マンションを売るか貸すかではどちらがお得?利益を計算してみよう

使わないマンションは「売る」または「貸す」ことによって収益を得ることができます。しかし、それぞれの方法には異なるメリットや注意点があり、自分の状況によってどちらが合っているか判断する必要があります。今回はマンションを「売る」か「貸す」か判断するための情報をお伝えします。

目次
  1. マンションを売るか貸すかの基準は?
  2. マンションを売るメリットと注意点
  3. マンションを売る手順と費用
  4. マンションを貸すメリットと注意点
  5. マンションを貸す手順と費用
  6. 収支のシミュレーションをしてみよう!
  7. ライフプランに合わせた選択をしよう
記事カテゴリ 売却 賃貸 マンション
2022.08.30

マンションを売るか貸すかの基準は?

転勤や家庭の事情で、購入したマンションで暮らし続けることが難しくなったり、マンションを相続したけれど特に使う予定がなかったりする人のなかには、「使っていないマンションを有意義に活用したい」と考えている人もいるでしょう。しかし、いざマンションを活用するといっても、売却してまとまったお金を得るのか、賃貸に出して継続的な家賃収入を得るのかは悩ましい選択なのではないでしょうか?

「使っていないマンションをどうにかしたい」と考えているなら、「売る」「貸す」「金融機関に相談する」という3つのなかから行動を選びましょう。それぞれの選択肢の判断基準は次のようになります。

戻る予定がないなら「売る」

将来的にマンションに戻る可能性がないなら、売却するのがおすすめです。マンションを空き家のまま所有していると、固定資産税や管理費の支払いが必要となり、継続的に支出が発生します。売却してしまえば、このような維持費の支払いの必要がなくなるというメリットがあります。また、売却によるまとまった額の収入が一度に得られる点も魅力の1つです。

マンションを売ることのメリットや、売却の進め方については後ほど詳しく解説します。

戻ってくる可能性があるなら「貸す」

しばらくの間マンションに住むことはできないけれど、将来的にまた今のマンションに戻ってきたいと考えているなら、賃貸に出すとよいでしょう。マンションを貸せば、継続して長期的に収入を得ることが可能です。

一時的にマンションを貸すけれど、将来的に戻ってきたいという場合には、住人と結ぶ契約内容で失敗しないように心掛けましょう。マンションの1つの物件を貸す際に締結する契約には、「定期借家契約」か「普通借家契約」の2種類があります。定期借家契約では、更新がないため、借主が住み続けたいと希望しても賃貸借期間が更新されることがありません。一方で、普通借家契約を結ぶと、更新があるため、借主が住み続けたいと希望すれば賃貸借期間が更新され続けます。

普通借家契約においては借り手が優遇され、貸し手の個人的な都合で契約を打ち切ることは難しいのです。そのため、マンションに戻ってきたいと考えているなら、貸し出す期間を限定できる定期借家契約を結ぶほうが安全といえるでしょう。

マンションを貸すことのメリットや注意点、貸し出すための手順や費用については、後ほど詳しく解説します。

ローンが残っているなら「金融機関に相談する」

マンションを売るとしても貸すとしても、住宅ローンが完済できていなければ、自分の判断だけで売るか貸すかを決めることができません。ローンの残債があるなら、まずは金融機関に相談し、ローンの返済方法や切り替えについて話し合ってみましょう。

マンションを売却するには、住宅ローンの一括返済が必要となることが基本であり、自己資金を充ててローンの返済を行うか、売却金額を使って返済する計画を立てる必要があります。また、住宅ローンが残った状態で貸し出すことは原則としてできません。状況によっては、住宅ローンから投資用ローンに借り替えれば賃貸を認めてくれることもあります。

ただし、転勤等のやむを得ない事情がある場合には、例外的にローンを完済していなくても貸し出しを認めてくれることもあるため、一度金融機関に相談してみたうえで貸し出しを進めていくことが望ましいといえます。

木のテーブルとグラフと夫婦

マンションを手放したいときに、最初に行うべきアクションについて説明しました。マンションを売るか貸すかは、ライフプランを踏まえたうえで判断することが求められます。これより先では、それぞれのメリットと注意点、必要となる手続きや収支の計算方法について、詳しく見ていきましょう。

マンションを売るメリットと注意点

転勤や家庭の事情で不要になったマンションを売ることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?売却の際の注意点と併せて押さえておきましょう。

