
不動産の売却に必要な書類は?種類と取得方法をご紹介!
不動産を売却するには、いくつかの書類が必要になります。なかには用意するのに時間がかかるものもあるため、事前に何が必要なのかを知り、準備を進めておくと安心です。今回は、不動産を売却する際の必要書類と取得方法を売却のステップに合わせてご紹介していきます。
目次
不動産売却には書類が必要!
不動産売却を検討されている方のなかには「何から準備をすればよいか分からない」と困っている方もいるのではないでしょうか?
不動産を売却する際は、まず書類を準備することから始めましょう。初めから全ての書類が手元にそろっていればよいのですが、そろっていない場合は取得しなければいけません。加えて、書類のなかには、取得するまでに時間がかかるものがあるため、できる限り早めに準備しておくことをおすすめします。
不動産売却に必要な書類を計画的にそろえるためにも、まずどういった書類が必要なのか把握しましょう。そこで今回は、不動産売却にはどういった書類が必要なのかに加え、取得方法についてご紹介します。
不動産売却における必要書類のリスト
先にお伝えした通り、不動産売却を行う際には、いくつもの書類をそろえる必要があり、また不動産売却はいくつかのステップに分けることができます。そこでまずは、ステップごとに必要となる書類をそれぞれ確認しましょう。
以下の表は、必要書類を売却する物件ごとに表したものです。
項目 | 一戸建て | マンション | 土地 |
---|---|---|---|
登記済証(権利証)または登記識別情報 | 〇 | 〇 | 〇 |
本人確認書類 | 〇 | 〇 | 〇 |
物件の間取り図 | 〇 | 〇 | × |
確認申請書、確認済証、検査済証 | 〇 | × | × |
耐震診断報告書、アスベスト使用調査報告書 | △ | △ | × |
固定資産税、都市計画税納税通知書の写し | 〇 | 〇 | 〇 |
実印 ・ 印鑑証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
固定資産評価証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
住民票 | 〇 | 〇 | 〇 |
土地測量図・境界確認書 | 〇 | × | 〇 |
抵当権抹消書類 | 〇 | 〇 | 〇 |
買主に引き渡す書類(管理規約やパンフレットなど) | × | 〇 | × |
確定申告書 | △ | △ | △ |
売却物件の売却時の売買契約書(コピー) | △ | △ | △ |
売却物件の購入時の売買契約書(コピー) | △ | △ | △ |
仲介手数料、印紙税などの領収書 | △ | △ | △ |
(〇:必要 △:任意または該当する場合のみ ×:不要)
表を見ての通り、不動産売却に必要な書類は10種類を超えるため、少ないとはいえません。そのうえ、それぞれの書類がどのようなものなのか、どうすれば取得できるのかが分からないものもあるでしょう。
続いて、表に挙げた必要書類の内容やその取得方法について、より詳しく解説していきます。
不動産売却の際に必要となる書類
ここでは、不動産売却に必要な書類、あるとよい書類の内容について、不動産売却の流れに沿って解説します。
訪問査定の際に必要な書類
物件の基本情報のみで行う簡易査定は、査定前に用意しなければならない書類はありませんが、不動産会社の担当者が現地を訪れて細かく調査する訪問査定では用意しておきたい書類があります。
登記済証(権利証)または登記識別情報
登記済証(権利証)や登記識別情報は、不動産を購入し、所有権保存登記または所有権移転登記をした際、法務局から渡された書類であり、売主だけが持つ書類です。この情報があることで真の所有者であることを確認できます。
●登記識別情報に関する記事はこちら
登記識別情報とは?不動産登記の基礎知識を分かりやすく解説
土地の確定測量図
土地または一戸建ての売却を依頼する場合には、「土地の確定測量図」も用意しておくことが望ましいといえます。土地確定測量図とは、道路も含め隣接する全ての境界が確定している状態のときのみに作成される実測図で、境界が確定していることを証明する書類となります。
媒介契約の際に必要な書類
媒介契約を結べば、不動産仲介会社にサイトや広告などを通じて物件を宣伝してもらうことになります。そのために必要な書類、あるとよい書類は以下の通りです。
本人確認書類
物件の所有者本人であることを証明するために、本人確認書類が必要です。提出の必要はないので、運転免許証やマイナンバーカード、パスポートといった本人確認書類を媒介契約締結時には忘れないようにしましょう。
物件の間取り図・パンフレット
物件のパンフレット等に記載されている間取り図は不動産会社がチラシやインターネット広告に掲載する間取り図を作成する際に必要になります。所有の物件について、不動産会社の営業担当者に説明する際にも便利ですし、売却活動を進めていく際にも使える書類となるため、可能な限り準備しておくことが望ましいです。
確認申請書、確認済証、検査済証
確認申請書とは、新築時に確認申請を行ったときの書類を指し、確認済証は確認申請が通ったときの書類、検査済証とは竣工時に検査が通ったときの書類です。これらの書類は、重要事項説明書に書類の有無が記載され、最終的に引渡し時に買主へ引き渡す書類となります。なお、マンション売却の場合は不要です。
