不動産売買契約書とは?記載内容、確認ポイント、作成の流れを解説

不動産の売買をする際には、「不動産売買契約書」という書類が必要になります。この書類によって、売主と買主間で契約内容の相違を防ぐことができます。今回は、不動産売買契約書について、書かれている内容や確認すべきポイントなどをご紹介します。

目次
  1. 不動産売買契約書とは?
  2. 不動産売買契約書の内容と確認ポイント
  3. 不動産売買契約の流れと必要書類
  4. 信頼できる不動産会社の選択を!
記事カテゴリ 売却 購入
2022.09.22

不動産売買契約書とは?

「不動産売買契約書」とは、不動産の売買を行う際に必要となる書類の1つです。不動産売買契約書には、売買代金の支払い時期、金額、取引する土地や建物の住所、面積、売主と買主の住所や氏名が記載されています。マンションの場合は、前述の項目に加え、専有部分、敷地権を明確にする土地の詳細情報が記載されています。

不動産売買契約書は、売買契約を結ぶ際に、売主と買主の両方が契約内容に相違がないか確かめるうえで大切な書類です。また、書類の形で売主と買主の契約内容を残しておくことで、購入から時間がたってから、両者の間で意見の食い違いが生じることを防げるといったメリットも存在します。

不動産の売買を行う際には、不動産売買契約書の記載内容を知っておくことが大切です。さらに、不動産売買の全体のおおまかな流れや、契約書作成のための必要書類を知っておくことで、不動産の売買をスムーズに進めやすくなるでしょう。

そこで今回は、不動産の売買を検討している人に向けて、不動産売買契約書の内容や確認ポイント、契約の流れや必要書類などについて解説していきます。

●不動産売却の基礎知識に関する記事はこちら
【家の売却ガイド】初めて不動産を売る人向けの基礎知識

印鑑を押す手

不動産売買契約書の内容と確認ポイント

不動産売買契約書は、先ほど触れたように、売主と買主の間で結ばれた契約の内容を明記するための書類です。では、不動産売買契約書に記載される契約内容には、具体的にどのような項目があるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

不動産売買契約書の主な内容

不動産売買契約書は、売主と買主の合意のもと、売買の仲介を行う不動産会社によって作成され、その内容は、以下の12項目を明記したものとなっています。

[ 1 ] 売買物件の表示
不動産売買契約書には、売買が行われる対象の物件についての情報が記載されています。対象の物件情報は、法務局で取得できる登記簿謄本で確認できます。なお、一般的に使われる住居表示の記載と、登記簿上の地番の記載が異なるケースがあるので、注意が必要です。

[ 2 ] 売買代金、手付金の額、支払期日
売主と買主の双方で合意した売買代金の支払い方法や、支払日などが規定されています。手付金とは売主に対して売買代金の一部を現金で支払う費用を指し、売買契約の成立を証明する意味合いがあります。一般的に、手付金は売買代金の新築なら5%程度、中古なら10%程度とされています。

[ 3 ] 土地の実測及び土地代金の精算
登記簿謄本に記載されている土地の面積と、実際の土地の面積の大きさに違いがないかを確認する項目です。土地の実測は、売主によって行われることが一般的です。
面積に誤差があった場合は、その差分を土地代金として清算するという取り決めを交わすケースがあります。

[ 4 ] 所有権の移転と引渡しの時期
不動産の取引では、「購入代金の支払い」「物件の受け渡し」「所有権移転登記の手続き」を同じ日に行うことが一般的です。これを同時履行といい、「引渡したのに売主が代金を受け取れない」「購入代金を払ったのに引渡してもらえない」といったトラブルを防ぐ目的があるのです。

カレンダーと家の模型

[ 5 ] 付帯設備等の引き継ぎ
住宅やマンションを売却する場合には、家電や敷地内の植物といった設備のうち、売主から買主に引き継がれるものを明確にする必要があります。なお、売買契約書によっては引渡してから7日以内に発生した主要設備の故障や不具合については、売主側が修復する責任があると規定されていることもあります。

[ 6 ] 負担の消除
売主は所有権を移転するまでに、「抵当権」や「賃借権」などのような所有権を損害する要因を事前に消除する必要があります。抵当権とは、住宅ローンを借りる際に返済者が借金を返済できなくなった場合に、その住宅を担保とすることができる、金融機関側の権利です。一方で、賃借権とは、賃貸借契約のもと借りた人が土地を使用できる権利を指します。

[ 7 ] 税金の精算
売買代金のほかに、固定資産税や都市計画税の精算が必要です。どちらも1月1日時点で所有している人に対して課される税金であり、1年分を納税することになるため、1年の途中で売買が行われた場合、売主は引渡し日以降の税金も負担することになります。

そのため一般的に、引渡し後の分については引渡しを行った日を基準に日割り計算を行い、買主が売主に精算金を支払うことで買主が引渡し日以降の固定資産税を実質的に負担するとされています。

[ 8 ] 手付解除の期限
手付解除とは、購入契約の成立から引渡しまでの間に、契約を解除できるようにするためのものです。一度売買契約を結んだものの、買主側が契約を解除したい場合に、手付解除期日であれば、手付金を放棄することによって不動産売買契約書を解除することができます。その反対に売主が契約を解除したい場合は、手付金の2倍の金額を買主に支払うことで解除が可能です。なお、手付金の有効期限の設定は売主と買主の当事者間で決定します。

[ 9 ] 契約違反による解除
売主及び買主のどちらかが、契約に違反した場合に必要となる取り決めです。契約に違反した側が違約金を支払い、契約を解除する方法が一般的とされています。基本的には、違反金は売買代金の2割までの範囲で設定されます。

