不動産売却とは?知っておきたい基礎知識を徹底解説
不動産売却は多くの方にとって初めての経験であるため、分からないことが多く、不安になりやすいものです。この記事では、仲介を依頼する不動産会社の選び方や、税金・節税対策、手続きの流れなど、よくある疑問を取り上げて分かりやすく解説します。
目次
不動産売却とは?
不動産売却とは、所有するマンションや一戸建て、土地を手放して、買い手を見つけることです。不動産は高価であるため、人生において何度も経験するものではないでしょう。従って、不動産の売却は、多くの方にとって初めての経験となるのではないでしょうか?
この記事では、不動産売却について以下のような内容を解説しています。不動産売却を検討されている方は参考にしてみてください。
【この記事で分かること】
・不動産売却の流れ
・不動産売却の注意点
・不動産売却にかかる税金や費用
・不動産売却に最適なタイミング
【この記事を読んでいただきたい方】
・初めて不動産を売却する方
・不動産売却について知らないことや分からないことが多く不安を感じている方
・不動産売却を成功させたい方
まずは、不動産売却の流れから見ていきましょう。
不動産売却の流れ
まずは、不動産売却の流れを解説します。流れを把握し、スケジュールに沿って手続きを進めていくことで、スムーズかつ納得のいく売却につながるでしょう。
[ 1 ] 査定
不動産売却を考え始めたら、まずは不動産会社に査定を依頼するとよいでしょう。不動産会社の査定を受けて、担当者の対応や説明の丁寧さ、売却計画の提案力などをチェックすることをおすすめします。
不動産会社への相談を進めやすくするためにも、不動産査定を申し込む前に、いつ頃までに売りたいのか、いくらで売りたいのかをある程度定めておきましょう。早く売却したい場合は売り出し価格を相場より安く設定し、より高く売却したい場合は相場より高く売り出して段階的に値下げをしながら時間をかけて買主を見つけるのが一般的です。売り出し価格を決める際には住宅ローンの残債も重要な要素になるので、事前に住宅ローン残高も確認しておきましょう。
[ 2 ] 媒介契約
査定を受けた不動産会社のなかから、信頼できる会社と媒介契約を結びます。媒介契約とは、不動産会社に売主と買主の仲介をしてもらう契約のことです。媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つがあり、それぞれ契約条件が異なります。以下の記事で詳しく解説していますので、それぞれの媒介契約の違いについて知りたい方はご参照ください。
●媒介契約について詳しくはこちら
[ 3 ] 売却活動
媒介契約を結んだ後は、不動産会社と一緒に売却活動を行います。不動産会社は広告・宣伝活動を行い、売主は内覧の準備や対応にあたります。目標時期までに購入希望者が見つからない場合は、売り出し価格やホームページでの掲載内容といった売却についての方針を不動産会社と相談して見直すことがおすすめです。
[ 4 ] 売買契約
購入希望者から購入申込書を受け取り、記載された希望条件について折り合いが付いた場合には、売買契約に進みます。売買契約締結時には、買主から手付金を受け取るのが一般的です。中古不動産の場合、手付金は、売買価格の5%前後が相場とされています。
[ 5 ] 決済・引渡し
売買代金の決済と引渡しは同日に行われるのが一般的です。買主が住宅ローンを利用する場合は、その金融機関で行われます。売主、買主、不動産会社の担当者のほか、司法書士が立ち会って登記手続きも行います。
加えて、鍵や必要書類の引渡しを行います。そのため、売主は引渡し日までに、引越しや書類の準備を済ませておかなければなりません。
●不動産売却に必要な書類についてはこちら
[ 6 ] 確定申告
不動産を売却して利益が出たら、翌年の2月16日~3月15日までに確定申告を行います。この際に、特例を利用すれば節税できる場合があります。また、売却が赤字になってしまった場合も、申告を行うと利用できる特例があるため、忘れずに確定申告を行いましょう。
また、確定申告の手続きにはさまざまな書類も必要になるため、売却を検討し始めたら書類の準備も一緒に少しずつ進めていくのがおすすめです。
