借地権の売却相場は?目安の金額を知る計算方法や注意点を解説

借地権の売却には、明確な相場はありません。しかし、参考値として借地権の評価額を計算することは可能です。この記事では評価額を計算する方法や、借地権付き不動産を売却する際の費用、注意点などについて解説します。

目次
  1. 借地権の売却相場はいくら?
  2. 借地権の売却相場が分からないときの計算方法
  3. 借地権の売却にかかる費用とその相場
  4. 借地権の売却相場に関する注意点
  5. 借地権の売却を相場より下げないためには?
記事カテゴリ 売却 費用 土地
2024.01.18

借地権の売却相場はいくら?

借地権とは、「建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権」のことです。多くの場合、家を建てるために一定期間、土地を借りられる権利のことをいいます。たとえば、建売住宅を購入する際には土地と建物を購入するのが一般的ですが、借地権付き建物の場合、土地の所有権は地主が保有した状態で、土地の借地権と建物を購入することになります。買主は、土地の持ち主である地主に利用料を支払うことで、土地を一定期間借りられます。

この借地権は、土地を借りる必要がなくなった場合、売却が可能です。ただし売却するにあたっては地主の承諾が必要であり、地主によって承諾条件が異なるので、はっきりとした売却相場がないのが実情です。以下で、売却先や売却方法別に、売却相場の目安をご紹介していきましょう。

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借地権付きの土地の上に建物が建っている

地主に買い取ってもらう場合

まず、借地権を地主に買い取ってもらう、つまり地主に売却する場合は、どのくらいの価格になるかを見ていきましょう。この場合は、地主、借地人のどちらが売却を依頼したかによって価格が異なります。地主からの依頼であれば、売却相場は通常の更地を売却する際の「更地価格」の6~7割程度が目安となります。一方、借地人からの依頼では、更地価格の5割程度となる場合もあるでしょう。借地人から依頼する場合は、地主への交渉が必要となるため、低くなることが考えられます。

第三者に売る場合

地主の承諾を得たうえで第三者に売却するという選択肢もあります。第三者に売却する場合の売却相場は、更地価格の6~7割程度とされています。地主からの依頼で売却する場合と、同じ程度の価格が目安となるでしょう。

底地権と合わせて第三者に売る場合

地主から底地(そこち・借地権が付いている土地)を買い取り、土地と建物を所有してから、セットで第三者に売却するという方法もあります。この場合、底地権と借地権を単独で売却するよりも、買い手が見つかりやすいというメリットがあります。さらに買い手は、購入した土地を自由に利用できるので、前に述べた2つの方法より高く売れる可能性もあります。ただし、地主から底地を購入するには、丁寧な交渉が必要となるでしょう。

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底地権と借地権を合わせて売却中の不動産

借地権の売却相場が分からないときの計算方法

先述の通り、借地権の売却には地主の承諾が必要で、交渉が必要となるケースも多いため、売却相場は一概に捉えられるものではありません。しかし、成約価格の目安を計算することは可能です。成約価格の目安は、「自用地評価額」と「借地権割合」で求められる借地権評価額から知ることができます。まずは、自用地評価額と、借地権割合について解説しましょう。

自用地評価額

自用地評価額とは、借地権が付いていない場合のその土地の評価額のことです。自用地評価額の求め方は、地域によって以下のように異なります。

路線価地域 : 路線価 × 土地の面積
路線価の定められていない倍率地域 : 固定資産税評価額 × 倍率

ちなみに、路線価とは「道路に面している土地1㎡あたりの価格」、倍率とは路線価の代わりに国税庁が地域ごとに定めた土地を評価するための倍率を指します。いずれも国税庁のホームページ内「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で閲覧できます。

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借地権割合

借地権割合とは、土地に占める借地権の割合を示す数字のことをいいます。こちらも国税庁のホームページ内「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で閲覧できます。借地権割合は、土地ごとに30~90%までと幅広く設定されていますが、割合は都心部ほど高くなる傾向にあります。

自用地評価額と借地権割合を使った計算方法

上記の自用地評価額と借地権割合を使った、借地権評価額の計算式は次の通りです。

自用地評価額 × 借地権割合 = 借地権評価額

〈例〉自用地評価額4,000万円、借地権割合が50%の土地の場合
4,000万円 × 50% = 2,000万円

ただし、この計算で求められる金額はあくまで参考値です。実際には地主と交渉したり、あるいは地主の承諾を得て売り出し価格を設定し、購入希望者と交渉したりして成約価格が決まることになります。

