古民家売却を成功させるには?売却方法と費用を解説

古民家の売却方法や注意点、また古民家売却の際に発生する税金や特例について解説します。そのまま売却するだけでなく、リフォームや更地にしたりと、築年数が古い建物を売却するコツもご紹介します。

目次
  1. 古民家の売却は難しいって本当?
  2. 古民家を売る4つの方法
  3. 古民家売却時の費用と節税方法
  4. 古民家売却の注意点
  5. 多くの選択肢から検討しよう!
記事カテゴリ 売却 費用 一戸建て
2022.12.22

古民家の売却は難しいって本当?

古民家を手放したいと考えていても、買い手が見つからないのでは?と考えている方も多いのではないでしょうか。「古民家」という言葉に明確な定義はありませんが、一般的に築50年以上の建物を指し、多くの場合が一戸建ての住宅です。

築年数が古いこともあり、古民家の売却は難しいといわれることが多い傾向にあります。その理由としては、まず耐用年数をすぎていて建物の価値が低い場合が多い点です。建物の構造ごとに、税制上で資産として使用できる期間が「耐用年数」として決められており、一般的に築年数が増えるにつれて価値が下がる傾向にあります。

公益財団法人東日本不動産流通機構が公表している、2022年1〜3月に売買が成約した首都圏の中古戸建住宅における築年数ごとの成約価格は、次の通りです。※1

築年数~築5年~築10年~築15年~築20年~築25年~築30年
価格4700万円4448万円4325万円4033万円3931万円3227万円

また、築年が古いために1981年6月1日以降の新耐震基準を満たしていない場合があるのも、売却しにくい理由の1つです。

以上のような理由から、古民家を売却するには売れやすくする工夫が必要といえます。そこで今回は、古民家の売却で損をしないために、売却方法の選択肢や売却時にかかる費用、売却時の注意点などをご紹介します。

古民家

古民家を売る4つの方法

実際に古民家を売るとなったら、売却方法にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、古民家を売却する方法を4つ、メリットや注意点を中心に解説します。

古民家をそのまま残して売る

まず挙げられるのは、古民家を残したまま土地と併せて売却する方法です。この方法を取ると、物件情報サイトや広告では「古家付き土地」と掲載されます。古家付き土地とは、資産価値がほぼない建物が建っている土地のことです。

メリット
古民家付き土地として売るメリットには、「解体の手間がかからず、すぐに売りに出せる」「解体しないので売主の出費が少なくて済む」などが挙げられます。また、古民家を残しておくことで「古民家を買いたい人」「更地にして活用したい人」の両方の需要をカバーすることができるため、幅広い層の需要にマッチするといえるでしょう。

注意点
「古家付き土地」として売りに出す場合、注意しなければならないこともあります。1つは、買主から値引きを求められる場合がある点です。買主が土地だけを活用したいと考えている場合、購入後に古民家を解体することになるので、解体費用が発生する分の値引きを求められることがあります。

また、契約不適合責任を問われるリスクもあります。契約不適合責任とは、売買契約書と異なる内容の物件を引渡した場合に売主が負う責任のことです。たとえば、土地の下には古い基礎や建築資材といった地中埋設物が埋まっている場合がありますが、更地にせずに売却することによって、それらに気付かないまま引渡してしまうことがあります。

売買契約成立後にこのようなものが発見された場合、補修や撤去費用を請求されたり、契約解除になることがあるので注意しましょう。このような事態を避けるためにも、売主は売却予定の物件の状態を詳しく把握し、それを包み隠さず買主に伝えるようにしましょう。

物件の状態を把握するための手段として挙げられる方法は、「ホームインスペクション」です。ホームインスペクションとは、住宅の状態を建築士や住宅診断士などの専門家が診断することです。ホームインスペクションを受けるには費用がかかりますが、受けておくと購入者の安心感につながるので、売却しやすくなるメリットもあります。