耐震診断報告書、アスベスト使用調査報告書
耐震診断報告書は、設計者や診断者からの耐震診断の結果を表したものを指します。一方でアスベスト使用調査報告書とは、アスベスト(石綿)が含まれる建材が使用されているかを調査し、結果をまとめたものです。
耐震診断報告書やアスベスト使用調査報告書は、築年数が相当に古い物件を売る際にあった方がよい書類となります。耐震診断報告書なら1981年よりも前、アスベスト使用調査報告書なら1975年よりも前に建てられた建物であれば用意しておくとよいでしょう。これらの年数以降に建てられた物件を売却する場合は、基本的に不要な書類です。
売買契約時に必要な書類
買主が見つかり、不動産を売却するための売買契約を結ぶ際には下記の書類が必要です。
付帯設備表および告知書
付帯設備表とは、物件と一緒に引き渡す設備の状態について記載が求められる書類です。基本的には、インターフォンや浴室乾燥などの建物に備え付けられた設備の不具合について記載します。また、エアコンや温水洗浄便座などをそのまま置いていく場合は、これらの設備の有無と残置の状態を記載します。一方で告知書とは、周辺環境や過去に関することも含む物件の不具合について記載が求められる書類です。なお、これらの書類は不動産会社が用意しますが、記載は売主が行います。
実印
こちらは書類ではありませんが、売買契約書に実印を押すため、必要です。
引渡しの際に必要な書類
ここまでは、売買契約までに必要となる書類を見てきました。続いて、引渡しの際に必要となる書類を確認しましょう。
登記済証(権利証)または登記識別情報
所有権移転のために必要な書類です。登記済証(権利証)または登記識別情報は訪問査定の際に用意する書類ですが、引渡し時にも必要になります。
固定資産税、都市計画税納税通知書の写し
固定資産税や都市計画税納税通知書の写しは、売主と買主の間でそれらの税金を精算するための根拠となる書類です。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書は、所有権移転登記のための登録免許税を計算する際に必要です。年度が異なるものは利用できません。
住民票
こちらも、所有権移転のための登録免許税を計算するために必要です。
実印・印鑑証明書
印鑑証明書は、実印が役所に登録されたものであることを証明するために必要な書類です。引渡し日から3か月以内のものを用意する必要があります。
確定測量図・境界確認書
境界確認書は、隣の土地との境界が明確に記載された書類です。一般的に一戸建てや土地の売買契約では、境界が確定していることが、引渡しの条件となります。売買契約書のなかに条件として盛り込まれていれば、引渡し時までに用意することが必須です。提出する実測図は、確定測量図となります。なお、マンションの売却の場合は必要ありません。
抵当権抹消書類
住宅ローン残高が完済できていない物件を売る場合には、売却代金を充てて一括返済を行うため引渡しと同時に抵当権を抹消します。抵当権とは、債権者(お金を融資した銀行)が抵当権を設定した不動産から優先的に弁済を受けることができる権利のことです。抵当権抹消書類は売主の銀行担当者が保有しています。
ここまででご紹介した書類のほかにも、マンションの場合は、管理費や修繕積立金の額が分かる書類、管理規約、使用細則、分譲時のパンフレットが、一戸建ての場合は、設計図書や確認申請書、確認済証、検査済証が必要になります。また、設備取扱説明書、保証書、アフターサービス基準書なども引渡しの際に必要であることが一般的です。土地および一戸建ての場合は、越境の覚書も、あれば引渡し書類となります。これによって、売却後のトラブルを防ぐことにもつながるため、思い当たる書類がある場合は、可能な限り探すようにしましょう。
確定申告を行う際に必要な書類
不動産の売却によって譲渡所得が発生した場合、確定申告を行う必要があります。確定申告を行う際に必要となる書類を見ていきましょう。
申告書
確定申告を行う場合は、「確定申告書B」「確定申告書第三表」「確定申告書付表兼計算明細書(譲渡所得の内訳書)」の3種類の申告書を記入する必要があります。
確定申告書B
確定申告書Bは、事業所得や不動産所得がある人が使用する申告書です。なお、給与所得や公的年金などの所得がある人が使用する申告書Aは、2023年の1月に廃止され、申告書Bに一本化されています。
確定申告書第三表
土地や建物、株式の譲渡などによる所得があった場合、ほかの所得とは分けて確定申告書第三表に記載し、納税額の計算を行う必要があります。
確定申告書付表兼計算明細書(譲渡所得の内訳書)
不動産を売却した際に、購入コストよりも売却代金のほうが上回っている場合、譲渡所得として扱われ、課税対象となります。
なお、3つの申告書は税務署の窓口で受け取るか、国税庁の公式ページからダウンロードできます。
●国税庁の公式ページはこちら
国税庁 | 確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)
以下の書類に関しては、確定申告の提出書類とはされていませんが、実際の確定申告では約半数程度の人が証拠書類として提出しているようです。証拠書類の提出は必須ではありませんが、提出が望ましいといえるでしょう。
売却物件の売却時の売買契約書(コピー)
売買契約書は、売買取引の内容が記載された契約書です。
売却物件の購入時の売買契約書(コピー)
