親の家を売る方法は?税金や、売却の流れ、注意点も解説

親の家を売るときは、売却方法や必要な税金について事前にしっかりと把握しておきましょう。この記事では、実家を売る流れに加えて、その際にかかる税金や注意点などを分かりやすく解説していきます。

目次
  1. 親の家を売る方法は?
  2. 親の家を売る方法は状況によって異なる
  3. 親の家を売る際にかかる税金
  4. 親の家を売る際の注意点
  5. 親の家を売るときは不動産売却のプロに相談しよう
記事カテゴリ 売却 マンション 一戸建て
2024.01.18

親の家を売る方法は?

「親が介護施設に入居した」「親が亡くなった」などの理由で、親の家を売らなければならない機会は突然訪れます。「親が認知症になって意思の疎通ができない場合、家を売ることはできるのだろうか?」「親が突然亡くなったとき、どのように家を処分すればよいのだろう?」などと不安な方もいるのではないでしょうか?

この記事では、親の家を売る方法や売却の際にかかる税金、注意点やコツを解説します。まずは家を売る方法について、一緒に見ていきましょう。

相続を示す家系図と人の模型

親の家を売る方法は状況によって異なる

親の家を売る場合、親と適切な意思疎通が図れるかどうかで売却方法が異なります。意思疎通が可能かどうかが家の売却にどう影響するのか、以下で詳しくご紹介します。

適切な意思疎通が可能な場合

自身の親が病気や高齢などによって十分な売却活動が行えないものの、意思疎通ができる場合、子どもが代理人となって親の家を売ることができます。その際には所有者である親の同意が必要であり、手続きを子に委任するという旨の委任状を作成することで、子が代理人となり、売却が可能です。委任状は法的効力が発生するものであるため、認知症やうつ病などにより親に合理的な判断ができないと認められた場合は、委任状を作成することができません。

委任状には決まった書式はありませんが、以下の内容は含めて作成する必要があります。

・売却物件の詳細
・売却条件
・委任状の有効期限
・委任の範囲
・委任者・代理人の氏名・住所、実印

状況によって記載するべき委任状の内容が多少異なる場合があるので、売却の際には、不動産会社や弁護士などに相談して作成するのがよいでしょう。

なお、委任状を作成して親の家を売り、譲渡所得が発生すると確定申告が必要になります。この場合、確定申告は親が行うのですが、親の健康状態によっては確定申告を子どもが代わりに行なわなければならないこともあるので、必要書類を事前に確認しておくとよいでしょう。

親の家の模型とリスト

適切な意思疎通が難しい場合

親と適切な意思疎通ができない状況には、大きく分けて以下の2通りが考えられます。

・認知症やうつ病などで意思能力がないと認められる
・親が既に亡くなっている

意思能力がない

親が認知症やうつ病であると診断されると、民法上法的契約を結ぶことのできる意思能力(判断能力)がないと見なされ、その場合、結んだ契約は無効となります。そこで、意思能力がない当人に代わって、家の売却といった法律行為を行うことのできる制度が「成年後見制度」です。

成年後見制度において、成年後見人になるために必要な資格はありません。よって、親族ではなく、弁護士や司法書士、社会福祉士などの第三者の専門家が選任されることもあります。成年後見制度には、親の状況や委任される権限の幅に応じて「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があり、手続きも複雑です。詳しくは以下の記事をご参照ください。

●成年後見人制度について詳しくはこちら
成年後見人とは?成年後見制度の概要や後見人の職務について解説

親が既に亡くなっている

親が既に亡くなっていて、遺産相続で得た実家を売却するといった場合、相続登記をして家の名義を親から相続人に変更することで売却ができます。相続した不動産の名義変更を行う相続登記は、もともと任意のものでしたが、法改正が行われ、2024年4月1日からは3年以内の相続登記が義務化されました。なお、不動産を売却する際には基本的には名義を変更していないと行えないため、相続後は速やかに相続登記を行っておきましょう。

●相続登記の義務化について詳しくはこちら
相続登記の義務化とは?知っておきたいポイントや怠った場合のリスクについて解説

相続登記に至るプロセスは一般的に以下の3通りです。

・遺言による相続登記
・遺産分割協議による相続登記
・法定相続による相続登記

相続登記にまつわる書類作成は難易度が高い傾向にあります。相続人が複数いる場合や、相続人が兄弟や姪・甥などの場合、集めなければならない書類は膨大になり、工程はさらに複雑化します。相続登記にまつわる書類は自分で作成することも可能ですが、よりスムーズに手続きを進めるためにも、司法書士といった専門家に依頼することがおすすめです。