マンションを売るメリット

マンションを売却することで得られる大きなメリットとしては、以下の2点があります。

まとまった資金が手に入る
マンションの部屋を売ることで、一度にまとまった資金を手に入れられます。マンションを手放した後に引越しが必要となる場合は、新居を購入するための資金、賃貸物件に入居するための敷金や礼金などとして、すぐに利用できるのが魅力的です。

維持費が不要
不動産の所有者である限り、税金やメンテナンス費用といった支出が発生しますが、マンションを売ることでこうした維持費の支払いが不要となります。使わなくなったマンションを空き家として放置する場合はもちろんのこと、賃貸物件として出す場合でも、不動産の所有者として維持費を支払い続けなければなりません。そのため、売却によって維持費が不要となるのは、大きなメリットの1つといえるでしょう。

マンションを売却することで支払いが不要となる費用としては、不動産を所有していれば毎年支払う「固定資産税」や「都市計画税」、「火災保険料」、毎月支払う「管理費」や「修繕積立金」が挙げられます。

電卓と白い家の模型

マンションを売る際の注意点

マンションを売ることで、短期間でまとまった収入を得ることができますが、いくつか気を付けるべきポイントがあります。売却のための条件や注意点についても見ていきましょう。

住宅ローンを完済しなければ売れない
マンションを売るには、売却と同時に住宅ローンを全て返済する必要があります。住宅ローンの残債がある場合は、マンションの売却代金や自己資金などを利用して完済しなければなりません。売却価格がローンの残債よりも低ければ、不足分は自己資産から支払い、それでも完済できないとマンションの売却自体ができない恐れがあります。

譲渡所得税がかかることがある
売却価格が購入時の価格を超える場合、「譲渡所得税」の支払い義務が生じます。譲渡所得税は、土地や建物などを売却した際に得た利益に対して課される税金で、所得税と住民税から構成されます。2037年(令和19年)までは、復興特別所得税の支払いも必要となります。

譲渡所得税の計算方法や、控除を受けられる条件については、後ほど解説していきます。譲渡所得の定義や、譲渡所得税の控除を受けるための手続きについては、別の記事でも取り上げているので、ぜひ参考にしてくださいね。

●長期譲渡所得にかかる税金や控除を受けられる条件に関する記事はこちら
長期譲渡所得とは?税率、控除、軽減税率を理解してお得に売却しよう!

●不動産売却時に利用できる「3000万円控除」に関する記事はこちら
居住用財産3000万円控除|不動産売却時に活用できる控除とは?

仲介手数料がかかる
不動産会社を通して売却する場合、成約した際に仲介手数料を支払う必要があります。

売れるまで時間がかかる
先ほども説明したように、マンションを売却すればまとまった額の収入が得られますが、売却をすると決めてから、すぐに成約するとは限りません。不動産の売却を進めるにはさまざまなステップを踏む必要があり、成約時期の正確な予想は難しいといえます。

査定から売却が終わるまでに、3か月~半年ほどかかることが一般的です。

白い時計と家の模型

マンションを売る手順と費用

マンションを売ることによるメリットと注意点について見てきましたが、実際にマンションを売却するためにはどのような手順を踏めばよいのでしょうか?売却で発生する初期費用の詳細についても解説します。

マンションを売るための手順

マンションの売却の前後で、以下のようなステップを踏むことが一般的です。

[ 1 ] 書類の準備
売却にかかわる契約を結ぶための書類を準備します。必要書類としては、登記済権利証や間取り図、身分証明書などが挙げられます。不動産売買で必要となる書類の入手方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

●不動産売買で必要となる書類に関する解説はこちら
マンション売却で失敗しないためのポイント

[ 2 ] 査定
不動産売却に必要な書類を集めたら、査定を依頼し、マンションをどれくらいの値段で売ることができるのかを調べましょう。初めは、複数の不動産会社に査定を依頼するようにして、提示される査定価格や対応の仕方などを比較し、信頼できる業者に絞り込むのがおすすめです。

[ 3 ] 販売活動
査定の結果、信頼できる不動産会社を絞り込めたら、「媒介契約」を不動産会社と結びます。媒介契約とは、不動産売買を業者に仲介してもらう際の方法や期間について定める契約のことで、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。媒介契約の種類ごとに、同業他社との複数契約の可否などの条件が異なります。

媒介契約を結び、売却活動をスタートしたら、内覧希望者への対応を行います。内覧の際は、売却金額を少しでも高くするため、ハウスクリーニングを行って、内装や設備の状態をよくしておくことがおすすめです。

