戸建賃貸と売却どちらを選ぶ?各メリットや判断軸をご紹介

住まない一戸建てで収益を得る方法は大きく「売却」か「賃貸」があります。それぞれの方法にメリットや注意点があるので、双方を比較しながら自分にはどちらが合っているのかを見極めることが重要です。今回は、それぞれの特徴や実際の流れ、判断軸などをご紹介します。

目次
  1. 住まない一戸建てはどうする?
  2. 一戸建てを売却するメリットと注意点
  3. 一戸建てを貸し出すメリットと注意点
  4. 売却か賃貸、決め手は?
  5. それぞれの収益をシミュレーションで比較
  6. 売却と賃貸のやり方は?
  7. さまざまな角度から検討しよう
記事カテゴリ 売却 賃貸 一戸建て
2022.08.18

住まない一戸建てはどうする?

転勤や相続などをきっかけに、住むことのない一戸建てが手元にあるとき、空き家のままにしておくよりは、「売却」か「賃貸」で収益を得たいと考える人も多いでしょう。

では実際、売却と賃貸どちらを選ぶとよいのでしょうか?今回は、双方のメリットや注意点、選択する際の判断軸などをご紹介します。

二軒並んだ積み木の家

一戸建てを売却するメリットと注意点

まずは一戸建てを売却した場合のメリットと注意点をお伝えします。

売却するメリット

一戸建てを売却するメリットは、一度に手元にまとまったお金が入り、維持管理の手間暇がかからないことです。また自分が住んでいる家を売る場合は、その家が条件を満たしていれば税金の優遇措置を受けることができます。

不動産を売却した際に利益が出ると、その利益に対して「譲渡所得税」という税金が課されます。しかし特例により、条件に当てはまる場合は譲渡所得から一定額が控除されるのです。この場合の利益とは、実際に売買契約を結んで得た売却価格から、物件の取得費と売却時の諸費用を差し引いた金額です。

控除額が3000万円となる3000万円特別控除と呼ばれる特例を利用した場合、譲渡所得が3000万円を超えて、税金の優遇措置の範囲を上回った場合は、3000万円を超えた部分に対して税金が課税されます。

また、利益が出ずに損失となってしまった場合でも、条件によっては税金の還付を受けられる可能性がありますが、利益の場合でも損失の場合でも特例を利用するには確定申告が必要となります。

●マイホーム売却時の税金の優遇措置に関する記事はこちら
不動産譲渡にかかる税金とは?「譲渡所得税」の基礎知識

マイホームの前に立つ家族

売却する注意点

一戸建てを売却すると、資産を1つ失うということになります。さらに相続の観点から見ると、不動産よりも現金のほうが「相続税評価額」が一般的に高くなります。相続税評価額とは、相続税の算出基準になる金額のことです。つまり、不動産を売却して現金化すると、そのまま不動産を所有している状態と比較して相続税の金額が高くなる可能性があるということです。

●不動産の相続に関する記事はこちら
不動産を相続することになったら?手続きの流れとよくある疑問を解説

また、売却をすると、それに伴い仲介手数料や印紙税、先ほどご紹介した譲渡所得税などの諸費用や税金がかかります。しかし、税金については、先述の通り特別控除が受けられる場合もあるので事前に確認しておきましょう。

●売却時にかかる費用に関する記事はこちら
マンション売却の手数料は?負担を抑える方法を解説

さらに、住宅ローンが残っている場合は、売却と同時に住宅ローンの残債を清算する必要があります。引渡し時に住宅ローンの残債を完済して、抵当権を抹消することが、売買契約書で条件となっていることが一般的です。

一戸建てを貸し出すメリットと注意点

持ち家の一戸建てに借り手を募り、戸建賃貸経営をした場合のメリットと注意点をお伝えします。

貸し出すメリット

一戸建てを貸し出すメリットは、家賃収入という不労所得が入ることです。一戸建ての賃貸は、ファミリー層からの需要が高く長期にわたって住む可能性が高いため、安定的な収入が見込めるでしょう。将来的には借り手に売却するという選択肢もあります。

さらに、不動産を売却せずに所有し続けることになるので、相続の際に現金で継ぐよりも節税になります。

不動産投資

貸し出す注意点

一戸建てを貸し出す場合は、初期の設備投資と維持管理費用がかかることを計算に入れておかなければなりません。また、入居者が決まらないと空き家になり、収入を得ることができません。アパートやマンションなどの複数戸ある集合住宅と違って、一戸建ては入居率が0か100になってしまいます。

