「不動産評価額」とは?不動産の4つの価格の調べ方を解説!

不動産の価値を調べるために用いられる「不動産評価額」とはどういったものなのでしょうか?今回は、「不動産評価額」以外のものも含め、不動産の異なる4つの価格の調べ方や使い方をご紹介します。

目次
  1. 不動産の評価額とは?
  2. 不動産のそのほかの価格
  3. 目的に応じた不動産価格を知ろう
  4. 自分の不動産の価値を正しく把握しよう!
記事カテゴリ 売却
2023.01.20

不動産の評価額とは?

不動産の売却を考えている人のなかに、自分の所有している不動産の価値がどのくらいなのか気になる人も多いのではないでしょうか?不動産の価格を調べていると「評価額」という言葉を目にすることがあります。一般的に不動産の評価額というと、固定資産税評価額を指すことが多くなります。

固定資産税評価額とは、総務大臣が定めた固定資産税評価基準に基づいて行われ、市町村長(東京都23区は各区長)が決定した価格です。毎年の固定資産税や都市計画税などの納税額を算出するうえで必要な、課税標準額を求めるのに用いられます。

固定資産税評価額を算出する際には、不動産鑑定士による鑑定評価から求められた価格を活用することになっています。なお、不動産鑑定士による「鑑定評価額」も不動産の評価額といいます。

固定資産税評価額とは

先ほどもお伝えした通り、固定資産税評価額とは、固定資産税を算出する際の基準として利用され、課税標準を算出する際に用いられる価格を表します。固定資産税額は以下の計算式で求めることができます。

固定資産税額 = 課税標準額(評価額) × 1.4%(標準税率)

土地に対する固定資産税評価額は、3年に1回見直しが行われ、これを「評価替え」といいます。また、固定資産税評価額は、不動産を購入する際に必要な登記手続きにかかる登録免許税や、不動産取得税の算定基準にもなるものです。

ほかにも、固定資産税評価額は相続税の計算に用いられることもあります。相続税路線価という土地の価格が定められていない地域では、相続税の土地の評価額は「倍率方式」という方法で求めることになっており、固定資産税評価額に定められた倍率をかけて相続税の評価額を算出することになります。また、相続税の建物に関する評価額は、固定資産税評価額をそのまま用います。

固定資産税評価額の調べ方

固定資産税評価額は、自分で確認することができます。不動産を所有している場合は、固定資産税の納税通知書や固定資産評価証明で確認が可能です。納税通知書は毎年1月1日時点の不動産所有者に向けて4〜5月に送付され、一方の固定資産評価証明書は、市区町村で発行されます。

不動産を所有していない場合は、所有者に確認するか、仲介をしている不動産会社に依頼して確認するようにしましょう。なお、所有者の許可(委任状)をもって市区町村役場に行くことができれば、固定資産評価証明書を取得することや固定資産税課税台帳を閲覧することが可能です。

固定資産税評価額の決められる基準や、固定資産税の軽減措置については以下の記事で紹介しています。併せてご確認ください。

●固定資産税の計算方法に関する記事はこちら
固定資産税の計算方法は?評価額の決め方も解説

固定資産税評価額以外にも、不動産の価格にはいくつか種類があるため、紛らわしく感じてしまうこともあるでしょう。そこで今回は、不動産の価格はどのようにして決まるのか、また併せて不動産価格を知る際に、押さえておくべき基礎知識を解説します。

家の模型を持つ女性

不動産のそのほかの価格

固定資産税評価額以外にも、実勢価格や、公示地価、路線価など不動産の価格がいくつかあります。これらは、固定資産税評価額と合わせて「一物四価」と表される場合もあります。

たとえばマイホームを売却する際や不動産の相続をする際など、さまざまな場面で不動産の価格を知る必要が生じますが、そのとき、目的に応じて適切な価格の種類を調べることが重要です。

それでは、固定資産税評価額以外の不動産価格の特徴をそれぞれ見ていきましょう。

公示地価

公示価格とは、その年の1月1日時点の標準値の1㎡あたりの価格を、国土交通省が地価公示法によって発表しているものです。実際の販売価格や市場の価格を表したものではありませんが、一般の土地取引価格の客観的な目安となる価格です。また、公示地価は、相続税評価、固定資産税評価の目安、公共用地の取得、金融機関の担保評価、企業が保有する土地の時価評価の基準・指標としても活用されます。不動産鑑定士が評価をし、土地鑑定委員会を経て、最終的に決定します。