[ 4 ] 売買契約
物件の買い手が見つかり、売主と買主の間で価格や条件についての合意が得られたら、双方が売買契約書に捺印します。このとき、契約の証明として、買主から売主に対して手付金が支払われることが一般的です。売買契約を結んだら、売却後の新居選びや引越しの手続きといった準備を進めていきましょう。

[ 5 ] 決済・引渡し
買主から売主に対して購入価格が支払われたら、売主はマンションを引渡します。買主の住宅ローンは引渡し日に実行されます。マンションの決済と引渡しは、同日中に行われることが一般的です。

[ 6 ] 確定申告
マンションの売却によって譲渡所得が発生した場合は、確定申告を行う必要があります。確定申告は、決済の翌年の2月16日から3月15日の間に行います。

マンションを売る費用

マンションを売却する際に発生する出費についても見ていきましょう。

仲介手数料
マンションの買い手が見つかり、売買契約を結ぶことができたら、仲介してくれた不動産会社に対して仲介手数料を支払う必要があります。

●不動産売却にかかる仲介手数料に関する記事はこちら
不動産売買にかかる仲介手数料とは?上限と計算例、ポイントを解説

登記費用
相続や売買によって不動産の所有者が変わったら、「不動産登記」を行う必要があります。マンションを売る際に行う登記は、「所有権移転登記」と「抵当権抹消登記」の2つです。このうち、所有権移転登記は買主が行うことが一般的ですが、抵当権抹消登記は住宅ローンを完済した証明として、売主が手続きを行う必要があります。不動産登記は確実に遂行するために司法書士に代行してもらうことが多く、別途報酬を支払うことになります。

印紙税
マンションの売買契約書に貼り付ける印紙のことを指します。

譲渡所得税
マンションの売却で利益が生まれた場合は、譲渡所得税を納める必要があります。譲渡所得税の計算方法や税率
は、後ほど詳しく解説します。

マンションを貸すメリットと注意点

これまではマンションの売却について解説してきましたが、マンションを貸す場合はどのようなメリットと注意点があるのかも詳しく見ていきましょう。

マンションを貸すメリット

マンションを貸し出すことによるメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

定期収入が手に入る
不動産という資産を維持しながら、賃貸収入が入り続けるという点は大きな魅力の1つです。不動産という高額な資産を所有していれば、子どもに遺産として残すことも可能ですし、いざというときに売却したり、ローンの担保にしたりすることもできます。

将来的にまた住むことができる
転勤や家庭の事情で一時的にマンションを離れる必要があるけれど、将来的に再度暮らす予定がある場合は、マンションを手放すのではなく、所有しながら貸すほうが有効な選択といえます。この場合は、自分が戻るケース以外に、自分の子どもや親族が利用する可能性についても検討してみましょう。

マンションを貸す際の注意点

先述の通り、マンションを貸すことで、不動産を手放すことなく長期的な収入を見込めますが、資金面での懸念点も存在します。注意しておくべきポイントは以下の通りです。

維持費がかかる
自分はマンションで暮らしていなくても、所有していることで支出が発生します。不動産の所有者は、固定資産税や都市計画税を毎年納めなければいけませんし、管理費や修繕積立金といった毎月発生する諸費用を支払う必要があるのです。特に、修繕積立金の支出は、築年数が増えるにつれて増加する傾向にあります。

初期費用がかかることがある
部屋の清潔感や設備の新しさは、マンションの賃料に影響する重要な要素です。そのため、部屋の経年劣化の状態によっては、貸し出し前にリフォームや大掃除を行い、汚れや臭いの対策を施す必要があります。大規模なリフォームやハウスクリーニングを行う場合、初期費用がかさみ、一時的に収支がマイナスになってしまう可能性があることに注意しましょう。

空室の場合は収入が得られない
マンションを貸す以上は、入居者が現れるタイミングは決められないという不確定要素が存在します。スムーズに入居者を見つけるには、ニーズに合わせた家賃設定を心掛け、賃貸の得意な仲介会社を選ぶようにしましょう。

マンションの模型と赤い看板

マンションを貸す手順と費用

マンションを貸すためにはどのような手順を踏めばよいのか、どういった費用が発生するのかについて詳しく見ていきましょう。

マンションを貸すための手順

マンションを貸し出す際は、以下のような流れで手続きを進めていきましょう。

[ 1 ] 住宅ローンの残債を確認する
基本的には、住宅ローンの残債があるままマンションの貸し出しを行うことは原則としてできず、仮に貸す場合、状況によっては住宅ローンから「不動産投資ローン」へ切り替えることで認めてもらえる場合もあります。不動産投資ローンは、自分が住む目的ではなく、他人に貸し出して利益を生むためにマンションを所有する際に組むローンを指します。不動産投資ローンは、住宅ローンよりも金利が高い傾向にあります。

