専任媒介契約とは?一般媒介や専属専任媒介との違いも併せて解説

専任媒介契約は、不動産の売買をしたい人と不動産会社との間で結ぶ契約のことを指し、3種類ある媒介契約のうち、最も多く結ばれている契約方式です。この記事では専任媒介契約とはどのような契約なのか、そのほかの媒介契約との違いも併せて解説します。

目次
  1. 媒介契約とは?
  2. 専任媒介契約の特徴は?
  3. 一般媒介契約、専属専任媒介契約とどう違う?
  4. 専任媒介契約が向いている人は?
  5. 不動産会社に支払う費用や支払いのタイミングは?
  6. 信頼のおける会社と専任媒介契約を結ぼう!
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2023.06.09

媒介契約とは?

不動産の売却を検討していると、「媒介契約」や「専任媒介」という耳慣れない言葉に出会うことがあります。媒介契約や専任媒介とは、どのような契約なのでしょうか?

「媒介契約」とは、不動産の売買や賃貸借をしたい人と、仲介を依頼する宅地建物取引業者(不動産会社)との間で結ばれる契約を指します。不動産でいう媒介とは、不動産を売りたい人と買いたい人、貸したい人と借りたい人の間に入ってその取引を取り持つことであり、一般的には「仲介」ともいいます。

不動産の売買や賃貸借の契約を結ぶ際には、取引でトラブルが発生しないよう、不動産に関する専門知識が必要なうえ、多くの専門的な書類を準備する必要もあります。そのため、不動産の売買や賃貸借の取引を行う場合は、専門とする不動産会社に仲介(媒介)を依頼するのが一般的です。

「専任媒介」は、3種類ある媒介契約のうちの1つです。不動産流通推進センターが2023年4月に公表した2022年度および2023年3月の指定流通機構の活用状況調査によれば、中古物件を売却する際、仲介を依頼する不動産会社と結ぶ媒介契約のうち、最も多く結ばれている契約方式は専任媒介契約となっています。※なお、3つの媒介契約の契約内容はそれぞれ異なり、次の表のような特徴を持っています。

一般媒介契約専任媒介契約専属専任媒介契約
自己発見取引不可
複数の不動産業者との媒介契約不可
(1社のみと契約)
不可
(1社のみと契約)
指定流通機構(レインズ)への登録義務任意媒介契約締結後7日以内媒介契約締結後5日以内
契約期間任意最長3か月最長3か月
業務処理の報告義務任意2週間に1回以上1週間に1回以上

「自己発見取引」とは、不動産の売主自らが買主を見つけて、不動産会社を介さずに直接買主と売買や賃貸借を行う取引です。一般媒介契約と専任媒介契約では、自己発見取引が可能ですが、不動産会社に仲介してもらうよう依頼することもできます。

不動産会社が仲介しない自己発見取引の場合は、不動産会社に仲介手数料を支払う必要がないというメリットがあります。一方で、不動産の専門知識のない当事者間での取引となることが多くなり、取引そのものや取引後に買主と売主との間でトラブルが発生する可能性が高くなってしまいます。

なお、専属専任媒介契約では自己発見取引はできず、不動産売買であれば、売主が自ら買主を見つけた場合でも必ず不動産会社を介さなければならないため、仲介手数料が発生します。

●媒介に関する記事はこちら
媒介とは?仲介や一般媒介などの違いを一挙解説!

今回は、媒介契約のなかでも選ばれることの多い「専任媒介」を中心に、メリットと注意点、ほかの媒介契約との違いについて詳しく解説していきます。現在、不動産の売却を検討している方や、仲介を依頼する不動産会社との契約内容について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

家の模型を手渡す人

専任媒介契約の特徴は?

専任媒介契約は、先ほど触れたように、不動産売却時に不動産会社と結ぶ媒介契約としては最も多く選ばれている形式です。なぜ多くの人に選ばれているのか、具体的に見ていきましょう。

専任媒介契約のメリット

まずは、専任媒介契約を結ぶとどのようなメリットがあるのかを解説します。

●緩過ぎず、厳し過ぎない内容
専任媒介の契約内容は、一般媒介契約よりも厳しく、専属専任媒介契約よりはやや緩い内容となっています。

不動産売買の一般媒介契約では、依頼者(売主)と受託者(不動産会社)双方で任意な部分が多く、それぞれの行動があまり制限されません。売主は、複数の不動産会社との契約や自己発見取引が可能であり、不動産会社は指定流通機構(レインズ)への登録義務がなく、また売主に対する報告義務もありません。

一方、専属専任媒介は制限が最も厳しく、受託者(不動産会社)は指定登録機関(レインズ)への登録を契約締結後5日以内に行う必要があり、報告も1週間に1回です。依頼者(売主)にとっては、状況を把握しやすいというメリットがある一方で、自己発見取引ができないといった制約を伴います。

専任媒介契約では、依頼者(売主)の自己発見取引が可能で、受託者(不動産会社)の指定登録機関(レインズ)への登録義務や報告義務の日数、頻度がやや緩くなっていますが、取引において不動産会社が負う責任という面では、専属専任媒介契約と大差ありません。

