住宅ローンの借り換えでよくある失敗例とは?成功しやすい条件や注意点も解説

住宅ローンの返済負担を抑える手段の1つが借り換えですが、あらかじめ対策しておかないと失敗してしまうことがあります。そこで今回は、住宅ローンの借り換えでよくある失敗例と対策、成功しやすい条件など、借り換えの前に知っておきたいポイントについて解説します。

目次
  1. 住宅ローンを借り換えるときはここに気を付けよう!
  2. 借り換えで起きやすい失敗と対策
  3. 借り換えが成功しやすい条件
  4. 借り換えのメリットと注意点
  5. ポイントを押さえて住宅ローンを借り換えよう
記事カテゴリ 売却 購入 ローン
2023.06.09

住宅ローンを借り換えるときはここに気を付けよう!

住宅ローンの借り換えとは、既に契約している住宅ローンから別の住宅ローンに切り替えることをいい、返済負担を抑えたいときに検討される手段の1つです。

住宅ローンを利用して新居を購入した方のなかには、「契約した当初よりも金利の相場が低くなっている」「金利の固定期間がそろそろ終わるため金利が上がるかもしれない」といった理由で、住宅ローンの借り換えを検討している方もいるのではないでしょうか?

しかし、借り換えに失敗すると、返済負担を抑える効果があまり発揮されません。住宅ローンの借り換えを考える際は、以下の3つのポイントを押さえておくと失敗を防げる可能性があります。

[ 1 ] 借り換えにかかる総費用を考える
[ 2 ] 借り換えの審査は厳しい傾向がある
[ 3 ] 借り換えで得するケースを知っておく

この記事では、住宅ローンの借り換えでよくある失敗例や成功しやすい条件、借り換えのメリットや注意点を解説します。後悔のない借り換えを行うために、あらかじめポイントを押さえておきましょう。

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借り換えで起きやすい失敗と対策

住宅ローンの借り換えの失敗を防ぐには、あらかじめ失敗例を知っておくことが役立ちます。ここでは、借り換えの過程で起こりやすい失敗例を、対策と併せてご紹介します。

審査に落ちてしまった

住宅ローンを借り換えるときの審査は、新規で借り入れるときよりも厳しい傾向にあります。なぜなら、初回の借入時よりも年齢が上がっていたり、申込者の健康状態が悪化していたりすることがあるためです。金融機関には完済時の年齢の目安(多くが80歳未満)があり、年齢が上がることで長期の住宅ローンが組めなくなることがあります。たとえば、30歳なら35年ローンは組めますが、50歳では35年ローンは組めないといったケースがあるのです。

これらの理由から、新規で住宅ローンを借り入れできたとしても、借り換え時も同じように審査が通るとは限りません。そのため、審査でよく見られるポイントについてあらかじめ押さえておくとよいでしょう。

たとえば、「過去に住宅ローン以外の借り入れがないか」「住宅ローンやそれ以外のローンの滞納履歴がないか」について確認しておきましょう。クレジットカードや自動車ローンなどの支払いが滞ると個人情報機関に延滞履歴が登録され、借り換えの際の審査に影響を及ぼすことがあります。

また、「年収減少や非正規雇用により、返済能力が低下していないか」も審査基準のポイントです。上記でもお伝えしたように、完済時の年齢が高過ぎる場合も、非正規雇用による年収の減少や健康状態の悪化が危惧されるため、借り換え審査が難しくなります。前述した内容については各金融機関によって判断基準が異なるため、審査に落ちるリスクをあらかじめ考慮し、複数の金融機関の審査を受けるのが望ましいでしょう。

札束と住宅模型

負担額が増えてしまった

借り換えの際の比較検討が十分でなかったために、結果的に負担額が増えてしまうことがあります。住宅ローンを借り換える際は、現在借りている住宅ローンを全額繰り上げ返済したり、新しい住宅ローン契約のための事務処理をしたりする必要があり、それぞれの手続きに費用がかかります。

