土地の権利書を紛失したらどうなる?対処法や手続きについて解説

土地の権利書を紛失してしまっても、土地を売却できなくなる、すぐに悪用されるなどの心配はありません。しかし所有権移転登記の際に証明が必要な場合にはほかの本人確認書類を用意する必要があります。本記事では、権利書が必要になる場面や、紛失した際の対処法について解説します。

目次
  1. 土地の権利書とは
  2. 土地の権利書を紛失するとどうなる?
  3. 土地の権利書を紛失したら再発行できる?金額は?
  4. 土地の権利書を紛失した場合の対処法
  5. 土地の権利書が用いられるシーン
  6. 紛失した権利書を悪用されないための対処法
  7. 権利書を被災により紛失した場合は?
  8. 売却に必要な書類は不動産のプロに任せよう
記事カテゴリ 土地
2024.08.30

土地の権利書とは

土地の権利書とは、不動産の所有者が、その土地について権利を有していることを証明するための書類です。法的には「登記済証」と呼ばれ、土地の売買や抵当権設定の際の登記申請において必要です。

土地の権利書は、2005年の不動産登記法の改正を受けて、「登記済権利証(登記済証)」から「登記識別情報通知」へと仕様が変更され、オンラインでの申請に対応できるようになりました。

登記識別情報通知では、アラビア数字・その他の符号の組み合わせからなる12桁の符号が通知され、パスワードのような役割を果たしています。従来の登記済権利証では、登記の際はその原本を法務局(登記所)に提出する必要がありましたが、この数字が設定されたことによって原本の提出は不要になりました。

これらをふまえて今回の記事では、「土地の権利書を紛失するとどうなるのか?」「悪用されることはないのか?」「土地の権利書は再発行できるのか?」といった疑問について解説するとともに、土地の権利書を紛失した場合の対処法についても詳しく説明していきます。

●土地の権利書について詳しくはこちら

登記識別情報と不動産

土地の権利書を紛失するとどうなる?

結論から述べると、土地の権利書が紛失や盗難によって他人の手に渡ってしまったとしても、すぐに悪用される可能性は高くありません

土地の所有権は、登記があって初めてその権利を主張できます。もし、他人が悪用のために所有権の移転登記を行おうとすると、権利書のほかにも実印の用意も必要となります。加えて、登記申請を行う司法書士や登記官といった第三者の介入もあるため、移転登記は容易には行うことができません。そのため、権利証が誰かの手に渡ってしまったからといって、すぐに悪用される可能性は低いといえます。

とはいえ、土地を売却する際には、その土地が自身のものであることを証明しなければなりません。この場合、権利書があれば証明の手段となりますが、もし紛失してしまった場合は別の方法での証明が可能です。土地の権利書を紛失した際の対処法については後ほど詳しく解説します。

土地の権利書を紛失したら再発行できる?金額は?

土地の権利書は再発行することはできないので、費用も発生しません。先述の通り、土地の権利書は、正式にいえば登記済証であり、あくまで登記が済んでいることを証明する書類にすぎないのです。

登記を行う際、法務局の登記官は、権利書だけではなく名義人しか保有しないはずの書類の提出をもって、本人確認をしています。

従って、もし権利書が提示できなくても、所有者本人であることが確認できる別の有効な書類や手続きによって代替することが可能です。そのため再発行の制度は存在しないのです。

土地の権利書と印鑑

土地の権利書を紛失した場合の対処法

先ほどもお伝えしたように、土地の権利書は一度紛失してしまうと再発行できません。では不動産売却のように土地の権利書が必要な場面においては、どのように対処すればよいのでしょうか?土地の権利書がない場合に、その取引が所有者の意志であることを証明するには以下の3つの方法があります。

・事前通知制度
・本人確認情報制度
・公証人による本人確認

それぞれの方法について詳しく解説していきます。

本人確認のイメージ

事前通知制度

事前通知制度とは、土地の権利書を用意することができない申請について、その申請が所有者の意思によるものなのか通知書によって法務局側で確認する制度です。
具体的な手順は以下の通りになります。

[ 1 ] 申請者は土地の権利書を添付できない理由を記載し、登記申請手続きを行う
[ 2 ] 法務局は、登記があった旨とその意思について、登記名義人に確認の通知を行う
[ 3 ] 通知に対して、登記名義人が署名捺印をして法務局へ2週間以内に返送する
[ 4 ] 法務局がその書面を受領すると、本人からの登記申請であることの確認が完了する