売却にかかる期間の目安は3か月~半年程度といわれていますが、スケジュールには余裕を持たせることが大切です。時間に追われながら売却を進めると、希望条件に対して妥協せざるを得ないこともあります。
不動産売却理由ごとの注意点
不動産売却は、住み替えをはじめとしてさまざまな理由で行われるものです。ここでは、相続や離婚といった場合も含め、知っておきたい不動産売却の注意点をケース別に解説します。
住み替えが理由の場合
「より便利な場所に引越したい、広い家に移りたい、新しい家に住み替えたい」など、住み替えは不動産売却において、よくある理由です。マンションから一戸建て、一戸建てからマンション、賃貸物件への住み替えなどさまざまなケースがあるでしょう。住み替えの場合、先に所有の不動産を売却してから住み替え先の不動産を購入する売却先行と、先に住み替え先の不動産を購入してから自宅を売却する購入先行の2種類があります。それぞれメリットと注意点があるため、どちらが自分に適しているか検討しましょう。
●売却先行と購入先行について詳しくはこちら
転勤が理由の場合
急な転勤が決まり、自宅を売却しなくてはならないケースもあります。転勤期間が決まっている場合は賃貸に出すことも1つの選択肢ではありますが、管理に手間がかかることもあります。売却するか賃貸に出すかを悩む場合は、専門知識の豊富な不動産会社に相談してみましょう。三井のリハウスでは、売却も賃貸もサポートが可能です。ぜひご相談ください。
また、転勤まで時間がなく、売却に時間をかけられないこともあります。そうした場合は、一度、仲介で売却をトライしてみて、売却が決まらなかったときには、不動産買取を検討してみましょう。不動産買取は、仲介に比べて成約価格は6~8割ほどの価格になるものの、不動産会社が直接買い取るため、売主自身は買主を探す必要がなく、スピーディーな売却が可能です。
●仲介と買取について詳しくはこちら
相続が理由の場合
相続した不動産を売却する場合、重要なのは相続人の確定です。遺言書がなければ、法律で定められた相続人である「法定相続人」全員の共有財産となるので、どのように処理するか相続人同士で協議を行う必要があります。「代表者が相続して売却し代金を分ける」「相続人全員の共有名義にしてから売却する」など、よく話し合ったうえで決定しましょう。
分割協議がまとまったら、不動産の「相続登記」を行ってから売却に移ります。相続登記は、相続した不動産の所有権を相続人に変更する手続きであり、行わないと売却ができないため、注意が必要です。
●相続登記に関する詳しい記事はこちら
●相続登記の義務化に関する詳しい記事はこちら
相続による不動産売却は手続きが煩雑なうえ、小規模宅地等の特例をはじめとした特例には期限が設定されているものもあるため、負担が大きいのが実情です。三井のリハウス・シニアデザインでは、相続に伴う事務手続きから不動産売却までワンストップでサポートする「相続おまかせ売却パック」をご案内しています。相続による不動産売却でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
●相続おまかせ売却パックのお問い合わせはこちら
離婚が理由の場合
夫婦が離婚する場合、結婚生活で築いた財産を分け合う「財産分与」の手続きが必要です。住まいは売却・現金化して分け合うのが最も簡単な方法ですが、注意したいのは名義と売却のタイミングになります。住まいが夫婦の共有名義である場合、相手の同意がなければ売却できません。なかなか合意に至らない場合には、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
住まいを売却するのに最適なタイミングは、夫婦の状況によります。離婚後に連絡を取り合いたくない場合には、離婚前が最適です。なぜなら、売却活動では内覧対応や売却金額の交渉など、連絡や相談が必要になることが度々あるためです。
納得のいく売却活動をしたい場合には離婚後に売却するとよいでしょう。そうすることで早く離婚したいあまりに焦って安く売却してしまうのを防ぐことができます。ただし、離婚後も連絡を取り合うことが苦痛でない方に限ります。
●離婚に伴う家や住宅ローンの財産分与についてはこちら
住宅ローンの残債がある場合は?
