中古住宅の査定方法・売却前に知っておきたい基礎知識と注意点

中古一戸建てやマンションなどの不動産売却をするにあたって、重要なのが「査定」。査定とは、物件の市場における価格を算出してもらうことです。今回は、中古住宅の査定方法や査定に関する基礎知識などをお伝えします。

目次
  1. 中古住宅の査定方法を知りたい!
  2. 査定額を算出する方法は主に2つ
  3. 中古住宅の査定時のチェックポイントは?
  4. 査定を受けるときの注意点は?
  5. 売却の仲介を依頼する先と売り出し価格は慎重に決めよう
記事カテゴリ 売却 一戸建て
2022.12.22

中古住宅の査定方法を知りたい!

中古住宅を売却するにあたって重要ポイントになるのが、「査定」です。査定とは、不動産会社に依頼し、物件が現在の市場においてどのくらいの価格であるか算出してもらうことを指します。査定で算出された金額は、中古住宅の売り出し価格を決めるための重要な指標となります。

売却前に不動産会社に依頼できる査定には、大きく「簡易査定」と「訪問査定」の2種類があり、どちらも一般的には無料です。簡易査定とは、不動産会社の担当者が直接物件を見ずに行う査定のことで、机上査定と呼ばれることもあります。簡易査定は、物件情報や類似物件の取り引き価格、公示価格などのデータをもとに算出されます。一方、訪問査定とは、不動産会社の担当者が現地に訪問し、実際の不動産の状態や周辺環境などを見て行う査定方法です。

簡易査定は手軽に依頼ができて、早ければ即日で査定額が提示されますが、限られた情報をもとに算出されるため、訪問査定に比べて査定の精度は低い傾向にあります。一方、訪問査定は、現地調査の内容も踏まえて判断されるため、簡易査定よりも精度の高い結果が出ますが、査定額が出るまでに時間がかかる傾向にあります。

今回は、中古住宅の売却を考えている人に向けて、査定額がどのように求められているかをご紹介します。

住宅模型とルーペとチェックリスト

査定額を算出する方法は主に2つ

不動産会社が査定額を算出する際に用いる方法は、主に「取引事例比較法」「収益還元法」の2つです。それぞれどのような方法なのか見ていきましょう。

取引事例比較法

取引事例比較法は、「近隣エリアで、似たような条件の物件がいつ、いくらで取引されたか」という過去の取引事例をもとに価格を求める方法です。不動産流通量の多い地域では、土地や中古一戸建て、中古マンションなどほとんどの不動産の査定に用いられます。

過去の取引事例をもとに算出するため、事例が少ない、あるいはほとんどない地域の場合はこの方法を使用することが難しくなります。しかし、売却する住宅があるエリアと似ている地域に取引事例があれば、それらのデータを使用して、間接的に査定額を算出することは可能です。

収益還元法

収益還元法は、「その物件が生み出す現在の収益から、将来どのくらいの収益を上げることが期待できるか」という視点から、価格を求める方法です。この方法は、基本的にアパートやマンション、ビルなど投資用物件の査定に用いられますが、一戸建てや土地の査定でも用いることがあります。

実際に査定をするときは、同地域にある類似不動産を参考に、期待できる「利回り」から1年間の収益を算出して価格を求めることが一般的です。利回りとは、投資した金額に対する利益の割合を示したものです。

利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があり、表面利回りは維持費や管理費などのコストを考えずに得られた収益を価格で割って計算されるもので、単純利回りと呼ばれることもあります。一方、実質利回りは得られた収益からコストを差し引いた実質的な利益を価格で割って計算されるものです。

収益還元法を採用して価格を求める場合、個別の物件のコストを知ることが困難であるため、実質利回りを求めることは難しく、査定額を求める際は、表面利回りを採用して求めることが多くなります。

査定額の算出方法としては、上記のほかに「原価法」という方法もあります。原価法は、再調達価格から建物や設備の老朽化した分の価格を差し引いて価格を算出する方法です。再調達価格は、今建っている住宅を新たに建てたらどのくらいの費用がかかるかを計算して求めた価格です。原価法は、中古一戸建ての建物の価格を求めるときに使用する場合がありますが、取引事例が豊富な地域では、取引事例比較法や収益還元法に比べて使うケースは少なくなります。

住宅模型と電卓

中古住宅の査定時のチェックポイントは?

