借地権付き建物とは?メリットや注意点、売却方法からよくあるトラブルまで詳しく解説!

借りた土地の上に建っている建物を「借地権付き建物」といい、一般的な不動産に比べて安く購入できる特長があります。借地権付き建物に関するメリットや注意点、売却方法まで詳しく解説します。

目次
  1. 借地権付き建物って何?
  2. 借地権付き建物を所有するメリットと注意点
  3. 借地権付き建物の売却方法とは?
  4. 借地権付き建物にまつわるトラブルと対処法
  5. 借地権付き建物の売買は慎重に検討しよう!
記事カテゴリ 売却 一戸建て 土地
2023.01.26

借地権付き建物って何?

不動産売買情報サイトで「借地権付き」という表記が使われているのを目にすることがあります。一般的な不動産物件に比べると購入価格が安いため気になるけど、どのような意味か何となくイメージがついてもしっかりとした定義や特徴までは分からない、という人が多いのではないでしょうか?

住宅の模型

借地権付き建物とは、借りた土地の上に建つ建物のことを指します。通常、家の所有というと、土地と建物両方の所有権を持っている状態をイメージする人が多いかもしれません。借地権付き建物を取得する場合はこの限りではなく、「建物は所有しているが、土地は借りている」という扱いになります。

そもそも、借地権付き建物が市場に流通しているのは、どのような理由からなのでしょうか?これは、土地の所有権を保持している地主にメリットがあるためです。

地主のメリットとしては、自己所有の土地に、第三者が所有する建物があると、相続税評価額が抑えられるので相続税対策になります。借地権を設定することで、地主にとっては、建物の売却による利益が得られるだけでなく、土地を貸していることにより安定して収入が得られ、節税効果も期待できるといったように、複数のメリットがあるのです。

借地権付き建物を所有することが、土地と建物の両方を所有していることとどのような点で異なっており、どのようなメリットと注意点があるのか、具体的にイメージしにくいと感じる人も多いのではないでしょうか?そこで今回は、借地権付き建物についての理解を深めたい人や、借地権付き建物の購入や売却を考えている人に向けて、借地権の定義や種類を分かりやすく解説していきます。

借地権とは

借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のことです。借地権を有していれば、毎月地主に地代を支払うことで、その土地に建物を建てるなどして利用できます。

借地権には「地上権」と「賃借権」が存在します。地上権とは、土地を自由に利用できる権利です。地主の許可がなくても建物を建てたり、売却したりすることが可能です。

一方で、有している権利が賃借権にあたる場合、地主の承諾がないと建て替えや売却ができません。さらに、転貸するのにも地主の承諾が必要です。

売地の看板

地上権と賃借権のどちらにするかは借地権者と地主との合意のうえで決められます。

また、市場に流通している借地権付き建物のうちの多くは、賃借権が付与されたものであり、土地の売却や転貸を行うには地主の承諾を得る必要があるのが一般的です。

なお、借地権と対をなす言葉として、土地を貸す権利を「底地権」と呼ぶことがあります。土地の所有権を持っている状態を、「借地権と底地権を両方持っている」といい換えることも可能です。

借地権には種類がある

借地権は、地上権と賃借権という分類以外にも、土地の契約時期に応じて3種類に分けられます。具体的に見ていきましょう。

旧借地権
1992年8月1日より前から土地を借りている場合、「旧借地権」の決まりが適用されます。旧借地権は、土地を借りられる期間である存続期間が建物の構造ごとに異なるのが特徴で、木造は30年、堅固な造りの建物は60年のように決められています。また、建物が老朽化し、社会的・経済的に価値を失ってしまうと権利が消滅してしまう点も、旧借地権の特徴の1つです。

旧借地権は、契約更新を行うことで引き継ぐことができ、半永久的に土地を借り続けられます。そのため、土地を借りている側のメリットが大きい借地権といえるでしょう。

普通借地権
借地権をめぐって法改正が行われ、借地借家法で1992年8月1日以降に新たに定められた権利の1つに「普通借地権」があります。法改正があったのは、旧借地権は土地を貸している側から見ると不利益が大きく、地主の反発が激しかったという経緯からです。