手数料は金融機関やプランごとに異なるため、住宅ローンの借り換えを検討している場合は、金利だけではなく、手数料を含めた諸費用の総額で比較するとよいでしょう。

金利の選択を誤った

住宅ローンの借り換えをする際は、できるだけ金利の低い金融機関を選び、毎月のローン返済額や返済期間を少なくすることに関心が向かいがちですが、金利のタイプにも注意しておくとよいでしょう。金利タイプには、固定金利と変動金利の2つがあります。

固定金利は金利が固定されているため、金利が低いタイミングで借り換えを行えば、その後金利が上昇しても返済額が増えないことが特徴です。また、固定されていることにより資金計画が立てやすいというのも大きな魅力です。

ただし、固定金利を利用している期間に住宅ローンの金利が下がった際には、相場以上の額を支払うことになり、損をする可能性があるので注意しましょう。また固定金利の場合、固定される金利は毎月少しずつ変動します。そのため、借り換え検討段階から契約まで時間が空くと、想定していた金利よりも実際に契約する際の金利が高くなる恐れがあるのでこちらも注意が必要です。

変動金利は現在、多くの人が利用しており、固定金利よりも金利が低く設定されていた場合、金利による支出を抑えられます。毎月の返済額を減らせるので、低金利を考慮して利息を抑えたいと考えている方にはおすすめです。

しかし変動金利の場合、いつ金利が上がるか分からず、上昇した場合は毎月の返済額が増えるため、あらかじめ自己資金に余裕を持たせておくことが必要です。

通帳を見る女性

なお、多くの金融機関では変動金利の均等返済の返済額を5年ごとに見直し、金利が上昇したとしても従前の返済額の125%以上にならないという「125%ルール」を採用しています。これは、毎月の返済額が金利の上昇によって大幅に変わらないよう、家計への影響を抑えるための配慮です。

よって、変動金利を選択する場合は金利上昇に備え、返済額の25%以上を毎月貯蓄できるかを目安にするとよいでしょう。ルールにより金利は125%以上にはならないので、25%以上の貯蓄が毎月できていれば、金利が上昇した場合でも問題なく支払いができて安心です。

借り換えが成功しやすい条件

借り換えでよくある失敗例の次は、成功につながりやすい条件についてもご紹介しましょう。以下の条件を知っておくことで、借り換えの検討に役立てることができますよ。ちなみに、住宅ローンの借り換えにより合計の返済額を抑えられるかどうかについては、金利が軽減される費用と諸費用から計算して求める必要があります。

[ 1 ] 返済期間が10年以上ある

今のローンで残っている返済期間が長ければ長いほど、借り換えで金利を下げたときの効果が大きくなります。効果が出る目安としては、残っている期間が10年以上とされています。元利均等返済の場合、返済期間が10年未満となると、返済額に占める元金部分の割合が大きくなってしまいます。その場合、借り換えによる金利圧縮のメリットはほとんどないため、そのまま返済したほうが得になるケースも珍しくありません。

虫メガネと電卓

[ 2 ] 残債が1,000万円以上ある

残債とは、返済が完了していない借入金の残額のことを指します。残債が多く、返済期間が長いほど、金利による出費が多くなるため、一般的に残債が1,000万円以上ある方は住宅ローンの借り換えがプラスに働く可能性が高いといえます。

一方、残債が1,000万円以下の場合には、元本が少ないため諸費用も含めて考慮すると借り換えのメリットはほとんど出てこない傾向にあります。このような方は、借り換えではなく今の銀行と交渉して金利を下げてみるといった対応も1つの手でしょう。

[ 3 ] 借り換えると金利が1%以上低くなる

住宅ローンの残債が多い場合は、現在借り入れしている住宅ローンの金利と借り換え後の金利差が年1%低くなると、借り換えをするメリットが出てくることが多くなります。現在の金利が高く、残債も多く、返済期間が長い方ほど借り換えのメリットが出てきますので、積極的に検討してみてください。

借り換えのメリットと注意点

住宅ローンの借り換えには、そもそもどういったメリットがあるのでしょうか?改めて住宅ローンの借り換えが持つメリットと注意点について説明します。

電卓と現金と家の模型

住宅ローンを借り換えるメリット

住宅ローンの借り換えを行う際のメリットについては、主に以下の4つが考えられます。

●返済額を抑えられる可能性がある
現在契約している住宅ローンよりも金利が低いものを選ぶことで、利子を抑えて月々の支払い額を少なくすることができます。借り換えにより発生する諸費用と併せて検討する必要がありますが、住宅ローンの借り換えによって利子を軽減できる効果があるといえます。