公示地価を自分で確認する際は、標準値の土地の公示地価が分かる国土交通省の「土地総合情報システム」や「標準地・基準地検索システム」、一般社団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」をチェックしてみましょう。

公示地価のほかにも、土地の価格を表すものの1つとして「基準地価」もあります。基準地価も、公示地価と同様に、公的機関が定めている基準値の1㎡あたりの土地の価格を表すものです。公示地価と基準地価の違いは公表している公的機関と対象としている地域、調査時期です。公示地価は、毎年1月1日時点の都市計画区域内の標準値を国が調査・公表しているのに対し、基準地価は、地方自治体(都道府県)が毎年7月1日時点で、都市計画区域内外を問わず定めた基準地を対象として調査・公表しているものになります。

路線価

路線価とは、国税庁が発表している道路に面する標準的な宅地1㎡あたりの価額のことを指します。路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」があります。路線価は、国税庁のサイト「財産評価基準書路線価図評価倍率表」や前出の「全国地価マップ」で確認できます。

家の模型に座る人のミニチュアと硬貨

相続税路線価
相続税路線価は、土地の相続税や贈与税などを算定する際に用いられ、国税庁が調査、公表をしているものです。毎年7月頃にその年の1月1日時点での価格が公表され、毎年、評価の見直しが行われます。相続税路線価は、公示地価の8割が目安とされています。

固定資産税路線価
各市区町村(東京都23区は都)が決定する土地の固定資産税評価額や、鑑定評価の算定基準となるものです。毎年4月頃にその年の1月1日時点での価格が公表され、評価替えが3年に1度行われます。土地の固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税を算出する際に用いられ、また、不動産業者や金融機関が物件の評価の際に1つの目安として用いるのが一般的です。固定資産税路線価は、公示地価の7割程度が目安とされています。

実勢価格(時価)

実勢価格とは、実際に不動産が取引された市場価格のことをいいます。土地の取引が行われると国土交通省に取引データが集められ、物件が特定されない範囲のデータが公表されます。

実勢価格を調べる場合は、国土交通省の「土地総合情報システム」で見ることができます。対象となる不動産の近隣の直近取引価格を知りたい場合は、不動産会社に尋ねるようにしましょう。

なお、実勢価格は土地の形状や建物(家屋)の状態などの不動産の個別要素と、売却理由や取引された時期といった売主の個別事情を踏まえて決定された価格であるため、公表されている価格はあくまでも参考とするようにしましょう。

家の模型と硬貨

目的に応じた不動産価格を知ろう

ここまで不動産の4つの価格についてお伝えしてきました。ここからは、具体的に、どのようなときに、何の価格を調べればよいのか、それぞれの目的別に解説していきます。

目的参考にする不動産価格
不動産を売却するとき実勢価格、傾向を掴むものとして公示地価、路線価、
不動産会社の査定額
固定資産税、不動産取得税などの金額を計算するとき固定資産税評価額(課税標準額)
不動産を相続したとき(相続税の金額を知りたい場合)
土地:相続税路線価
建物:固定資産税評価額
(相続した不動産の市場価値を知りたい場合)
実勢価格
財産分与を行うとき実勢価格、不動産鑑定評価額(当事者間で合意がとれない場合)
贈与税の金額を計算するとき土地:相続税路線価
建物:固定資産税評価額
裁判や調停を行うとき不動産鑑定評価額

不動産を売却するとき

不動産の売却を検討しているときは、実勢価格を参考にするとよいでしょう。ただし、実勢価格は不動産個別の要因や時点が異なる取引価格になるので、あくまで参考としましょう。

実際の売り出し価格の参考となる取引価格を知りたい場合
直近の取引価格を知りたい場合は、不動産会社へ査定の依頼をすることをおすすめします。査定を行うことで、周辺の取引価格を調べてもらうことができ、売りたい不動産の現在の相場価格を把握することができます。基本的に不動産会社が行っている査定は、無料で受けられます。

ただし、不動産会社が提示した査定額は、あくまでも相場からの見積もりであるため、実際に売却する際の「売却価格」を保証するものではないという点には注意が必要です。

不動産会社が査定額を求める際には、レインズ(REINS)という不動産流通標準情報システムも参考にしています。レインズは、登録をした宅地建物取引業者のみが閲覧できるものです。売買や賃貸などの募集情報や、成約情報などを見られるため、リアルタイムの不動産情報を得ることができます。

