マンション売却で大損したら?損失が出た場合の対処法と、事前にできるリスク対策を解説

マンション売却を検討する際、損失が出るか出ないかは多くの方が気にするポイントでしょう。この記事では、マンション売却で損失が出てしまった場合にできる対処法や、なるべく高く売るための対策などについて解説します。

目次
  1. マンション売却で大損することはある?
  2. マンション売却で損失が出た場合の対処法
  3. 譲渡損失の計算方法
  4. マンション売却で大損しないための対策
  5. マンション売却で大損しないために対策をしよう
記事カテゴリ 売却 費用 マンション
2024.03.28

マンション売却で大損することはある?

マンション売却を検討するとき、ほとんどの方は「大損したくない」と考えるでしょう。しかし、マンション売却では購入時より安い成約価格になる、つまり「損失が出る」ほうが一般的です

マンション売却時に損失が発生してしまうのは、築年数に伴ってマンションの価値が下がってしまうことが主な理由です。東日本不動産流通機構が発表している「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)」※によると、築5年以内のマンションは7,000万円台で取引されているものの、築11~20年は5,000万円台、築31年以上は2,000万円台と、築年数に伴って成約価格が下落していることが分かります。詳しい価格は以下の表をご覧ください。

マンションの築年数平均価格
築0~5年7,077万円
築6~10年6,655万円
築11~15年5,932万円
築16~20年5,509万円
築21~25年4,887万円
築26~30年3,344万円
築31~35年2,303万円

このような事情を知ると、マンションの売却をためらってしまうかもしれません。しかし、マンションの売却による損失は、カバーすることが可能です。ここからは、損失が発生した際の実際の対処方法について見ていきましょう。

築年数に伴いマンションの価値が変化するイメージ

マンション売却で損失が出た場合の対処法

マンションの売却により損失が発生してしまった場合、次の2つの特例を利用して節税することができます。

・マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
・特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

それぞれの特徴についてご紹介しましょう。

マンション売却で損失が出た際の対処法を探す

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

この特例は、住み替えのためにマンションを売却し損失が発生した場合、利用することができます。この特例では、住み替えによって発生した損失を所得から控除(損益通算)できるだけでなく、控除しきれなかった分は最長3年間繰り越して控除(繰越控除)を受けることが可能です。

しかし、利用するためには、所有期間が5年を超えていること、所得が3,000万円以下であることなどのさまざまな要件を満たしている必要があります。詳しい要件については国税庁のホームページをご参照ください。

●マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例について詳しくはこちら

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

この特例は、住宅ローンが残っているマンションを売却したものの、ローン残債が成約価格を上回る「オーバーローン」になった場合に利用できる特例です。上記の特例と異なり、住み替えではないマンション売却にも利用することができます。

特例を利用することで、マンション売却により発生した損失を損益通算することができ、控除しきれなかった分は最長3年間まで繰越控除することが可能です。しかし、上記の特例と同じように利用するためには所有期間が5年を超えていること、自分の住んでいるマイホームを売却することなど複数の要件を満たす必要があります。詳しい要件については国税庁のホームページをご参照ください。

●特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例について詳しくはこちら

これらの特例を受けるためには、確定申告が必要です。「マンション売却で確定申告が必要なのは利益が出たときのみ」と思っている方は多いかもしれません。しかし、損失時も申告を行い、上記の特例を受ければ損失を軽減できる可能性もあるので、確定申告することをおすすめします。

マンションからの住み替え

譲渡損失の計算方法

マンション売却の際に発生した損失は、正式には「譲渡損失」と呼びます。先ほどご紹介した特例を利用できるかどうか判断するためにも、譲渡損失の計算方法を理解しておきましょう。計算式は以下の通りです。

譲渡損失 = (取得費 + 譲渡費用) – 売却代金

計算式の項目について説明しましょう。

譲渡損失の計算方法

取得費

取得費とは、物件の購入代金や手数料など、マンションを取得するために支払った費用のことです。しかし、マンションの価値は経年に伴って購入時より減少していきます。そのため、マンションの取得費を計算する際には、実際に支払った費用から減価償却費を差し引く必要があります。減価償却費の計算式は以下の通りです。

