住み替えのときにかかる税金とは?特例制度と一緒にご紹介

家を住み替えるときには、家の売却時と購入時それぞれに税金がかかります。今回は、どんな税金がどれくらいかかるのか、さらに税負担を減らせる特例をご紹介します。税金やお得な制度の概要を知り、住み替え時に活用できるようにしましょう。

目次
  1. 住み替えをするとき、どんな税金がかかるの?
  2. 不動産を売却するときにかかる税金
  3. 不動産を売却するときに使える特例
  4. 不動産を購入するときにかかる税金
  5. 不動産を購入するときに使える特例
  6. 自分の状況に合わせて特例を使い分けよう
記事カテゴリ 売却 税金 住み替え
2021.12.03

住み替えをするとき、どんな税金がかかるの?

マイホームの住み替えを検討し始めるとき、どんな税金が必要になるのか、気になっている人も多いのではないでしょうか?住み替えをする際は、売却と購入のそれぞれに税金がかかってきます。しかし、一定の条件を満たしていれば、利用できる特例があるため、税金を抑えられる可能性もあります。

そこで今回は、賢い住み替えをするために、住み替えに関する税金の仕組みや適用される特例をご紹介します。

住宅と家族

不動産を売却するときにかかる税金

住み替えるために不動産を売却するとき、売却の際の手続きにかかる税金と、売却によって利益が出たときにかかる税金があります。それぞれの税金について、詳しく見ていきましょう。

売却の手続きにかかる税金

売却の手続きにかかる税金の種類は主に印紙税と登録免許税です。詳しくご紹介します。

2つの家の模型

印紙税
印紙税とは、不動産を売買した際に発行される契約書や領収証など特定の文書にかかる税金のことをいいます。契約書に記載されている金額によって、税額が変わります。たとえば、1000万円を超え5000万円以下の金額の契約であれば原則2万円の印紙税額がかかってきます。

ただし、令和4年3月31日までは租税特別措置法により印紙税の税率が引き下げられています。

納付方法は、印紙税額に相当する金額の印紙を、各文書に貼り付けて税務署に提出します。印紙税の具体的な税額についてはほかの記事で詳しく解説していますので、チェックしてみてください。

●印紙税に関する記事はこちら
不動産売却にかかる税金はいくら?必要な費用の計算や節税対策をご紹介

登録免許税
登録免許税とは、不動産や会社などを登記する際にかかる税金のことです。土地や建物を売買したり、譲渡したり建築したりする際には、所有権保存登記や移転登記などをします。所有権保存登記とは、登録されていない新しい土地や建物がどのようなものか、誰が所有するのかを記録するものです。一方、移転登記は、土地や建物の所有権が移った際に記録するもののことをいいます。

この記録をする際に登録免許税が課せられるのです。登録免許税は、原則として現金で納付することになっていますが、オンライン申請の場合は、電子納付することも可能です。登録免許税は下記のように計算されます。

税額=課税標準×税率

課税標準とは、税金を計算する際の計算基準のことをいいます。

売却で利益が出たときにかかる税金

次に売却で利益が出たときにかかる税金をご紹介していきます。手続きにかかる税金としては譲渡所得税と消費税の2つの税金が課せられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

譲渡所得税とは、家を売却したときの譲渡所得に課される税金です。そもそも譲渡所得とは、不動産を売却したことによって生じた所得のことを指します。発生した譲渡所得額に応じて税金がかかり、所得税または住民税として徴収されます。譲渡所得税の税率は、家の所有期間で短期譲渡所得と長期譲渡所得に分けられます。

たとえば、売却する家を所有していた期間が5年以内だった場合は短期譲渡所得にあたるので、税率は39.63%になります。5年を超える場合は、長期譲渡所得となるため税率は20.315%です。譲渡所得税は、譲渡を行った年の翌年に確定申告をして提出します。

不動産を売却した際に支払う消費税は、不動産の状況や、売主が個人なのか事業者なのかによっても支払いの必要性の有無が変わってきます。

電卓と家の模型

不動産を売却するときに使える特例

売却によって利益が出たとき、一定の条件を満たしていれば適用される3つの特例があり、利用できれば大幅な減税になります。そこで、それぞれの特徴と注意点を見ていきましょう。

3000万円特別控除

3000万円特別控除とは、マイホームを売却する際の譲渡所得に対して、3000万円までは課税対象から除外されるという制度です。この特別控除を受けるためには複数の要件を満たしている必要があります。以下に主な要件をご紹介します。

・自分が住んでいたマイホームであること
・売る相手が親子や夫婦などの特別な関係でないこと
・売却をした年の前年と前々年に3000万円特別控除や繰越控除の特例を受けていないこと

なお、この控除を受けるためには、売却した翌年に確定申告を行わなければいけません。

軽減税率の特例

軽減税率の特例とはマイホーム売却時、一定の要件を満たしていれば、長期譲渡所得の税額が通常よりも低くなる制度です。長期譲渡所得とは、譲渡所得のなかでも、譲渡する不動産の所有期間が10年を超えるもののことをいいます。マイホームを売却するときの軽減税率は、長期譲渡所得が6000万円以下になる場合と6000万円を超える場合で計算方法が異なり、具体的な軽減税率は下記のように計算されます。

