Column / 2021 05,20

瑕疵担保責任とは?不動産売買前に押さえたい内容や執行期間を解説

瑕疵(かし)担保責任とは、土地や建物などの売買物件に不具合が見つかった場合、売主がその責任を負うことをいいます。2020年4月には、不動産を含む売買契約に関する民法が改正されました。そこで今回は、法改正によって何が変わったのか、どのような対策を取ればよいのかなど、売主の立場から捉えた瑕疵担保責任(契約不適合責任)について分かりやすくご紹介します。

村田洋一

さくら事務所 不動産コンサルタント。宅地建物取引士、行政書士。消費者にとっての最良の不動産取引を目指し、多岐にわたる不動産トラブルの相談を受ける。
https://www.sakurajimusyo.com/

「瑕疵担保責任」は、不動産売買の重要ポイント!

瑕疵(かし)担保責任とは、土地や建物などの売買物件に不具合が見つかった場合、売主がその責任を負うことをいいます。売却が済んだ後でも責任を取らなければならないので、不動産売買を行う売主は注意したいポイントの1つです。

2020年4月には、不動産を含む売買契約に関する民法が改正されました。それによって、瑕疵担保責任は「契約不適合責任」という名称に変わり、内容にもいくつか違いが出てきています。

そこで今回は、法改正によって何が変わったのか、どのような対策を取ればよいのかなど、売主の立場から捉えた瑕疵担保責任(契約不適合責任)について分かりやすくご紹介します。

これからマンションや土地、戸建を売却する人は、「手続きは不動産会社が全部やってくれるから…」と任せきりにせず、瑕疵とは何を指すのか、売主の責任範囲はどこまで及ぶのかなど、自分でもきちんと把握しておくと安心ですよ。

間取り図を見る人たち

瑕疵担保責任の基礎知識

契約不適合責任に法改正されましたが、まずは、瑕疵担保責任の概要からご説明しましょう。

買主をトラブルから守るもの

瑕疵担保責任とは、物件購入後のトラブルから買主を守るための取り決めです。

たとえば、物件を購入した後に、設備の故障や物件の損傷・欠陥などが見つかった場合「知らなかったからそちらで何とかしてください」とそのまま押し付けられては、買主は困ってしまいますね。

このような事態を防ぐために、売主が事前に把握していなかった不具合=「隠れた瑕疵」が売買後に発覚した場合、その責任は売主が取るという決まりを定めたものが、瑕疵担保責任です。買主は、定められた期間内に隠れた瑕疵を申し出ることで、損害賠償請求、あるいは売買契約の解除を行うことができます。

ちなみに、売主には不具合についての告知義務があるので、知っていたにもかかわらずわざと伝えなかった場合には、期間外であっても賠償請求や契約解除の対象となるので注意が必要です。

瑕疵は大きく4つに分類される

瑕疵の対象とされるものには、次の4種類が挙げられます。

●物理的瑕疵
土地や建物の目に見える不具合を指します。建物の場合は雨漏り、シロアリの被害、給排水管の故障、設備の故障など。土地の場合は地盤沈下、土壌汚染、地中に異物が埋まっているなどが挙げられます。

●法律的瑕疵
建築基準法や都市計画法といった、土地・建物に関係する法律に触れる不具合を指します。「接道義務(建物の敷地は一定の基準で道路に接していなければならないという、建築基準法による決まり)を満たしていないので家が建てられない土地だった」「都市計画道路上にかかっている物件で、将来は立ち退きが必要だった」といった例が挙げられます。

●心理的瑕疵
該当の土地・建物で過去に起きた、不安感や嫌悪感を覚えるような事象を指します。具体的には、殺人事件・火災・孤独死による遺体の腐敗などが挙げられます。

●環境的瑕疵
土地・建物そのものではなく、周辺環境の問題を指します。ゴミ処理場や火葬場など嫌悪感を覚える施設が近所にある、繁華街や大きな道路に接していて騒音がするといったことが挙げられます。

瑕疵担保責任は、冒頭でも述べた通り、2020年4月1日より「民法の一部を改正する法律」の施行に伴い「契約不適合責任」と改められました。次は、旧法の瑕疵担保責任と、新法の契約不適合責任には、具体的にどのような違いがあるのかを見ていきましょう。

家の模型と虫眼鏡

法改正で変わった点は?

