築50年のマンションは大丈夫?いつまで住めるか、売却は可能かを詳しく解説
築50年のマンションの多くは、適切なメンテナンスが行われていれば住み続けることが可能です。また、売却できる可能性も十分にあります。今回は、築年数を重ねたマンションの耐久性や市場での需要、より高く売るためにできることについてご紹介します。
目次
築50年のマンションにはいつまで住める?
現在、築50年以上になるマンションに住んでいる方や、もうすぐ築50年に達するマンションに住んでいる方は「あとどれくらいここに住めるのだろう?」「資産価値はあるのかな?」と、不安に思うことがあるのではないでしょうか?
そこで今回は、「築50年のマンションに住み続けることはできるのか?」「売却することは可能なのか?」という疑問に対する回答に加えて、なるべく高く売却するコツについてご紹介します。
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物理的には住めるマンションが多い
多くのマンションに採用されている鉄筋コンクリート造の場合、国土交通省では建物の物理的な寿命を117年と推定しています。そのため、築50年以上たっているマンションであっても、多くは住み続けられる可能性が高いといえます。
定期的なメンテナンスは必要
築50年以上たっているマンションに住み続けることは可能といっても、快適性と安全性を維持するためには定期的なメンテナンスが必要です。たとえば、水道管や排水管などの寿命は利用している配管種別にもよりますが、一般的に30~40年といわれています。マンションによっては、長期修繕計画や修繕履歴を備えていることもあるので、これまでの修繕内容や今後の修繕計画を確認するようにしましょう。
また、耐震性の面から見ると、築50年以上のマンションは「旧耐震基準」に沿って建てられている可能性が高いと考えられます。ただし、物件によっては耐震改修や耐震補強工事を行っている、あるいは「新耐震基準」が施行されてから改めて耐震診断を行い、新耐震基準と同等の耐震性能を満たしているというケースもあります。お住まいのマンションの耐震性を確認したいときは、過去の総会議事録を見たり、マンションの管理会社に聞いたりしてみましょう。
新耐震基準と同等以上の耐震性を満たしていない物件は、購入時に住宅ローンが利用できない場合があります。所有の物件が耐震基準を満たしていないことで、買い手が付きにくくなってしまった場合は、「買取」も視野に入れるとよいでしょう。買取については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
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資産価値が下がることに注意
マンションは築年数が古くなればなるほど資産価値が低下していきます。東日本不動産流通機構が公表している「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)」のグラフ※1を見ても、築年数が経過するにつれて成約物件の価格が下落していることが分かります。
※1公益財団法人 東日本不動産流通機構『築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)』より引用
築50年のマンションの建て替えはある?
上記の通り、築50年以上たっているマンションでも、適切なメンテナンスが行われていれば住み続けることは可能です。しかし、2022年に東京カンテイが調査した結果によると、建て替えを行ったマンションの平均築年数は東京都で42.1年、全国で40.3年となっています※2。これは、鉄筋(鉄骨鉄筋)コンクリート造のマンションの法定耐用年数が47年とされていることを参考に、建て替え時期が検討されたと考えられます。
法定耐用年数とは、税務上の減価償却を終えるまでの期間を指し、建物自体の物理的な寿命を示すものではありません。そのため、物理的にはまだ住めるものの、資産価値の観点から築50年を前にして建て替えに踏み切るマンションもあるということになります。
築50年前後のマンションにお住まいの方は「将来、うちも建て替えになるの?」と不安になるかもしれませんが、実際に建て替えを行うマンションの件数は多くありません。国土交通省の発表によると、2023年時点での全国のマンション建て替え実績は2004年からの累計で285件であり、2022年は274件※3であったため、1年で11件しか行われていないということになります。
建て替えが少ない理由は、区分所有者の5分の4以上の賛成が必要になることや、建て替えに膨大な費用がかかることなどが挙げられます。マンションの建て替えについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
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築50年のマンションが売れない理由
マンション売却では、物件の築年数が古いほど資産価値が低下します。そのため、築50年のマンションは、新築マンションや築浅のマンションと比べると売れにくい、あるいは売れたとしても安い価格になってしまうことが予想されます。
築50年のマンションが売れない理由 | ポイント |
---|---|
新耐震基準を満たしていない | 安全性に対する懸念から購入希望者が現れにくくなる |
マンションの管理体制が不十分な恐れがある | 住みやすさに対する懸念から購入希望者が現れにくくなる |
住宅ローンの借り入れがしにくい | 法定耐用年数(マンションの場合47年)をすぎていると建物の担保評価が下がる |
修繕積立金が高い | 築年数の経過したマンションでは修繕が必要な部分が多くなる |
なお、住宅ローン控除は築年数関係なく受けられますが、一定の耐震基準を満たしている必要があります。
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築50年のマンションでも売却できる可能性がある
築50年のマンションは前述の理由から売れにくい傾向にありますが、決して買い手が付かないというわけではありません。むしろ、古いマンションだからこその需要もあります。ここでは、築50年のマンションが売却できる可能性がある理由についてご紹介します。