家の模型と話し合う人

[ 10 ] 引渡し前の滅失・毀損
売買契約の成立から引渡しまでの間に、対象となる不動産の全部または一部が損傷した場合に、売主と買主が負う責任についても、契約書に記載します。自然災害といった売主及び買主のいずれの責任でもない事由で物件が滅失、毀損し、修復が不可能な場合は、不可抗力と認められ、売主と買主どちらからも契約を解除できます。なお、契約を解除する場合は、売主は買主に対し、受け取った金銭を無利息で返還しなければなりません。

[ 11 ] 反社会勢力の排除
売主および買主が、反社会的勢力でないこと、物件を反社会的勢力の事務所、そのほかの活動拠点に供しないことが規約として明記します。なお、相手が反社会勢力とのかかわりがあることが発覚した場合は、契約を解除することができます。

[ 12 ] 契約不適合責任
契約不適合責任とは、引渡し完了後に欠陥が発覚した場合の売主の責任のことをいいます。免責事項として売買契約書に記載されていない欠陥があった場合、買主は売主に対して建物の修補や売買代金の減額(個人間の売買ではないものが多い)、契約解除、損害賠償などの請求ができることを規定しています。なお、以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、民放改正により名称や法的責任範囲が変更されました。

確認したいポイント

上記でご紹介した内容に加えて、重要事項説明書の記載内容の確認を行うようにしましょう。また、重要事項説明書の記載内容だけでなく、登記事項証明書、測量図面などの付属書類を確認することも重要です。

加えて、契約書に記載されている不動産の範囲や売買代金、手付金額などの細かい数字に漏れや誤りがないかも確認するようにしましょう。契約書の小さな間違いが後に売主と買主の争いに発展する場合もあります。そういったトラブルを防ぐためにも、契約書に記載されている内容の確認はとても大切です。

不動産売買契約の流れと必要書類

ここまでは不動産売買契約書の内容について見てきました。では、実際に不動産売買の契約はどのような手順で行うのでしょうか?ここからは不動産売買の契約の流れと、必要な書類について見ていきましょう。

契約の流れ

契約のおおまかな流れは以下の通りです。

[ 1 ]必要書類の準備
契約の前に、土地・建物登記済証または登記識別情報、印鑑証明書などの必要書類を準備します。詳しい必要書類の内容については、この後お伝えします。

[ 2 ]契約手続き
必要書類がそろったら、契約手続きを行います。売主と買主の双方が立会い契約手続きする流れが一般的です。

[ 3 ]内容を確認後、署名と押印
契約内容について確認を行い、互いに納得できたらそれぞれが署名と押印をします。

[ 4 ]売買契約の成立
署名を終えた段階で、買主は売主に手付金を支払い、売買契約が成立します。

なお、不動産売買契約書は、同一の書面2通を作成し、売主と買主がそれぞれ1通ずつ保管することが一般的です。

●売却までの流れに関する詳しい情報はこちらをご覧ください。

売主の必要書類

売主の必要な書類は以下の通りです。(引渡し時に渡す書類も含みます。)

書類の名前内容
土地・建物登記済証(権利証)または登記識別情報不動産を購入した際に発行される、所有権移転登記に必要な書類
印鑑証明書(3か月以に発行されたもの)
建築確認通知書・検査済証(引渡し時に必要)建物が建築基準法に沿って建てられたことを証明する書類
測量図(引渡し時に必要)確定測量図や県境測量図など
建物図面(引渡し時に必要)建物の形状と建物の位置関係を表した図面
物件状況等報告書(引渡し時に必要)主に瑕疵(かし:キズのこと)の状態が記された書類
設備表(引渡し時に必要)不動産に付属する設備の不具合等を記載した書類
固定資産税・都市計画税納税通知書固定資産税額を確認するための書類
管理規約・管理組合総会議事録など(マンション売却の場合のみ/引渡し時に必要)マンション管理に関する規則が記された規約や管理組合による総会の議事録
収入印紙(売買代金により変動・軽減措置あり)書類を作成する際に、印紙税や登録免許税の支払いのために必要となるもの
本人確認書類運転免許証やパスポートなど本人を証明する書類

上記に加えて、契約をする本人の実印や、不動産会社に支払う仲介手数料(売買契約時は半額分)が必要です。

●不動産売却にかかる税金に関する記事はこちら
不動産売却にかかる税金はいくら?必要な費用の計算や節税対策をご紹介

●不動産売却にかかる手数料に関する記事はこちら
不動産の売却には手数料がかかる?仲介手数料の相場やポイントを解説

買主の必要書類

買主の必要な書類は以下の通りです。

書類の名前内容
収入印紙(売買代金により変動・軽減措置あり)同上
本人確認書類運転免許証やパスポートなど本人を証明する書類

買主は上記の書類に加えて、手付金や、仲介手数料の半額を準備する必要があります。また、住宅ローンを利用する場合は実印が必要となります。

指さしをする女性

信頼できる不動産会社の選択を!

不動産売買契約書は、金額の大きい不動産の売買を安心、安全な取引で行うために定められた重要な書類であることをお伝えしてきました。

契約書の内容はどれも重要ですが、不動産取引について知識が豊富でないと、契約内容の全てを自分1人で理解するのは難しいかもしれません。そういったときは、不動産会社に一度相談することをおすすめします。信頼できる不動産会社にサポートしてもらうことで、不動産売買がうまくいく可能性もグッと高くなるでしょう。

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不動産鑑定士 竹内英二

株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
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