「古家付き土地」として古民家を売りにだすのであれば、売却前に不動産会社にインスペクションを依頼し、住宅の現状を説明してもらうようにしましょう。

更地にして売る

古民家を残したまま売る方法もあれば、古民家を解体して土地だけを売却する方法もあります。

メリット
土地を更地にして売り出すと、古家付き土地よりも買い手が早く付きやすくなります。なぜなら、買主が家を解体する必要がない、新しい建物の工事にもすぐ入れるなど、土地のみを買いたい層のニーズに合っているためです。そのため、古家付き土地と比較すると、土地が欲しい買い手が早く付く可能性が高くなります。

また、売却が決まるまでの空き家のメンテナンス費用が発生しないのもメリットです。古い家は適切なメンテナンスを行わないと老朽化がさらに進んでしまうので、必要に応じて費用をかけながらメンテナンスをしなければいけません。しかし、取り壊してしまえばメンテナンスをする必要がないため、その分の費用を抑えることができます。

注意点
更地にして売却する場合の注意点は、建物を取り壊さなければいけないため、建物の解体費用がかかることです。もし、建物にアスベストが使用されている場合、計画時の予想よりも負担が大きくなることもあります。

また、更地にすると、土地にかかる税金が高くなるリスクがあります。住宅がなくなることで「小規模宅地の特例」の対象から外れてしまい、固定資産税が高くなるためです。小規模宅地の特例とは、住宅を相続した場合に一定の要件の範囲内で相続税の課税に対して50%もしくは80%の割合で土地の評価額を減額できる制度です。併せて、都市計画税が高くなる恐れもあります。

更地と売地の看板

古民家をリフォームして売る

古民家をそのまま残すだけでなく、外装や内装、設備を新しくリフォームして売る方法もあります。

メリット
リフォームをしないよりも、リフォームをしたほうが売却価格が高くなりやすい傾向があります。リフォーム済みの物件なら、買主が購入後にリフォームを行う必要がなく、また建物の印象もよくなるためです。

注意点
リフォームを検討する際に最も注意したいのが、売主にリフォーム費用の負担がかかってしまう点です。リフォーム前より売却価格が高くなったとしても、リフォームで負担した費用全てを売却価格に上乗せすることは難しいでしょう。また、建物を全面的にリフォームしようとすると負担が大きくなり過ぎる恐れもあります。このような場合は、無理に全面的にリフォームするのではなく、たとえば水回りの設備を交換するだけでも買い手が見つかりやすくなることがあります。

不動産会社に買い取ってもらう

個人に対して売る方法だけでなく、不動産会社に買い取ってもらう「買取」という方法もあります。

メリット
買取のメリットは、現金化がスピーディな点です。不動産を売却する場合、不動産会社に買い手を探してもらう「仲介」が一般的ですが、この方法だと売却までに3〜6か月ほどかかるのが一般的です。一方で、買取の場合は、個人の買い手を探す必要がない分、素早く売却できます。

注意点
買取はスピーディに売却できる一方、売却価格が相場よりも低くなる傾向にあります。というのも、不動産会社が買い取った家に施すリフォームやリノベーション費用を差し引くためです。そのため、買取は「一刻も早く手放したい」という事情がある場合に向いている売却方法といえます。

住宅模型と電卓

上記でご紹介してきた売却方法以外に、「空き家バンク」を利用して売却する方法もあります。空き家バンクとは、空き家を売りたい・貸したい人と、買いたい・借りたい人をつなげるマッチングサービスのことです。

古民家売却を行う場合、各売却方法のメリットや注意点を理解し、自分に合った売却方法を選択してくださいね。

古民家売却時の費用と節税方法

古民家売却をする場合、売却額が手元に入るだけでなく、費用として出ていくお金もあります。費用の項目を把握し、出費の金額を抑えることで無駄なく古民家売却を進めていきましょう。