建て替えに地主の承諾が必要な借地権付き建物

借地権の売却にかかる費用とその相場

通常の不動産売却にはさまざまな費用がかかりますが、借地権の売却には、加えて、解体費用や譲渡承諾料といった費用がかかることもあります。それぞれ見ていきましょう。

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解体費用

借地権を地主に売却する場合、更地に戻してから売却する(土地に付いた借地権のみを売却する)か、建物も一緒に売却するかを選ぶことができます。ただし、更地に戻して売却するには、建物の解体費用がかかります。

建物の解体費用は、構造、坪数、立地条件によって価格が決まり、30坪の木造住宅で75万~150万円、鉄骨造住宅で105万~210万円、鉄筋コンクリート造住宅で135万~240万円といったところが相場となります。ただし、取り壊す家の条件によって金額は大きく異なることがあるため、あくまでも目安です。このほかに廃棄物の処理費用や、更地にするための庭木やブロック塀などの撤去費用、整地費用などが発生することもあります。

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譲渡承諾料

借地権を第三者に売却する場合は、地主の許可を得るために譲渡承諾料を支払う必要があります。一般的な価格は、借地権の成約価格の10%程度とされます。

借地権付き土地の上に建つ建物が解体される様子

借地権の売却相場に関する注意点

借地権の売却を行う場合、なるべくスムーズに、できれば高い価格で売りたいという気持ちもあるでしょう。借地権には明確な相場がないため、状況によっては極端に安い売却価格となってしまうことがあります。次のような点に注意して、売却を慎重に進める必要があるでしょう。

地主との交渉

借地人の希望で借地権を地主に買い取ってもらう場合は、借地人側から地主に依頼して交渉しなければなりません。しかし、地主には買取に応じる義務はないため、借地権の買取価格を下げられてしまうことがあります。加えて、地主との関係がもともとよくなかったり、こじれていたりすると、交渉が難航し、価格に影響することもあるでしょう。

住宅ローンの承諾

地主から売却の承諾が得られ、購入希望者が見つかったとしても、購入希望者が住宅ローンを借り入れることに地主が承諾しない場合もあります。しかし、金融機関は、借地上の建物への融資の際に、地主の承諾(承諾書)を必要とすることが一般的です。

また、借地権付き物件は、一般の不動産と比べて、金融機関の住宅ローン審査も厳しくなっています。なぜなら、借り入れる本人が土地部分の所有権を持っていないことから、土地と建物両方を所有している場合と比べると担保評価が低い傾向にあるためです。

住宅ローンの利用ができないと、買い手は現金一括払いで購入するしかありません。個人の購入希望者にとっては買いにくく、購入に至らないケースも想定しておく必要があるでしょう。

更新時期

借地権の更新時には更新料を支払うことが一般的です。ただし、厳密には必須ではなく、契約書に記載がある場合にのみ支払うものとされています。

この更新料の支払いがあるケースにおいては、更新時期が間近に迫っているタイミングだと、第三者への売却が難しいこともあります。買い手は購入してすぐに更新費用を支払うことになるため、結果、売り出し価格を下げざるを得ないということになりやすいでしょう。

立地条件

地主の承諾を得て第三者へ売却できるようになったとしても、そもそも借地権付きの不動産には買い手が付きにくいものです。地代の変更や借地権契約の更新拒否などのリスクがあるほか、売却にも承諾が必要になるため、わずらわしいと感じる買い手も少なくありません。加えて、駅から遠い、日当たりがよくないなど立地条件にも難があると、思うような金額で売るのは難しいといえます。

借地権付きの土地と借主募集の看板

借地権の売却を相場より下げないためには?

借地権の売却は可能ではあるものの、一般の不動産売却とは異なる点に注意が必要です。売却には地主の承諾が必要であり、権利関係も複雑で、簡単に進むものではありません。一般個人から借地権の買い手を募るだけでなく、地主に売却の交渉をする場合であっても、直接行うよりも不動産会社に相談して仲介してもらうほうがスムーズです。

また、交渉から売却手続き、引渡しまでをスピーディに済ませたい場合は、不動産会社での買取を選ぶのもおすすめです。まずは査定を受けて買取を依頼する不動産会社を選び、地主への交渉にあたってもらいましょう。

いずれにしても、借地権の売買に関する実績が豊富な不動産会社を選ぶことが大切です。三井のリハウスでは、不動産売却の査定や、売却についてのサポートを行っています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
https://www.izumi-ohishi.co.jp/profile.html