根抵当権とは?抵当権との違いや売却時の注意点についても分かりやすく解説

根抵当権とは、不動産上に設定される担保権のことをいいます。根抵当権は、定められる「極度額(上限金額)」と「債権の範囲」の範囲内であれば、何度でも借り入れ、返済を繰り返すことができます。今回は、抵当権との違いや売却時の注意点について詳しく解説します。

目次
  1. 根抵当権と抵当権
  2. 根抵当権のメリットと注意点
  3. 根抵当権の元本確定
  4. 根抵当権と抵当権の違いを理解してから利用しよう
記事カテゴリ 売却 ローン
2023.02.20

根抵当権と抵当権

住宅ローンの契約をするときに金融機関が設定する抵当権については、多くの人がご存じでしょう。一方、根抵当権については、耳慣れない人のほうが多いのではないでしょうか?

根抵当権とは、抵当権とは異なる権利です。今回は、住宅ローンの借り入れを検討している人向けの基礎知識として、根抵当権の概要や抵当権との違いなどについて解説します。まずは、抵当権・根抵当権それぞれの意義から見ていきましょう。

抵当権とは

抵当権とは、住宅ローンを借りて不動産を購入する際、その不動産に対して金融機関が設定する権利です。住宅ローンの返済が滞った場合、金融機関は抵当権を設定した不動産を差し押さえることができます。

抵当権は、住宅ローンの完済後にも設定されたままだと売却時に支障が出る恐れがあるため、基本的には住宅ローンが完済したタイミングで抹消登記を行います。

●抵当権について詳しくはこちら
抵当権抹消手続きとは?5つのステップで解説

考える高齢者夫婦

根抵当権とは

根抵当権も、抵当権の一種です。根抵当権は、上限額(極度額)を決め、その設定金額の範囲内であれば、何度でも借り入れと返済を繰り返すことができます。そのため、事業資金として必要なタイミングで繰り返し融資を受ける必要がある企業や経営者に活用されることが多くなります。

一般の消費者が住宅ローンの借り入れをして根抵当権を設定されることはほとんどありませんが、「リバースモーゲージ」を契約した際には設定されることが多いでしょう。リバースモーゲージとは、持ち家に住みながらその自宅を担保に融資を受ける資金調達方法で、主にシニア世代に利用されています。

根抵当権が設定されているので、設定額の範囲内で何度でも借り入れと返済を繰り返せるため、老後の生活に余裕と安心が生まれやすくなります。また、普通の抵当権だと、全額返済し終わったらもう一度融資を受けるためには手続きや費用が必要ですが、根抵当権の場合はそういった負担を抑えることができます。

根抵当権と抵当権の違い

根抵当権と抵当権には主に以下のような違いがあります。

債権の種類(範囲)を設定する
抵当権は、1つの債権に対して1つの抵当権を設定しますが、根抵当権の対象となる債権は、債務者と根抵当権者(債権者)との間で債権の種類を定めます。たとえば、債権の種類を「売買取引における手形、小切手にかかる債権」と設定した場合には、売主と買主の手形と小切手にかかる債権が根抵当権の担保の範囲となります。

また、担保となる不動産の評価額から借り入れの上限額となる「極度額」を設定します。そうすることで、根抵当権者と定めた上限額までは自由に借り入れすることができるということです。

何度でも借り入れできる
根抵当権は、設定した範囲内であれば何度でも借り入れできるという特徴があります。再度、融資を受ける際に手続きや費用が必要になる抵当権に対し、根抵当権にはその必要がないため、繰り返し融資を受けたい人に適しているといえます。

連帯債務者が認められない
抵当権では連帯債務者が認められますが、根抵当権では認められません。連帯債務者とは、債務者と連名で契約し返済の義務を負う人のことです。抵当権は、設定した時点で対象となる債権が明確になります。一方、繰り返し借り入れができる根抵当権は、いくら借りるか、いつ返すかの決まりが明確でないため、連帯債務者を付けることは難しいでしょう。

合意がないと消滅しない
抵当権は、債務が完済した時点で抹消されますが、根抵当権は債務が完済されても抹消されません。根抵当権を抹消するには、債権者との合意が必要となります。債務が完了し、根抵当権を利用することがないと判断した場合には、早めに手続きを行いましょう。

ペンとバインダーを持つ男性

根抵当権のメリットと注意点

先述した通り、根抵当権は設定金額の範囲内で何度でも借り入れと返済ができることが特徴です。この特徴には、どのようなメリットがあるのでしょうか?売却時の注意点と併せてご紹介します。

メリットは登記費用が節約できること

根抵当権は、借り入れを何度も行う利用者(主に企業や経営者)にとって、諸費用の節約につながります。登記の際の登録免許税や、手続きを代行する司法書士への報酬が一度きりで済むためです。

一方、抵当権の場合は、複数回の借り入れをする際、その都度登記しなければいけません。

注意点は売却時に抹消登録が必要であること

先述しましたが、根抵当権は完済後も消えることはありません。根抵当権付きの不動産を売却する際、抹消登録をしていない状態でも売り出すことは可能ですが、引渡しはできません。そのため、売却の際には抹消登録の手続きが必要です。

根抵当権を抹消するには、残債を完済したうえで根抵当権者の承諾が必要となるので覚えておきましょう。

●抵当権抹消登記に関する記事はこちら
抵当権抹消手続きとは?5つのステップで解説

考える女性

根抵当権の元本確定

根抵当権の付いた不動産を売却したい、あるいはこれ以上資金の借り入れが必要ないといった場合、根抵当権の抹消登録を行う必要があります。その手続きの1つが「元本確定」です。

元本確定とは、設定金額内での自由な借り入れを止め、その時点でいくら残債があり、またいつまでに返済するのかを確定させることをいいます。元本確定をすると抵当権と同じように、新たな借り入れはできなくなります。

ちなみに、不動産に対して複数の根抵当権者がいる場合、根抵当権者は元本確定前に抵当権の順位の譲渡や放棄をすることはできません。抵当権の順位とは、複数の(根)抵当権者と抵当権を設定した際に、債権の回収(金融機関がお金の支払いを求めること)を実行される順番のことです。債権額が分からない状態では譲渡や放棄ができないため、元本確定を待つ必要があります。

また、抵当権の債務者が死亡した場合は、相続開始から6か月以内に指定債務者合意の登記をする必要があります。6か月をすぎても登記をしないと、相続開始時に元本が確定したと見なされ、借り入れや返済を行うことができなくなるので注意しましょう。

一戸建て

根抵当権と抵当権の違いを理解してから利用しよう

ここまで、根抵当権について解説してきました。上記でもお伝えしましたが、リバースモーゲージの契約を除いて、個人の住宅ローンに根抵当権が設定されることはほぼありません。住宅ローンを契約して不動産を購入した人については、根抵当権ではなく抵当権が設定されます。

住宅ローンの残債がある不動産を売却したい場合は、抵当権を抹消すれば売却が可能ですが、そのためには売却したお金で残債を一括返済しなければいけません。残債より売却金額が少ないと一括返済する際に自己資金を足さなければならないため、あらかじめどのくらいで売却できそうかを調べておくことが重要です。

売却金額を把握するためには、不動産会社による査定がおすすめです。三井のリハウスでは無料で査定を行っているので、ぜひご相談ください。

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抵当権に加え、根抵当権の知識があると、将来の売却や相続の際、選択肢が広がる場合があるかもしれません。権利の内容について疑問や不安があった際も、不動産会社や専門家に相談してみるとよいでしょう。

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
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