不動産価格指数とは?推移と見方を分かりやすく解説

不動産価格指数とは、国土交通省が公表する不動産の価値動向を表す指標です。国土交通省のウェブサイトで毎月掲載され、最新の不動産市場の動向を把握するのに役立てることができます。今回の記事では、不動産価格指数の見方や傾向について解説していきます。

目次
  1. 不動産価格指数とは?
  2. 地価公示や路線価との違い
  3. 不動産価格指数の推移(住宅)
  4. 不動産価格指数に注目しながら売買を検討しよう!
記事カテゴリ 売却 購入
2024.02.27

不動産価格指数とは?

不動産価格指数とは、不動産の価値動向を大きな視点で見たいときに活用される指標の1つです。2010年の平均不動産価値を100としており、比較も容易で分かりやすい指標ではありますが、定義や目的が分かっていないと活用しにくい場合もあるでしょう。今回の記事では、不動産価格指数の定義や目的、推移について詳しく解説していきます。

不動産価格指数のグラフと家の模型

定義

不動産価格指数とは、国土交通省が発表する、全国の不動産価格の動向を月単位で表す指標です。不動産価格指数には、住宅用と商業用の2種類があります。「住宅地」「戸建住宅」「マンション(区分所有)」の各カテゴリーと、これらをまとめた「住宅総合」についてその指数を示したものが「不動産価格指数(住宅)」です。

また、「店舗」「オフィス」「倉庫」「工場」など商業用の不動産についてその指数を示したものは「不動産価格指数(商業用不動産)」と呼ばれます。

指数の基準については、いずれの指数においても、2010年1月~12月までの不動産の平均値を基準(100)とし、2008年4月より算出されています。

●国土交通省が公表している不動産価格指数についてはこちら
国土交通省 | 不動産価格指数

目的と書かれた積み木

目的

不動産価格指数の主な目的は、以下の2点です。

・全国・地域ごとの不動産市場動向の迅速な把握
・不動産市場の透明性向上に伴う不動産取引の活性化

これらの目的の背景には、2007年の夏以降、アメリカのサブプライムローン問題をきっかけとして起こった、世界金融危機への反省があるとされています。

サブプライムローンは、収入や負債などから信用力が低く、融資を受けにくい個人を対象とした住宅ローンのことを指します。当時のアメリカでは、住宅が値上がり傾向にあり、住宅を担保にすればこれらの人々でも比較的容易にローンを組むことができました。

ところが住宅の価格は住宅ブームの終わりとともに停滞・降下し、結果として住宅を担保とした返済が困難になり、延滞率が上昇しました。サブプライムローンを組んでいる場合、通常のプライムローンへの借り換えは困難であり、結果として住宅ローンが大量に不良債権となってしまったのです。

これらの課題を踏まえて、不動産価格が与える経済への影響を把握し、適切な不動産取引を実現するために不動産価格指数が考案されました。

不動産の価格の推移について表した図

対象地域

不動産価格指数は、消費者物価指数とは異なり、47都道府県全てで指数が出ているわけではありません。住宅部門と商業用不動産部門では対象の地域が異なり、国土交通省によれば不動産価格指数(住宅)の対象地域は以下に分類されます。

・全国
・ブロック別(北海道、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州・沖縄)
・都市圏別(南関東、名古屋、京阪神)
・都道府県別(東京都、愛知県、大阪府)

不動産価格指数の季節調整値とは?

「季節調整」とは統計の分野で用いられる考え方の1つで、季節による需給の変化や、クリスマス・正月といった社会風習によって例年起こる変動要因を取り除き、ある期間内での固有の変化を知りたいときに使用されます。

たとえば、企業の決算期に伴う販売数・売上金額の上昇は例年起こる規則的なものであり、ある1年での特有な変化とはいえません。ある期間内での特有の変化は、こういった規則的な変動の陰に埋もれてしまう場合があるため、季節調整をすることでこれらの問題に対応するのです。

不動産価格も、異動や転勤、入園・入学シーズンなどの社会風習に伴う取引価格の上下動があるため、このような変動要因を補正した値が指数として使用されます。

季節調整される要素の1つである入園式

地価公示や路線価との違い

不動産の価値を測る指標として、地価公示や路線価などがありますが、これらと不動産価格指数はまったくの別物です。地価公示とは、国土交通省の土地鑑定委員会が年に一度公表する1月1日時点における標準地の単位面積当たりの正常な価格を指します。

国土交通省によれば、標準地とは「自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地」※1とされ、全国に26,000地点ほど存在します。