普通借地権の存続期間は、当事者が契約で30年以上の存続期間を定めた場合には、その期間になります。特約がなければ、存続期間は30年となり、30年より短い期間の定めは無効とされます。また、劣化により建物の価値が下がっても、借地権が自動的に消滅することはありません。更新後の借地権の存続期間は、最初の更新後は20年、それ以降は10年とされています。当事者がこれよりも長い存続期間を定めることも可能ですが、これよりも短い存続期間の定めは無効です。

定期借地権
借地借家法では、普通借地権以外にも「定期借地権」という権利が定義されています。定期借地権は存続期間が50年と長く、更新できないことが特徴です。

定期借地権の付いた土地は、旧借地権や普通借地権の付いた物件よりも安く売られている傾向があります。ただし、存続期間が終了したら地主に土地を更地にした状態で返すことが条件となっているため、契約終了時に建物の解体費用が発生することになります。

木造住宅の模型

借地権付き建物を所有するメリットと注意点

借地権の定義や種類については先述の通りですが、借地権付き建物を持つことにはどのようなメリットと注意点があるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

メリット

借地権付き建物を持つことには、以下のようなメリットがあります。

安く購入できる
借地権付きの物件は、取得時に土地代を払う必要がないため、所有権付きの物件と比べて安く購入できる傾向にあります。初期費用を抑えられることにより資金計画を立てやすく、低予算で一戸建てに住みたい人におすすめです。

税金を抑えられる
借地権付き建物は、建物部分にのみ固定資産税や都市計画税がかかるため、土地と建物の両方を所有する場合と比べ、これらの税金を軽減できるというメリットがあります。

ただし、建物に対する固定資産税や不動産取得税は払う必要があります。

計算している様子

長期にわたって借りられる
借地権には期限が設けられていますが、普通借地権の場合でも最低期間が30年と、長期的に利用できます。更新ができればさらに利用期間を延ばすことも可能です。

また、地主からの更新拒否は建物が長期にわたって使用されていない場合や、地代を支払っていない場合などの正当な理由でないとできません。万が一、正当な理由なく居住者に立ち退きを命じる場合は、地主が立ち退き料を支払う必要があるため、住み続けるうえでのリスクは低いといえるでしょう。

注意点

借地権付き建物には、購入価格が安いといったメリットがありますが、以下の点に注意が必要となります。

地代を払わなければいけない
土地を借りるには地主に毎月地代を支払う必要があります。これは部屋を借りるときに払う家賃のようなものです。

普通借地権の場合、地代の相場は、その建物を所有した場合に発生する固定資産税・都市計画税の3倍程度になります。

借地権付き建物に暮らすことで、地代の支払いが必要となる一方で、前述した通り、所有権を保持していなければ土地に発生する固定資産税や都市計画税は支払わなくてよいのです。建物の住宅ローンが残っている場合は返済額と地代の両方を支払う必要があるので注意しましょう。

リフォームには地主の承諾が必要である
借地権付き建物の大幅なリフォームや建て替えに加え、土地の譲渡や売却を行うには地主の承諾が必要となる場合があります。簡易的なものであれば問題ありませんが、大きく改変するには事前に、地主に相談しておくとよいでしょう。

無許可でリフォームをしたことにより、契約違反となってしまう恐れがあります。また、リフォームの承諾を得られたとしても、増改築承諾料の支払いを求められることがある点に注意しましょう。

家の模型と工具・電卓

銀行の融資が受けられないことがある
借地権付き建物を取得する場合に銀行の融資を受けられない可能性があります。なぜなら、土地部分の所有権を借り入れる本人が持っていないことから、土地と建物両方を所有している場合と比べると担保評価が低い傾向にあるためです。ただし、定期借地権の新築マンションは融資を受けられることが多いため、そちらを検討してみるのもよいでしょう。

借地権付き建物の売却方法とは?