・6000万円以下の場合:長期譲渡所得×10%
・6000万円を超える場合:(長期譲渡所得-6000万円)×15%+600万円

軽減税率特例を受ける場合には、以下のような要件を満たすことが必要です。

・自分が住んでいたマイホームであること
・売る相手が親子や夫婦などの特別な関係でないこと
・売却をした年の前年と前々年に3000万円特別控除や繰越控除の特例を受けていない
・注意点として翌年の確定申告を行わないと控除が受けられない

特定居住用財産の買い替え特例

特定居住用財産の買い替え特例とは、住み替え用のマイホームを購入した時、一定の条件を満たすことができれば、譲渡益の課税を繰り延べすることができる制度です。

この特例は、上記で紹介した3000万円特別控除や軽減税率の特例とは異なり、控除ではなくあくまで繰り延べができるという内容です。買い替え特例を受ける場合に必要な要件は主に以下の通りです。

・売却した年の1月1日時点で売却する不動産の所有10年を超えていること
・更地にして売却する場合は、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却されていること
・売る相手が親子や夫婦などの特別な関係でないこと

不動産を購入するときにかかる税金

住み替えのために新居を購入する際には、新居の購入額や、仲介手数料、引越し代などの諸費用以外にも税金がかかります。家を購入する際、必ず発生する税金と取引の相手に応じて発生する税金があるので、それぞれ分けて見ていきましょう。

リビングでくつろぐ家族

購入するとき必ず発生する税金

マイホームを購入する際に必ず支払う税金として、印紙税、登録免許税、不動産取得税の3つがあります。この3つの税金は、いかなる場合でも支払いを免除されることはありません。

印紙税
印紙税とは前述のように、不動産の売買に関する契約書や領収証にかかってくる税金のことをいいます。不動産売却と同様に、購入の契約をする際にも必要になります。

登録免許税
こちらも前述のように、登録免許税とは、所有権保存登記や移転登記などをした際に必要になってくる税金のことです。不動産を取得して、所有権が売主から買主である自分に移動するため、その際の登記に対して課税されます。登録免許税の納税は、原則として譲渡と同じタイミングで行われます。

不動産取得税
不動産取得税とは、土地や建物などを購入したり、贈与されたりするときにかかる税金のことをいいます。不動産取得税は、住宅を購入してから半年から1年半の間に納税通知書が都道府県から届き、金融機関で支払いをします。税額の計算は下記のようになります。

固定資産税評価額×4%

ただし令和6年3月31日までは、土地やマイホームに関する税率は3%となります。

取引相手に応じて発生する税金

取引相手に応じて発生する税金は以下の通りです。

贈与税
贈与税とは、親や祖父母などの親族から不動産を譲渡された場合、贈与された側に発生してくる税金です。新居を購入するのではなく、親族から譲渡された場合には、この税金が課せられます。贈与税の納付は、税務署以外にも銀行や郵便局でも可能です。

家と車の模型

消費税
マイホーム購入時は、贈与税のほかにも消費税がかかってきます。土地部分は消費税の非課税対象となりますが、建物の部分については課税対象になり建物価格の10%が課せられます。ただし個人が売主の住宅を購入する際の消費税はかかりません。

また、不動産会社に仲介してもらった場合に発生する仲介手数料にも消費税がかかることも覚えておきましょう。

●売却にかかるそのほかの費用に関してはこちら
【家の売却ガイド】不動産を売るための基礎知識と注意点

不動産を購入するときに使える特例

家を売却するときと同様に、新居を購入するときにもかかる税金を抑えられる特例があります。ここでは、マイホーム購入時に利用できる特例の特徴と注意点についてご紹介していきます。

住宅と人の模型

住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで購入するマイホームが一定の条件を満たしている場合、購入の翌年から10年間にわたり住宅ローン残高の1%を所得税から控除し、還付してもらえる制度です。さらに特例により10年間が13年間になる場合があります。住宅ローン控除を受ける場合には、以下のような要件を満たすことが必要です。

・住宅の引渡し日から6か月以内に入居すること
・特別控除を受ける年の合計所得が3000万円以下であること
・対象となる住宅に対して10年以上のローンがあること

また住宅ローン控除を受けるための手続きに関しても注意しておきたいポイントがあります。1年目の手続きは、確定申告が必要です。入居した年の翌年に、申告書を納税地の税務署長に提出します。しかし2年目以降からは、年末調整の際に手続きすることができます。

住宅ローン控除とほかの特例の併用

住宅ローン控除を利用する際には、3000万円の特別控除との併用はできません。そのためどちらの特例措置を利用すればより節税できるのか、慎重に比較して決めるようにしましょう。その際に、税理士をはじめとした専門家に相談してみるのもよいでしょう。

自分の状況に合わせて特例を使い分けよう

住み替えを考えているなら、少しでもお得に買い替えを行いたいものですよね。
どのような税金が発生するか、どの特例を利用すれば、一番お得になるかはそれぞれの置かれている状況によって変わってきます。

買い替えを考え始めたら、まず初めに自分がどの特例を利用できるのかを細かくチェックしましょう。そのなかでどの特例を利用すれば、より多く節税できるのかを判断しましょう。その際に自分たちで決められない場合は、経験豊富な不動産会社の担当者に相談してみるのも手段の1つかもしれません。事前準備をしっかりと行って後悔のない買い替えをしましょう。

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/