一方路線価とは、国税庁によれば「土地の価額がおおむね同一と認められる一連の土地が面している路線ごとに評価した1平方メートル当たりの価額」※2を指し、相続税や贈与税を申告する際に用いられる指標です。

このように、地価公示や路線価は不動産売買や納税といった、個別具体的な土地の価値を知りたいシーンで用いられ、不動産市場全体の動向を見るための不動産価格指数とは目的や用途が異なります

不動産価格指数の推移(住宅)

以下のグラフは、国土交通省が発表した令和5年9月・第3四半期分の不動産価格指数(住宅)を表にしたものです。このグラフからも分かるように、不動産価格は2013年頃より全体的に上昇傾向にあるといえます。

令和5年9月・第3四半期分・不動産価格指数の表

※3国土交通省より引用

不動産価格の全体的な上昇の理由として考えられる主な理由は以下の通りです。

・住宅ローンの低金利政策
・原材料価格の高騰
・新築マンションの供給戸数の減少

低金利な住宅ローン

低金利な住宅ローン

2013年頃から、住宅の種類を問わず全体的に指数の上昇が見られる理由としては、2013年の4月頃から始まった日銀の大規模な金融緩和が挙げられます。金融緩和によって住宅ローンが低金利化し、従来よりもローンが組みやすくなったことで、住宅全体の価格の上昇につながったと考えられます。

原材料価格の高騰

一般財団法人建設物価調査会の「建築資材物価指数」によれば、2024年1月の建築部門での建築資材費用は、2015年頃と比べ約1.35倍程度になっています。※4建築資材物価指数を示した以下のグラフから分かるように、2021年の初頭から急激に上昇しており、これは一戸建て住宅の指数が上昇したタイミングと類似します。

※4建設物価調査会総合研究所より引用

建設資材物価指数のチャート

新築マンションの供給戸数の減少

その人気と価格の高さから注目される新築マンションですが、全国宅地建物取引業協会連合会 不動産総合研究所が2021年に発表した不動産市場動向データ集年次レポート2020年※5によると、2013年を起点として、2020年の首都圏新築マンション供給戸数は約半分になっています。マンション需要は高い一方で、供給戸数が少ないため、結果として価格上昇につながっていると考えられます。

住居目的のほかに、投資目的でのマンション購入もマンション需要をさらに高める要因です。特に東京23区の価格上昇は大きく、2013年からの10年間で東京23区の新築マンションの価格は約2.3倍高くなっていることからも、その需要の高さがうかがえます。

需要に反して供給戸数が減少する理由としては、建築費や地代の高騰により、マンション開発業者が十分な土地の取得・マンションの建築ができないことが挙げられます。

不動産売買を検討する夫婦

不動産価格指数に注目しながら売買を検討しよう!

これまで、不動産価格指数の定義や目的、地価公示や路線価との違い、指数の推移について解説してきました。不動産価格指数は、不動産市場の動向を把握する際に適した指数といえます。

不動産価格指数を正しく理解し、活用することで、売却や購入予定の不動産について、今後の展望を予測しながら絶好のタイミングで不動産取引を行える可能性が高まります。とはいえ、不動産価格指数はあくまで全体像を把握する手段に過ぎないため、売却や購入を予定している不動産の詳細な情報は、不動産のプロに聞くとよいでしょう。

特に不動産売却を検討していて、どのタイミングで売却するべきか知りたい方は不動産会社に相談することがおすすめです。また、不動産売却の第一歩である査定も併せて行うことで、自身の保有する不動産の価値を知ることができるでしょう。

三井のリハウスでは、豊富な取引実績と精度の高い査定結果をもとに、不動産売却の最適なプランをご提供いたします。ぜひお気軽にお問い合わせくださいね。

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※1:地価公示制度の概要,厚生労働省
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000132.html
(最終確認:2024年1月16日)

※2:令和3年分の路線価等について,国税庁
https://www.nta.go.jp/about/organization/kantoshinetsu/release/data/r03/rosenka/index.htm#:~
(最終確認:2024年1月16日)

※3:不動産価格指数(令和5年9月・令和5年第3四半期分),国土交通省
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001715748.pdf
(最終確認:2024年2月13日)

※4:建設資材物価指数(2015年基準),一般財団法人建設物価調査会
https://www.kensetu-bukka.or.jp/business/so-ken/shisu/shisu_shizai/
(最終確認:2024年2月13日)

※5:不動産市場動向データ集 年次レポート 2020年,(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 不動産総合研究所
https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/04/nenji2020.pdf
(最終確認:2024年2月13日)

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
https://www.izumi-ohishi.co.jp/profile.html