また、専属専任媒介契約と専任媒介契約は、1社のみとの契約となることから、複数の不動産会社とのやり取りが不要になり、募集において情報提供や内覧の調整などが煩雑になる恐れがない、といったメリットがあります。

●一般媒介よりも積極的な販売活動が期待できる
専任媒介契約の場合、指定流通機関(レインズ)への登録が媒介契約後7日以内に義務付けられています。レインズとは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略で、指定登録機関が提供する不動産会社間の情報交換システムです。レインズに掲載されると、不動産情報が速やかに不動産業者間で公開されます。そのほか、レインズへの登録だけでなく、一般媒介にはない売主への報告義務があるため、募集状況が2週間に1回以上の頻度で確認できて安心です。

また、不動産会社は、仲介した物件が成約すれば仲介手数料を得ることができます。専任媒介契約の場合、仲介の依頼先の不動産会社は1社と限定されているので、成約すればその1社は確実に仲介手数料を獲得できます。そのため、時間や費用をかけるなど積極的な販売活動をしやすくなるのです。依頼者としても、積極的な営業活動をしてもらえるのは望ましいことですね。

媒介契約の注意点

媒介契約を結ぶ際、どのような点に気を付けるべきか把握しておきましょう。

●宅地建物取引業者であるか確認する
不動産の売買や賃貸借といった取引を業として仲介するには宅地建物取引業の免許が必要になります。念のため、専任媒介契約を含め、媒介契約を結ぶ予定の不動産会社が、国土交通省大臣や都道府県知事の免許を受けているのかを確認しておきましょう。不動産会社の事務所には、来社した人の目に付く場所に免許証を掲示する義務があるので、事務所に行けば確認できます。また、不動産会社のホームページでも免許番号が記載されているため、その免許番号をもとに国土交通省や都道府県のホームページで、宅地建物取引業者登録がされているかどうかを確認することも可能です。

胸に手を当てている男性

●契約の履行をチェックする
専任媒介契約を結んだ後の指定流通機構(レインズ)への登録、売却活動中の報告義務などがきちんとなされているか確認しておきましょう。契約に違反している場合は、契約期間内でも解約が可能です。具体的な例としては、レインズに掲載された場合、登録機関から登録証明書が発行されるので、その証明書を受け取り、内容を確認しましょう。

●仲介と媒介の違いに関する記事はこちら
媒介とは?仲介や一般媒介などの違いを一挙解説!

一般媒介契約、専属専任媒介契約とどう違う?

ここまでは、専任媒介契約のメリットや、媒介契約時、契約後の注意点を解説しました。ここからは、一般媒介契約や専属専任媒介契約についてご紹介します。

一般媒介契約の特徴

一般媒介契約の一番の特徴は、複数の不動産会社と同時に媒介契約を結ぶことができる点です。しかし、売却活動に対する1社の責任という面ではやや薄れてしまうことから、不動産会社が専任媒介契約や、専属専任媒介契約ほど熱心に売却活動を行わない可能性があります。不動産会社次第で売却活動のばらつきが大きくなるため、報告義務はないものの、活動報告を約束してもらいましょう。

●一般媒介に関する記事はこちら
一般媒介を選ぶ前に知っておくべき、不動産売却の基本知識を紹介!

専属専任媒介契約の特徴

専属専任媒介契約の最大の特徴は、自己発見取引ができず、取引は依頼した1社の不動産会社を介してのみ行えるという点です。この特徴から、買主を自己発見した場合でも成約した場合は必ず仲介手数料が発生することになります。また、不動産会社からの活動報告の頻度が1週間に1回以上と義務付けられています。これは専任媒介契約と比べても高い頻度であり、売却活動についてより頻繁に報告を受けられます。その意味では、専属専任媒介で依頼する不動産会社には、そのほかの媒介契約と比べてより強い信頼が必要ともいえます。

担当者と話す男性

専任媒介契約が向いている人は?

これまで、専任媒介契約を始めとして、3種類の媒介契約の基礎知識やメリット、注意点などについて解説してきました。ここからは、媒介契約の選び方について解説していきます。

専任媒介契約が向いているケース

以下のようなケースに当てはまる方には、専任媒介契約をおすすめします。

●きちんと活動報告を受けたい場合
一般媒介契約では、売却活動報告は義務付けられておらず、その頻度も指定されません。専任媒介契約では2週間1回以上の報告が義務付けられるため、きちんと活動報告を受けたい場合は専任媒介契約または専属専任媒介契約を選び、特に2週間に1回ぐらいの頻度で報告が受けられればよいと考える場合は専任媒介契約を選ぶとよいでしょう。

●自己発見取引の可能性がある場合
友人や知人、親族といった身近な人が売却する不動産を購入する可能性がある場合には、自己発見取引ができない専属専任媒介契約ではなく、専任媒介契約を選ぶことをおすすめします。

