差し押さえとは?対象となる財産や流れも解説!

税金やクレジットカード、住宅ローンの支払いなどが滞っていると、債権者がその金額を徴収するために「差し押さえ」を行います。今回は、差し押さえになる原因や流れ、回避する方法などをご紹介します。

目次
  1. 差し押さえとは?
  2. 差し押さえになる原因は?
  3. 差し押さえの流れは?
  4. 差し押さえの対象となるものは?
  5. 差し押さえの対象とならないものは?
  6. 差し押さえを回避する方法は?
  7. 早めの対処をしよう!
記事カテゴリ 売却 ローン
2022.08.30

差し押さえとは?

「差し押さえ」という言葉を、一度は聞いたことがある人は多いと思います。ですが、なんとなく意味は分かっていても詳しいことは知らないという人もいるのではないでしょうか?

差し押さえとは、借金や税金、保険料などの支払いを怠っている債務者に対し、金融機関や国などの債権者がその支払い金の徴収を図るための手段です。
たとえば、借金の返済を滞納し続けている人に対して、自動車やブランド品などの財産を取り立てる、不動産を競売にかけて金銭に変更するなどの手続きを行い、借金を回収するようなことです。差し押さえは民事執行法という法律で規定されている正当な行為となります。

今回は、差し押さえについて知りたい人や既に督促状や差押通知書が届いた人に向けて、差し押さえの対象となる財産や流れについてご紹介します。

税金の滞納

差し押さえになる原因は?

債務の履行を怠っていることが差し押さえになる原因であるとご紹介しました。では、具体的にはどのようなことが債務の履行を怠ることになるのでしょうか?ここでは、差し押さえに至る、代表的な3つの原因について詳しくご紹介していきます。

借金返済の滞納

原因といわれて最初に思い浮かぶのは「借金返済の滞納」ではないでしょうか?具体的には、クレジットカードや住宅ローンなど、金融機関から借り入れたお金の返済を怠ることです。
ただ、民間企業が差し押さえを行うためには裁判所での手続きを行う必要があるため、返済が1日や2日遅れたからといってすぐに差し押さえられるというわけではありません。万が一、支払い忘れていた場合は速やかに対応することで差し押さえのリスクは軽減できるでしょう。

逆に、借金を滞納し続けると最悪の場合、「滞納処分」となり、差し押さえられてしまいます。
滞納処分とは、債務者の意思にかかわらず、滞納されている借金を強制的に徴収するための手続きです。

加えて、借金を滞納すると、滞納した分の延滞金も支払わなければなりません。クレジットカードでいえば、支払いを1日でも超えると延滞金が発生し、信用情報にも傷が付いてしまう場合があります。

税金の滞納

税金の滞納も差し押さえの原因の1つです。税金の滞納は、借金を滞納した場合と異なり、税務署職員や役所の職員の職務権限により、裁判所の手続きなしで差し押さえできます。また、税金の場合も、滞納すると延滞金が発生します。結果として、支払わなければいけない金額は多くなります。

差し押さえ

養育費の未払い

離婚時に養育費の支払いの取り決めを行ったにもかかわらず、支払わない場合も差し押さえが行われる原因となります。
ちなみに、養育費未払いにかかる差し押さえには、「債務名義」と「送達証明書」が必要となります。債務名義とは、強制執行を実施する際に必要となる文書で、送達証明書とは、債務名義を相手に送達したことを証明する書類です。

差し押さえの流れは?

差し押さえの原因をお伝えしたので、続いては差し押さえが行われる流れについてご紹介します。流れを知っておくことで、実際に督促状が届いた際にも安心して対処できるでしょう。

基本的に、差し押さえをされる際には「これから差し押さえします」という旨の連絡はありません。なぜなら、債務者が差し押さえられることを事前に知ってしまうと、財産を差し押さえられないように移動や処分をしてしまうおそれがあるからです。
しかし、債務の履行を怠ってから差し押さえをされるまでにはいくつか段階があります。

[ 1 ] 債権者から電話や郵便などで直接督促が来る
[ 2 ] 督促を無視すると、残額の一括請求書が届く
[ 3 ] 支払いを放置していると裁判や支払い督促を申し立てられる
[ 4 ] 仮執行宣言支払督促が確定する

仮執行宣言支払督促とは、債権者が債務者の名義で強制的に差し押さえできる権利です。

木の模型とガベル

差し押さえの対象となるものは?

