Column / 2021 06,17

インスペクションとは?メリットや依頼先の選び方をご紹介

インスペクションとは、中古住宅を売買する際に行う住宅診断のことです。トラブルを防ぎ、安心して取引をするために重要な役割を持っています。今回はインスペクションのメリットや、実際に依頼するときのポイントについて詳しく解説します!

田村啓

さくら事務所 プロホームインスペクター。二級建築士、マンションリフォームマネージャー、木住協リフォーム診断員、東京都木造住宅耐震診断技術者、既存住宅状況調査技術者。ハウジングリテラシーの向上を目指したサポートを行う。
https://www.sakurajimusyo.com/

インスペクションとは?

インスペクションとは英語で「調査」や「点検」などの意味があります。中古不動産の売買を考えている人なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?中古住宅をトラブルなく安心して売買するために、インスペクションは重要な役割を持っています。

今回は、インスペクションとはどのようなものか、メリットや実際に依頼するときのポイントも併せてご紹介します!

家の模型を挟んで話す男女

売買契約前に行う住宅の診断

インスペクションとは、一般的に中古住宅の売買契約前に行う、不動産調査のことをいいます。住宅の劣化や欠陥を調べるほか、修理が必要な時期やかかる費用のアドバイスも行われます。このインスペクションを行うのは、ホームインスペクターと呼ばれる専門家。民間資格を取得した人や、建築士がここに含まれます。

一方、インスペクションを依頼するのは、家を売却する売主であることが多いです。
もし、中古住宅を売却する際に、建物の欠陥に気付かずに取引をしてしまうと、引渡し後に買主とトラブルになってしまうことがあります。

事前にインスペクションを行っておくことで、専門家の客観的な診断のもと、建物のコンディションを明確にして売り出すことができます。そのため、売却時のトラブルを避ける予防策としてインスペクションが用いられるのです。

買主がインスペクションを行う際は、気になることや心配なことを直接インスペクターに質問して、アドバイスをもらうこともできますよ。

床を点検する男性

法改正によりますます高まる重要性

近年、中古住宅市場におけるインスペクションの重要性はますます高まってきました。
2018年4月には、宅地建物取引業法(宅建業法)の改正により、インスペクションの説明が義務化。これにより、中古住宅を売買する際は、媒介契約(仲介)する不動産会社が売主と買主の双方にインスペクションの説明をしなくてはいけなくなりました。

この法改正は、インスペクションの普及が目的です。日本ではまだなじみの薄いインスペクションですが、実は中古住宅の売買が盛んな欧米では一般的なもの。日本でも今後インスペクションが普及すれば、より安心して売買ができるため、中古住宅やリフォーム市場の活性化が期待されています。

また、2020年4月には民法が改正され、これまで分かりづらかった中古住宅の売買に関するルールが明確化されました。これにより、欠陥や不具合に気付かずに売買した中古住宅について売主にかかる責任がさらに重くなっています。

●瑕疵担保責任に関する記事はこちら
瑕疵担保責任とは?不動産売買前に押さえたい内容や執行期間を解説

売主は、買主とのトラブルを回避するためにも、これまで以上にインスペクションの重要性を知っておく必要がありますね。

専門家による立ち合いの調査が一般的

検査は専門家立ち合いのもとで、屋根や外壁内壁、排水管や給湯管などの状態が目視でチェックされます。さらに、修繕が必要な箇所があれば、かかる費用や実施するタイミングまでアドバイスしてくれます。インスペクションは売買契約の前に1度行うのが一般的で、所要時間は1時間~3時間ほどが目安です。

●インスペクションの検査項目(項目は各社によって異なります)

構造耐力上主要な部分 雨水の侵入を防止する部分
戸建て住宅 基礎、壁、梁、柱、小屋組、床、土台など 屋根、壁、開口部、天井など
マンション 基礎、基礎杭、壁、床版、屋根版など 屋根、壁、開口部、配水管など

また、家の傾きや建物内部の鉄筋の状態、シロアリの被害、雨漏りなどを見る場合は、機械を使ってより精度の高い調査を行うこともあります。このような調査は、基本料金とは別にオプション料金がかかることが一般的です。詳しい料金の説明はこちらをご覧ください。

インスペクションのメリット

日本ではなじみの薄かったインスペクションですが、法改正の影響もあり、その認知度は高まりつつあります。インスペクションの普及によって、中古住宅の売買が盛り上がることが期待されていますが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
売主と買主、それぞれのメリットを具体的に見ていきましょう。

