居住用財産の3,000万円控除とは?適用要件や必要書類も併せて解説!

居住用財産の3,000万円特別控除とは、不動産売却で譲渡所得が発生した場合、一定の要件を満たすと受けられる控除の1つで、活用できれば大きな節税につながる可能性があります。そこでこの記事では、控除の申請手順や必要書類などについて解説します。

目次
  1. 不動産売却をお得にする「3,000万円特別控除」とは?
  2. 控除を受けるための適用要件とは?
  3. 申請期間や必要書類は?
  4. ほかの控除との併用でもっとお得に
  5. よりよい資産運用のために控除を利用しよう!
記事カテゴリ 売却 費用 税金
2023.09.04

不動産売却をお得にする「3,000万円特別控除」とは?

個人が居住している、もしくは居住していた不動産を売却する際に、要件を満たしていれば「居住用財産の3,000万円特別控除」が適用されます。居住用財産の3,000万円特別控除とは、譲渡所得から最高3,000万円を控除できるという制度のことです。譲渡所得は、不動産を売却して得られる所得のことで、以下のように算出されます。

譲渡所得 = 成約価格 – (取得費 + 譲渡費用)

この3,000万円特別控除を利用することで、一般的には譲渡所得税とも呼ばれる、譲渡所得にかかる税金を節税することができます。今回は、これから家を売却する方や控除について知りたい方に向けて、居住用財産の3,000万円特別控除の概要を、適用要件や必要書類と併せて解説します。今後、マイホームを売る予定がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。

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控除を受けるための適用要件とは?

居住用財産の3,000万円特別控除を利用するには、適用要件を満たしている必要があります。ここでは詳しい適用要件のほか、相続した家を所有している方、土地や建物を誰かと共有している方など、ケース別に控除対象になるかどうかも併せてご紹介します。

3,000万円特別控除の適用要件

3,000万円特別控除の適用要件は6つあります。まず、売却する物件はマイホームであることが前提です。この前提を満たしたうえで、特別控除を受けられる適用要件は以下の通りです。

[ 1 ] 下記のいずれかを満たすマイホームであること
a. 現在、主に住んでいる自宅である
b. 転居済みの場合、転居後3年目の年末までの売却である
c. かつ土地の売却契約締結が解体から1年以内であり、その土地を賃貸していない
d. 単身赴任の場合、配偶者が住んでいる建物である

[ 2 ] 物件の買主が親族や夫婦、同族会社など、特殊な関係でないこと

[ 3 ] 売却した年の前年、前々年に、3,000万円の特別控除またはマイホームの譲渡損失が出た場合の損益通算及び損失の繰越控除の特例の適用を受けていないこと

[ 4 ] 売った年、その前年及び前々年に、マイホームの買い換えや交換の特例を受けていないこと

[ 5 ] 売却した不動産に関して、固定資産の交換特例、収用等の特別控除などほかの特例の適用を受けていないこと

[ 6 ] 災害によって売却する場合、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売ること

控除を受けるには、上記6つの項目を全て満たしている必要があります。抜け漏れがないように確認しておきましょう。さらに詳しく知りたい方は、国税庁のホームページで確認してみてくださいね。マイホームの定義の詳細については「租税特別措置法第35条」に書かれています。

住宅模型とチェックリスト

こんな場合も控除対象に入る?

マイホームを売る際には、相続したり建物を取り壊したり、さまざまなケースが想定されます。これらの場合にも、3,000万円の特別控除は適用されるのでしょうか?ケース別に控除の要件を見ていきましょう。

相続の場合
自分が相続人となった空き家の場合、もともと不動産を所有していた人が住んでいた家であることが前提条件です。一時的に誰かが住んだり、建て替えを行ったりすると適用されません。

取り壊した後に売却した場合
建物を取り壊した後に売却した場合も、控除の対象となります。ただし、売買契約が成立する前に対象の敷地を駐車場や賃貸などで人に貸してしまうと、適用除外になるので注意しましょう。詳しく知りたい方は、国税庁のホームページ「マイホームを取り壊した後に敷地を売ったとき」で確認できますよ。

土地や建物を誰かと共有している場合
土地や建物を誰かと共有している場合、共有者はおのおのの持ち分に対して特例を申請できます。そのため、確定申告も一人ひとりの提出が必須です。それぞれが準備を行いましょう。

賃貸併用の場合
住んでいる建物の一部を賃貸として貸し出している場合も、控除の対象となります。ただし、控除を受けられるのは、自分が居住のために使用していた居住用家屋の部分に限ります。

店舗併用の場合
建物の一部が店舗になっている場合も、控除の対象となります。ただし、賃貸併用の場合同様、適用されるのは自身の居住のために使用していた部分に限られます。

控除対象に入らないケース

適用要件を満たしていたとしても、居住用財産の3,000万円特別控除の対象に入らないケースもいくつかあります。適用されないケースとしては、以下のような家屋が挙げられます。

・3,000万円の特別控除を受けることを目的として入手した不動産
・自宅を新築する際、一時的な住まいとして利用した家屋
・そのほか、一時的な目的で入居していた家屋
・趣味や娯楽、保養のために所有する家屋

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考える中年女性

申請期間や必要書類は?