建物購入代金 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

建物の償却率は、その建物の耐用年数によって定められます。建物の耐用年数は非事業用の木造建築は33年、ブロック造建築は57年といったように、その構造と用途によって異なります。居住用マンションの多くは鉄筋コンクリート造建築であるため、耐用年数は70年、償却率は0.015である場合がほとんどです。ほかの構造の償却率については、以下の国税庁のホームページをご参照ください。

●主な非業務用資産の償却率について詳しくはこちら

また、経過年数とは築年数ではなく、マンションを所有した期間のことであり、6か月未満は切り捨てて考えます。なお、もし購入代金が分からない場合、取得費は「売却価格の5%」として算出します。

譲渡費用

譲渡費用とは、仲介手数料や印紙税など、マンション売却にかかった費用のことを指し、これらを漏れなく計上することで節税につながります。そのため、売却の際にかかった費用は記録に残しておくようにしましょう。しかし、修繕費や固定資産税など、譲渡費用とは認められないものもあるので注意が必要です。譲渡費用となるものについて、詳しくは国税庁のホームページをご参照ください。

●譲渡費用となるものについて詳しくはこちら

先ほどご紹介した「譲渡損失 = (取得費 + 譲渡費用) – 売却代金」の計算式で、損失が出ている場合は値がプラス、利益が出ている場合の値はマイナスになります。計算した値がマイナスになっているときは、譲渡損失は発生せず、「譲渡所得」を得ることを意味します。

しかしその場合には、譲渡所得に対して課される所得税や住民税が課税されるので注意しましょう。また、一定の条件を満たしている場合、特別控除を利用して課税対象額を減らすこともできます。譲渡所得にかかる税金について、詳しくは以下の記事をご参照ください。

●長期譲渡所得・短期譲渡所得に関する記事はこちら

家にかかる税金

マンション売却で大損しないための対策

マンション売却で損失が出た場合には、上記でご紹介したような特例を利用できる可能性があります。しかし、できれば損失は抑えたいものです。マンションをなるべく高く売るためにできることは主に以下の通りです。

・市場価格が上昇しているときに売る
・売却スケジュールに余裕を持たせる
・内覧時の印象をアップする
・不動産会社を慎重に選ぶ

それぞれの対策について具体的に見ていきましょう。

マンションの売却

市場価格が上昇しているときに売る

マンションを売却する場合、市場価格が上昇しているときに売れば、購入時より高く売れる可能性があります。市場価格は社会情勢や経済の動向など、さまざまな要因によって大きく変化するものです。そのため、マンション売却を検討中の方は、不動産市場について情報収集を行い、売却するタイミングを見極めましょう

売却スケジュールに余裕を持たせる

マンションを相場に合った価格で売却するには、焦って売り急がないことが大切です。引越しや転勤などのタイムリミットが迫ってくると、早く売却するために売り出し価格を下げざるを得なくなってしまいます。マンションの売却には、一般的に3か月程度かかることを踏まえて余裕のある売却スケジュールを立てましょう。

内覧時の印象をアップする

マンションの売却では、購入検討者が物件を実際に見に来る「内覧」というプロセスがあります。内覧での印象は購入意思に大きな影響を与えるので、なるべく好印象を与えられるように気を配りましょう。室内の掃除や片付けを行うほか、購入検討者からの質問には誠実に答え、物件のアピールポイントも伝えられるように準備しておきましょう。

不動産会社を慎重に選ぶ

マンション売却は、不動産会社の仲介のもとで行うのが一般的です。つまり、売却成功のカギは不動産会社選びにあるといえます。不動産会社を選ぶ際は、マンションがあるエリアに強いか、販売実績は豊富か、担当者の対応は誠実でスピーディーか、といった点を基準に、慎重に比較して選ぶようにしましょう。

マンションの内覧

マンション売却で大損しないために対策をしよう

マンション売却で損失が出ることは一般的とされています。しかし、特例を利用したり、事前の対策をしたりすることによって損失を小さくすることは可能です。マンション売却を検討している方は、まず不動産会社の査定を受け、マンションの市場価値を把握するところから始めてみましょう。

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※出典:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年), 公益財団法人 東日本不動産流通機構
http://www.reins.or.jp/
(最終確認:2024年3月22日)

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
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