不動産を購入した際に作成された売買契約書です。購入時の売買契約書は、取得費用を算出する際に用いられます。
仲介手数料、印紙税などの領収書
不動産の売却にかかった仲介手数料や印紙税の領収書を用意しましょう。経費として計上することで譲渡所得税を抑えられます。
不動産売却で特例を利用する際に必要な書類
不動産売却の際、ケースによっては節税できる可能性があります。特例を利用する際はそれぞれに必要な書類があるので注意しましょう。以下で、特例ごとに必要な書類をご紹介します。
3,000万円の特別控除
3,000万円の特別控除とは、住宅の売却時にかかる譲渡所得税に対する優遇措置であり、課税対象額から3,000万円が控除されるという特例を指します。
この特例を利用するためには、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)を提出する必要があります。また、住民票に記載されている住所と売却した住居地が異なる場合は、譲渡契約を結ぶ日の前日までに戸籍の附票の写しや消除された戸籍の附票の写しといった、売主がその住居を所有していたことを証明する書類を用意しましょう。
●3,000万円の特別控除に関する国税庁のページはこちら
国税庁 | No.3302 マイホームを売ったときの特例
軽減税率の特例
軽減税率の特例とは、不動産の所有が10年を超える場合、譲渡所得にかかる税金の税率が低くなるというものです。申請するには、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)と、居住している期間が10年を超えることを証明するために、売却資産の登記事項証明書が必要です。
この特例も3,000万円の特別控除と同様に、住民票の住所と売却した住居の住所が異なる場合は、売主がその住居を所有していたことを証明する書類が必要になります。
●軽減税率に関する国税庁のページはこちら
国税庁 | No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
特定居住用財産の買換えの特例
特定居住用財産の買換えの特例とは、マイホームを売却し、代わりのマイホームを買い換えた際に、譲渡益にかかる税金の納税を繰り延べることができるものです。この特例を利用する場合、主に以下のような書類が必要となります。
・売買契約書のコピー
・購入した新居の土地、建物の全部事項説明書
・築年数の要件を満たさない場合は耐震基準を示す書類(以下のいずれか)
a 耐震基準適合証明書(築年数が25年以上の場合)
b 建設住宅性能評価書(築年数が25年以上の場合)
c 保険加入証明書等(築年数が25年以上の場合)
・売却した旧居の土地、建物の全部事項説明書 など
●マイホームを買い換えたときの特例に関する国税庁のページはこちら
国税庁 | No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
不動産売却に必要な書類の取得方法
ここまで不動産売却や確定申告などに必要な書類についてご紹介してきました。ここでは、それらの書類の取得方法を解説します。
不動産を取得した際に受け取っているもの
以下の書類は、不動産取得時に受け取っている可能性があるものです。紛失している場合は不動産会社に早めに伝えておきましょう。
・登記済証(権利証)または登記識別情報
・間取り図
・確認申請書、確認済証、検査済証
・管理規約、使用細則、分譲時のパンフレット(マンションの場合)
役所で入手するもの
以下の書類は市区町村の役所に行けば、300~400円程度で取得することができます。
・印鑑証明書
・固定資産評価証明書
・住民票
不動産会社が用意してくれるもの
下記の書類は、一般的に不動産会社が作成する、またはひな型を用意する書類です。
・登記簿謄本または登記事項証明書
・売買契約書
・付帯設備表および告知書
・鍵受領書
・物件引渡確認書
そのほかの取得方法
必要書類、あるとよい書類のなかには調査をして取得しなければならないものがあります。以下はその一例です。
・土地測量図・境界確認書
・耐震診断報告書、アスベスト使用調査報告書
なお、これらの書類はマンションの場合は不要であったり、マンションの管理会社が保存していたりすることが一般的です。
また、固定資産税、都市計画税納税通知書は毎年課税明細書が届き、抵当権抹消書類は銀行の担当者から受け取ることによって取得できます。
不動産売却に必要な書類の準備は計画的に!
不動産を売却するためには、多くの資料を集めなければいけません。また、資料のなかには役所で取得する必要があったり、保管している書類を見つけ出したりするのには時間がかかる場合もあるでしょう。スムーズに売却を進めるために、売却を検討し始めたら、必要書類があるかチェックしたり、少しずつそろえたりする準備を始めることをおすすめします。
不動産売却は、一般的には人生のなかで何度も行うことではないため、初めて不動産売却に臨むという方も多いでしょう。売却について分からないことや不安なことがある場合は、プロである不動産会社に一度、相談してみましょう。
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不動産鑑定士 竹内英二
株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
https://grow-profit.net/