●売却活動にかける手間と余裕がない場合
一般媒介契約では、売主自ら複数の不動産会社とやり取りする必要が出てくる可能性があるため、売却活動中、売主自身の手間や時間がかかってしまう恐れがあります。専任媒介契約と専属専任媒介契約であれば、連絡を取る不動産会社を一本化できるため、売主自らの手を煩わせずにしっかりと売却活動の状況を把握することができます。

不動産会社の担当者との会話風景

一般媒介契約が向いているケース

一般媒介が向いているケースには以下のようなものがあります。

●売却しやすい物件だと思われる場合
人気のエリアにある物件や売主が価格について柔軟に考えている場合など、売却が比較的容易にできそうな場合は、1社に限らず複数の不動産会社に媒介を依頼してもよいでしょう。依頼先を多くすることで、広く購入希望者を募り、反響に応じて売買条件を検討しながら売却活動を進められるので、一般媒介契約でも売りにくくなるリスクは低くなります。

●売却活動に自分の手間と時間をかけられる場合
一般媒介契約で複数の不動産会社に依頼した場合、内覧の日程調整や申し込みといった最新の状況を、依頼した全ての不動産会社に共有しなければなりません。そのため、売主の不動産会社とのやり取りに費やす手間や時間が増えます。しかしその分、不動産会社の力量を見ながら売却を進められるため、売却活動に充てる時間に余裕があり、1社に任せるのが不安な場合には、一般契約がおすすめです。

説明をする女性社員

専属専任媒介契約が向いているケース

専属専任媒介契約が向いているケースには以下のようなものが挙げられます。

●自己発見取引の可能性がない場合
専属専任媒介契約では、依頼者(売主)による自己発見取引ができません。売主である自分の周囲に買主となる可能性のある人がおらず、信頼できる不動産会社にじっくりと売却活動を進めてもらいたい場合に向いています。

専属専任媒介契約では、依頼した不動産会社から1週間に1回以上の報告を受けることができるため、売却活動について毎週きちんと活動報告を受けたい方に向いているといえます。

家の模型とチェックシート

不動産会社に支払う費用や支払いのタイミングは?

「媒介契約を結ぶのにはお金がかかるの?」と気になっている方もいるでしょう。ここでは、不動産会社にお金を支払うタイミングやいくら支払うのかについて解説していきます。

媒介契約自体に手数料はかからない

媒介契約自体には、手数料などの費用は一切かかりません。不動産会社へ支払う仲介手数料は、あくまでも成功報酬であるため、売買契約の成立時(または取引完了時)に報酬を支払うことになります。

仲介手数料には上限がある

売買の取引が成立した際に、不動産会社に支払う仲介手数料は、取り扱う不動産の価格に応じて上限が定められています。法律で定められている仲介手数料の上限は以下の通りです。なお、仲介手数料は消費税が加算されて請求されます。

建物の売買価格(税抜)仲介手数料の上限
200万円以下物件の売買価格(税抜) × 5% + 消費税
200万円超~400万円以下物件の売買価格(税抜) × 4% + 消費税
400万円超物件の売買価格(税抜) × 3% + 消費税

買主との価格交渉がある場合を考慮すると、実際の成約価格は契約するまで分かりませんが、売り出し価格をもとに、どれくらいの金額を不動産会社へ仲介手数料として支払う必要があるのかを事前に概算でも把握しておくと、資金計画を立てるのに役立ちます。

なお、仲介手数料を支払うタイミングは、不動産会社によって異なりますが、契約時に半金、決済・引渡し時に残金というケースが多いようです。

●仲介手数料について詳しくはこちら
不動産の売却には手数料がかかる?仲介手数料の相場やポイントを解説

●仲介手数料の詳しい上限と計算方法に関する記事はこちら
不動産売買にかかる仲介手数料とは?上限と計算例、ポイントを解説

胸に手を当てる女性

信頼のおける会社と専任媒介契約を結ぼう!

不動産をスムーズに、そして納得した条件で売却するためには、不動産会社選びと仲介を正式に依頼する際の媒介契約の種類が重要になります。そのため、いずれも慎重に検討するようにしましょう。

媒介契約を結ぶ際は、不動産会社の販売実績を確認するとともに、査定を行う営業担当者の印象や実際の対応などから、信頼できそうか、売却活動に意欲的だと思えるかといった視点で不動産会社を選ぶのがおすすめです。特に、「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」を結ぶ場合は、複数の不動産会社に仲介(媒介)を依頼できないため、信頼できる不動産会社と契約できるかが重要になります。今回ご紹介した3つの媒介契約の特徴を理解し、不動産会社の実績や実際の対応を比較検討したうえで、納得のいく不動産売却を進めていきましょう!

●不動産会社の選び方に関する記事はこちら
不動産売却はどこがいい?大手不動産会社のメリットや選び方のコツを解説

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※出典:指定流通機構の活用状況について2022年分,公益財団法人不動産流通推進センター
https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/reins/katsuyo/2022_katsuyo.pdf
(最終確認:2023年5月12日)

秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。