住宅ローンが残っている不動産でも、売却は可能です。ただし、売却するには抵当権を抹消する必要があります。ここでいう抵当権とは、住宅ローンの担保として金融機関によって設定されるもので、ローン返済が滞った場合、その不動産を売却して代金を回収できる権利を指します。
この抵当権を抹消するには、住宅ローンを完済する必要があるため、まず住宅ローンの残債を調べてから家の査定を受け、売却代金でローンを完済できるかどうかを確認しましょう。ローン残債が売却代金を上回る「オーバーローン」の場合は、自己資金で補う、住み替えローンを利用するなどの対策を検討する必要があります。
●ローン残債がある不動産売却について詳しくはこちら
特殊な不動産売却とその注意点
ここからは、扶養家族が不動産売却を行う場合や、認知症の親の不動産を売却する場合といった特殊な不動産売却について見ていきます。
扶養家族が不動産を売却する場合
扶養家族とは、ほかの家族の収入によって養われている人のことです。扶養家族がいる人は、社会保険料の控除や所得税の控除(配偶者控除、配偶者特別控除)を受けられます。
不動産売却のなかには、扶養に入っている配偶者が「親から相続した不動産を売却したい」というケースもあります。しかし、この場合、「売却によって利益を得ると扶養から外れるのでは?」と心配な方も多いことでしょう。
扶養家族が不動産を売却して利益を得た場合、社会保険の扶養から外れることはありませんが、配偶者控除や配偶者特別控除といった所得税の控除から外れる場合があります。たとえば、配偶者控除の場合、不動産の譲渡所得も含めて所得が48万円(令和元年分以前では38万円)を超えて発生すると控除が適用されなくなります。世帯主は配偶者控除を受けられず、配偶者は譲渡所得に対する税金の支払いが発生することになるため、注意が必要です。
しかし、一度配偶者控除が適用されなくなった場合でも、翌年以降また所得が少なくなれば、再び控除を受けられるようになります。不動産を売却する前に名義を世帯主に変更するという方法もありますが、贈与税が発生する場合もあるので、どちらがよいか判断しかねるときには税理士に相談してみましょう。
認知症の親の不動産を売却する場合
不動産売却は、登記簿に記載されている名義人自身にしか行えないことになっています。しかし、「親が認知症になって介護施設へ入居するので実家を売却したい」といった場合、親の代わりに不動産売却を行うにはどうすればよいのか、というのもよくある疑問の1つです。
認知症が進んでいて本人の意思確認が難しいと診断される場合は、法定後見制度を利用し、不動産売却を行います。法定後見制度とは、重要な手続きや契約を本人が行うことが難しくなった場合、それらを代行する後見人を家庭裁判所が選ぶ制度のことです。自治体の家庭裁判所に審判の申し立てを行い、裁判所の審判を経て後見人に選定されると、本人に代わって不動産売却を進められます。
法定後見制度を利用する方法だけでなく、親に判断能力が残っている間に委任状を書いてもらうことで売却することもできるので、実家をどのようにするかは親が元気なうちに相談しておくのがおすすめです。
●法定後見制度に関する記事はこちら
不動産売却はどこがいい?仲介会社の選び方
不動産売却を行うにあたって、最も大切なポイントといえるのが不動産会社選びです。より高く早く売るには、不動産会社のサポートが必要になります。しかし、大手から中小までさまざまな不動産会社があるなかからどう選べばよいのか分からず、不安を感じる方は多いでしょう。不動産会社を選ぶ際、基準にしたいのは次の6つのポイントです。
・物件のあるエリアに精通している
・営業店舗が多い
・対応がスピーディー
・アドバイス力がある
・売却実績が豊富
・インターネット広告が豊富
これらは、事前にネット検索することである程度把握できるほか、査定を依頼して担当者とやりとりすると分かってきます。候補となるところは複数社ありますが、信頼できる不動産会社を絞り込んでいくとよいでしょう。各ポイントについての詳しい内容やコツは、以下の記事で解説していますのでぜひご参照ください。
●不動産会社選びに関する詳しい記事はこちら
不動産売却の査定とは?