最終的に売却することを見据えたうえで、借地権付き建物の購入を検討している人もいるでしょう。

借地権付き建物の売却については、借地権という権利を売却するパターンや、物件そのものを売却するパターンなどが存在します。詳しく見ていきましょう。

更地

借地権を地主に売る

借地権は、取得時に地主から購入したものとして扱われることが一般的であり、一度得た借地権を地主に返す形で売却が可能です。借地権を取り戻せば、地主は底地権と借地権の両方を所有することになるため、土地の資産価値が上がり、地主から見てもメリットのある売却方法であるため、すんなりと売却が決まることもあるのです。

また、この方法では、借地権のみを売却するか、建物まで一緒に売却するか選択できます。ただし、借地権のみを売却する場合は建物の解体を行って更地にすることが必要となり、解体費用が発生する点に注意が必要です。

借地権を第三者に売る

地主の許可があれば、借地権は地主のみでなく、第三者にも売却できます。

地主の許可を得る際に、承諾料を支払うのが一般的です。さらに、地主の多くは自身の地代収入がなくなることから、追加で条件を設定することもあります。承諾料は、借地権の売却価格の10%程度で設定されることが一般的です。

なお、借地権は個人のみではなく、不動産会社にも売却できます。承諾料を差し引いても、地主に売却するよりも高く売却できることもあるので、一度試算を行って検討してみることをおすすめします。

等価交換後に売る

十分な土地の広さがある場合は、借主が所有している借地権の一部と、地主が所有している底地権の一部を同じ価値だけ交換した後に、所有権を得てから売却することもできます。この方法では、所有権を得た土地を売却することになり、借りていたときよりも資産価値が高くなるため、売却による収益性は高い場合が多いです。

ただし、この方法は地主と借主の双方で所有権を持てるというメリットはあるものの、地主と交換比率の交渉や土地の測量を行う必要があるため、時間や手間がかかることを把握しておきましょう。

借地権・底地権を第三者に売る

地主が所有する底地権と借主が所有する借地権を合わせ、所有権にした状態で第三者に売ることも可能です。この際には地主との交渉が必要ですが、所有権となると土地の資産価値が高くなり、売れやすくなる可能性があります。

しかし、地主にとっては財産である土地を手放すことになるため、難しいともいえます。

手の上に家の模型

借地権付き建物にまつわるトラブルと対処法

借賃権付き建物について調べている人にとって、地主とのトラブルはないのかという点が気になるのではないでしょうか?そこで、よくあるトラブルとともにその対処法についてもご紹介します。

地代のトラブルと対処法

借地権付き建物の購入後、地主が地代の値上げを交渉してくる場合があります。地代が高くなっても、地主との関係を悪くしたくないからと断れない人も、なかにはいます。

しかし地代の値上げを行うには、一定の条件を満たす必要があるうえ、借主と地主双方の合意が必要です。それまでの地代を支払い続ければ、契約は保持されるので、地主からの地代の値上げ交渉には慎重に対応しましょう。あらかじめ契約時に、地代の値上げについて売買契約書に特約を入れておくことでトラブルを避けられます。

更新のトラブルと対処法

借地権の更新時には更新料を支払うケースが多くあります。ただし、更新料の支払いは、厳密には必須ではなく、契約書に記載がある場合にのみ支払うものとされているのです。

そのため、高額な更新料を請求してきた場合は、支払う必要はありません。契約時に条項のなかに更新料に関するものがあるか確認し、地主と話し合うことでトラブルを避けましょう。

立ち退きのトラブルと対処法

存続期間内にもかかわらず、地主から突然立ち退きを命じられるケースがあります。このトラブルは特に、地主が相続によって変わった際に起こりやすい傾向にあります。

ただし、このトラブルについても、借主に契約違反があった場合や長期的に建物を利用していなかった場合などのような正当な事由がなければ、借主側は立ち退きの要求を受け入れなくても問題はないでしょう。

家の前で対談する様子

借地権付き建物の売買は慎重に検討しよう!

借地権付き建物は購入価格が安いことや、固定資産税を抑えられるなど、費用面でのメリットが大きくみられますが、地代を払う必要があったり、思うようにリフォームできなかったりなどの注意点もあります。よくあるトラブルも契約時に気を付ければ対処できるものが多いため、購入時には地主と慎重に話し合いましょう。

また、借地権付き建物の売却方法は、いくつかの選択肢が存在します。なかには、地主に承諾料の支払いがあったり、解体費用が発生したりする場合もあるため、それぞれの売却方法の注意点を押さえておくことが大切です。複数の売却方法のなかから、自分に合った方法を選ぶことが大切になります。

三井のリハウスでは、借地権付き建物の売却をはじめとして、不動産にかかわるさまざまなサポートを行っています。不動産に関する相談や質問なら、気軽にお問い合わせくださいね。

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監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
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