借地権とは?種類や借地権付き物件のメリット、注意点を分かりやすく解説

借地権とは、自分の建物を建てるために土地の持ち主から土地を借りる権利のことです。この記事では、借地権の特徴や種類、また借地権付きの物件を購入する際のメリットや注意点について分かりやすく解説します。

目次
  1. 借地権とは
  2. 借地権の種類
  3. 借地権付きの物件を購入するメリット
  4. 買ってはいけない?借地権付きの物件を購入する際の注意点
  5. 地主が土地を売却したらどうなる?
  6. 借地権付きの物件は相続できる?
  7. 借地権付き物件で困ったら不動産会社に相談しよう!
記事カテゴリ 売却 一戸建て 土地
2023.12.12

借地権とは

借地権とは、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」(借地借家法 第一章 総則 第二条)※をいい、建物を建てるために地主から土地を借りる権利のことです。土地を借りる目的は、建物の所有であるということが前提なので、建物の建たない土地には借地権は設定できません。マイホームを購入する際に土地と建物を購入する場合がありますが、借地権を利用すれば、土地の所有者である地主に地代を支払うことで、土地をまとまった期間で借りられます。

借地権付き住宅の予算検討の様子を示す文字と計算機

また、借地権は「地上権」と「賃借権」に分けられます。地上権は、他人の土地を使う権利のことで、土地の所有者(地主)の承諾なしに土地を貸したり、その土地に建っている建物を売却したりできる権利です。賃借権は、賃貸借契約において借主が得る権利で、こちらは土地の所有者の許可がないとその土地に建てられた建物の建て替えや売却はできません。地上権は、土地の所有者にとって明らかに不利な条件が多いことから、借地権に設定される権利としては賃借権が一般的です。

今回は、借地権について知りたい人や、借地権付きの建物の購入や売却を検討している方に向けて、借地権の特徴や種類、また借地権付きの物件を購入する際のメリットや注意点について詳しく解説します。

借地権の種類

借地権の種類には、「借地法」(旧法)と、1992年8月1日に施行された「借地借家法」(新法)の大きく2つがあり、それぞれ「旧法借地権」や「新法借地権」と呼ばれることもあります。借地権の契約を交わした日付が1992年の8月1日より前か以後かによって旧法と新法に分かれます。ここでは、旧法と新法のそれぞれの違いを説明します。

借地法(旧法)

借地法は、1992年7月31日以前に締結された借地権の契約に適用されます。借地法の契約期間は、契約の際に期間を設定しているかどうかや、この土地に建てられた建物の構造によってそれぞれ異なります。主な契約期間は以下の通りです。

期間の定めの有無期間の定めがある期間の定めがない
契約時/更新時契約時更新時契約時更新時
非堅固建物20年以上20年以上30年20年
堅固建物30年以上30年以上60年30年

非堅固建物とは一般的に木造の建物のことをいい、堅固建物とは鉄骨造や鉄筋コンクリート造などが挙げられます。特に契約時に期間の定めがない場合は上記のようにそれぞれ契約期間は決まっていますが、地主との合意があれば、更新することで期限の延長が可能です。

借地法では、借地人の保護が重視されていたため、正当な理由が認められない場合に地主側は更新を拒絶できずにいました。そのため、土地がなかなか地主に返還されず、トラブルになるケースが多発したため、改正されたのです。

借地権付きの土地と建物が並ぶ住宅街

借地借家法(新法)

借地借家法は、借地法で借地人が必要以上に手厚く保護されていたことをなくすために改正され、先述の通り1992年8月に施行されたものです。借地借家法では、借地権の種類として、主に「普通借地権」と「定期借地権」に分けられます。

普通借地権
普通借地権では、木造や鉄骨などの建物の構造による契約期間の区別がなくなりました。また、更新することで期限の延長が可能で、地主による一方的な契約解除は認められていません。存続期間は30年、合意のうえで更新した場合は1回目が20年、2回目以降が10年となります。

定期借地権
定期借地権では、契約更新がなく、期間満了後に更地にして地主に返すことが義務付けられています。これは、旧法であった土地の返還がなされないトラブルを改善するために改正されたものです。