査定額を左右するポイントをご紹介します。ここでは、中古マンションと中古一戸建ての2つの観点からご紹介します。

中古マンションの場合

中古マンションの査定では、権利関係や室内と共用部分の設備や使用状況、施工した会社や販売した会社などが見られます。

権利関係・滞納状況
不動産会社は、査定の際に、売主の権利関係を確認します。たとえば、区分所有しているマンションの敷地が所有権か借地権か、差し押さえのような権利がないかといったことを確認します。権利状況によって、どういった権利となっているかによって評価が変わるからです。

また、売却時の必要情報として、所有者が「単独名義」なのか、「共有名義」なのかも確認します。

共用部分
たとえばエントランスやエレベーター、廊下、駐車場・駐輪場などの共用部分の状態もマンションの査定では評価のポイントです。また、マンションの立地条件や敷地の広さ、築年数、構造などマンション全体も評価の対象になります。

専有部分
所有している部屋の専有面積や間取り、向き、室内設備やその使用状況などが評価されます。

施工・販売元の信頼性
実際のマンションの状況だけでなく、マンションの施工や販売はどの会社が行ったのか、マンションの査定では特にマンションのブランド力も査定に考慮されます。マンションのなかでも人気ブランドのマンションがあったり、同じ販売元のマンションでもグレードがあったりするため、これらが査定での評価に影響を与えます。

マンションのエントランス

●マンションの査定に関する記事はこちら

中古一戸建ての場合

中古一戸建ての場合、土地建物それぞれの権利関係や住宅ローンや税金などの滞納状況などのほかに、敷地の状況やインフラの状況、周辺環境も評価のポイントになります。

権利関係・滞納状況
土地の権利が所有権なのか借地権なのか、また共有者はいるのか、私道の権利はあるのかなどの権利関係を明確にします。また、建物の権利はどうなっているか、特に土地の権利との関係も確認します。

建物
建物自体の評価は、築年数や構造のほか、建物外部と建物内部の状況が評価のポイントです。建物の外部は、屋根や外壁、基礎などの状態がチェックの対象になります。また、建物内部に関しては、間取りや方位、設備の仕様、劣化の状況、使用している材質、実際の使用状態などが評価の対象となります。

敷地
一戸建ての場合、建物だけでなく建物が建っている敷地の状況も重要な評価のポイントです。敷地の面積や形状、庭の状態や駐車場の有無、接する道路との関係や隣地との状況などがチェックのポイントになります。

インフラの状況
生活していくうえで電気、ガス、水道といったインフラは必要不可欠のため、インフラの状況がどうなっているのかも評価の対象になります。利用している電気やガス、上下水道の事業者はどこか、配管はどうなっているか、使用に問題はないかといったことを確認します。また、最近ではインターネット回線や携帯電話の接続環境といったものもチェックの対象となっています。

周辺環境
物件だけでなく、物件の周辺環境も重要なチェックポイントです。最寄り駅はどういった駅か、駅までどのくらいの距離なのか、近くにスーパーやコンビニなどの商業施設があるかなどが評価されます。地域の治安が悪かったり、嫌悪施設が近くにある場合は、評価が下がってしまうこともあります。

その他
上記でご紹介したものだけでなく、住宅からの眺望のよさや風通し、住宅のリフォームの有無なども訪問査定時に確認されます。窓からの眺めがよかったり、大きな吹き抜けがあり風通しがよいといった場合は、評価されます。

一戸建ての住宅

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査定を受けるときの注意点は?