室内の調査をする調査員

売主側のメリット 早く、高く物件を売れる可能性が高まる
引渡し後のトラブルが未然に防げる

売主にとっての大きなメリットは、売却するマンションをインスペクション済みの物件として売り出すことで、早く、高く売れる可能性が高まることです。「プロの検査済みでトラブルが起こりにくい物件」としてインスペクション未実施の物件と差別化でき、買主が見つかりやすくなります。また、インスペクションによって適切な修繕を行うことで、売却価格アップも期待できるでしょう。

さらに、物件の状態をきちんと説明したうえで売買契約ができることも、メリットとして挙げられます。インスペクションによって、買主から売買後に覚えのない修理費を請求されたり、クレームをいわれたりといったトラブルを未然に防ぐことができるのです。

買主側のメリット 安心して物件を購入できる
購入後の費用負担の予測が立てられる

買主にとっての一番大きなメリットは、インスペクション済みの物件を購入できる安心感でしょう。プロによる第三者的な検査で建物の状態が分かるため、検査をしていない物件と比べると不具合の有無や不具合内容などが明確に把握できた状態で、納得して購入できます。

また、修繕が必要な箇所や、劣化状況が分かるので、購入後の維持費用やリフォーム費用などが予測できることも買主には嬉しいポイントですね。もし売主側でインスペクションを実施していない場合は、買主側でインスペクションの実施を検討するとよいでしょう。

インスペクションの費用の相場はいくら?

売主と買主の双方にメリットがあるインスペクションに、興味を持つ人は多いでしょう。それでは、もし実際に行った場合、費用はいくらかかるのでしょうか?

家の模型と虫眼鏡

相場は5万円~8万円程度

インスペクションの金額は検査を請け負う業者によって異なりますが、相場は5万円~8万円程度です。

ただし、この価格は基本料金の価格です。基本料金で行う点検は一般的に、床下や小屋裏(屋根裏にできる空間)を外側や点検口から目視で確認するだけになります。基本料金でどこまで点検してもらえるかは、業者に事前確認しておくとよいでしょう。

オプションの料金がかかることがある

ホームインスペクターが建物の中に入って点検する場合は、オプション料金がかかることがあります。
また、機械を使った検査や耐震性の審査を行う場合も追加料金がかかり、10万を超える場合もあります。一見高額に思えますが、築年数が古かったり、状態が不安な物件の場合はこうした調査をすることで、後々のトラブルを避けることができます。必要があれば、前向きに検討してみましょう。

補助金の利用でお得になる

上記のように、インスペクションにかかる費用は安くありませんが、実施によって補助金を受けられる可能性があります。

補助金の制度には、国が行っている「長期優良住宅化リフォーム推進事業」や「住宅ストック循環支援事業」のほか、各自治体が独自で行っているものもあります。たとえば、長野県の「あんしん空き家流通促進事業」は、中古住宅におけるインスペクション費用の2分の1以内(1戸当たりの上限は5万円)が補助される制度です。

これらの補助金には、インスペクションの実施以外にも条件が定められていますが、自分の状況に合えば経費の節約につながります。お住まいの自治体で補助金の制度があるか、チェックしてみてくださいね。

依頼はどこにするのがよい?

インスペクションを行う会社には、不動産会社やリフォーム会社のほか、インスペクションの専門業者もあります。作業については、買主と売主どちらにも利害関係のない第三者の立場で行われなければなりません。そのため、インスペクションの専門業者に依頼をして実施してもらうのが一般的です。

ここで大切なのが「どんな会社にインスペクションを依頼するか?」です。単純に価格の安さだけで決めてしまうと、十分な検査をしてくれなかったり、そこまで必要ではないリフォームを勧められたりと、結果的に損をすることがあるかもしれません。
ホームインスペクションの会社を選ぶときは、以下のポイントを重視しましょう。

換気扇をチェックする男性

会社の実績や経験が、検査する建物の特徴と合っている

依頼する会社の実績や、過去に携わってきた建物の種類はぜひチェックすべきポイントです。ひと口にインスペクションといっても、建物の種類や工法によって、見るべき点は違います。検査してもらう物件に近い建物を扱った経験があれば、より適切な診断ができるでしょう。

また、建築士の資格保有者のホームインスペクターがいるからという理由だけで会社を決めるのも要注意です。1級建築士の資格を持っているホームインスペクターでも、大規模施設と戸建て住宅では、必要な知識や技術がそれぞれ異なります。資格よりも経験や実績、またどのような建物に定評があるかを重視したほうが、適切な診断ができる会社を選べるでしょう。