ここからは、3,000万円の特別控除を利用するための申請期間と必要書類について解説します。決められた期間内に、書類をそろえて申請しないと控除を受けられないので、不動産の売却前に確認しておきましょう。

申請期間

3,000万円の特別控除を受けるには、不動産を売却した翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告を行う必要があります。たとえば、令和5年に売却したのであれば、令和6年の2月16日~3月15日の間に確定申告を行わなければなりません。

申し込む際には、いくつかの必要書類を提出します。ここで注意したいのは、譲渡所得が3,000万円以下の場合の申請です。この場合、3,000万円の特別控除が適用されると譲渡所得がなくなるため、税金はかかりませんが、確定申告は必須です。確定申告をしないと3,000万円の特別控除は適用されないので注意しましょう。

確定申告の詳しい方法は、国税庁のホームページ「確定申告に関する手引き等」で確認することができます。確定申告に関する説明や書き方の手引きが提供されているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

確定申告書とカレンダー

必要書類

3,000万円の特別控除を申し込む際に必要な書類も確認していきましょう。以下の表をチェックしてみてください。

必要書類受取場所
確定申告書・譲渡所得の内訳書本人所有(税務署)
戸籍の附票役所
譲渡した土地・建物の全部事項証明書法務局
売却時の書類の写し本人所有
取得時の書類の写し本人所有
住民票の写しあるいはマイナンバー本人準備

申請には複数の書類が必要なうえに、受け取る場所も異なります。分からないことがあれば、不動産会社に相談し、必要な書類を漏れなくそろえてくださいね。

ほかの控除との併用でもっとお得に

お得にマイホームを売るには、ほかの控除も併用したいところです。併用できる制度の1つに「10年超所有軽減税率の特例」というものがあります。適用要件を満たしていれば、さらなる節税につながりますよ。どのような特例なのか見ていきましょう。

シニア夫婦

10年超所有軽減税率の特例

10年超所有軽減税率の特例とは、売却した時点で10年を超えて所有していたマイホームが対象となる控除制度を指します。軽減税率というのは、令和元年の消費税率引き上げに伴い開始された、特定のものの税率を軽くする制度です。10年超所有軽減税率が適用されれば、3,000万円の特別控除後に譲渡所得の税率をさらに抑えることができますよ。

10年超所有軽減税率では、売却益が6,000万円超の場合は20.315%、6,000万円以下の場合14.21%の税率が設定されます。売却益が6,000万円の場合の計算式を見てみましょう。

〈例〉
売却益6,000万円、所有期間10年超の場合

・税額 = (6,000万円 - 3,000万円) × 14.21%
= 約426万円

適用要件は、10年を超えて所有していたマイホームであることを前提条件に、3,000万円の特別控除と同様です。

住宅ローン控除との併用は不可

マイホームの売却を考えている方のなかには、売却後、住宅の購入を検討している方もいるかもしれません。不動産の購入時には、住宅ローン控除が適用される場合がありますが、3,000万円の特別控除とは併用できないので注意しましょう。

売却時に受ける3,000万円の特別控除と、これから購入する住宅の住宅ローン控除、どちらがお得になるかはケースバイケースです。まずは自分の家に3,000万円の特別控除が適用されるかどうかを確認したうえで、住宅ローン控除とどちらがお得になるかを比較してみましょう。判断が難しい場合は、税理士やファイナンシャルプランナーに相談するのがおすすめですよ。

家の模型と電卓で計算する夫婦

よりよい資産運用のために控除を利用しよう!

ここまで、居住用財産の3,000万円特別控除についてご紹介してきました。この特別控除を利用することで、不動産売却時の税金をかなり抑えられるため、不動産売却時には所有している不動産が適用要件に当てはまるか確認してみましょう。上記で説明した通り、利用するためには確定申告を行う必要があるので忘れないように注意してください。また利用申請に必要な書類は複数あるため、あらかじめ用意しておきましょう。

万が一、不動産売却で譲渡損失が出たときは、「居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」「居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といった制度により、ほかの所得から控除したり繰越したりすることもできます。いくつかある制度のなかであなたに適したものがどれなのか、不動産会社に相談してみましょう。

自宅の売却をお考えの際は、まずは不動産査定を受けてみることがおすすめです。マンションを対象としたAI査定だけでなく、簡易査定、訪問査定も三井のリハウスでは無料で承っておりますのでお気軽にご利用ください。

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この記事のポイント<Q&A>

  • Q居住用財産の3,000万円特別控除とは? A不動産売却の際に、不動産売却益である「譲渡所得」から最高3,000万円を控除できる制度です。譲渡所得を減らすことで、譲渡所得にかかる所得税や住民税を節税することができます。ただし、適用要件を満たしていることが必要です。
    居住用財産の3,000万円特別控除の適用要件についての解説はこちら
  • Q控除を受けるにはどんな手続きが必要? A控除を受けるためには、不動産を売却した翌年に必要書類とともに確定申告を行う必要があります。確定申告を行わないと控除は適用されないため、注意しましょう。
    控除を受けるための手続きについての解説はこちら
  • Qほかの控除との併用はできる? A10年以上所有していたマイホームが対象の「10年超所有軽減税率の特例」という控除制度は、併用できる制度の1つです。一方、住宅ローン控除のように、併用できない制度もあります。
    ほかの控除との併用についての解説はこちら

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けの節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/