しかし、転勤といったやむを得ない事情であると金融機関に認められた場合は、住宅ローンのまま貸し出しを認められることもあります。そのため、住宅ローンを返済中の場合は、まずは金融機関に相談をしてみるようにしましょう。

[ 2 ] 仲介会社を選ぶ
マンションを貸すには、賃貸仲介によって入居者を探してくれる仲介会社を選びます。仲介会社や管理会社の力を借りずに、自分で物件の賃貸や管理を行うことも可能ですが、大きな負担となってしまうため現実的とはいえません。仲介会社を選ぶ基準としては、宅地建物取引業の免許更新回数から最近の活動の様子をチェックしてみたり、宅地建物取引業者名簿を調べてみたりするとよいでしょう。

[ 3 ] 管理会社を決める
管理会社とは、マンションの入居者管理を行う会社のことです。借主から賃料を集めて、貸主に送金したり、家賃滞納があったりする場合の支払いの催促などを行います。また、近隣住民とのクレーム対応の代行を担当する場合もあります。一般的には仲介会社がそのまま管理会社となることが多いです。

[ 4 ] 契約方法を選ぶ
入居希望者が見つかったら、入居者との間で契約内容の交渉を行います。不動産の貸主と借主の間で結ぶ契約を「借家契約」といい、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。普通借家契約では、通常2年ごとに契約が更新され続けますが、定期借家契約では、更新ができないという違いがあります。

普通借家契約においては、基本的には借主のほうが貸主よりも法律上優遇されており、貸主側の個人的な都合で借主を退去させたり、契約を解除することは難しいとされています。そのため、「一時的にマンションを貸したいけれど、将来的には戻ってきて暮らしたい」と考えているなら、定期借家契約を結ぶほうが確実です。ただし、定期借家契約であっても、貸主側から契約期間中の途中解約はできません。

また、直接入居者と契約を交わさない貸し出し方法としては、「サブリース(転貸、また貸し)」という方法もあります。サブリースとは、不動産会社がマンションの部屋を借り上げ、入居希望者に対して貸し出しを行う方式を指し、不動産会社が入居者の管理を代行します。家賃保証型のサブリースを利用すると、空室補償があり、空室になっても収入が得られるというメリットがあります。貸主には、不動産会社の手数料相当分が差し引かれた賃料が振り込まれます。

[ 5 ] 入居者の募集
家賃を決定し、入居者を探します。家賃の設定は低過ぎても十分な収入が見込めませんし、高過ぎても入居者がなかなか決まらないため、適切な賃料設定を行う必要があります。

入居者を募集する広告は仲介業者が作成しますが、マンションの部屋の間取りや築年数だけでなく、周辺環境の詳細な情報を盛り込むことで、生活のイメージがしやすい内容になります。

[ 6 ] 賃貸契約の締結
入居者が決まったら、賃貸借契約を結び、引渡しを行います。契約時には、マンションのゴミ出しのルールや管理規約などの情報を伝えておくとよいでしょう。

手渡される鍵とパソコンとペン

マンションを貸す費用

マンションを貸す際に発生する出費としては、初期費用と継続的に発生する費用の2種類があります。

貸し出し時に必要な費用
マンションの貸し出しを始める前後で発生する費用は以下の通りです。

●仲介手数料
入居者が決まった際に、家賃に応じた報酬を仲介会社に支払います。仲介会社が受け取ることができる手数料は、1か月分の家賃+税が上限として法律で決められています。また、広告のための報酬を支払うこともある点に留意しましょう。

●リフォーム費用
マンションの経年劣化の状態によっては、貸し出し前にリフォームを行って汚れや破損を修復しておくことが望ましい場合があります。仲介会社に賃料査定を依頼する際に、リフォームやハウスクリーニングを行う必要があるかどうかを聞いてみるとよいでしょう。

●住宅ローンから投資ローンへの切り替え費用
先述の通り、住宅ローンが完済できていない状態でマンションを貸したい場合、状況によっては住宅ローンから投資ローンへ切り替えることで賃貸を認めてくれる銀行もあります。ローンを切り替える際には、金融機関に対して手数料を支払う必要があります。

