マンション売却時に住宅ローン残債がある場合の対処法を解説

住宅ローンが残っていても、マンションの売却を行うことは可能です。しかし、住宅ローンの残債がどのくらいあるのか、マンションがどのくらいで売れるのかなどを検討する必要があります。今回は、ローンが残っている場合のマンション売却方法についてお伝えします。

目次
  1. 住宅ローンの残債があるマンションを売却するには?
  2. マンション売却までの流れ
  3. オーバーローンで完済が難しいときの対処法
  4. まずは査定でいくらで売却できそうか確認しよう
記事カテゴリ 売却 ローン マンション
2022.10.28

住宅ローンの残債があるマンションを売却するには?

マンションの売却を検討している人のなかには、転勤や離婚といった事情で、住宅ローンが残っている状態のマンションを売却したいと考えている人もいることと思います。では、住宅ローンが残っているマンションを売却することは可能なのでしょうか?

結論をいうと、一定の条件を満たせば住宅ローンの残債があるマンションを売却することができます。その条件とは、次の2つです。

・まずは住宅ローンを完済する
・次に抵当権を抹消する
(実際には住宅ローンの完済と抵当権の抹消は同時に行います)

家の模型と硬貨

今回は住宅ローンが残っているマンションを売却したい人向けに、マンション売却の流れや住宅ローン残債の対処法についてご紹介していきます。先ほどお伝えした条件について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

住宅ローンを完済する

マンションを売却するには、抵当権を抹消する必要があり、抵当権抹消には、住宅ローンの完済が必要になります。そのため一般的に、不動産を売却するためには、住宅ローンを完済しなくてはなりません。

自己資金が十分にある場合は、「繰り上げ返済」が可能です。繰り上げ返済とは、残っている住宅ローンを前倒しでまとめて返済する方法です。繰り上げ返済を行うことで、残りの元金にかかる金利を支払わずに済みます。

自己資金が足りない場合は、マンションの売却代金で住宅ローンの返済をする必要があります。その際に、マンションの売却代金が住宅ローン残債を上回る場合をアンダーローンといい、下回ってしまう場合をオーバーローンといいます。

それぞれのケースの、売却方法や対処方法については後ほどご紹介します。

完済証明書と一万円札

抵当権を抹消する

原則として、抵当権を抹消しなければ不動産を売却することはできません。また、抵当権の抹消は買主の購入条件となることが一般的です。

ちなみに抵当権とは、金融機関が不動産を担保にする権利です。そのため、万が一、借主の住宅ローンの支払いが滞った場合、金融機関は担保としている不動産を競売にかけ、融資した金額を回収することができます。住宅ローンを借りている場合、対象の住宅に対してもれなく抵当権が設定されているので、その権利の抹消がマンションを売却する際に必要な手続きとなります。

抵当権を抹消する手続きは、大きく次の通りです。

[ 1 ] 金融機関から書類を受け取る
[ 2 ] 管轄の法務局を調べる
[ 3 ] 申請書をダウンロードして、記入する
[ 4 ] 必要書類を準備する
[ 5 ] 法務局へ申請する

また、抵当権抹消の手続きは、司法書士や専門家に依頼することが一般的です。以下の記事で、抵当権抹消手続きについて、必要な書類や注意事項について解説しているので、ぜひ参考にしてください。

●抵当権の抹消に関する記事はこちら
抵当権抹消手続きとは?5つのステップで解説

マンション売却までの流れ

先ほどご紹介したアンダーローンの場合は売却によって得た金額で住宅ローンの残債を一括返済することができるので、次にご紹介する一般的な売却の流れに沿って進めます。また、オーバーローンの場合でも、売却によって得たお金に自己資金を追加することで住宅ローンの完済が可能であれば、同様に売却を進めていきます。では、これらのケースでの一般的な売却までの流れを見ていきましょう。

[ 1 ] 売却の準備

まずは、住宅ローンの残債を確認して、どれくらいの金額が必要になるか把握しておきましょう。ローンの残債は、金融機関から郵送される残高証明書や、金融機関のWebサイトから確認できます。

住宅ローンの残債を確認したら、次は所有しているマンションがどれくらいの価格で売却できるのか調べます。その際には、不動産会社に無料査定を依頼して、目安の価格を把握することをおすすめします。

ちなみに、査定とは、その不動産にどれくらいの価値があるのか算出することを指しますが、査定の方法としては、大きく次の2つが挙げられます。

簡易査定
簡易査定とは、「机上査定」とも呼ばれ、Webサイトやメールなどで、売却したい物件の築年数や間取り、敷地面積、周辺環境といった情報を伝えることで、簡易的に価格を割り出してもらう方法です。