不動産売却を検討している方にとって、最も気になるのは「いくらで売れるのか?」ということでしょう。そこでいくらで売れるのかを、おおまかに把握できるのが不動産会社による「査定」になります。
査定とは、その不動産が市場でいくらほどで売れるか、不動産会社が推定価格を算出することです。売主は、その査定額(査定価格)を参考に売り出し価格を決めることになります。不動産売却を考えている方は、まず査定の種類とポイントについて理解しておきましょう。
査定の種類
査定には、「AI査定」「簡易査定」「訪問査定」の3種類があります。AI査定とは、入力された基本的な物件情報と蓄積された過去の取引事例データをもとに、AIが自動的に査定額を算出する方法です。簡易査定は、物件に関する基本的なデータに基づいて不動産会社の担当者が査定額を算出する方法になります。最後に、訪問査定とは、担当者が実際に現地調査を行い、建物や土地の状況、周辺環境などを考慮して査定額を算出する方法です。
AI査定は、電話番号の入力が不要なため営業電話を受けずに査定結果を知れるのが特長で、特にマンション査定に向いています。
簡易査定はスピーディーにおおまかな査定額が分かり、訪問査定は精度の高い査定額が分かるのがメリットです。まだ具体的な売却予定は決まっていないものの、家の価値を聞いてみたいという方はAI査定または簡易査定、売却の意思が固まっている方は訪問査定を受けるのがおすすめです。
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査定を受ける際のポイント
査定を受ける際のポイントは、自分自身でも相場を調べておくことです。なぜなら、査定額は売り出し価格を決める際の参考になるため、相場を自分自身でも把握し、査定額と相場を比較することで、市場価格と乖離した価格で売り出すリスクを減らすことができるからです。
相場に合った売り出し価格を設定することで、納得のいく売却につながるでしょう。相場を把握するには、物件情報サイトの売り出し価格や、国土交通省のサイト「土地総合情報システム」で実際の取引価格を調べてみるのがおすすめです。三井のリハウスでも、マンション、土地、一戸建てそれぞれの地域ごとの相場を調べることができます。ぜひご活用ください。
●不動産相場を調べたい方はこちら
【マンションの相場価格を調べる】
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加えて、相場と大きく異なる査定額が出た場合は、その根拠について不動産会社に質問してみましょう。明確で納得できる説明をしてもらえれば売り出し価格を決めるのに役立つほか、その不動産会社が誠実であるかどうかも分かります。
●査定について詳しくはこちら
不動産売却にかかる税金は?
不動産の売却を考えている方にとって、税金は特に大きな不安要素となりがちです。どのように課税されるのか、節税の方法はあるかなど、知っておきたい税金の基礎知識についてご紹介します。
譲渡所得にかかる税金
不動産を売却して利益が出ると、その利益は「譲渡所得」とされ、譲渡所得に応じた所得税と住民税が発生します。一般には、これらの税金をまとめて「譲渡所得税」と呼ぶこともあります。
譲渡所得にかかる税金の税率は、売却した不動産の所有期間によって異なり、5年以下なら39.63%、5年を超える場合は20.315%となります(所得税、住民税、復興特別所得税を含む)。所有期間や税率の内訳は、こちらをご覧ください。
譲渡所得の節税対策
もし譲渡所得が出ても、特例を利用すれば節税することが可能です。代表的なものが「3,000万円の特別控除の特例」で、マイホームを売却した譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
ただし、3,000万円の特別控除と住宅ローン控除は併用できないため、住み替えの際はどちらの特例を利用するか検討が必要です。譲渡所得の金額が少ない場合は、住宅ローン控除を優先したほうが節税効果を得られる場合もあるため、売却前に比較してみるとよいでしょう。
●住宅ローン控除について詳しくはこちら
●買い替えの特例について詳しくはこちら
不動産売却にかかる費用
不動産売却にはさまざまな費用がかかります。費用総額は売却価格の4~6%、多くて10%ほどになるともいわれているため、必要なタイミングでスムーズに支払えるように、事前に費用の内訳を把握しておきましょう。
仲介手数料
仲介手数料とは、売買を仲介する不動産会社へ支払う成功報酬を指します。売却が成立した場合にのみ支払うもので、成立しなかった場合は発生しない費用です。
