相続登記の義務化が2024年4月1日から施行!対象や罰則まで解説

2024年4月1日から、不動産の相続登記の義務化が施行され、相続が分かった日から3年以内に申請しなければならなくなりました。今回は、相続登記が義務になった背景や罰則、手続きを簡素化する方法について解説します。

目次
  1. 相続登記とは
  2. 相続登記の義務化とは?
  3. 過去の相続も相続登記義務化の対象
  4. 相続登記の義務化における罰則
  5. 相続登記義務化の対象外になる正当な理由とは?
  6. 相続登記の流れと費用
  7. 相続登記を怠った場合のリスク
  8. 相続登記が簡素化?相続人申告登記について
  9. 不動産売却の前に相続登記を済ませよう!
2024.07.02

相続登記とは

相続した不動産(土地・建物)の手続きについて、「なぜ相続登記をしないといけないの?」「相続登記をしないとどのようなリスクがあるの?」などと疑問に思う方もいるのではないでしょうか?相続登記とは、不動産を相続した人が、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する手続きのことです。

●相続登記について詳しい記事はこちら

今回は、相続登記の義務化に至った背景や、義務化の対象となる不動産、義務を怠った場合の罰則まで詳しく解説します。

義務化された相続登記

相続登記の義務化とは?

不動産登記法の改正による、相続登記の義務化が施行されたことによって、不動産相続の開始および所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を行わなくてはなりません。よって、相続人が不動産を相続していたことを認識していない間は、相続登記の申請義務が発生しないことになります。また、遺産分割協議が行われた際は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記を行いましょう。

家を相続するイメージ

義務化は2024年4月1日から

相続登記は、これまで期限やルールが明確に定められておらず手続きは任意のものでしたが、法改正によって2024年(令和6年)4月1日から義務化されました。なお、手続きを怠ると罰則を受ける恐れがあります。

義務化の背景

相続登記が義務化された背景には、「所有者不明土地」の問題があります。所有者不明土地とは、登記簿で調べても所有者が分からない、または所有者と連絡が取れない土地のことです。

高齢化の加速に伴い所有者不明土地は年々増加し、そのような土地が長い間放置されると、周辺環境を悪化させたり、公共事業の妨げになったりするなど、さまざまな問題を引き起こしてしまいます。このような事情から、所有者不明土地を解消するため、相続登記は義務化されることになりました。

過去の相続も相続登記義務化の対象

相続登記の義務化は、2024年4月にスタートしましたが、それ以前に相続した不動産も相続登記の義務化の対象であることに注意が必要です。

過去に相続した不動産の相続登記の期限は、義務化の施行日(2024年4月1日)または、不動産の所有権を得たことを知った日のいずれか遅いほうから3年以内とされています。

過去分はいつの相続から?

相続登記の義務化では、過去全ての相続が対象になります。相続したのが随分前だとしても、法務省が認める正当な理由がない限り、相続登記をしなくてはなりません。

具体例

たとえば、施行以前から不動産を相続していることを知っていた場合には、施行日である2024年4月1日から3年以内の2027年4月1日までに相続登記を申請する必要があります。

対して、被相続人から伝えられていなかったという理由で、義務化施行後に不動産の相続を認知した場合は、初めて不動産の相続が分かった日から3年以内が申請期限となります。よって、2026年4月1日に相続を知った場合は、2029年4月1日までに申請しなくてはなりません。

相続登記の義務化が適用される不動産

相続登記の義務化における罰則

相続登記の義務化により、正当な理由がないにもかかわらず、相続登記を怠って3年が経過すると、法務局からの催告を受け10万円以下の過料が課せられます。過料は、行政上の秩序維持のための罰則のことで、刑罰とは違い刑法や刑事訴訟法は適用されず、前科は付きません。罰則の対象とならない正当な理由については以下で詳しく説明します。

なお、被相続人の財産を相続したくない場合、相続人は相続する権利を放棄する「相続放棄」を選択できますが、相続登記を行わないことを相続放棄と勘違いしている人もいるようです。実際は、相続登記を行わないことが相続放棄ではありません。そのため、相続で不動産を取得した場合は、必ず相続登記を済ませましょう。相続の権利を放棄したい場合は、相続権を得たことが分かった日から3か月以内に家庭裁判所に申請する必要があるためご注意ください。

●相続登記の義務を怠った場合の過料についてはこちら

義務化された相続登記について相談する様子

相続登記義務化の対象外になる正当な理由とは?