PCやスマホなどで簡単に査定を行ってもらえる点が大きなメリットとなりますが、周辺環境や不動産の細部の状態までは考慮されません。そのため、次にお伝えする「訪問査定」と比べると査定の精度が低い傾向にあります。よって、簡易査定だけで住宅ローンを完済できるかどうかを判断するのはリスクがあります。住宅ローンが残っている物件を売るには、必ず次に紹介する訪問査定を受けて売却の可否を判断するようにしてください。

訪問査定
訪問査定とは、不動産会社の担当者が現地に訪問して行う査定を指します。簡易査定で求められるような不動産の基本情報はもちろん、不動産の外観や内装、周辺環境など細部まで隅々調べ、価格を割り出してもらえます。

訪問査定の魅力は、精度の高い評価を把握できることです。訪問査定を受けることで、簡易査定よりも実際の売り出し価格に近い査定額を知ることができます。一方で、現地に訪れる不動産会社の担当者の対応を行ったり、すぐには査定結果が割り出せなかったりと、手間や時間がかかる点には注意が必要です。

査定についてさらに知りたいという人は、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。

●査定に関する記事はこちら
家の査定とは?不動産査定の注意点も解説

●三井のリハウス無料査定はこちら

そのほかに、売却する際にどのような費用がかかるのかを確認しておきましょう。マンションを売却するには次のような諸費用がかかります。

・印紙税
・仲介手数料
・抵当権抹消の登録免許税
・司法書士手数料
・譲渡所得税
・住宅ローン繰り上げ返済手数料 など

これらの諸費用は、マンション売却価格の約3〜4%(譲渡所得税が発生しない場合)といわれています。そのため、住宅ローンの残債だけではなく、何にどれくらいかかるのかを事前に把握しておくことをおすすめします。

電卓と一万円札

[ 2 ] 不動産会社と媒介契約を結ぶ

不動産の売却は、全て自力で売却を進めていくことはまれであり、不動産会社に仲介を依頼することが一般的です。この際に不動産会社と結ぶ契約を「媒介契約」といいます。媒介契約には、次の3つの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。

一般媒介契約

専任媒介契約

専属専任媒介契約

自分で買主を見つけて直接売買

できる

できる

できない

複数の不動産業者との媒介契約

できる

できない
(1社のみ)

できない
(1社のみ)

業務処理の報告義務

任意

2週間に1回以上

1週間に1回以上

専任媒介契約と専属専任媒介契約に関しては、原則として途中解約ができない点に注意が必要です。そのため、どのタイプの媒介契約を結ぶべきか検討する際は、契約内容や条件を慎重に考慮することが求められます。

媒介契約については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

●不動産の媒介契約に関する記事はこちら
一般媒介を選ぶ前に知っておくべき、不動産売却の基本知識を紹介!

また、不動産を売却する際は、「少しでも早く、高く売りたい」と考えている人も多いと思います。よい条件で不動産を売るためには、不動産会社選びも重要になってきます。不動産会社を選ぶ際は、主に、以下のポイントに注目して選ぶとよいでしょう。

・周辺地域に精通している
・店舗数が多い
・スピーディーな対応
・有益なアドバイスをしてくれる
・売却実績が豊富
・インターネット広告が豊富

ほかにも、営業担当者が信頼できるかどうか、親身に寄り添ってくれるかなども大切です。不動産会社を選ぶ際は、上記のポイントを見極めて慎重に選びましょう。

不動産売却を依頼する会社選びについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらも併せてご覧ください。

●不動産会社の選び方のコツに関する記事はこちら
不動産売却はどこがいい?不動産会社の選び方のコツ

[ 3 ] 販売活動

不動産会社と媒介契約を結んだら、販売活動です。インターネットや雑誌など、広告や宣伝活動などは不動産会社が対応してくれますが、内覧対応については、売主も行うことになります。内覧とは、販売活動によって募られた購入希望者に、実際に物件を見学してもらうことをいいます。

内覧は、購入検討者の印象を大きく左右する機会となります。そのため、内覧に臨む前に、家をより美しく見せられるように準備を行ったうえで、内覧を行う最中には訪問者に対する心配りを示すといった工夫が大事といえるでしょう。内覧者を迎える前にできる準備としては、たとえば以下のような行動が挙げられます。