仲介手数料には、宅地建物取引法によって定められた上限があり、それを超えて請求されることはありません。上限は売買価格によって決まっており、売買価格が400万円以上の場合は「売買価格(税抜) × 3% + 6万円 + 消費税」となります。一般的には売買契約時に半額、引渡し時に残りの半額を支払います。
●仲介手数料について詳しくはこちら
引越し費用
新居に移るまで仮住まいで生活する場合は、引越しが2回発生することになるため、あらかじめ費用がどれくらいかかるのか確認しておくとよいでしょう。不動産会社で提携の業者を紹介してもらえたり、複数社から見積もりを取ってもらえたりする場合があります。
一括返済手数料
売却する不動産に住宅ローンが残っていると、一括返済に手数料がかかる場合があります。金融機関によるほか、窓口、オンラインなど手続き方法によっても異なりますが、1万~3万円程度発生する可能性があることを覚えておきましょう。
登記費用
登記費用は、住宅ローンの抵当権抹消手続きのためにかかる費用で、司法書士への報酬を含めて2万円前後かかります。不動産の所有者が変わったことを示す「所有権移転登記」については買主が負担します。
上記のほか、必要に応じてハウスクリーニング費用や家財の処分費用なども必要です。確定申告を行う際に、仲介手数料をはじめとするこのような諸費用を経費に入れることで、前述した譲渡所得にかかる税金を節税できる場合があります。自分ではよく分からず困ったときには、不動産会社や税理士などプロに相談してみましょう。
●不動産売却にかかる費用について詳しくはこちら
不動産売却に最適なタイミングは?
不動産の売却を検討している方のなかには「いつ売り出せばよいのか分からない、高く売れるタイミングはいつ?」など、「売り時」について悩んでいる方も多いのではないでしょうか?引越しや離婚など個人的な事情を除いた、売り時を判断する主な要素をここから見ていきましょう。
市況
市場で取引される不動産価格が上がっているのか、下がっているのかを把握することで、売り時を見極めやすくなります。不動産価格の動向を把握するには「不動産価格指数」が役立ちます。不動産価格指数とは、国土交通省が公表している不動産取引の統計データのことです。
※国土交通省より引用
上記のグラフは、国土交通省が公表している令和5年11月分の不動産価格の動向グラフです。グラフを見ると、近年の不動産価格は全体的に上昇傾向にあり、特にマンション価格の上昇が大きいことが分かります。
築年数
建物は築年数が浅いほうが高く売れるのが一般的です。木造一戸建ての場合、税法上の耐用年数は築22年のため、それをすぎると住むことは可能であるものの、資産としての価値はほぼゼロになってしまいます。マンションも、築25~30年ほどで設備の老朽化が進み、底値を迎える場合が多いとされています。築年数に基づいて売却のタイミングを判断するなら「なるべく早め」がおすすめです。
所有期間
先ほど、ご紹介したように不動産売却で出た譲渡所得にかかる税金には、不動産の所有年数に基づく税率が決まっています。所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」になります。それぞれの税率は以下の通りです。
所有期間 | 区分 | 所得税(復興特別所得税を含む) | 住民税 |
---|---|---|---|
5年超え | 長期譲渡所得 | 15.315% | 5% |
5年以下 | 短期譲渡所得 | 30.63% | 9% |
所有して5年以下の不動産は税率が高く、5年を超えて売る場合に比べて税金が倍近くかかってしまいます。ただし、3,000万円の特別控除の特例を利用して譲渡所得がゼロになれば、税率のタイミングを気にする必要はありません。特例を利用できるなら、築年数が浅いうちに売ったほうがお得になる場合もあるため、不動産売却を検討中の場合は、専門知識の豊富な不動産会社に相談してみるのがおすすめです。
季節
春の新生活が始まる前の1~3月は、引越しをする人が増える時期です。1~3月に売り出せば、需要が高いため希望価格でスムーズに売れる傾向にあります。売却活動から引渡しまでには2~3か月かかることを把握したうえで、前年の12月までには不動産会社と媒介契約を済ませておきましょう。
●家を売るタイミングに関する記事はこちら
不動産売却について、リアルな実態をプロにインタビュー
不動産売却について、リアルな実態を三井のリハウス社員に聞いてみました!よくある疑問や、営業歴豊富な三井のリハウス社員が経験したエピソードをご紹介します。
よくある売却理由は?