古民家売却にかかる費用

古民家売却に際してかかる費用は「税金」と「そのほかの費用」の2種類に分けられますが、売却条件によって、どちらもかかる費用が異なります。

税金は、優遇措置を利用することで軽減でき、そのほかの費用は、「建物を残すのか解体するのか」「リフォームをするのかしないのか」によって異なります。

税金
古民家売却によってかかる税金には、主に「印紙税」と「譲渡所得にかかる税金」の2つがあります。印紙税とは、契約書や領収書など、主に商取引で使用される文書にかかる税金のことです。売却時には、所定の税額の収入印紙を売買契約書に貼って納めますが、印紙税額は売買契約の金額によって変わります。また、2024年3月31日までに作成された書類に関しては、軽減措置が用意されています。主な契約金額と印紙税額は次の通りです。

契約金額印紙税額(本則)印紙税額(軽減)
100万円を超え500万円以下2000円1000円
500万円を超え1000万円以下1万円5000円
1000万円を超え5000万円以下2万円1万円
5000万円を超え1億円以下6万円3万円

一方で、譲渡所得にかかる税金とは、土地や建物などを譲渡することで発生する利益にかかる所得税や住民税などです。譲渡所得の計算方法は、次の通りです。

・譲渡所得 = 売却価格 – 取得費 – 譲渡費用 – 特別控除

また、譲渡所得にかかる税金の税率は、土地や建物の所有期間によって異なり、5年を基準に以下の通りになっています。

譲渡所得の種類所得税住民税復興特別所得税合計
長期譲渡所得(5年超)15%5%0.315%20.315%
短期譲渡所得(5年以内)30%9%0.63%39.63%

そのほかの費用
税金以外にかかる諸費用としては、主に仲介手数料、解体費用、リフォーム費用、抵当権抹消費用などがあります。仲介手数料とは、不動産会社に古民家の売却を依頼し、古民家の売却が成立したときに不動産会社に支払う手数料です。

抵当権抹消費用は、登記簿謄本に掲載されている抵当権の項目を削除するための費用です。抵当権とは、購入する物件を担保にできる権利で、多くは住宅ローンを組む際に金融機関が設定します。そのため、住宅ローンが残っている場合は、住宅ローンを完済し、抵当権を抹消する必要があります。

また、解体費用やリフォーム費用は、売却方法によってかからない場合もあります。各費用の相場は以下の通りになっています。

●仲介手数料について詳しくはこちら
●解体費用について詳しくはこちら
●抵当権抹消登記費用について詳しくはこちら

節税に役立つ特例

上記でご紹介した費用のなかでも、古民家売却によって譲渡所得が発生した場合は、そこに課せられる税金が大きな出費となります。以下に挙げる特例を利用して、古民家売却における出費をなるべく抑えていきましょう。

相続した不動産を売却したときの特例
売却したい古民家が相続したものである場合、取得費加算の特例を利用できる可能性があります。

これは、相続により取得した不動産を一定期間のうちに譲渡した場合、相続税の一部を取得費に加算できる特例です。適用条件は、以下の通りです。

・相続や遺贈により手に入れた財産を売却したこと
・相続税を納めたこと
・相続が発生した翌日から3年以内に売却したこと

また、そもそも取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費として計上できます。

相続した空き家を売却したときの特例
相続したものの誰も住んでいない家を売却した場合、条件を満たせば譲渡所得の金額から最大3000万円を控除できる特例があります。ただし、この特例は適用期間や以下のような条件が決まっているため、利用の際には事前に国税庁のHPで条件を満たしているか確認しましょう。

・2023年12月31日までに売却すること
・売った人が、相続または遺贈により被相続人のマイホームやその敷地などを取得したこと
・相続の開始があった日から3年を経過する年の12月31日までに売ること
・売却金額が1億円以下であること
など

自分が住んでいる古民家を売却したときの特例
売却する古民家が居住用財産(マイホーム)である場合、3000万円の特別控除を受けられる特例があります。この特例を受けるためには、次の条件を満たしている必要があります。