・部屋の中のものを片付ける
・水回りの清掃を行う
・ベランダや庭先の清掃を行う
・電球を交換しておく
・スリッパを用意しておく

ほかにも、聞かれたことには正直に答えるといったように誠実に対応することが大切です。また、室内の汚れが目立つ場合は、ハウスクリーニング業者に清掃を依頼したり、損傷が激しい場合はリフォームしたりといったことを検討するとよいでしょう。何か不安があれば、不動産会社に相談してみることをおすすめします。

電球交換

[ 4 ] 売買契約の締結

買主が見つかれば、売買契約の締結を行います。契約締結時は、売主と売主側の不動産会社、買主と買主側の不動産会社が集まって行われることが一般的です。そこでは、契約内容の読み合わせを行い、売却価格や売買に関する不動産の情報、引渡し日などの確認をします。双方の合意が取れれば、署名押印を行います。

また、売買契約を締結する際に、買主から手付金を受け取ることになります。手付金とは、不動産の売買契約時に、買主から売主へ支払われる売買代金の一部の金額です。

[ 5 ] 引渡し

物件の引渡し当日には、住宅ローン残債の返済や抵当権の抹消、鍵の引渡し、所有権の移転登記を行う必要があります。これらの手続きをスムーズに進めていく必要があるため、引渡し当日は売主や買主だけでなく、不動産会社の担当者や司法書士、銀行員が同席することが一般的です。その際、不動産会社や司法書士に対して依頼料を支払います。

また、売主は引渡し当日には、いくつか書類を用意しなければなりません。必要書類は、次のようなものが挙げられます。

・登記済証(権利証)または登記識別情報
・印鑑証明書(3か月以内に発行のもの)
・固定資産税評価証明書
・住民票
・本人確認書類(身分証明書)
・固定資産税納税通知書の写し
・抵当権の抹消に必要な書類(銀行の担当者が持参)
・管理費および修繕積立金の額の確認書(マンション)
・分譲時のパンフレット(マンション)
・管理規約・理事会の会計報告書や議事録(マンション)
・確定測量図、筆界確認書、越境の覚書(土地、戸建て)
・建築確認申請書、建築確認済証、検査済証、設計図書(戸建て)
・設備取扱説明書・保証書

引渡し時の必要書類については、事前に不動産会社や司法書士に確認しておきましょう。引渡し当日に忘れ物があると、法務局や銀行の営業時間の影響で、スケジュールの変更が余儀なくされる場合もあるためです。

登記識別情報

[ 6 ] 確定申告

不動産を売却したことで得られる利益は、譲渡所得税の課税対象となります。譲渡所得税を納税するためには、確定申告を行う必要があります。ただし、一定の条件を満たすと特例の対象となり、納税額を抑えられます。住宅の売却益に適用される譲渡所得税の特例は、以下の通りです。

居住用財産の3000万円特別控除※1
マイホーム(居住用財産)を売却した際に、発生する譲渡所得を3000万円まで控除できる特例です。この特例は、所有期間や居住期間に関係なく適用されます。

10年超所有軽減税率の特例※2
10年を超えて所有しているマイホーム(居住用財産)を売却した際に発生する譲渡所得に関して、6000万円までは軽減した税率が適用される特例です。

特定の居住用財産の買換えの特例※3
マイホーム(居住用財産)の売却金額以上の住宅に買い替えた場合、譲渡所得税の課税が将来に繰り延べされるという特例です。売却金額以下の住宅に買い替えた場合は、売却金額と購入金額の差額分にだけ課税されます。

このような特例制度を最大限活用するには、ご自身の状況に併せた特例を選択する必要があるので、それぞれの特例についてしっかり確認しておきましょう。不動産売却の税金に適用される特例については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。

●譲渡所得税の基礎知識に関する記事はこちら
不動産譲渡にかかる税金とは?「譲渡所得税」の基礎知識

●居住用財産3000万円特別控除に関する記事はこちら
居住用財産3000万円控除|不動産売却時に活用できる控除とは?

●長期譲渡所得の税率や控除、軽減税率に関する記事はこちら
長期譲渡所得とは?税率、控除、軽減税率を理解してお得に売却しよう!