理由としては、住み替えのための売却が多いという印象です。子どもの成長に合わせて、以下のようなタイミングで引越しをするというケースがよく見受けられます。
・子どもが生まれるタイミング
・子どもが小学生になるタイミング
・子どもが大学を卒業し巣立つタイミング
特に子どもが中学受験をする場合は、中学入学のタイミングで住み替えをされる方も多いですね。
売却初心者が持つべき心構えは?
とにかく焦らないことが大切です。焦る気持ちは分かりますが、不動産が売れるかどうかはタイミング次第なところがあります。売り出し価格を相場より高くしていても、その物件を気に入った人が現れたら成約となりますし、反対に、条件面にはあまりこだわらず、安ければ買うという人もいます。売れるかどうかは、こうした需要と供給のバランスと価格次第ですので、焦らないことがより高く売るコツだと思います。
たとえば、5,500万円が相場の物件を売るとします。最初は相場より高めの6,000万円くらいで売り出し、1か月半たっても売れない場合は、以下のような対応が考えられます。
・パターンA:まず5,980万円に値下げし、売れない場合はさらに5,580万円まで下げる(段階を踏んで値下げする)
・パターンB:5,380万円くらいまで一気に値下げする
とにかく早く売って安心したいという方には、パターンBがよいでしょう。ただし早さを優先する場合、相場よりも価格を下げないと成約を取れない傾向にあり、手元に残る金額は少なくなります。一方、段階的に価格を下げるパターンAのほうが、時間はかかりますが高く売れる可能性があります。売却を急いでいないのであれば、焦らず、段階的に値下げをして買い手を待つのがよいでしょう。
相場を調べる方法はいくつかありますが、三井のリハウスのWEBサイトでは、エリアごとに相場を調べることができます。
【マンションの相場価格を調べる】
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【土地の相場価格を調べる】
・首都圏
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・他のエリア
北海道 宮城県 広島県 岡山県 福岡県
住み替えの売却エピソード
住み替えで大変だったのが、住んでいる家の売却と、引越し先の住み替えのタイミングがずれたときです。
住み替えの方法には、新しい家を先に買ってから住んでいる家を売る「購入先行」と、もとの家を売ってから新しい家を探す「売却先行」があります。一般的に購入先行の方が多いのですが、購入先行で中古物件を買う場合、購入先物件に住んでいる人の退去スケジュールによって、引越しの日程が変わります。
予定通りに退去してもらえれば問題ありませんが、遅れた場合はさまざまな調整が必要になります。たとえば、下記のようなスケジュールを想定していた場合、購入先物件に住んでいる人の退去が1か月ずれると、自分たちの引越しや引渡しのスケジュールもずれてしまいます。
・8月に購入先物件に住んでいる人が退去する
・9月に新しい家に引越す
・10月に今の家を買主に引渡す
スケジュールがずれる場合は、待つ代わりに価格を下げてもらうといった交渉を行うことがあります。初めから余裕を持ったスケジュールにしておくことが大切ですが、売主・買主双方の仲介会社で事前にしっかり話をしておくこともトラブル防止になります。
また、契約から引渡しまで時間が空く場合は、物件の状態が変わることでトラブルになることもあります。引渡しまでは所有者に責任があるため、子どもが壁に穴を開けたといった場合は売主に修繕する責任がありますが、備え付け家具の小さな傷、焼け跡程度なら経年劣化として扱われることが多いです。スムーズな住み替えのために、こうした可能性も頭に入れておきましょう。
相続物件の売却エピソード
相続した物件を売却する場合や、共有で不動産の相続を受けている場合、相続人のなかに遠方に住んでいる方がいると手続きが大変でした。
たとえば、相続した物件が東京都にあり、相続を受けた3人のうちの1人が青森県に住んでいるといったケースです。物件を売るためには、本人確認や委任状といった直接会って行う手続きがあるため、遠方に住んでいる方がいるとやり取りが大変でした。