●相続登記について詳しくはこちら
相続登記とは?自分で行う流れや必要書類、申請にかかる費用も解説

親の家と人の模型

親の家を売る際にかかる税金

親の家を売る際にかかる可能性のある税金は以下の3つです。それぞれについて詳しく紹介します。また課税対象となる所得を控除するための特例も、後ほど併せて解説します。

・譲渡所得にかかる所得税と住民税
・印紙税
・登録免許税

譲渡所得にかかる所得税と住民税

家の売却金額が家の取得費や譲渡費用の合計より多い場合には、譲渡所得があると見なされ、譲渡所得税と呼ばれることもある、所得税と住民税が課税されます。なお、家を相続して売る場合も同様に、譲渡所得が発生すると上記税金が課税されます。

ただし、課税対象となる所得を控除する特例を活用することで、譲渡所得にかかる所得税や住民税を節税できる場合があります。「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が適用された場合、譲渡所得から最大で3,000万円の特別控除を受けることができます。

さらに相続税を支払って家を所有した後、3年以内に売却した場合は、「相続税の取得費加算」という特例も受けることができます。この場合、相続税額のうち一定の金額を譲渡資産の取得費に加算できるため節税につながります。控除の特例には適用期限や適用条件があるため、自分が相続した家が対象になるか、詳しくは国税庁のサイトを確認しましょう。

●譲渡所得の計算方法について詳しくはこちら

●被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例について詳しくはこちら
国税庁 | No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

●相続税の取得費加算について詳しくはこちら
国税庁 | No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

印紙税

家を売る際、契約書をはじめとする文書には、家の契約金額(売却金額)に応じて印紙税が課税されます。印紙税は、令和6年3月31日まで軽減税率が適用されており、具体的な税率は以下の通りです。

契約金額本則税率軽減税率
1,000万円を超え5,000万円以下のもの2万円1万円
5,000万円を超え1億円以下のもの6万円3万円
1億円を超え5億円以下のもの10万円6万円
5億円を超え10億円以下のもの20万円16万円

登録免許税

家を相続し、土地や建物の所有権を親の名義から相続人の名義に移転する際に、登記を行うと登録免許税がかかります。課税額の求め方は、不動産の価額 × 0.4%(本則)です。不動産の価額とは、市町村役場で管理している固定資産課税台帳に登録された価格、または台帳に登録価格がない場合、登記官が認定した価格のことを指します。

TAXの模型

親の家を売る際の注意点

家を売る際に特に注意するべきことは以下の2点です。

・家を売るタイミングを見極める
・家の状態を把握する

売却のタイミングを見極める

親が生きているうちに家を売って現金化し、死亡後に現金を相続するか、死亡後に家を相続して売却するかによって、相続税納税の有無や相続税額が異なる場合があります。というのも、不動産の相続税評価額は実際の取引価格(実勢価格)より低く算出されることが多く、そのため、家を売却して得た現金を相続する場合より、不動産を相続したほうが、相続税額は低くなる可能性が高いのです。

なお、相続税は、負債も含めた遺産総額から、基礎控除を差し引いた残りの額に課税されるものなので、遺産総額が基礎控除内に収まれば、相続税は発生しません。基礎控除は、「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数」で求めることができます。

家の状態を把握する

自分が親の家に住んでいない場合、家の老朽化の程度は把握しにくいでしょう。しかし、売却後、雨漏りやシロアリ被害など、売却時の契約書に記載のない欠陥が発覚した場合、契約の内容と不適合であったとして、契約不適合責任を問われる場合があります

そのようなトラブルを避けるためにも、不動産会社や専門家と相談して、家の状態をしっかりと把握しておくことが大切です。

親の家を売るときは不動産売却のプロに相談しよう

これまで、親の家を売る方法やその際にかかる税金、売却時の注意点などを解説してきました。親の家を売ったり相続したりする場合の手続きは非常に複雑であり、さまざまな書類を用意しなければならないこともあります。手続きに不安を感じる場合は、不動産売却のプロである不動産会社や専門家に依頼してみましょう。

三井のリハウスでは、100万件を超える豊富な売却実績から得た知見を生かし、売却のサポートを行っています。ある日突然やってくる親の家を売る機会に備えたい場合や、相続した家を売りたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
https://www.izumi-ohishi.co.jp/profile.html