●返済期間を変えられる
借り換えをすることで、金利の見直しと同時に返済期間を変更することも可能です。たとえば、返済期間を短縮することで、利子の支払い総額を抑えることができます。また、返済期間を長くして毎月の返済額の軽減やボーナス払いの解消などもできます。

●保険を充実させられる
住宅ローンを契約する際は「団体信用生命保険」(団信)に入ることになります。借り換えで新しい団信に加入することで、カバーされる疾病やサービスのバリエーションのアップデートにつながる可能性があるでしょう。

●返済計画を立てやすくなる場合がある
借り換えの際に変動金利から固定金利へ変更すれば、月々の返済額が固定されるため、返済計画を立てやすくなります。

RISKと書かれた積み木と家の模型と小銭

住宅ローンを借り換える際の注意点

住宅ローンの借り換えにはさまざまなメリットがある一方、リスクもあるため慎重に判断することが大切です。ここからは、借り換えの注意点について解説します。

●諸費用がかかる
借り換えを行う際は、諸費用が発生します。主に、事務手数料、保証料、団体信用生命保険料、印紙税や登録免許税などが諸費用に該当し、借り入れの金額にもよりますが、総額で30万円程度は見ておく必要があります。そのため、借り換えにかかる諸費用の額を考慮してでも借り換えを行う必要があるのかを再度確認しましょう。

●審査が厳しい傾向にある
住宅ローンの審査で落とされる場合の明確な理由について、金融機関は開示しません。しかし、審査が通らない人の主な特徴には「本人の収入が下がっている」ことや「加齢により契約者の健康状態が悪化している恐れがある」などが挙げられます。新規の借り入れではなく借り換えでは、こうした特徴に該当するケースが多いことから、金融機関の審査は厳しい傾向です。

そのため、借り換えを検討する際は、借り換え先の候補をいくつか考え、複数の金融機関へ事前審査を受けるようにしておくとよいでしょう。

●住宅ローンの審査基準に関する記事はこちら
住宅ローンの審査基準とは?対策を詳しく解説!

●控除の対象から外れることがある
一定の要件を満たした住宅を購入すると、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けることができます。この控除を利用するには、新しく借り入れる住宅ローンの返済期間が10年以上でなくてはならないという条件があります。(ただし、借り換えによって従前の住宅ローン控除の期間が延長されることはありません。)※そのため、該当の住宅を所有していても、借り換えの結果、新しい住宅ローンの返済期間が10年未満になってしまうと利用することができなくなります。

控除の詳しい条件は、国税庁のホームページをご確認ください。

●住宅ローン控除に関する記事はこちら
住宅ローン控除はいつまで利用できる?最新情報もご紹介

家計簿を付けている女性

ポイントを押さえて住宅ローンを借り換えよう

住宅ローンの返済期間は長く、トータルの費用で考えると、金利の負担は見過ごすことができません。そのため、金利による出費を少しでも軽減したいと思い、借り換えを検討する方も多いでしょう。

しかし、金利が低くなるローンに借り換えたからといって、必ずしも得をするとは限りません。諸費用の発生、住宅ローン控除の条件による制約など、考慮しなければならないことは数多くあります。仮に借り換えを希望した場合も、審査に落ち、借り換えができないケースも考えられるでしょう。

住宅ローンの借り換えを検討している方は、初期費用を準備できるかどうか、完済時の年齢は高過ぎないか、固定金利か変動金利かなどを十分に検討し、かつ余裕を持った資金計画を立てて、納得できる借り換えを目指しましょう。

借り換えを行っても、住宅ローンの返済が難しい場合には、自宅を売却することで一括返済が可能です。その場合には、まずは不動産会社の無料査定を受けてみましょう。

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●家の売却に関する記事はこちら
【家の売却ガイド】初めて不動産を売る人向けの基礎知識

※出典:国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1233.htm
(最終確認:2023年5月24日)

不動産鑑定士 竹内英二

株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
https://grow-profit.net/