売却中の戸建てが売れない理由は?売るための対策を解説

戸建てを売却しようとしても、市場の状況や売却条件などによりなかなか買い手が見つからないことがあります。今回は、売却中の戸建てが売れない理由や、売るためにはどうすればよいのかをご紹介します。

目次
  1. 中古の一戸建てが売れにくい理由は?
  2. 売れない一戸建ての代表的な5つの原因
  3. 中古一戸建てが売れないときの対策5つ
  4. 不動産会社に相談してみよう
記事カテゴリ 売却 一戸建て
2022.10.28

中古の一戸建てが売れにくい理由は?

ライフスタイルの変化に伴い、一戸建ての住まいを売却しようとしている人のなかには、「売り出した家になかなか買い手が付かない…」と悩んでいる人や、「果たしてこのままで家は売れるだろうか?」と心配している人もいるのではないでしょうか?

現在、中古の一戸建ての売買取引件数は、コロナ禍の影響もあり、緩やかな増加傾向にありますが、ほかの国と比較すると、中古(既存)住宅の取引件数の割合は少ないのが実情です。内閣府の調査では、「日本は新築需要のほうが高く、中古住宅の取引件数は1割強にとどまっている。時系列で見ると、既存住宅件数は緩やかな増加傾向を続けているものの、その増加は数%にとどまる」と報告しています。※1

しかし、売れにくい理由を知り、売れるための対策を施すことで、中古の一戸建ても希望に沿った形での売却に近付けることができます。今回は、一戸建てが売れない場合に考えられる理由とその対策について解説していきます。

家の模型と売り出し中の看板

まず、日本の現状と中古の一戸建てが売れにくい理由を見ていきましょう。中古の一戸建てが売れにくい主な理由は以下の通りです。

少子高齢化により、単身世帯が増加傾向にある

中古の一戸建てが売れにくい理由の1つに、少子高齢化によって単身世帯が増加していることが挙げられます。一般的に、一戸建てを購入するのは、子どもがいる世帯が多いことが分かっています。しかし、未婚率の増加や核家族化の影響によって少子化が進む現在、単身者や子どものいない世帯が増えているため、戸建て住宅の需要が低くなっているのです。

中古住宅を購入する際はローンが組みにくい

中古住宅を購入する場合、住宅ローンが組みにくいという点も、中古住宅が売れにくい理由の1つです。新築住宅と比較すると、中古住宅は担保価値が低くなるため、希望する物件の金額や購入金額まで借り入れることが難しくなることもあります。

木造の一戸建て住宅が多い

日本全体の傾向としては、一戸建て住宅は徐々に非木造住宅も増えているものの、総務省のデータによれば、まだまだ一戸建て住宅の90%以上が木造建築です※2。鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションと比較すると、木造の一戸建ては躯体の劣化は早く、築年数が増えるに従って不動産価値の低下が早まるため、売れにくくなる傾向にあります。

板と家の模型

そのほか、立地も関係してきます。駅に近く利便性の高いエリアに建設されることが多い集合住宅に比べ、駅から遠い自然環境に優れたエリアに建築されることが多い一戸建ての場合は、その遠さが売れにくい原因の1つになります。

ここまで、中古の一戸建て住宅全般が売れにくい理由をお伝えしてきましたが、次からは、中古の一戸建てのなかでも特に売れにくい物件の特徴について解説します。

売れない一戸建ての代表的な5つの原因

中古の一戸建て全般が売れない理由には、日本の社会現象が大きくかかわっていますが、そのようななかでも特に売れにくい物件には、物件特有の問題があります。ここからは、中古の一戸建てを売れにくくさせる代表的な5つの原因をお伝えします。

売却物件に魅力がない

魅力を感じない物件には、買い手がなかなか付きません。劣化が激しい、瑕疵(かし)がある、アクセスが悪い、敷地条件が特殊過ぎる、といった物件は魅力が乏しく、売りにくい物件となります。

相場よりも価格が高く設定されている

売主の売却希望価格が高過ぎると、売れにくくなります。依頼した不動産会社が価格設定を間違えていたり、仲介の売上を増やしたいがために、査定の際、わざと価格を高めに設定したりしているかもしれません。売り出し価格を決める際は、周辺の相場価格を調べ、相場に見合った価格に設定することが大切です。