査定を受ける際には、注意すべきことがいくつかあります。ここでは、査定を受ける際の注意点をいくつかのポイントに絞ってご紹介します。

相場を把握する

自分で近隣の相場が分かっていると、不動産会社が算出した査定額が、相場と比べて納得のいくものかどうかを判断でき、自分が売却するかしないかを決める際に役立ちます。相場を把握する方法は、近隣の似たような条件の物件の売り出し価格を不動産ポータルサイトで調べる、公表されている市場動向を確認するなどが挙げられます。

複数の不動産会社に査定を依頼する

査定は、複数の不動産会社に依頼するようにしましょう。複数の会社に査定を依頼することで、査定時の対応や査定額を比較できるので、高い納得感を持って仲介を依頼する不動産会社を選択することができるでしょう。通常は、不動産会社によって査定額が異なるので、価格が安過ぎる、高過ぎるといったことも複数の不動産会社に依頼することで見えてきます。

書類を準備する

訪問査定を受ける際は、最低でも「登記権利証または登記識別情報」の有無を確認するとよいでしょう。また、用意することで査定額が変わってくるものもあります。具体的な例としては「住宅性能評価書」「長期優良住宅認定書」などです。住宅性能評価書は、国土交通省に登録された第三者機関が行う、住宅の性能評価の結果を記した書類のことです。また、長期優良住宅認定書は、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられ、一定の基準を満たした住宅(長期優良住宅)に対して交付される書類です。

このように、売りたい物件の持つ特別な点を証明できるような書類があれば、物件の評価アップにつながります。

清掃・片付けをする

訪問査定を受けるときは、最低限の清掃や片付けを行っておきましょう。これらを行っておくことで査定時の印象がよくなります。特に、汚れが目立ちやすい水回りの清掃を中心に行っておくとよいでしょう。査定を行う人や購入希望者になるべくよい印象を持ってもらえるように工夫をすることは大切です。

不具合や問題点は正直に伝える

中古住宅を売り出す場合、売り出す前に住宅の不具合や問題点は全て伝えるようにしましょう。不具合や問題点のなかには、売り出す時点で知らせる必要があり、査定の評価にかかわるだけでなく、売却すること自体に影響が出るものもあります。査定に悪影響を与えそうだからといって伝えずにいると、売買契約時に問題となることもあれば、売却後に契約内容と異なる点が見つかったときに、売主の責任が問われることにもなります。

リフォームした履歴は伝える

住宅のリフォームをしている場合は、その時期やリフォームした箇所、リフォーム内容を伝えるようにしましょう。リフォームの内容によっては、査定に影響する場合もあります。そのため、リフォームの状況が分かる書類があれば、提示して説明すると査定する担当者に伝わりやすくなります。

チェックシートとルーペ

売却の仲介を依頼する先と売り出し価格は慎重に決めよう

中古住宅の売却では、売買価格の目安を知るためにも査定が重要であることをお伝えしました。それだけではなく、査定は、不動産会社に売却の仲介を依頼するにあたって信頼できる会社を見極めるという役割も担っています。

そのため、査定の際は査定額についてその根拠を聞くというのは大切なことになります。もし、査定の根拠の説明がない場合は、遠慮せず説明を依頼しましょう。不動産会社が算出した査定額に対して、納得のいく説明をしてもらえるかどうかが、信頼できる不動産会社を選ぶための1つの判断材料になります。また、査定時の対応を見ることで、親身に相談に乗ってくれる会社、あるいは担当者かどうかを判断することもできるでしょう。

仲介を依頼する不動産会社が決定すれば、その不動産会社と媒介契約を結びます。そのあと、正式に売り出し価格を設定して販売活動に移ります。このとき設定する売り出し価格は、査定額を参考にしますが、周辺には競合物件があるのか、売り出しのタイミングはいつか、などさまざまな条件も加味して最終的に売主が決める必要があります。

その際に、相場よりも高い金額で売り出し価格を設定してしまうと、売れにくくなってしまう恐れがあります。そのため、不動産会社の担当者と相談して、相場価格からあまり逸脱した価格設定をしないようにすることも大切です。

担当者と相談をする夫婦

中古住宅の売却は、売り出しの時期や設定した価格、条件などによっては思った以上に時間を要する場合もあるので、売却したい時期に希望がある場合は、早めに査定を受けるのがおすすめです。三井のリハウスでも無料査定を受け付けていますので、売却を検討しているのであれば、お気軽にお問い合わせください!

●住宅の無料査定はこちら

秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。