賃貸経営は、借主の通常使用による家の劣化や経年劣化も想定する必要があります。通常損耗や経年劣化に対応するために余剰金を確保しておきましょう。

また賃貸に出す一戸建てに住宅ローンが残っている場合は、原則として家を他人に貸すことができません。状況によっては、住宅ローンから不動産投資ローンに借り換えることによって、賃貸を認めてくれる場合もあります。住宅ローンは銀行との契約書で資金使途がマイホームの購入と定められており、収益物件の購入は資金使途に反してしまうからです。

さらに、賃貸として利用した後に売却をするときには、居住用の住宅の売却とはみなされないため、マイホームを売却したときに利用できる税金の優遇措置を受けることは、できなくなる場合もあります。具体的には、他人に貸した場合、転居してから3年後の12月31日までに売却しないと、マイホームの売却特例が利用できません。なお、家を貸し出した後に将来戻って自分が住みたい場合は、家を貸し出す際にあらかじめ賃貸期間を決める「定期賃貸借契約」がおすすめです。

賃貸物件の模型

売却か賃貸、決め手は?

持ち家を売却するか、それとも賃貸物件にするか、判断材料が多いなかで決め手となる要素をお伝えします。

今後住む予定の有無

その家に住まない状況が一時的なもので、また住む予定がある場合は、賃貸を検討したほうがよいでしょう。賃貸を検討する場合はまず周辺地域の賃貸需要を確認するのがおすすめです。

賃貸物件の立会いについての書類

維持管理の可否

家主として戸建賃貸の維持管理をできるかどうかは、売却か賃貸を選択する決め手です。賃貸の維持管理業務を自分で行う場合、物件に出向いて緊急対応をする必要が出てくる可能性があります。その際に、すぐに駆け付けることができるのか、遠方に住んでいるといった理由ですぐの対応が難しいのかは1つの判断基準になります。

家主の維持管理業務としては大きく入居者対応、物件対応、資金管理があります。入居者に関する業務は近隣とのトラブル対応や退去の立会い、物件に関する業務は清掃や修理、資金に関する業務は家賃の徴収などが一般的です。

これらの業務のうち、資金管理は遠方でもできる可能性はありますが、入居者や物件の対応に関しては速やかに対応しなければならないことが多い傾向にあります。物件の近くに自身が住んでいないと、家主の維持管理業務は難しいといえるでしょう。

ただ、家主としての維持管理業務、いわゆる大家稼業をアウトソーシングする方法もあります。賃貸の検討で維持管理が障壁になっているなら、不動産会社に維持管理業務を委託することを検討してみてもよいでしょう。

●三井のリハウス賃貸管理業務に関してはこちら
充実の賃貸管理サービス

物件の需要

売却するか賃貸にするか悩んだときの判断軸として、賃貸に出したときに需要がある物件かどうかというポイントがあります。立地や築年数、集合住宅ではなく「戸建て」であるという条件を加味して、賃貸の需要がなければ売却をしてしまったほうがよいかもしれません。

一般的に賃貸需要が高くなる物件は、駅近の立地や浅めの築年数の物件です。さらに戸建てはファミリー層からの需要が高いため、ファミリー向けの間取りや子育てしやすい環境なども需要が高くなる傾向にあります。

実際には、似た条件で賃貸に出ている物件の数や不動産相場を見て判断するとよいでしょう。

●不動産相場に関する記事はこちら
最新の不動産価格の推移を検証!今後の不動産の動向は?

住宅街

それぞれの収益をシミュレーションで比較

売却か賃貸かを決めるにあたって、上記でご紹介した内容のほかに、それぞれどのくらいの収益が見込めるのかを比較することも重要です。

ここでは以下の条件の物件をモデルケースとして売却の場合と賃貸の場合でシミュレーションしてみましょう。

・23区南部
・駅徒歩10分
・築20年以上
・4LDK
・住宅ローン完済

売却の収益

売却をすると想定した場合には、以下の項目を試算して収益を考えましょう。

・売却予想額
・仲介手数料
・譲渡所得税(売却益が出たときにかかる税金)

物件の売却予想額は、不動産会社が行う無料査定や、同条件の物件の価格相場から知ることができます。また、仲介手数料の上限は、物件価格が400万円超の場合、「(売却価格×3%+6万円)+消費税10%」で算出できます。

物件の売却予想額から、不動産会社に支払う仲介手数料と譲渡所得税を引くと、手取り金額の想定額になります。仮に物件の売却価格を6000万円、購入時の取得価格(建物は減価償却計算した後の価格)を7000万円と仮定した場合、試算は次の通りです。

