Column / 2022 01,11

最新の不動産価格の推移を検証!今後の不動産の動向は?

不動産の購入・売却を考えると、「物件の価格がどう推移しているのか」「いつが買いどき・売りどきなのか」は、気になるポイントでしょう。コロナ禍や東京五輪後の影響、大阪万博の開催を控えた状況で、国内の不動産市場はどのように推移するのかを検証しました!

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けにの節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/

不動産価格の推移を知るには?

不動産の購入・売却を考えると、「物件の価格がどう推移しているのか」「いつが買いどき・売りどきなのか」は、気になるポイントでしょう。

コロナ禍や東京五輪後の影響、大阪万博の開催などによって、国内の不動産市場は今後、どのような価格の推移を見せるのでしょうか?

家の模型とグラフ

不動産価格の推移を予測したいと思ったら、「公示地価」をチェックしてみましょう。
公示地価は、土地の評価や取引の基準にもなる、日本の代表的な地価指標の1つとされています。国土交通省が毎年1回、1月1日時点における標準地の1平方メートルあたりの地価を調査し、公表するものです。

公示地価を見れば、最近の土地価格の動きが分かるので、不動産価格のおおまかな傾向や今後の推移を予測する参考になります。併せて、国土交通省が2012年8月より公表を始めた「不動産価格指数」もチェックしておくとよいでしょう。

不動産価格指数とは、IMF(国際通貨基金)ほか国際機関の働きかけによって、不動産価格の動向を示すために作られたものです。指数は、実際の取引価格をもとに、物件の立地や特性といった影響を取り除いて算出されています。

公示地価が地点単位の価格水準を把握するデータであるのに対して、不動産価格指数は不動産取引の時勢を把握するデータといえるでしょう。

現状の不動産価格の推移は、新型コロナウィルスによるコロナ禍の影響下であっても、建物は堅調に推移する一方、土地は下落傾向にあるようです。次ではそれらについて詳しく見ていきます。

全国・首都圏における不動産価格の推移

まずは住宅についての不動産価格指数を見ていきましょう。

全国の不動産価格の推移

こちらの表は、国土交通省が2021年10月に発表した、全国の住宅をめぐる不動産価格指数の推移※1です。

不動産価格指数のグラフ

住宅総合の数値を見ると、一昨年、昨年と続いて指数は増加しており、前年比10ポイント増です。詳しく見ると、昨年は住宅総合と住宅地が落ち込み、戸建てが微増、とやや低迷気味となっていますが、マンションがその低迷を牽引する形で前年比17.1ポイント増。全体としては一昨年から引き続き増加傾向、といえます。

昨年はコロナ禍の影響からか少々の落ち込みを見せたものの、全体的な住宅価格、特にマンションの価格は増加傾向といえるでしょう。

首都圏の不動産価格の推移

それでは、首都圏の住宅をめぐる価格推移※1を見ていきましょう。2019〜2021年の不動産価格指数は以下のように変化しています。

2021年7月 2020年7月 2019年7月
住宅総合 125.0 111.2 113.7
住宅地 106.3 96.5 101.4
戸建住宅 107.8 97.9 101.3
マンション 161.7 142.6 140.4

首都圏の不動産価格推移の動向は、全国の動向とほぼ変わらない形となっており、マンションの価格は引き続き上昇しています。

主要都市における土地の価格の推移

住宅をめぐる不動産価格の後は、土地の価格に特化した推移に着目していきましょう。ここでは、国土交通省の「令和3年の地価公示結果の概要」※2から、土地の価格の動向をご紹介します。
国土交通省からの発表によれば、土地の価格はコロナ禍の影響がより色濃く反映されている、と考えられます。

住宅地は地方4市以外、下落傾向

住宅地の価格は全国総じて下落し、東京圏は8年ぶり、大阪圏は7年ぶり、名古屋圏は9年ぶりとそれぞれ三大都市圏も下落に転じました。地方圏も同様に、全体では0.3%減となっています。しかし地域別に見ていくと、札幌、仙台、広島、福岡の地方4市は前年比2.7%増、そのほか佐賀県、熊本県、大分県、沖縄県も上昇傾向が見られます。

住宅地
2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
全国 0.0 0.3 0.6 0.8 -0.4
三大都市圏 0.5 0.7 1.0 1.1 -0.6
東京圏 0.7 1.0 1.3 1.4 -0.5
大阪圏 0.0 0.1 0.3 0.4 -0.5
名古屋圏 0.6 0.8 1.2 1.1 -1.0
地方圏 -0.4 -0.1 0.2 0.5 -0.3
地方4市 2.8 3.3 4.4 5.9 2.7
その他 -0.8 -0.5 -0.2 0.0 -0.3

こういった土地の価格の傾向は、不動産の取引自体の減少や、雇用不安による世帯収入への不安から、需要側が慎重な姿勢を取ったためと見られています。

商業地も同様の傾向

商業地も住宅地と同様の不動産価格の推移を示しています。なかでも大阪圏に際立った下落が見られます。

商業地
2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
全国 1.4 1.9 2.8 3.1 -0.8
三大都市圏 3.3 3.9 5.1 5.4 -1.3
東京圏 3.1 3.7 4.7 5.2 -1.0
大阪圏 4.1 4.7 6.4 6.9 -1.8
名古屋圏 2.5 3.3 4.7 4.1 -1.7
地方圏 -0.3 0.5 1.0 1.5 -0.7
地方4市 6.9 7.9 9.4 11.3 3.1
その他 -0.9 -0.4 0.0 0.3 -0.9

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の自粛要請によって、国内外の観光客が激減した商業地では数値に大きな下落が見られました。観光地ではない、日常用品を求める来客のある商業地では昨年からの変動は比較的少なかったようです。

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今後の不動産市場に影響を与える要因は?