貸し出した後に支払う費用
マンションを貸している最中にも、物件の所有者として支払うべき費用があり、以下の2点が挙げられます。

●固定資産税や都市計画税・火災保険料
自分が暮らしていなくても、賃貸物件の所有者である限り、固定資産税や都市計画税といった税金を納める必要があります。火災保険料に関しては、「建物」については引き続き貸主が付保(契約を結ぶこと)し、「家財」については借主にかけてもらうことになります。

●管理費や修繕積立金
マンションの管理費や修繕積立金といったメンテナンス費用の支払いも必要です。修繕積立金は、築年数の増加に伴って高額になる傾向があります。

収支のシミュレーションをしてみよう!

マンションを売る場合と貸す場合について、それぞれ出費となる要素を解説してきました。しかし、実際に売却や貸し出しを検討している人にとって気になるのは、どれくらいの利益が見込めるのかということではないでしょうか?マンションの売却や貸し出しによって発生する収支の計算方法について、詳しく解説します。

マンションを売る場合

マンションを売ることで得られる利益は、次の式で求められます。

マンション売却による税引き後の利益 = 売却価格 – 売却にかかる諸費用 – 税金

「売却価格」「売却にかかる諸費用」「税金」について、主な要素の計算方法と金額の目安について見ていきましょう。

フローチャートと赤ペンと家の模型

[ 1 ] 売却価格
正確な売却価格は、購入検討者との交渉を行うまでは決まりませんが、簡易的な査定を受けたり、過去の取引事例を調べてみたりすることで、売却価格のおおよその見当を付けることは可能です。

過去の不動産取引の事例をチェックするなら、「レインズ・マーケット・インフォメーション(REINS)」というサイトを利用してみるとよいでしょう。レインズ・マーケット・インフォメーション(REINS)は、国土交通大臣が指定した不動産流通機構によって運営されているサイトで、全国の不動産売買の相場を調べることが可能です。売却を検討しているマンションと似た条件の物件が、過去にどれくらいの価格で売れたのか、REINSを使ってチェックしてみましょう。

レインズ・マーケット・インフォメーションのリンクはこちら

また、複数の不動産会社に簡易査定を依頼してみるのもおすすめです。マンションの立地や物件の基本情報を入力することで、査定額を提示してもらえるため、客観的な情報収集が行えます。

また、簡易査定にハードルを感じている場合は、匿名査定やAI査定を受けてみるのがよいでしょう。三井のリハウスのAI査定を使えば、全国最多の売買仲介件数のデータをもとに、素早く正確に査定が受けられます。

●三井のリハウスのAI査定に関して詳しくはこちら
営業からの電話、店舗への訪問必要なし!Webだけで簡単にマンション売却価格を知る方法とは?

[ 2 ] 売却にかかる諸費用
マンション売却を進めるうえで支払う諸費用はさまざまですが、主な項目としては、「仲介手数料」「印紙代」「登記費用」「住宅ローンの一括返済手数料」が挙げられます。それぞれの計算方法や目安を確認してみましょう。

●仲介手数料
仲介会社に支払う仲介手数料の上限は、法律によって定められており、取引額が400万円超となる場合は、次式で計算できます。

仲介手数料の上限 = (売却価格 × 3% + 6万円) + 消費税

たとえば、マンションの売却価格が3000万円だった場合は、96万円に消費税を加算した価格が上限となります。

●印紙代
契約のために取り交わす書類にかかる税を印紙税といいます。売却価格によって印紙代は異なり、以下の表のように設定されています。

売却金額印紙税の金額
500万~1000万円5000円
1000万~5000万円1万円
5000万~1億円3万円
1億~5億円6万円

●登記費用
先ほども説明したように、マンションを売る際に売主が負担する登記費用は、抵当権抹消登記にかかわる登録免許税となります。不動産登記の手続きは、司法書士に代行を依頼することが多いです。登記費用は、以下の式で計算できます。

登記費用 = 登録免許税 + 司法書士への報酬
= (1000円 × 売却する不動産数) + 1.5万円程度

●一括返済手数料
住宅ローンを一括返済する場合、「一括返済手数料」の支払いが必要となることがあります。たとえば、マンション購入時に30年ローンを組んだけれど、入居後20年目に、残り10年分のローンを返済しようとすると、10年分の一括返済手数料の支払いが発生する可能性があるのです。