仲介手数料=(6000万円×3%+6万円)+消費税10%=205万円
譲渡所得税=売却価格が購入時の価格を下回っているので0円

6000万円-205万円で、手取り金額は5795万円となります。

●仲介手数料に関する記事はこちら
不動産の売却には手数料がかかる?仲介手数料の相場やポイントを解説

●抵当権抹消登記に関する記事はこちら
抵当権抹消手続きとは?5つのステップで解説

上記の売却価格は実際の当該地区の取引実績によるものです。

また、不動産の売却時には仲介手数料のほか、抵当権抹消費用、印紙代、住宅ローン残債の一括返済手数料といった諸経費もかかりますが、ここでは割愛しました。

●不動産売却時の税金に関する記事はこちら
不動産売却にかかる税金はいくら?必要な費用の計算や節税対策をご紹介

賃貸の収益

賃貸をすると想定した場合には、以下の項目を試算して収益を考えましょう。

・賃料
・維持修繕費
・火災保険料
・固定資産税、都市計画税
・管理委託料

年間の家賃収入(賃料×12か月)から、各支出を差し引くと年間収入を試算できます。賃料は同条件の物件がどれくらいの家賃で貸し出されているのかを不動産ポータルサイトで確認しましょう。賃料を18万円、各支出を以下のように仮定した場合、試算は次の通りです。

・賃料 216万円(18万円×12)
・維持修繕費 36万円(3万円×12)
・火災保険料 7万円(単年度分)
・固定資産税、都市計画税 29万5000円
・管理委託料  10万8000円

216万円 -(36万円+7万円+29万5000円+10万8000円)= 132万7000円

年間収入は132万7000円となります。賃貸した場合の収益は、132万7000円✕複数年(賃貸を行う年数)です。

維持管理費や固定資産税などは物件ごとによって差が出るので、正確な金額を出すのは難しくなります。

戸建賃貸の経営を検討する際は、まず収入と支出の差し引きで収益を出します。算出した収益を、物件の購入価格と購入時にかかった諸経費で割ると、「利回り」、もしくは「実質利回り」と呼ばれる、戸建賃貸の収益性を測る数値が算出されます。一般的に利回りが10%以上となれば、戸建賃貸の勝算が見込めるといわれます。

それぞれの収益の大きさとスピードを考えて、売却か賃貸どちらにするかの判断軸にするとよいでしょう。

●売却の検討についてはこちら
不動産売却・査定

●戸建賃貸の検討についてはこちら
部屋を貸す・賃貸経営

収支計算の書類

売却と賃貸のやり方は?

売却と賃貸、それぞれ不動産会社へ依頼して進める際に、どのような流れで進むのかを簡単にご紹介します。

売却

売却を検討する際は、大まかに以下のような流れで進めます。

[ 1 ] 売却相談・条件整理
[ 2 ] 売却不動産の事前調査
[ 3 ] 媒介契約の締結
[ 4 ] 売却活動〜購入申込み
[ 5 ] 売買契約

売却不動産の事前調査の段階では、不動産会社に無料査定を依頼し、売却活動をしてもらう不動産会社を選びます。この際には、複数の不動産会社へ査定を依頼して、そのなかからより信頼感のある不動産会社を選ぶようにしましょう。

●不動産売却の流れについて詳しい記事はこちら
売却の流れ

賃貸

賃貸の場合は、以下のような流れになります。

[ 1 ] 貸出しの申し込み
[ 2 ] 入居者募集
[ 3 ] 賃貸借契約
[ 4 ] 管理開始

●不動産賃貸の流れについて詳しい記事はこちら
貸すときの流れ

さまざまな角度から検討しよう

ここまで持ち家を売却するか賃貸として貸し出すかの比較検討をしてきました。売却といっても第三者ではなく不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」の方法もあれば、賃貸に出した後に売却をする方法もあります。ほかにも、一戸建てを解体して土地だけを売却するという選択肢もあるかもしれません。さまざまな選択肢のなかから、自分に合った方法はどれなのかを検討するとよいでしょう。

●不動産の買取に関する記事はこちら
あなたは不動産買取に向いてる?仲介との違いや買取の流れを紹介

自分はどの方法を取るべきなのかを判断するためには、情報収集や状況に合わせた判断、具体的なシミュレーションをする必要がありますが、知識がない人にはなかなか大変な作業です。そこで不動産の売買や賃貸経営のプロである不動産会社に相談しながら、検討していくことをおすすめします。戸建賃貸、売却、戸建賃貸から売却、どの方法であっても、不動産会社とよい関係を結ぶことで成功の糸口を見つけられるでしょう。

●不動産に関する相談はこちら

商談

不動産鑑定士 竹内英二

株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
https://grow-profit.net/