施行された相続登記の義務化について、期限内に相続登記を行わなくても罰則の適用を受けない「正当な理由」は以下の通りです。こちらは法務省によって定められており、以下の理由で申請できなかった場合は10万円の過料が科されることはありません。

・相続人が多く、書類の収集やほかの相続人の把握に時間を有する場合
・遺言の有効性や遺産の範囲などが相続人同士で争われており、不動産の権利所有者が明らかでない場合
・相続登記の申請義務を負う人に、重病やそれに準ずる理由がある場合
・相続登記等の申請義務を負う人が、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に規定する被害者に準ずる者であり、生命や心身に被害を受ける恐れがある場合
・相続登記の申請義務を負う人が経済的に困窮しており、費用を負担できない場合※1

また、上記以外にもそれぞれの具体的な理由を考慮し、法務局の登記官の判断により相続登記の申請期限を超えてしまうことが認められるケースもあります。

●相続登記義務化の対象外となる正当な理由についてはこちら

相続登記義務化の対象外になる正当な理由

相続登記の流れと費用

ここからは、相続登記の流れと費用について解説します。相続登記の申請には、複数の必要書類があるため、しっかりと確認しておきましょう。

流れ

相続登記の申請は、不動産の所在地を管轄している法務局で行います。相続登記のおおまかな手順は以下の通りです。

[ 1 ] 不動産の情報を収集する
[ 2 ] 相続人を確定する
[ 3 ] 必要書類を用意する
[ 4 ] 遺産分割協議書を作成する(必要な場合)
[ 5 ] 法務局へ申請する

なお、遺言書の有無によって相続登記申請の方法が一部異なります。相続登記をするにあたり、詳しい流れや、必要書類の取得方法については以下の記事をご覧ください。

●相続登記の流れに関する記事はこちら

●管轄の法務局のご案内はこちら

費用

相続登記にかかる費用は主に以下の2つです。

・登録免許税
・必要書類の取得にかかる費用

登録免許税とは、登記手続きをする際に国に納める税金のことです。相続登記にかかる登録免許税は、固定資産税評価額を使って以下のように計算します。

相続登記にかかる登録免許税 = 不動産の固定資産税評価額 × 税率(0.4%)

相続登記の際に必要な書類は主に以下の通りです。

・戸籍謄本
・除籍謄本
・登記事項証明書
・改製原戸籍謄本
・住民票
・住民票の除票
・固定資産評価証明書
・印鑑証明書

上記は、いずれも数百円で取得可能です。自治体によって金額が異なるため事前に確認しておきましょう。また、相続登記を司法書士に依頼する場合には、相続人の人数や事務所によって異なりますが、5万~15万円程度の司法書士報酬が発生します。相続登記は自分で申請することもできますが、手続きを急いでいる方や相続の権利関係が複雑な場合は、専門家に依頼することがおすすめです。

●固定資産税評価額に関する記事はこちら

●相続登記にかかる費用に関する記事はこちら

義務化された相続登記にかかる費用

相続登記を怠った場合のリスク

相続登記の義務を怠ったことによって起きるリスクは以下のものが考えられます。

・権利関係が複雑になる恐れがある
・不動産の売却が困難になる

権利関係が複雑になる恐れがある

長い期間、相続登記をせずにいると、ほかの相続人の死亡によって、その財産を引き継いだ次の相続人が複数発生するというように、相続人が増え、権利関係が複雑になる危険性が生じます。遺産分割協議での相続登記は、相続人全員の合意のもと協議を進めなくてはならないため、相続人の数が増えれば増えるほど、何らかの事情でほかの相続人と連絡が取れず、手続きが滞るといったケースも起こりやすくなります。

不動産の売却ができない

相続した不動産を売却する際、相続登記をして名義を変更していないと第三者に権利を主張できず、売却ができません。不動産の相続後、速やかに相続登記を行うことで、売却したいと思ったときにすぐ売りに出せます。

不動産の相続登記をしないと、このようなトラブルにつながるケースもあるため、不動産の所有権を相続で取得した際は必ず相続登記を行っておきましょう。

義務化された相続登記について考える人

相続登記が簡素化?相続人申告登記について

相続人申告登記とは、3年以内に相続登記を行えない場合に、相続登記の義務を履行できるようにする救済措置です。相続人の間で遺産分割協議がまとまらない、連絡が取れない相続人がいるといった場合の利用が想定されるでしょう。必要な戸籍を提出し、不動産を管轄する法務局に自らが相続人であることを申告することで義務を履行したことになり、罰則を免れます。

相続人申告登記は、相続人全員が申告をする必要があります。たとえば相続人が4人いる場合、3人が申告をすればその3人は義務を履行したことになりますが、残りの1人は履行したことになりません。また、相続人申告登記は相続登記の義務を履行するための制度であり、相続登記自体が完了するわけではないことに注意が必要です。相続した不動産を売却したい場合は、改めて相続登記の申請が必要です。

●相続人申告登記についてはこちら

相続登記の義務化を簡素化する方法

不動産売却の前に相続登記を済ませよう!

ここまで、相続登記が義務化される背景や怠った場合の罰則、義務の対象外になる正当な理由などを解説してきました。これまで任意であった相続登記は、2024年4月1日以降義務化され、登記しないと罰則を受ける、不動産の売却が困難になるなど、さまざまなリスクがあります。

そしてご紹介した通り、相続した不動産は相続登記を済ませないと売却できないため、売却を検討している方はまず相続登記手続きを行いましょう。相続登記を済ませたら、不動産会社に査定を依頼し、売却の計画を立てることが可能です。三井のリハウスでは、不動産の無料査定を行っております。経験と知識が豊富な担当者が、不動産売却をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

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※1出典:民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(相続登記等の申請義務化関係),法務省
https://www.moj.go.jp/content/001402460.pdf
(最終確認:2024年6月13日)

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/