差し押さえの原因や流れについて確認したあとは、差し押さえの対象となるものについて把握しておきましょう。差し押さえの対象となるものは大きく分けて3つあります。

債権

債権とは、特定の人に対して、特定の行為や給付を請求できる権利です。債権を行使し、預貯金や給与を差し押さえることもできます。債権には、代表的なものとして「預金債権」や「給与債権」、「賃料債権」があります。

預金債権
預金債権とは、預金口座を持っている人が金融機関に対して金銭の交付を請求できる権利です。この権利も差し押さえの対象となります。普通預金や定期預金、当座預金などが差し押さえの対象です。

給与債権
給与債権とは、会社員やアルバイト、派遣社員などの場合、会社から支給される給与を受け取る権利です。この権利も差し押さえの対象となります。給与だけでなく、賞与や退職金も対象となります。また、給与債権の差し押さえの場合は、勤務先にも連絡が入ります。

賃料債権
賃料債権とは、債務者がマンションやアパートなどを経営している際に、賃借人から賃料を受け取る権利です。この権利も差し押さえの対象となります。ちなみに、賃料債権が差し押さえとなった場合は賃借人にも知られることとなります。

不動産

土地や建物などの不動産も差し押さえの対象となります。不動産の場合は、所在を特定できると、比較的容易に差し押さえが可能です。また、場所や不動産にもよりますが、一般的に不動産は財産的価値が高いとされるため、高額な債権回収が期待されます。
特に、住宅ローンを借り入れしている場合は、債権者である金融機関が対象の不動産を強制的に差し押さえ、競売にかけることで融資した金額を回収するケースがあります。

動産

現金やブランド品、貴金属などの動産も差し押さえの対象となります。債務者の自宅や店舗に立ち入り、そこで発見した動産を売却して滞納金の返済に充てるケースです。不動産と動産の回収に優先順位はなく、債務者が不動産を所持していない場合に、動産の差し押さえを行うことがあります。動産の差し押さえは、実際に会社や自宅に執行官が入ってくることになるので、債務者に自ら支払いをするよう促すために行われるケースがあります。

現金と電卓

差し押さえの対象とならないものは?

差し押さえの対象となるものと併せて知っておきたいのが、対象とならないものです。
対象とならないものの範囲は、人間として最低限度の生活を送るために必要な財産となります。これらを差し押さえてしまうと、憲法25条に反してしまうことになってしまうからです。

具体的には、以下のようなものが該当します。

・現金66万円未満
・家具や衣服、台所用品などの生活必需品
・職務上必要不可欠なもの など

また、債権についても差し押さえが禁止されているものがあり、給与や賞与などの給与債権は原則として4分の1までしか差し押さえできません。ほかにも、国民年金や厚生年金などの受給権や生活保護受給権、児童手当受給権なども差し押さえできません。

差し押さえを回避する方法は?

差し押さえを回避する方法としては、大きく2種類あります。詳しく見ていきましょう。

借入残高の一括返済

住宅ローンをはじめとする借入残高を一括返済することは、差し押さえを回避する方法の1つです。ただし、残債を一括で支払える能力がある人は、滞納を繰り返すことはあまり考えづらいです。支払い能力がない場合は、差し押さえを回避するために、家族や親族、知人からお金を借りて返済に充てる方法があります。ほかにも、リースバックを利用するという方法もあります。