・自分が住んでいる住宅、または自分が住んでいる住宅および土地を一緒に売却すること
・売った年から数えて3年前までにこの特例やマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと
・売った年から数えて3年前までにマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
・売った土地や建物に関して、収容等の場合の特別控除の適用を受けていないこと
・災害によって減失した家屋の場合は、その土地に住まなくなってから3年目の12月31日までに売ること
・売り手と買い手が親子や夫婦などの特別な関係でないこと

家計簿と電卓

古民家売却の注意点

古民家売却をなるべくスムーズに進め、かつ売却益を十分に引き出すために、次の点を心得ておきましょう。

空き家の解体・リフォーム費用を把握する

空き家となっている古民家の解体やリフォームを行う前には、必ず見積もりを取って費用を把握しましょう。解体やリフォームを行うことによって売りやすくなる場合がありますが、大きな費用が発生してしまうという注意点もあります。解体やリフォームの効果で売却価格が上がったとしても、解体やリフォームの費用がそれ以上にかかってしまうと結果的に損をしてしまいます。

このような失敗を防ぐには、空き家の解体やリフォームを行う前に、まず不動産査定を受けて家がいくらくらいの価格で売れるのかを調べてみましょう。査定を受ける際は、複数の不動産会社に査定を依頼し、その結果を比較してみるのがおすすめです。また、物件情報サイトを見て、似たような条件の物件がいくらで売り出されているか調べてみると相場が分かります。

不動産会社の査定のときに、解体やリフォームの相談も併せて行い、資金計画の見通しを立ててみましょう。

残置物をなくしておく

古民家を残したまま売却する場合も、業者に解体を依頼する場合も、残置物を片付けておきましょう。残置物とは、不要な電化製品や家具などのことです。

古民家を売却する場合は、残置物がない状態で物件を引渡すことが原則となっています。そのため、残置物が残っていると不動産会社が仲介を受け付けてくれないことがあります。

業者に解体を依頼する場合は、残置物があると解体工事を始められない恐れがあります。解体業者が処分してくれるのは産業廃棄物で、一般廃棄物は処分してくれないことがほとんどのためです。

粗大ごみの処分には時間がかかるので、余裕を持ったスケジュールを計画し、残置物の撤去や処分を行いましょう。

建物の瑕疵は正確に伝える

古民家を残して売却する場合は、建物の不具合を隠さずに伝えるようにしましょう。設備の不具合や地中埋設物などが売買契約後に発覚した場合、買主から契約不適合責任を問われ、損害賠償を求められる恐れがあります。そのため、契約前に建物の不具合は正確に伝えるようにしましょう。建物の状態を正確に知るためには、前述したホームインスペクションを受けてみるとよいです。

補助金や助成金を利用できないかチェックする

解体やリフォームを行う前に、利用できる補助金や助成金がないか必ずチェックしましょう。国や地方自治体は空き家対策に力を入れており、前述の通り、空き家の売却、解体、リフォームを行う場合に適用される特例がいくつか存在するためです。そのほかにも、地方自治体が独自に用意している制度もあります。売却費用で損をしてしまうことがないよう、忘れずに調べておきましょう。

チェックリストと赤ペン

多くの選択肢から検討しよう!

古民家の売却は難しいと感じる人も多いかもしれませんが、マイホームと同じように「不動産の売却」であることには変わりありません。古民家をそのまま売却する以外にも更地にしたり、リフォームを行ったりすることで売りやすくなることがあります。また、リノベーションを行って貸し出す、更地にして駐車場にするなど、売却せずに活用する方法もあります。

さまざまな活用方法のなかから、自分の状況に合った古民家という「資産」の活用方法を検討するとよいでしょう。自分の持っている資産がどれくらいの価値があるのかは、無料査定を行うと知ることができます。気になる人は、まずはこちらから無料査定を受けてみてくださいね。

担当者と相談をする夫婦

※1出典:首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況【2022年01~03月】, 国土交通大臣指定 公益財団法人 東日本不動産流通機構
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202204_2.pdf
(最終確認:2022年11月28日)

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
https://www.izumi-ohishi.co.jp/profile.html