瑕疵担保責任から契約不適合責任に改められたことで、結論として売主に課せられる責任は今までより重くなりました。具体的には、次の3つが主な変更点です。

責任追求の焦点

変更点の1つは、瑕疵に対する責任の問われ方です。旧法の瑕疵担保責任は、売買段階で売主が気付かなかった「隠れた瑕疵」に対して、その責任を追及できるというものでした。一方、新法の契約不適合責任では「その瑕疵が売買契約書に書かれていたかどうか」が、責任追及の焦点となります。

たとえば、買主が物件に雨漏りがあることを知ったうえで購入しても、それが契約書に書かれていなければ「契約書と異なるものを売った」として契約不適合責任を負うことになりかねない、ということです。

買主が請求できる権利内容

新法による契約不適合責任では、買主が請求できる権利が増えています。

・瑕疵担保責任:損害賠償請求、契約解除
・契約不適合責任:損害賠償請求、契約解除、追完請求、代金減額請求

「追完請求」とは、不具合が認められた場合に代替品への交換や修理によって、契約内容を満たすよう求めることをいいます。そして、交換や修理による追完請求ができない場合に、代金の減額を求めることが「代金減額請求」です。

権利行使期間

買主が瑕疵について権利を行使できる期間にも、変化があります。

・瑕疵担保責任:買主が事実を知ってから1年以内に行使が必要
・契約不適合責任:買主が事実を知ってから1年以内に通知が必要

旧法では1年以内に権利行使しなければならなかったのに対して、新法では1年以内に不具合を伝えればよいとされています。ただし、売主に悪意や重過失(重大な不注意)が認められた場合には、1年という期間制限にかかわらず責任を追及されることになります。

ちなみに、買主が権利を行使できなくなる時効は次の通りです。
・瑕疵担保責任:引渡しから10年
・契約不適合責任:引渡しから10年、買主が事実を知ってからは5年

つまり、引渡しから10年以上経過して発見された不具合については、売主は責任を追及されることはありません。また、買主が不具合を発見しても、その後5年間何もしなければ権利は消滅するということです。

悩む夫婦

瑕疵トラブルを防ぐために売主ができること

法改正によって売主の責任が重くなったと知り、不動産売却に不安を覚える人もいるかもしれません。瑕疵トラブルにならないよう、売主が行っておくと安心な事前対策がいくつかあります。

売買契約書の見直しをする

売買契約書をすでに作成している、またはこれから作成する人は、瑕疵トラブルをカバーする内容になっているかどうかを入念に見直してみましょう。

新法では、責任追及の焦点が「売買契約書」となっていることは上で述べた通りです。そのため、これからは売買契約書に記載する内容についてより注意しなければなりません。

・「特約・容認事項」の欄に、物件の状態や特徴を細かに記載する
・契約不適合責任の期間を、「納品から○か月以内」のように具体的に制限する
・売買契約書の内容について、事前に専門家のチェックや監修を受ける

このような点を心がけて、売買契約書を作成するとよいでしょう。

インスペクションを行う

売却する物件は、事前にインスペクションを行っておくとよいでしょう。インスペクションとは、売買契約前に行う住宅診断のことです。物件の状態を改めてきちんと把握してから取引することで、後から瑕疵が発覚するリスクを抑えられます。

●インスペクションに関する記事はこちら
インスペクションとは?メリットや依頼先の選び方をご紹介

瑕疵保険に加入する

万が一、瑕疵トラブルが起きてしまった場合に備えて、個人間売買用の瑕疵保険に加入しておくのもよい方法です。

個人間売買用の瑕疵保険とは、売主に依頼された検査事業者が加入する保険です。検査事業者は売主の物件を検査し、一定の基準をクリアした品質であることを買主に保証します。その後、もしも瑕疵が見つかった場合には、買主は検査事業者に保険金での補修を求めることができます。

売主にも買主にも安心できる保険ですが、加入には一定の基準がある点、そして検査費用や保険料といったコストがかかる点には注意が必要です。

点検する作業員

瑕疵担保責任・契約不適合責任は任意規定

瑕疵担保責任(契約不適合責任)は、不動産売買における重要な注意点です。ただし、不動産会社の仲介による個人間での不動産取引の場合は、旧法でも新法でも「任意規定」とされています。

任意規定とは、「強制するものではなく、双方が合意すれば排除することができる規定」という意味です。つまり、売買契約書に特約を盛り込んで買主の権利行使に制限を付けたり、売主の責任範囲を狭めたりして、規定を排除・免責することは可能ということになります。

たとえば、上で述べたように契約不適合責任の期間を制限するほか、「○○の故障や不具合について、売主は修繕や損害賠償の責任を一切負わないものとする」といった内容を書き込むことで、売買契約後の売主の負担を軽くすることができます。

とはいえ、万が一に備えて瑕疵担保責任・契約不適合責任の内容を知っておくことは、無用なトラブルを防ぐのに役立ちます。もちろん、こうした不安について親身になってくれる不動産会社を選んでおくことも大切です。売主も買主も安心できる対策を取って、不動産売却を成功させてくださいね!

スーツを着た女性と夫婦