一括返済手数料の金額は、金融機関ごとに異なります。一括返済しても全く手数料がかからないこともあれば、数万円の支払いが発生することもあります。従って、住宅ローンの一括返済が必要となる場合は、ローンの借り入れ先の金融機関に費用を聞いてみるとよいでしょう。

[ 3 ] 税金
不動産売却で譲渡所得が発生すると、譲渡所得税の支払い義務が発生します。ただし、マンションの売却価格がそのまま譲渡所得として扱われるわけではありません。譲渡所得は、以下の式から算出されます。

譲渡所得 = 売却価格 – 購入時にかかった取得費 – 売却にかかる諸費用 – 特別控除3000万円

上の式で登場する「特別控除」とは、居住用のマイホームを売却した利益のうち、最大3000万円が課税対象から除外されるという特例を指します。この特例は、日常生活を送るための住居にのみ適用され、別荘等の住宅は控除の対象とならないことに注意しましょう。また、買い替えにおいて購入物件で住宅ローン控除を利用する場合も、3000万円特別控除を同時に併用できません。不動産売却時に受けられる3000万円控除については、以下の記事で詳しく解説しています。

●不動産売却時に3000万円控除を受ける方法と適用条件に関する記事はこちら
居住用財産3000万円控除|不動産売却時に活用できる控除とは?

譲渡所得税は、譲渡所得に税率をかけることで求められ、所得税と復興特別所得税、住民税からなります。税率は以下の表の通りです。

区分所得税復興特別所得税住民税合計
長期譲渡所得 (居住期間が5年を超えるもの)15%0.315%5%20.315%
短期譲渡所得 (居住期間が5年以下のもの)30%0.63%9%39.63%

※上の表における「復興特別所得税」とは、東日本大震災の被害からの復興に向け、通常の所得税に追加して支払う必要のある税金のことで、2037年(令和19年)まで課されるものです。

鉄骨造の建物と緑地

マンションを貸す場合

マンションを貸し出す際の資金計画では、どのようなことを意識しておくべきなのでしょうか?売却する場合とは異なり、一度にまとまった収入が手に入るわけではないため、長期的な視点を持ち、「何年間で元が取れるのか」を考えることが大切です。

そこで役に立つのが、「利回り」という概念です。利回りとは、1年間における家賃収入を、物件の購入価格で割ることで求められます。また、諸経費を差し引くかどうかの違いによって、「表面利回り」と「実質利回り」の2種類に分類されます。利回りの計算式は、以下の通りです。

表面利回り(%) = (1年間の家賃収入 ÷ 物件価格) × 100
実質利回り(%) = {(1年間の家賃収入 – 諸経費) ÷ 物件価格} × 100

先ほど解説した通り、マンションを貸す場合には、定期的な支出が発生します。固定資産税や都市計画税といった税金や、管理費や修繕積立費といったメンテナンス費用がかかり、そうした支出は無視できません。「実質利回り」を計算して家賃の料金を決定することが、マンションを貸し出す成功の鍵といえるでしょう。

実質利回りで検討すべき諸経費は、以下の表を参考にして計算してみましょう。

諸経費の内訳内容備考
固定資産税課税標準額 × 標準税率1.4% ※税率は自治体によって異なる毎年納税 (評価額は3年ごとに更新、 築年数の増加とともに減少する傾向)
都市計画税課税標準額×標準税率0.3% ※税率は自治体によって異なる毎年納税 (市街化区域のみ)
火災保険料「建物」のみ、「家財」は解約「家財」は借主
管理費や修繕積立金築年数の増加とともに増える傾向
リフォーム費用貸し出し開始前に発生

ライフプランに合わせた選択をしよう

マンションを売る場合と貸す場合について、それぞれのメリットや注意点、収支の計算方法について解説してきました。いずれの場合でも複数の手続きを踏む必要があり、出費項目もあるため、一長一短といえるでしょう。そのため、マンションを売るか貸すかを決めるうえでは、自分や家族が将来的に戻ってくる可能性があるかどうかを考えることが大切です。

また、売却や貸し出しによる収支をシミュレーションする際には、査定額やメンテナンス費用をはじめとして、不確定な要素も含まれます。収支の計算で分からないことがあれば、専門家の意見を求めることも有益といえます。

三井のリハウスでは、マンションを売る場合でも貸す場合でも利用できるサービスがあります。どちらの場合でも、資金計画を立てるために、まずは自分のマンションがどれくらいの資産価値があるのかを調べてみましょう!

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不動産売却・査定

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不動産鑑定士 竹内英二

株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
https://grow-profit.net/