リースバックとは、自宅を一度売却し、その後は賃料を払いながら同じ家に住み続けられる方法です。一度で多額の金額が手に入る点や、売却後は不動産所有の際に発生する税金の支払いがなくなるなどのメリットがある一方で、売却価格は一般相場より安くなることがあります。

リースバックを検討する際は、無料の不動産査定を行って、家の売却相場がどれくらいなのか把握することから始めましょう。

●リースバックに関する記事はこちら
住まいのリースバックとは?メリットや注意すべきトラブル事例を解説

●AI査定はこちら
リハウスAI査定

現金

債務整理

借入残高の一括返済ができない場合は、債務整理を行う方法があります。債務整理とは、裁判所や債権者との交渉によって借金の減額や免除をする手続きです。債務整理には3つの方法があります。

任意整理
裁判所を通さずに債権者と交渉し、借金を減額し3〜5年で返済する方法です。借金については利息制限法の上限金利に基づいて再計算されます。個人で債権者と交渉することもできますが、弁護士や司法書士に代理人を依頼すると、債権者からの督促や取り立てを止められるといったメリットがあります。

個人再生
裁判所に申し立てを行い、住宅を残しつつも借金を5分の1〜10分の1に減額する方法です。個人再生の場合は、「民事再生法」で定められた基準によって減額を行うため、任意整理や次にお伝えする自己破産より大幅な減額が期待できます。一方で、個人再生を行う場合は一定の条件を満たす必要があるので注意しましょう。

条件には以下のようなものがあります。

・継続的に得られる収入があり、返済能力があること
・利息制限法を適用した債務総額が5000万円以下であること(「小規模個人再生手続き」の場合は、住宅ローンは除かれます) など

自己破産
裁判所に申し立てを行い、財産の一部を処分し全ての借金を免除してもらう方法です。自己破産を行うためには、「支払不能」と裁判所から返済能力がないことを認めてもらう必要があります。
自己破産は法的に借金がなくなるので返済義務から解放されるメリットがある一方で、生活必需品を除く財産の処分をしなければなりません。

また、税金に関しては自己破産の対象外です。というのも、税金は「非免責債権」であり、自己破産後であっても支払いを免れることはできません。ほかにも、浪費やギャンブルでの借金や裁判所の調査に対して虚偽の報告をした場合などは、自己破産できないため注意しましょう。

●不動産の査定に関する記事はこちら
家の査定とは?不動産査定の注意点も解説

●不動産鑑定に関する記事はこちら
不動産鑑定とは?

早めの対処をしよう!

今回は差し押さえについて対象となる財産や流れなどをご紹介してきました。借金や税金などの滞納がある人はこの記事を参考に、できるだけ早い対策を行うことがおすすめです。

また、差し押さえの回避として紹介した方法は、あくまでも延滞が続いてどうにもならない状態のときの方法です。そうなる前に対処しておくことが大切となります。たとえば、決められた日に借金や税金の支払いができない場合は、早めに金融期間や税務署窓口へ相談してみるのも有効です。

また、住宅ローンの支払いを滞納している人についてもできるだけ早めに動くことが肝心です。なぜなら、実際に差し押さえられた不動産を競売にかけると一般的な相場よりも安い値段で売却されてしまうためです。そうなる前に早めに手を打っておきましょう。方法としては、債権者である金融機関に早めに相談して「任意売却」できないか打診をしましょう。

任意売却とは、債権者(住宅ローンを借入している金融機関)の了承のもと、ある程度所有者の希望条件で一般市場にて不動産を売却することです。そのため、強制的に売却される競売と比べて、任意売却は自由度が高いといえます。

任意売却を成功させるためには専門のノウハウが必要です。任意売却を検討している人は、ぜひとも三井不動産リアルティまでご気軽にご相談ください。

●任意売却に関する記事はこちら
任意売却とは?住宅ローンの支払いが厳しくなったら知っておくべき基礎知識

●任意売却の手順や注意点に関する記事はこちら
任意売却物件を売るときの流れとは?売却の手順と注意点を解説

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/