定期借地権には、存続期間が50年以上で、建物の使用目的に制限がかけられていない「一般定期借地権」、存続期間が10年以上50年未満で、事業の目的で土地を借りる場合専用の「事業用定期借地権」、存続期間が30年以上で、期間満了時に地主が建物を買い取ることをあらかじめ約束する「建物譲渡特約付借地権」の3つがあります。

借地借家法の借地権のなかで、基本的に更新がないものが、定期借地権の3種類です。これは、旧法での問題点を改善するという理由から新設されました。先述した通り、旧法では、地主側は正当な理由がないと更新を断ることができなかったことから、地主側のリスクが大きいものでした。この点において、定期借地権に該当する3種類の借地権では、更新がなく地主側も安心して取引できるものになっています。なお、普通借地権については、旧法と同様に更新が可能です。詳しくは国土交通省のサイトをご参照ください。

●国土交通省のサイトはこちら
国土交通省 | 定期借地権の解説

借地権付き物件の不平等な取引関係を表すコイン

借地権付きの物件を購入するメリット

土地を所有せずに地主から借りて、建物だけ所有することで取得費を安く抑えられる借地権付きの物件というものがあります。この物件を購入した場合の主なメリットをご紹介しましょう。

長期間土地を借りることができる

借地権のなかには定期借地権のように更新できないものもありますが、旧法や、新法の普通借地権のように更新が認められているものもあります。旧法や、新法の普通借地権では、当初の存続期間は20年または30年以上です。しかし、地主との合意のうえ更新することで、半永久的に土地を借りて建物を維持できる可能性もあります。

税金がかからない

土地の購入時には不動産取得税がかかり、所持していると固定資産税や都市計画税などを納税する必要があります。ですが借地権の場合、納税義務は、土地の所有権を持っている地主にあるため、借地人はこれらの税金を払う必要がありません

ただし、建物に対する税金は納税する必要があります。ですが、土地が借地であればかなり多くの税金が削減されるでしょう。

●固定資産税の計算方法に関する記事はこちら
固定資産税の計算方法は?評価額の決まり方や減税措置も併せて解説!

借地権付きの家の見積もりを計算する様子

買ってはいけない?借地権付きの物件を購入する際の注意点

「借地権付きの家は買ってはいけないのだろうか?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、注意すべき点を理解し、メリットと注意点を具体的に比較して検討することで、住まいの選択肢が広がる可能性があります。ここでは、借地権付きの物件を購入する際の注意点を具体的に見ていきましょう。

地代を払わなくてはならない

注意点の1つは、地代を払わなければいけないことです。借地権付きの物件では、土地を借りているので、土地所有にかかわる税金はかかりませんが、地主に対する地代として毎月の賃料は発生します。地代の相場は、住宅用として使用する場合が土地価格の2~3%程度、店舗や事業で使用する場合が土地価格の4~5%程度です。

また、存続期間によっては、土地を購入するよりも結果的に費用がかかってしまうケースもあります。さらに、土地の価値が上がると、地代が値上がりすることもあるので注意しましょう。

土地の自由度が低い

借地権付きの物件の場合は、土地と建物を購入する場合より、土地利用の自由度が低くなります。たとえば、賃借権の付いた借地に建てた建物が自分名義でも、無断で売却できなかったり、建物を建て替える際にも、事前に地主に相談する必要があったりします。地主から許可を得ることで売却や建て替えはできますが、承諾料が必要なケースがあるので注意しましょう。

ただし、借地権自体の権利の種類が、先述の地上権であれば、地主の許可がなくても売却が可能です。ですが、地上権は地主にとっての利益が少なくなるため、設定されるケースは少ない傾向にあります。

借地権付きの家を見学する夫婦

更新料が必要な場合がある

先述の通り、新法の借地権は地主と合意のもと契約を更新できますが、更新時に更新料が必要になる場合があります。ただし、法的には更新の際に更新料を支払う義務はありません。ですが、地主との契約書において更新料について定められている場合は支払いの義務が生じるため、契約書は必ず事前に確認しておくことが大切です。

地主が土地を売却したらどうなる?

