には「不動産登記」を行います。不動産登記とは不動産の住所、面積、建物の構造といった物理的な状況と、抵当権や所有権などの権利関係を明確にするものです。この不動産登記制度があることで所有権の証明ができ、安心して不動産取引が行えます。不動産登記にはいくつか種類があるため、売却、相続、購入などの状況に応じた登記が必要です。

ちなみに登記を行うと、法務局が管理する登記の記録がまとめられた台帳である登記簿や、電子化された登記記録に記されます。こちらは手数料を払うことで誰でも閲覧することが可能です。

まずは、不動産登記の種類についてご紹介していきます。

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一般財団法人民事法務協会 | 登記情報提供サービス

所有権保存登記

所有権保存登記とは、まだ誰のものでもない不動産の所有権を最初に取得した際に行う登記です。主に新築の一戸建てやマンション、以前の所有者が所有権の登記をしていない土地や建物などへの登記が挙げられます。

建物表題登記

建物表題登記とは建物を新築した際に行う登記です。建物の登記記録の「表題部」に不動産の物理的状況が記録されます。この登記は建物が完成してから1か月以内に行わなくてはならないといった義務があります。

所有権保存登記は所有者を登記するものであるのに対し、建物表題登記は建物の存在を登記するものです。そのため、住宅を新築した際には、所有権保存登記と建物表題登記の両方が必要になります。

家の雑貨

所有権移転登記

所有権移転登記とは、売買、贈与、相続などの理由で不動産の所有者が変わった際に行う登記です。たとえば中古住宅の購入時には、建物と土地、それぞれの所有権移転登記を行う必要があります。「土地は第三者からの譲渡、建物自体は新品」といった新築住宅の場合には、土地は所有権移転登記を、建物は所有権保存登記をそれぞれ行います。

抵当権設定登記・抵当権抹消登記

抵当権設定登記は、住宅ローンを利用する際に必要な登記です。抵当権というのは、住宅ローンの返済が滞った際に、金融機関が不動産を差し押さえて優先的に金銭を回収できる権利のことです。この権利を明確にするのが、抵当権設定登記になります。住宅ローンを完済した際は抵当権を外すため、抵当権抹消登記の申請を行う必要があります。

住宅の置物

そのほかの登記

上記でご紹介した登記以外にも、不動産登記には以下のような種類があります。

住所の変更登記不動産所有者の住所を変更する登記
土地分筆登記1つの土地を複数の土地に分ける登記
土地合筆登記複数の土地を1つ(一筆)にまとめる登記
土地地目変更登記その土地の用途を変更するときに必要な登記
建物滅失登記建物を取り壊したときに必要な登記

登記費用は高額になる場合もあるため、不動産の売却や譲渡、購入を検討中の方や相続の予定がある方はかかる費用を先に確認しておくとよいでしょう。次は登記にかかる費用について解説していきます。

登記にかかる費用と軽減措置

不動産登記には主に登録免許税や司法書士報酬に加え、住民票や登記簿謄本といった登記に必要な書類を発行するための登記手数料が発生します。司法書士報酬は、司法書士を介して登記手続きを進めた場合のみ発生するので、自分で登記手続きを行う場合は不要です。

登録免許税は、登記手続きを自分で行うか、司法書士に依頼するかにかかわらず必ず発生し、登録免許税の税率は、状況によって変動します。ここからは、登録免許税とはどのような税金で、税額がそれぞれどのように変わるのかについて見ていきましょう。

ペンと電卓

登録免許税とは

登録免許税とは、「登記や登録等を受ける者」が納める税金です。課税標準額に税率をかけて算出されるもので、登記権利者が国に支払います。この税金の税額は、原則以下の計算式で求められます。

登録免許税額 = 課税標準額 × 税率

ここでの課税標準額は、固定資産税評価額が台帳に記載されている場合、その価格が課税標準額となります。固定資産税評価額とは、固定資産税の基準として固定資産課税台帳に登録された価格のことで、各自治体によってそれぞれ定められています。固定資産税評価額の目安として、土地は地価公示価格の70%、建物は再建築価格の50~70%になります。

固定資産税評価額がまだ存在しない新築の建物については、建物の構造別や用途別に、各法務局が設定している価格になります。

電卓や小銭

税率と軽減措置

居住用住宅には、2024年3月31日まで登録免許税の軽減税率が適用される登記があります。居住用住宅で軽減税率が適用されるのは、所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記の3つです。

軽減税率の適用を受けるためには、住宅用家屋証明書を交付してもらう必要があります。住宅用家屋証明書は、住宅の所在する市町村で交付してもらえますが、住宅用家屋証明書をもらうためには、いくつかの条件が必要です。主な条件は、以下の通りになります。

・居住用の家であること
・新耐震基準に適合していること
・床面積が50㎡以上であること
・新築後または取得後1年以内に登記を受けるものであること

軽減税率を含めた各登記にかかる税率は以下の通りになります。

名称タイミング課税標準額税率
所有権保存登記新築建物購入時法務局認定価格1,000分の4
(2024年3月31日までに取得した場合は軽減税率で1,000分の1.5)
所有権移転登記土地購入時固定資産税評価額1,000分の20
(2026年3月31日までに取得した場合は軽減税率で1,000分の15)
中古建物購入時固定資産税評価額1,000分の20
(2024年3月31日までに取得した場合は軽減税率で1,000分の3)
相続時固定資産税評価額1,000分の4
抵当権設定登記ローンを借り入れての土地・建物購入時債権金額1,000分の4
(2024年3月31日までに融資を受ける場合は軽減税率で1,000分の1)