2021年8月には東京五輪が終わり、引き続きコロナ禍が色濃く社会に影響しています。2025年万国博覧会(万博)の誘致に成功した大阪では、夢洲(ゆめしま)までの鉄道延伸をはじめとする、さまざまな不動産開発が計画・実施される可能性が高いとみられています。こういった社会的な要因は、今後の不動産市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

虫メガネと家の模型と2022という文字のカード

新型コロナウイルス感染症

新型コロナウィルス感染症防止に向けて、2020年4月に政府から初の緊急事態宣言が発令され、何度かの解除、発令を繰り返し、2021年9月30日に緊急事態の宣言が解除されました。その期間による影響は、不動産価格指数、公示地価ともに一時の落ち込み、といったものにとどまり、今後は堅調に推移するとみられます。

リーマンショックやバブル崩壊ほどではないにせよ、コロナ禍は一時的な不動産価格の下落を招き、リモートワークを定着させてビジネスパーソンに在宅を促し、人々のライフスタイルを変化させました。

東京五輪

2021年夏に終了した東京五輪のために作られた選手村は、閉幕後にマンションとして販売されることが決まっています。このため、当地の晴海や勝どきなどのエリアには不動産市場の影響が出ると予想されていますが、ほかのエリアに関してはそれほどの影響は出ないとみられています。

新国立競技場

2022年生産緑地問題

2022年には、「生産緑地法」によって優遇されていた農地が一斉に売却されるのではないか、それが都市部の地価を暴落させるのではないか、といわれています。これが「2022年生産緑地問題」です。

「生産緑地」とは、固定資産税や相続税などで優遇措置を受けられる都市部の農地のことです。1992年に改正された「生産緑地法」によって、指定された農地は、税制上の優遇を受けられる一方、30年間は農業を行わなければならず、勝手に建物を建てたり、簡単に売却したりはできないといった制限が設けられました。

2022年は、生産緑地法が改正された1992年から30年が経過した年になります。現在の生産緑地の約8割が営農義務を終えるので、大量の農地が売却されて市場に影響するのではないかといわれているのです。

ですが、現実にはそのような急激な影響はないと考えられています。理由の1つは、生産緑地に指定された農地を相続した人の多くが、「相続税等納付猶予制度」を利用しているためです。この制度では、営農を20年以下でやめると猶予税額と利子税を支払う決まりになっています。

ほかにも、2018年の法改正で、面積要件が500平方メートルから300平方メートルへ引き下げられたり、直売所や農家レストランを設置することが許可されたりと生産緑地のメリットが増えたことも大きなポイントです。さらに、期限が切れる前に申請すれば10年延長可能な「繰り返し延長施策」が政府により行われています。そのため、地価暴落の可能性は薄い、という見通しです。

初春の農耕地の風景

2025年大阪万博

2025年の大阪国際博覧会(万博)を控えた大阪圏の動向が注目を集めるなか、不動産サービス会社のJLLは、大阪万博が大阪の不動産市場に与える影響を分析しました。それによると、万博により都市インフラの整備や都市機能を担う不動産の開発が促進され、国際都市「大阪」の魅力を発信することで、世界のビジネスを引き付ける絶好の機会になると予測しました。

東京五輪ではインフラ整備に伴う経済効果が早い段階から確認でき、それよりも早い時期から地価上昇が始まり、不動産価格が跳ね上がりました。JLLは、大阪万博も、インフラ整備と再開発による不動産価格上昇を予想しています。

ほかに不動産市場に影響を与えそうな社会情勢としては、国内の高齢化があります。2025年の日本は、総人口の65歳以上が30%を超えることになり、所有している不動産を手放す人が今後多くなると予測されています。また、不動産価格の推移を理解するには、それらに加えて経済動向もチェックしたいところです。不動産価格は、日経平均株価に伴い高くなり、住宅ローン金利が低いと高くなるという相関関係もみられます。

不動産売買で失敗しないためには?

不動産価格の推移を知ることは、納得のいく不動産売買を行うための重要なポイントです。公示地価や不動産価格指数のように公開されているデータをチェックして、自分なりに価格相場を捉えてみましょう。売買について不動産会社と話し合うときにも、前知識があるときっと役立ちますよ。

不動産価格は、公示地価や不動産価格指数などで捉えながらも、局所的に調べる必要があります。たとえば土地に関していえば、現状で全体的に価格の下落が顕著にあるなかで、中心部の特殊な住宅地や利便性の高い土地は堅調に価値を維持しています。また、コロナ禍によるリモートワークの定着から、郊外エリアや地方エリアの人気が高まったり、マイホームに交通の利便性より広さが求められたりという傾向もあります。

不動産価格の推移からは、社会情勢に伴う、人々の支持する傾向が分かります。不動産売買で失敗しないためには、情報をしっかり押さえながら、その先の予測を立て、信頼できる相手と手堅い交渉をしていくことが大切です。

※1出典:不動産価格指数,国土交通省
001429345.xlsx(live.com)
(最終確認:2022年1月7日)

※2出典:令和3年地価公示の概要, 不動産・建設経済局(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001391750.pdf
(最終確認:2022年1月7日)