売却期間が取引件数の少ない時期にまたがっている

取引件数の少ない時期に売却しようとすると、なかなか売れないという問題が生じやすくなります。不動産の成約件数や取引が盛んになるのは、転職や転勤などライフスタイルの変化がある3月頃です。売却期間がお盆休みや正月休みを挟む8月や1月にまたがっていると、不動産の取引が鈍くなり、売れにくくなります。

●家を売るタイミングに関する記事はこちら
家を売るタイミングはいつ?不動産売却のベストタイミングを紹介

住宅の模型を持つ女性

不動産会社選びに失敗している

買い手が付かない理由の1つに、不動産会社選びの失敗が挙げられます。不動産を売却する際、契約した不動産会社が積極的に宣伝活動をしてくれないと、買い手が付かない状態が続くリスクは高くなってしまいます。こうした販売意欲の低さ以外にも、不動産会社が「囲い込み」をしていることが売れにくさにつながっている場合もあるので注意が必要です。囲い込みとは、売り手と買い手の両者から仲介手数料をもらうために、他社に物件を紹介しない行為のことです。

なお、不動産会社との契約方法には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。一般媒介契約は、複数の不動産会社に仲介を依頼することが可能です。専任媒介契約は、1社の不動産会社のみに仲介を依頼する契約です。専任媒介契約は、自分で買い手を見つけた場合は、不動産会社を介さずに契約できます。専属専任媒介契約は、1社の不動産のみと契約し、不動産会社が見つけた買い手としか取引できません。

囲い込みが行われる可能性が高いのは、専属専任媒介契約、あるいは専任媒介契約の場合です。一般媒介契約では情報が1社に独占されないため、囲い込みは行われないと考えてよいでしょう。

内覧対応が不十分

内覧時に、購入希望者の印象を悪くしているケースもあります。壁にシミがある、床が傷んでいる、水回りが汚いなどの要素は購入希望者の決断意欲を鈍らせる要因になります。また、住みながら自宅を公開する場合、ものが散乱して生活感が出過ぎていると、内覧者によい印象を与えることができません。

中古一戸建てが売れないときの対策5つ

売りに出した一戸建てになかなか買い手が付かないとき、いったいどうしたらよいのでしょう?ここからは、売れるために施すべき5つの対策についてお伝えします。

家の模型を持つ手

価格の再設定

先述の通り、売れない理由の1つに、売り出し価格が高過ぎることがあります。一度、類似物件の実際の成約価格を調べて、相場に合った売り出し価格かどうかを確かめることをおすすめします。

確かめる方法は、まず、立地や築年数、間取りや利便性などが類似する物件を周辺地域から探し出し、成約価格を調べます。成約価格は、「土地総合情報システム」や「レインズマーケットインフォメーション」、あるいは不動産会社の掲載情報などで調べることができます。

本来、売り出し価格は物件の査定をした後、信頼できると判断した不動産会社と媒介契約を結び、その不動産会社と一緒に決めるのが一般的です。この段階で売主側も相場を把握し、相場に見合った適正な価格を売り出し価格に設定します。

しかし、相場に見合った売り出し価格ではないと分かった場合は、その旨を不動産会社に伝えて、適正な売り出し価格に変更し、再び売り出すようにします。それでも3か月以上売れない場合は、再び売り出し価格の検討を行うのも1つの方法です。

●査定に関する記事はこちら
不動産査定の価格をどう参考にする?早く高く住まいを売るコツ

不動産会社の変更

不動産会社との媒介契約の期間は、最長で3か月以内(一般媒介を除く)です。媒介契約の契約期間を満了した段階で、不動産会社を変更する方法があります。特に、不動産会社と専任媒介契約や専属専任媒介契約をしている場合は、一般媒介契約に切り替えて、複数の不動産会社と契約し、多方面から情報を発信してもらうとよいでしょう。

不動産会社を選ぶ際は、物件のあるエリアに精通し、実績が豊富で、営業店舗が多い会社を選ぶことをおすすめします。また、対応がスピーディでアドバイス力があり、親身になってくれるかどうかも、不動産会社選びのポイントです。また、インターネット広告が充実しているかどうかも併せてチェックしましょう。また、需要の少ないエリアの物件であれば、そのエリアの需要と販売戦術を熟知している地元の不動産会社へ依頼するのも有効でしょう。