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土地の価格の推移を知りたい場合
土地の価格を知りたい場合は、ご紹介した4つの価格のうちの公示地価を確認しましょう。公示地価は、標準値として定められた一定の地点を継続的に調査している土地の価格であるため、価格の推移を知るのに適しています。

また、土地の価格を時期で比較するなら、「不動産価格指数」を参考にするとよいでしょう。不動産価格指数とは、2010年の平均を100として、毎月国土交通省より不動産の種類、地域ごとに公表されている指数です。実際の取引価格をもとに算出されているので、現在の価格水準や傾向を知ることができます。

電卓と家の模型と積み木

固定資産税、不動産取得税などの金額を計算するとき

固定資産税や不動産取得税などを知りたい場合には、その算出の基準となる固定資産税評価額や固定資産税評価額をもとにした課税標準額を知る必要があります。固定資産税額さえ分かれば計算できる税金もありますが、一方で、課税標準が分からないと計算できないものもあります。

加えて、課税標準の計算は複雑な場合があるため、正確な金額を把握するためには、納税通知書や評価証明書で確認するようにしましょう。

不動産を相続したとき

不動産のうち、土地の相続税を計算する際は、相続税や贈与税を算出する基準となる相続税路線価を参考にします。ここでは、「相続税評価額を知りたい場合」「相続した不動産の市場価値を知りたい場合」の2つのケースをご紹介します。

相続税評価額を知りたい場合
不動産の相続税評価額を求めるには、土地の場合は相続税路線価、建物の場合は固定資産税評価額から求められます。土地に相続税路線価が定められていない場合は、固定資産税評価額を用いて求められます。

相続路線価が定められている地域では路線価に持分割合と面積を掛けて求める「路線価方式」、相続税路線価が定められていない地域では固定資産税評価額に定められた倍率を掛けて求める「倍率方式」となります。

相続した不動産の市場価値を知りたい場合
相続した不動産の市場価値を知りたい場合は、不動産会社に査定を依頼するのが一般的です。相続税の計算のために必要な価格とは異なり、その時点の市場価値を知ることができます。なお、相続税の支払いのために不動産を早く売却したいといった事情がある場合は、早く売れるように市場価格よりも安い価格で売却する場合もありますが、まずは市場価格を知ることが大切です。

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硬貨に座る人と家のミニチュア

財産分与を行うとき

離婚による財産分与を行う際は、ほかの財産と同様に、不動産についても当事者間で合意ができれば、その合意内容に従った価格(金額)で分けます。通常は、実勢価格で合意することが多い傾向です。特に、財産分与を行う際に、不動産の売却を検討している場合は、不動産会社に依頼し、査定額を提示してもらいましょう。

●財産分与に関する記事はこちら
離婚に伴う財産分与…家や住宅ローンを処理する方法とは?

贈与税の金額を計算するとき

贈与税の金額を計算する際は、基本的に相続税と同じです。ここまでもお伝えしたように、土地は、路線価方式、定められていない地域は倍率方式で算出し、一方の建物は固定資産税評価額を用います。

裁判や調停を行うとき

財産分与で揉めた場合や相続での争いで裁判や調停がある際は、法的な効力のある不動産鑑定士による不動産鑑定評価を採用します。不動産鑑定評価は、裁判や調停のほか、会計上の時価把握を目的とする場合や、税務署へ提出する根拠資料としても活用されます。鑑定費用は、不動産の種類や評価額によって異なり、一般的な規模の一戸建ての土地と建物で30〜50万円程度かかるのが一般的です。

そのほか、金融機関が不動産の担保としての価値を評価するときには、不動産会社の査定額や鑑定評価額、固定資産税路線価、固定資産税評価額などが金融機関ごとに必要に応じて用いられます。

ひらめく人の手

自分の不動産の価値を正しく把握しよう!

これまで不動産にかかわる異なる価格を4種類ご紹介しましたが、それぞれの価格の特徴を正しく把握し、目的に合わせた不動産の価格を知ることが大切です。

自分が所有している不動産の現在の価値を把握する方法の1つとして、一度、査定を行うのもよいでしょう。基本的に、不動産会社が行っている査定は無料なので、具体的な売却の予定が決まっていない人でも気軽に相談できますよ。

三井のリハウスでは、不動産の無料査定や売却に関する相談を行っています。売却に対する疑問や不安がある場合は、ぜひ一度相談してみましょう。

●問い合わせはこちら

秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。