借りている土地でも、地主が何らかの事情により第三者に売却する場合があります。もし自分が借地権を持つ土地が売却されてしまったら、借地権はどうなるのか気になりますよね?万が一、土地が売却され、第三者が新たな地主となった際に、借地権を主張することを「対抗」といい、対抗するためには決められた要件が必要です。

まず、「建物があること」「借地人の登記がされていること」という条件を満たしていれば、新しい地主に土地を明け渡す必要はないでしょう。次に、新しい地主に借地権を主張する(対抗する)には、地上権や借地権の登記が必要ですが、地主の協力を得られず、登記がなされていない場合があります。このような場合は、借地上の建物を登記することで借地権の対抗が認められます

ただし、借地人と建物の名義が異なる場合は対抗をすることはできないので注意しましょう。たとえば、借地人の名義はそのままで、後継者が建て替えをし、建物の登記が後継者になっている場合、借地権の対抗は認められません。

なお、建物がないと借地権を主張できないことになっていますが、火災や地震などの不可抗力で建物を失ってしまった場合には対抗できる方法があります。土地上の建物が特定できる事項、滅失日、再建築する旨を示した立札等を掲示することで、滅失から2年間は第三者に対抗が可能です。

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借地権付き物件の取引がまとまり握手する様子と家の模型

借地権付きの物件は相続できる?

借地権は借主の相続財産です。借地権付きの物件に相続が発生した場合、法定相続人であれば相続でき、地主の許可や特別な手続きは必要なく、通知すればよいことになっています。ただし、法定相続人以外に相続する場合は承諾が必要で、承諾料が発生する場合があります。これは、第三者への譲渡と見なされるためです。

また、法定相続人であっても、相続した物件を建て替える際には地主の承諾が必要になるので注意しましょう。

兄弟姉妹で相続することもできる

借地権付き物件を相続する際、兄弟姉妹のように、複数の法定相続人で相続することもできます。しかし、複数の相続人で借地権を共有すると、後々トラブルが起こるリスクが生じるので注意が必要です。

たとえば、相続した物件を売却したり、建て替えたりするときは、複数の相続人全員の同意が必要になります。3人兄弟で相続したようなケースでも、そのうちの1人が亡くなって、亡くなった方の家族がさらに相続した場合、相続人の人数や世代が変わり、同意を得るのがますます難しくなってしまう可能性もあります。

また、相続後も地代や建物にかかる税金などを支払う義務が発生しますが、複数の相続人の誰か1人がそれらを支払わないということも起こり得ます。借地権付き物件は、複数の相続人で共有することも可能ですが、後々のトラブルを防ぐという観点では、単独で相続するほうが維持管理や売却がよりスムーズにできることを押さえておきましょう。

相続放棄も可能

借地権付き物件を相続したくない場合、相続放棄の手続きを行えば、相続をしないことも可能です。その場合、民法915条1項により、被相続人が亡くなったことを知ったときから3か月以内に管轄の家庭裁判所で手続きを行う必要があります。ただし、相続放棄が認められた場合、借地権だけを相続放棄することはできず、そのほか全ての財産を相続できなくなってしまう点にご注意ください。

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相続登記とは?必要性や自分で申請する手続きの流れについて

借地権付き物件の住宅の模型

借地権付き物件で困ったら不動産会社に相談しよう!

これまで、借地権がどのようなものかを解説してきました。借地権付きの物件にはメリットもありますが、注意すべき点もあります。たとえば、借地権付きの物件は割安に感じられますが、土地と建物を購入する一般的な場合とどちらが最終的に得になるかは、どのくらいその土地を利用するかによって変動します。また、借地権は種類が多く、それぞれ条件が違うため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

現在、借地権付きの家への住み替えや、借地権付きの物件の売却を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。借地権付きの家を売却するときは、地主に相談して承諾を得ることが必要です。また、借地権付きの家を購入する際は、前述した注意点を理解したうえで、慎重に検討しましょう。

三井のリハウスでは、不動産の売却と購入、どちらについても経験豊富な担当者がお客さまのご要望に沿ったサポートをしております。何か疑問や不安をお持ちの方は、以下のページから、いつでもご相談ください。

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借地権は売却できるの?注意点や手続きの流れを解説

※ 出典:借地借家法(平成三年法律第九十号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403AC0000000090
(最終確認:2023年11月29日)

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
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