事前通知制度には手数料が不要であるというメリットがありますが、一方で登記までに時間がかかってしまうという注意点もあります。

本人確認情報制度

本人確認情報制度とは、司法書士といった資格を持った代理人に本人確認をしてもらい、土地の権利書の代わりとしてその本人確認情報を添付し登記を申請する制度です。

ただし本人確認情報制度を司法書士へ依頼する場合には、一般的に5万~10万円ほどの費用が発生するため注意しましょう。

公証人による本人確認

公証人による本人確認とは、登記名義人が公証役場に出向き、公証人から登記申請の認証をもらうことで本人確認を行う制度です。

公証人に認証してもらう場合、必要な費用は数千円の手数料のみなので、先ほどご紹介した本人確認情報制度に比べて費用を大幅に抑えることができます。

土地の権利書が用いられるシーン

ここまで土地の権利書の代替方法を説明してきましたが、そもそも土地の権利書はどの場面で必要になるのでしょうか?具体的に以下の2つのケースを紹介します。

・土地の売却
・抵当権の設定

土地の売却

土地の売却において、土地の権利書は以下の2つの場面で必要になります。

・売買契約時
・決済時

売買契約の際には、売主が本当にその土地を所有しているのかを証明するために権利書が用いられます。また決済時には、所有権の移転登記を行うために必要になります。

土地売却のイメージ

抵当権の設定

住宅ローンを借り入れる際も、抵当権を設定するため権利書が必要です。また住宅ローンを完済し、抵当権を抹消登記する場合にも権利書は必要になります。抵当権とは、債権者の金融機関が住宅ローンの担保として債務者が借り入れして購入した不動産に設定するもので、債務者のローン返済が滞った場合にその不動産を売却して優先的に弁済を受ける権利のことをいいます。

先述した通り権利書を紛失した場合でも、これらの取引をすることは可能です。上記で紹介した方法を活用して、権利書の代わりとなる証明手段を用意し登記に備えましょう。

紛失した権利書を悪用されないための対処法

権利書が他人の手に渡ったからといってすぐに悪用される可能性は低いということは先に述べました。とはいえ、本当に悪用されることはないのか、不安になる方も多いのではないでしょうか?ここでは土地の権利書を紛失し、悪用されることが心配な場合に活用できる2つの制度を紹介します。

・不正登記防止の申出
・登記識別情報の失効の申出

1つずつ見ていきましょう。

申出書類

不正登記防止の申出

不正登記防止の申出とは、盗難や詐欺によって不正な登記がされる可能性がある場合にあらかじめ申告しておくことで、申出から3か月以内に身に覚えのない不正な登記がされることを防止する制度です。申告してから3か月の間に該当の不動産にまつわる登記が申請された際、その旨が通知されるようになり、不正利用に気付くことができます。

登記識別情報の失効の申出

権利証を紛失し、原本が盗まれたり、登記識別情報通知書に書かれた番号を誰かに盗み見られたりした可能性がある場合、その旨を申請することで、不動産登記規則第65条に基づいて登記識別情報を失効させる制度が設けられています。

これらの制度についてのより詳しい内容は以下のサイトをご覧ください。

●土地の権利書を紛失した場合の対処法について詳しくはこちら

権利書を被災により紛失した場合は?

では火事や地震などの被災によって権利書を紛失してしまった場合はどうしたらよいのでしょうか?この場合においても上で述べた場合と同じく、登記の際には権利書の代わりとなる本人確認の書類を作成することで対処しましょう。また悪用が心配な場合は不正登記防止の申出または登記識別情報の失効の申出を行うことが有効です。

しかし被災した場合には、登記の手続きに必要な権利書以外のもの、たとえば実印や印鑑証明書も併せて紛失してしまっているケースもあり得るでしょう。そのような場合は、お住まいの市町村窓口に印鑑証明書を発行しないように申請し、印鑑登録廃止の手続きや改印届の提出などの対応が必要になります。

市役所の窓口

売却に必要な書類は不動産のプロに任せよう

ここまで、土地の権利書について、その定義や必要になる場面、悪用の可能性、紛失した場合の対処法などについて解説してきました。売却時に権利書がなくてもほかの方法で代替できるということをお伝えしましたが、実際の売却の際には今回取り上げた権利書だけでなく、さまざまな書類を準備する必要があります。

登記や売買契約にあたって必要な書類が足りているか、そして事前に用意するべきものは何かを正確に把握するためには、経験豊富な不動産売却のプロにお任せするのが安心です。三井のリハウスでは、豊富な取引実績を生かして、スムーズで安心感のある売却を実現させます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。