また、長期優良住宅と認定された住宅は、登録免許税に関してより優遇された軽減措置を受けることが可能です。長期優良住宅とは、耐震性や居住環境、省エネルギー性などいくつかの要件を満たし、長期に渡って安心して住むことができる住宅のことです。長期優良住宅同様、認定低炭素住宅と呼ばれる二酸化炭素排出に対策が講じられた住宅も、優遇された軽減措置が適用されます。

たとえば、長期優良住宅に認定されたマンションや、認定低炭素住宅に認定された住宅の所有権保存登記にかかる登録免許税の税率は、2024年3月31日までは1000分の1まで軽減されます。

登記の種類ごとの税率や軽減措置についての詳細は、以下のリンクをご覧ください。

●登録免許税についての詳細はこちら
不動産購入時の税金

●登録免許税の税額の詳細はこちら
国税庁 | No.7191 登録免許税の税額表

専門家に登記を依頼する場合の費用相場

不動産登記は自分で行うことも可能ではありますが、手続きが複雑で、深い知識や理解を必要とするため、司法書士に任せる方もいます。自分で不動産登記を行おうとすると、多くの時間を要したり、書類の記入を間違えたりするリスクもあるため、迅速さや安全さを優先するなら司法書士に依頼をするのがおすすめです。

さらに、一戸建てや土地の登記を行う場合は、別で土地家屋調査士にも調査を依頼する必要があります。土地家屋調査士とは、一戸建てや土地の不動産登記に必要な情報の調査や測量、その結果を踏まえた登記申請手続きの代理を行う専門家です。

では、司法書士と土地家屋調査士それぞれに登記を依頼する際の費用相場を見ていきましょう。

TAXと書かれた積み木

司法書士の報酬

司法書士への報酬額は司法書士が自由に決めることができるため、依頼する司法書士によって金額は大きく異なります。報酬の相場は1万~10万円程度ともいわれていますが、依頼する前にどのくらいの金額がかかるのか見積もりを立ててもらうことが大切です。

報酬とは別途に、登録免許税や、不動産登記手続きの書類代、交通費といった諸費用を実費として支払う必要もあります。トータルでかかる金額を計算すると、かなり高額になるため、複数の司法書士に相談して比較するとよいでしょう。

土地家屋調査士への報酬

登記の申請書は、住所、面積等の物理的状況を記載した「表題部」と、所有権、抵当権を記載した「権利部」に分かれています。権利部を司法書士が対応し、表題部は土地家屋調査士が担当することが一般的です。

土地家屋調査士への報酬額は、どの登記を行うかによって大きく異なります。そのため、専門家に自身の家の売却に必要な登記はいくらかかるのかを事前に聞いておくとよいでしょう。

不動産登記費用を安く抑えるには?

不動産取引における費用はできるだけ抑えたいものですよね。ここでは不動産登記にかかる費用を抑える方法についてお伝えします。

印を押す人

自分で登記を行う

不動産登記を自分で行えば、専門家への報酬が発生しないため登記にかかる費用を抑えられます。ただし、この場合、自身で書類の収集から記入までを行うといった手間が発生します。これらの作業は、不慣れであると時間がかかったり、スムーズにいかなかったりするものです。そのため、費用はかかりますが、手間や時間を省きたい方は司法書士に依頼して登記を進めるのがよいでしょう。

司法書士事務所を比較する

司法書士に依頼をする際は、相場を把握するためにも最初から1社に絞らず、複数の司法書士事務所で費用の見積もりを出してもらいましょう

登記は複雑で、なおかつお金がかかるものです。不動産の売却や購入を行う際には、登記に多額の費用が必要なことをあらかじめ把握し、資金計画を立てておきましょう。売却や購入、相続といったシーン別の登記の詳細については、以下の記事よりチェックしてくださいね。

●所有権移転登記にかかる費用に関する記事はこちら
所有権移転登記とは?費用や必要書類、手続き方法を解説

●抵当権抹消登記を自分で行う方法に関する記事はこちら
抵当権抹消手続きを自分で行う方法を4つのステップで解説!

●相続登記の手続きに関する記事はこちら
相続登記とは?必要性や自分で申請する手続きの流れについて

登記が必要な一戸建て

ここまで登記の種類や費用、軽減措置などについて解説してきました。不動産の売却を検討している方のなかには、登記費用を含め諸費用について心配な方もいるのではないでしょうか?そのような方は、まず売却したい物件の査定を行い、どれくらいの収益が得られそうかをある程度、把握し資金計画を立てることをおすすめします。

三井のリハウスでは、AI査定や簡易査定、訪問査定といった無料査定を行っています。売却のサポートも行っていますので、不動産売却をお考えの方は、お気軽にお問い合わせくださいね。

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監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
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