築年数別の成約比率は伸びている
近年、中古マンションの成約物件全体において、築年数が40年を超える古いマンションの成約比率が伸びています。東日本不動産流通機構の調べによると、首都圏にある築41年以上の中古マンションの成約物件全体における構成比率は、2013年では5.2%でした。しかし、10年後の2023年では18%に増加し、年を追うごとに増えている※1ため、不動産価格の高騰から、比較的価格が安い中古マンションへの需要が高まっていることが分かります。
買い手へのメリットがある
買い手にとっては、築年数の古いマンションを購入することで得られるメリットもあります。具体的には主に以下の3つが挙げられます。
・新築よりも安い価格で購入できる
・立地に優れている物件が多い
・リノベーション・リフォームで好みの空間にしやすい
それぞれ詳しく解説していきます。
新築よりも安い価格で購入できる
築年数の古いマンションを購入する最大のメリットは、物件価格の安さです。特に築50年のマンションの場合、立地や間取りの条件が同等なら築浅マンションの半分くらいの価格で購入できるケースがあります。つまり築50年のマンションは、「費用を抑えてマンションを購入したい」という人にとって非常に魅力的な物件なのです。
立地に優れている物件が多い
築50年のマンションの多くは、立地条件がよいこともメリットの1つです。なぜなら、50年ほど前から住宅購入用の融資制度が新設されたことをきっかけに、建築会社が競うように次々と好立地にマンションを建て始めたからです。こうした物件は駅近で生活利便性が高いので、賃貸として運用しても借り手が付きやすいでしょう。賃貸であれば、築年数をそれほど重要視せずに借りる人も多いので、物件の所有者は賃貸運用から安定した収入を得られる可能性があります。
リノベーション・リフォームで好みの空間にしやすい
築年数が古いマンションは、リノベーションやリフォームをして「自分好みの生活空間を作っていきたい」という人にも人気です。古いマンションであれば新築の分譲マンションよりも安い価格で購入できるため、その分リノベーションやリフォームにお金をかけやすくなります。
なお注意点として、古いマンションを購入してリノベーションやリフォーム、フルリフォームを行いたいと考えている方は、柱や梁の位置を不動産会社に確認しましょう。これらは構造上動かせないため、位置によっては思うような間取り変更ができないこともあります。また、マンションによっては管理規約等でリフォーム内容を制限している場合もありますので、注意が必要です。
築50年のマンションをより高く売るコツ
次に築50年のマンションをより高く売るためにやっておくとよい主なコツを3つご紹介します。
・ターゲットを明確にする
・建て替えが終わってから売却する
・内覧に向けてハウスクリーニングをする
それぞれ詳しく解説します。
ターゲットを明確にする
これまで説明してきた内容をまとめると、築50年のマンションは以下のような人たちに需要があります。
・マンションをなるべく低価格で購入したい人
・好立地のマンションを購入したい人
・購入価格を抑え、自由にリノベーションしたい人
・賃貸として貸し出すための物件が欲しい人
所有している物件は、上記のなかでどの層に最も響くか考えてみると、最適な売却方法が見えてくるでしょう。
たとえば、リノベーションをしたい人にとって魅力的な物件であれば、売却前にリフォームや修繕を行うと逆効果になってしまう恐れがあります。逆に、賃貸用としての需要が大きいのであれば、修繕を行ったほうが買い手が付きやすい可能性があります。
建て替えが終わってから売却する
もし、現在住んでいる築50年のマンションに近々建て替えの予定がある場合、それが終わってから売却するほうがよいでしょう。建て替え後は新築物件として扱われるため、高値で売れる可能性が高まります。
内覧に向けてハウスクリーニングをする
売却を検討している築50年のマンションの汚れが目立つ場合は、ハウスクリーニングを検討してみるとよいでしょう。ハウスクリーニングを頼むと、掃除の専門業者が落としにくい風呂場のカビやキッチンの油汚れまできれいにしてくれます。内覧前に室内をきれいにしておくと、購入検討者も物件に対して好印象を持ちやすく、購入につながる可能性が高まるでしょう。
後悔せずに築50年のマンションを売るなら実績のある不動産会社に相談
築50年前後のマンションでも、適切なメンテナンスが行われていれば住み続けることは十分可能であり、市場でも一定のニーズがあります。
現在、築50年前後の物件に住んでいて、マンション売却を考えているという方は、まずはマンションの価値を知る不動産査定から始めてみませんか?三井のリハウスでも、「AI査定」「簡易査定」「訪問査定」を無料で受付中です。100万件以上の取引実績で積み上げた知見を生かし、精度の高い査定を行っておりますので、売却をご検討中の方はぜひご利用ください。
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※出典1:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年),公益財団法人 東日本不動産流通機構
http://www.reins.or.jp/
(最終確認:2024年9月20日)
※出典2:東京カンテイ プレスリリース/マンション立替え寿命・面積変化 2022年10月31日,株式会社東京カンテイ 市場調査部
https://www.kantei.ne.jp/report/113tatekae_life%20span.pdf
(最終確認:2024年9月20日)
※出典3:マンション建替え等の実施状況,国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001623968.pdf
(最終確認:2024年9月20日)
山本直彌
さくら事務所 マンション管理士。マンション管理士、管理業務主任者、マンション維持修繕技術者、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。マンション・ビル管理、不動産仲介、マンション管理コンサルタントなど、不動産の多岐にわたる業務に従事している。
https://www.sakurajimusyo.com/