対応や説明がしっかりしている

検査内容やその結果を説明する際、一般の人にも分かるように話しているかという点も重視しましょう。インスペクションは、建物の状態を売主や買主がきちんと把握するためのものです。優れた知識や検査の技術があっても、その内容を分かるように説明してくれなければ、インスペクションをする意味が薄れてしまいます。インスペクションを依頼するときには、説明に買主が立ち会えるかどうかも確認するとよいでしょう。

インスペクターの担当者とは、検査後もやり取りをする機会があります。対応やコミュニケーションに違和感があると、その後の売買取引に影響することもあるため、対応に信頼感が持てる会社を選ぶようにしてくださいね。

説明を受ける夫婦

また、インスペクションの基本料金の相場を大きく下回る業者にも注意しましょう。インスペクションの費用を安くする代わりに、リフォームや修繕工事を勧めて利益を得ている可能性があるためです。

適正な検査をしてもらうには、それ相応の費用が必要になります。価格だけを見て決定せず、実績や経験など、会社の中身で判断するようにしましょう。

瑕疵保険の検査との違い

ここまでインスペクションについてご紹介してきましたが、「瑕疵(かし)保険の検査と同じじゃないの?」と思った人もいるかもしれませんね。確かに瑕疵保険の検査とインスペクションは混同しやすいのですが、その目的や内容は異なります。

瑕疵とは、傷や故障など、売買する物件に見られる欠陥を指します。購入後にこのような瑕疵が見つかって困ることのないよう、買主の安心のために売主が加入する、あるいは買主自らが加入するのが瑕疵保険です。屋根や外壁など、定められた範囲内の瑕疵の検査と補償をするもので「既存住宅売買瑕疵保険」とも呼ばれます。

瑕疵保険に加入していれば、万が一物件の購入後に瑕疵が見つかっても損害を補償してもらえるため、売主にも買主にもメリットがあります。ただし、瑕疵保険は全ての中古住宅で利用できるわけではありません。瑕疵保険が適用されるのは、定められた基準に合格した物件のみです。

家の模型とはてなマーク

瑕疵保険の検査は保険の対象部位のみ

瑕疵保険の検査目的は、あくまで保険に加入する基準を満たしているかどうかの確認です。そのため、検査の範囲は屋根や外壁など、保険の対象部位のみとなります。もちろん、修繕のアドバイスもされません。

インスペクションの検査は網羅的

インスペクションの検査目的は、住宅の品質保持です。そのため、検査だけでなく修繕のアドバイスもしてくれるほか、依頼すれば目視以外の高度な検査もできます。

●瑕疵保険とインスペクションの違い

瑕疵保険 インスペクション
検査目的 物件の不具合や劣化の調査 瑕疵保険に加入するための物件調査
検査範囲 保険の対象部位(保険の法人によって異なる) 小屋裏や床下の点検口からの目視のほか、オプションで詳細診断や耐震検査など

建物に長く住めるように将来を見据えた検査をしたい場合は、瑕疵保険の検査だけでは不十分な場合もあります。また、瑕疵保険を利用する場合も、状況によっては併せてインスペクションも行うことでより安心して売買ができるでしょう。

インスペクションでトラブルを防ごう

不動産売買は、売主、買主どちらにとっても生活を左右する大きな取引です。思わぬトラブルを未然に防ぐために、インスペクションは有効な対策といえます。

インスペクションが初めてでよく分からない場合は、不動産会社からも教えてもらうことができます。信頼できるホームインスペクションの会社を選び、適切に検査してもらうことで、売主も買主も安心して売買ができるでしょう。

夫婦の相談に対応する男性

また、インスペクションには複数の書類が必要です。間取り図や設備図はどの業者でも必要なことが多いので、余裕をもって準備しておくことをおすすめします。インスペクションを活用して、不動産売却をスムーズに成功させてくださいね!

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この記事のポイント<Q&A>

  • Qインスペクションをするメリットとは? A中古住宅を売買する際に、売主・買主間のトラブルを回避しやすくなります。近年は売却時のトラブル対策として契約前にインスペクションを実施することが増えてきています。
  • Qインスペクションはいくらかかる? A基本料金の相場は5万円~8万円程度。機械を使った検査や耐震審査を行う場合は追加料金がかかり、10万円を超える場合もあります。詳しくはこちらをご覧ください。
  • Qインスペクションの依頼先にはどんな会社がある? A不動産会社やリフォーム会社でインスペクションを行っている場合もありますが、インスペクションを専門に行う会社もあります。詳しくはこちらをご覧ください。