オーバーローンで完済が難しいときの対処法

ここまでは、アンダーローンやオーバーローンでも自己資金で残債が返済できる人についてお伝えしてきました。続いて、オーバーローンで用意できる自己資金も足りず、住宅ローンの返済が難しいときの対処法を3つご紹介していきます。

家の模型と人形

住み替えローンの利用

住み替えローンとは、現在の住宅ローン残債と新居の購入資金を併せて借り入れることができるローンです。住み替えローンは、オーバーローンの人にとって心強い存在ですが、メリットだけでなく注意しなければならないポイントもあります。住み替えローンを借り入れる主なメリットと注意点は以下の通りです。

メリット
・自己資金が足りなくても住み替えができる
・二重で住宅ローンを借り入れる必要がない

注意点
・金利が高い
・審査が厳しい

住み替えローンについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

●住み替えローンに関する記事はこちら
住み替えローンとは?利用の注意点や手順を解説

また、住み替えローンを利用するにあたって、初期費用としてまとまった額の手数料が必要となることが一般的です。これに加え、実際に住み替えを行ううえでは、引越し費用をはじめとする諸費用がかかるため、事前にどのくらいの初期費用が必要なのかしっかりと把握しておきましょう。

FREE

任意売却

任意売却とは、住宅ローンを借り入れている金融機関の了承を得て、ある程度所有者の希望条件で不動産を売却することをいいます。本来は、住宅ローンを完済しないと「ローンを滞納した」という扱いになり、債務者(お金を借りている人)が債務不履行(約束を破ったこと)を発生させることになります。任意売却は、債務不履行を犯したことを前提に銀行が合意をして売却する方法です。任意売却してもローンは全て免責されるわけではなく、任意売却後に残った残債は原則として返済する必要があります。

メリット
・一般市場に近い額での売却が期待できる
・所有者の情報が公開されない
・引越し費用の負担軽減になる可能性がある

注意点
・債務不履行を犯したことで信用情報に傷が付く(ブラックリストに5~7年掲載)
・売却後の残債の返済義務も残る

任意売却の場合は、金融機関に相談しながら売り出し価格や引渡し日などを決めることができますが、競売にかけられてしまうと、所有者の意思にかかわらず、金融機関が担保となっている不動産を強制的に差し押さえられてしまうため、注意が必要です。

任意売却については、以下の記事で詳しく解説しているので検討中の人はぜひご覧ください。

●任意売却の基礎知識に関する記事はこちら
任意売却とは?住宅ローンの支払いが厳しくなったら知っておくべき基礎知識

●任意売却物件を売る流れに関する記事はこちら
任意売却物件を売るときの流れとは?売却の手順と注意点を解説

アンダーローンになるまで売却を延期

現状オーバーローンであっても、住宅ローンの返済を滞らずに続けていけば、いつかはアンダーローンとなります。そのため、焦らずにアンダーローンになるまで売却を延期するのも1つの手段です。

ただし、売却を延期することで、経年劣化とともに不動産の価値も下がっていくので注意が必要です。また、オーバーローンの場合は、離婚時における財産分与の対象外となります。そもそも財産分与は「夫婦の際に築いた資産を均等に分け合う」という考え方があります。そのため、オーバーローンの場合は、所有している資産(不動産)より負債(住宅ローン)のほうが大きく、財産分与の対象になりません。

カレンダーと延期

まずは査定でいくらで売却できそうか確認しよう

今回は、住宅ローンが残っている場合の売却方法や対処方法についてご紹介しました。まずは、アンダーローンであれ、オーバーローンであれ、物件がいくらくらいで売れそうか目安の価格を確認しておく必要があります。売り出し価格や売却価格の目安を知るため、まずは不動産会社に査定を依頼しましょう。

査定額は不動産会社ごとに異なった数値が提示されることが一般的です。そこで、より客観的で妥当な額を提示してもらえる不動産会社を選べるように、査定は複数社に依頼することをおすすめします。

不動産の売却の機会は、人生のなかで何度もあるものではありません。後悔せず、マンションを納得のいく形で売却するためには、仲介を依頼する不動産会社選びも非常に重要です。前述した通り、不動産会社を選ぶ際は、実績があって信頼でき、親身になって相談に乗ってくれる会社を選びましょう。

三井不動産リアルティでは、会社設立から50年以上もの間で担当してきた100万件以上の取引で得た経験や知見などを生かし、1人1人に合った最適な取引をご提案いたします。不動産会社選びに迷われている人はぜひ三井不動産リアルティまでお気軽にご相談ください。

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※1出典:マイホームを売ったときの特例,国土交通省
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

※2出典:マイホームを売ったときの軽減税率の特例,国土交通省
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm

※3出典:特定のマイホームを買い換えたときの特例,国土交通省
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm

不動産鑑定士 竹内英二

株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
https://grow-profit.net/