また、相続人が複数人いると、売却の話を進めていたのに、途中で誰かが「売りたくない」と心変わりをする場合もあります。ある程度、仲介会社が個別に話をしたり、対応の提案をしたりしますが、それぞれが納得しなければ売却はできません。相続物件の売却をする際は、相続人の意思を固めておくことが大切です。
資産整理の売却エピソード
お金に困っているという理由で売却をしようとしていた方がいたのですが、売却活動の途中で物件を差し押さえられてしまい、売却できなくなってしまったというケースがありました。差し押さえは、督促が来るといった段階はありますが、差し押さえの具体的な日時の通達はありません。そのため、差し押さえられないか、あらゆる可能性について入念に確認しておくことが必要です。というのも、税金や住宅ローンなどの支払いが滞ることによる差し押さえ以外に、離婚が絡んだ資産整理において、元配偶者が一方的に物件を差し押さえてしまったというケースもあるためです。
また、シニアの方の不動産売却で、老人ホームに入るための頭金を売却で賄いたいというケースは大変でした。家の売却は所有権を抹消してからでないと入金されないので、売却してお金を手にしてから頭金を支払うとなると、売却後、老人ホームに入居できるまで住む場所がなくなってしまいます。対処法としては、「売却後も一定期間住まわせてほしい」といった交渉を行い、「引渡し日を、残代金決済後からN日後とする」といった形で引渡し猶予を設けます。条件を受け入れる代わりに値下げ交渉になることもありますが、値下げをする場合は賃貸の家賃相場などを基準に、双方が納得できる額を探ることになるでしょう。
転勤の売却エピソード
ご家族で住んでいる不動産を売却する場合、転勤の辞令が出た本人が先に引越して、残ったご家族が残務を引き受けることが多いです。私の経験では、旦那さま名義で所有している物件に家族で住んでおり、辞令が出た旦那さまが先に引越し、奥さまが残務を引き受けるケースが多かったです。注意点は、旦那さまが引越す前に本人確認を終わらせ、売却に必要な各種書類をそろえておくことです。こうしたケースでは、名義人である旦那さまがいるうちにいかに手続きを終わらせるかが、スムーズに売却するためのコツです。
離婚の売却エピソード
離婚における不動産売却では、夫婦の意見が合わないことが多いです。たとえば、家を出ていく夫は、物件を売って現金化し、財産分与をしたいと思っているけれども、妻のほうは売らずに住み続けたいといったパターンです。売却の手続きが進んでからこうした状況になると、買い手にも迷惑がかかってしまうため、夫婦で意見をそろえてから売却を依頼することが大切です。
不動産売却は会社選びから!
不動産売却は、不動産会社と協力し合って進めていくものです。今回の記事でご紹介したこと以外に分からないことや不安なことが出てきたときでも、信頼できる不動産会社が一緒なら安心して売却を進められます。査定時の対応や実績の豊富さを基準に、ベストパートナーと思える不動産会社を選びましょう。
三井のリハウスは、累積取扱件数100万件を超える豊富な実績で不動産売却をサポートいたします。数多くの店舗を展開しているので、エリアに密着した売却活動が可能です。さらにWebやメルマガ、店頭での直接のご案内など多角的な売却活動でスムーズな売却へ導くことができます。初めての不動産売却をお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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※出典:「不動産価格指数」令和6(2024)年2月29日公表, 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001715748.pdf
(最終確認:2024年3月16日)
監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉
株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
https://www.izumi-ohishi.co.jp/profile.html