なお、不動産会社を変更する際、広告内容を見直すことをおすすめします。掲載する写真数を増やしたり、動画を付けたりして、これまで以上に物件のよさをアピールしましょう。

●不動産選びのコツに関する記事はこちら
不動産売却はどこがいい?不動産会社の選び方のコツ

モデルルームのようなリビング

内覧に力を入れる

内覧時に、家の印象をよくすることで、成約率も変わってきます。住みながら売却する場合、ものを減らして整理整頓し、隅々まできれいに掃除をしておくことが大切です。自分で汚れが取り切れない場合は、プロが掃除するハウスクリーニングを検討してみるのもよいでしょう。

また、事前にアピールポイントを考えておき、内覧時に伝えることを整理したうえで、質問に対して正直に答えることも印象をアップさせる方法です。

さらに、「ホームステージング」を検討するのもよいでしょう。ホームステージングとは、家具や小物、グリーンなどで、住まいをモデルルームのように演出することです。「ここに住んでみたい」と内覧者に思わせることができれば、成約率が高まります。

また、その場に行くことなく内覧できる「VR内覧」(バーチャルリアリティ内覧)ができるようにするのもよい方法です。

瑕疵担保保険を契約する

さらに、「瑕疵担保保険」を契約しておくと、より安心感が増して取引ができます。瑕疵担保保険とは、売却した後に建物に欠陥が見つかった場合に備える保険のことです。1年のタイプのものでも構いませんので、瑕疵担保保険に加入していれば、買い手側も安心感がさらに増し、成約率がいっそう高まることでしょう。

なお、瑕疵担保保険を付保するには「インスペクション」に合格していることが要件のひとつです。インスペクションとは、プロが建物の劣化状況や不具合、改修すべき箇所などをチェックする住まいの診断のことです。瑕疵担保保険までは付保せずにインスペクションに合格しているだけでも、内覧者に建物のコンディションを正確に伝えることができるため、内覧者も安心できます。

また、成約率を上げるために、部分的なリフォームを検討してみるのもよいでしょう。水回りの設備は特に劣化が進みやすいため、古くなったトイレやユニットバスを交換することでインスペクションの合格率を高められるうえ、買い手の印象をアップさせることも可能です。リフォームをすべきかどうか分からない場合は、不動産会社に相談することをおすすめします。

●住みながら家売却する方法に関する記事はこちら
住みながらの家売却を成功させるには?手順とポイントを解説

買取してもらう

なかなか売れない場合やなるべく早く売却したい場合は、「買取」を検討するのも方法の1つです。買取とは、一般から買い手を募るのではなく、不動産会社に直接物件を買い取ってもらうことを意味します。

買取は、短期間で売却できるため、スピーディに現金化できるうえに、仲介とは異なり不動産会社への仲介手数料がかかりません。ただし、通常の仲介による不動産売却と比較すると価格が低くなり、物件によっては買取不可ということもあります。また、仲介を行っている不動産会社が買取も行っているとは限らないため、買取を行っているか否かは事前に不動産会社に尋ねてみることをおすすめします。

●買取に関する記事はこちら
あなたは不動産買取に向いてる?仲介との違いや買取の流れを紹介

不動産会社に相談してみよう

ここまで、中古の一戸建てが売れにくい理由とその対策について伝えてきました。もし売りに出した一戸建てがなかなか売れない場合は、本記事で紹介した内容を踏まえて、売れない原因を考え、対策を施すことをおすすめします。

不動産は、できるだけ納得できる価格で売りたいものです。そのためには不動産会社選びが重要なポイントになってきます。豊富な実績を持つ頼れる不動産会社を見つけるようにしてくださいね。信頼できる不動産会社に査定を依頼し、査定額の根拠を尋ね、希望に沿った条件で売却できるかどうか、スピーディに売却するにはどうしたらよいかなど、気になることや知りたいことを気軽に相談しながら、一戸建ての売却を成功させましょう。

不動産会社のスタッフたち

※1出典:平成22年度年次経済財政報告,内閣府
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je10/10b02030.html
(最終確認:2022年9月6日)

※2出典:平成30年住宅・土地統計調査;総務省
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/g_gaiyou.pdf
(最終確認:2022年9月6日)

不動産鑑定士 竹内英二

株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
https://grow-profit.net/