
住み替えローンとは?利用のメリットと注意点、流れを解説
住み替えローンは、現在住んでいる家の住宅ローンの残債と、新しい家の購入資金を一緒に借り入れできる仕組みです。旧居の残債を一括返済できない場合に便利な一方で、注意点もあります。この記事では、住み替えローンの概要や利用の流れについて解説します。
目次
住み替えローンとは?
住み替えローンとは、現在住んでいる家の住宅ローンの残債分と、新居の購入資金分をまとめて借り入れできるローンのことです。
通常の住宅ローンの場合、新居の購入代金分のみを借り入れます。一方、住み替えローンは、旧居の売却代金だけでは支払いきれない残債のオーバーローン分も上乗せして借り入れられる点が特徴です。オーバーローンとは、住宅ローン返済中の家を売却する際に、売却代金よりもローンの残債が上回っている状態を指します。反対に、ローンの残債よりも売却代金のほうが多いことをアンダーローンといいます。
住宅ローンの残債がある家の住み替えでは、アンダーローンとなった売却代金で残債を一括返済してから新居を購入するのが理想です。しかし、現在住んでいる家を査定したときに想定売却価格が住宅ローンの残債よりも少なくなりそうな場合、そのままではローンを完済できないこともあるでしょう。住宅ローンを完済できないと抵当権の抹消が行えず、第三者への譲渡ができません。この状況で住み替えをする方法の1つが住み替えローンです。住み替えローン以外では、以下のような選択肢もあります。
・売却代金で補えない残債を自己資金で補填し、新居購入では新たな住宅ローンを借り入れる
・売却代金で補えない残債のためにローンを借り入れ、新居購入では新たな住宅ローンを借り入れる(二重ローン)
・任意売却で金融機関の承諾を得て残債があるまま売却し、新居購入では新たな住宅ローンを借り入れる
●抵当権抹消についてはこちら
●任意売却についてはこちら
住み替えローンを利用するメリット
住み替えローンのメリットは、主に次の3点です。
・オーバーローンでも住み替えられる
・住み替えにかかる費用が抑えられる
・二重ローンを避けられる
1つずつ具体的に見ていきましょう。
オーバーローンでも住み替えられる
住み替えローンの代表的なメリットは、家の売却代金と自己資金の合計よりローン残債が上回っているオーバーローンでも、住み替えられる点です。「自己資金が足りなくて住宅ローンの一括返済が難しい」といった理由で住み替えをためらっている方は、住み替えローンを利用すれば新居の購入が現実的になるでしょう。
住み替えにかかる費用が抑えられる
住み替えローンを利用した場合、住み替えにかかる費用を抑えられます。たとえば、住んでいる家を売却してから新居を購入する流れだと、一時的に仮住まいに引越さなければなりません。一方、住み替えローンでは、売却と購入のタイミングを合わせることが原則です。結果として、仮住まいへの引越し代や家賃が抑えられるでしょう。
二重ローンを避けられる
住宅ローンの残債について、売却代金で補えない分をローンで借り入れる場合は、残債分のローンと新居購入分の住宅ローンをそれぞれ組むため、二重ローン(ダブルローン)になります。住み替えローンは、これらのローンを一本化するため、事務手数料のコストや手続きの手間を軽減できるでしょう。
住み替えローンの注意点
住み替えローンは、住宅ローンの残債を一括返済するのが難しい方には、とても便利なサービスです。しかし、借り入れが高額になるため、以下のようなデメリットもあります。
・金利が高く、審査が厳しい
・売却と購入の決済日を同じ日にする必要がある
・団信に加入しないと住み替えローンを組めないことがある
それぞれ詳しく説明していきます。
金利が高く、審査が厳しい
住み替えローンは、通常の住宅ローンよりも金利が高いケースが一般的です。具体的には、通常の住宅ローンの変動金利が年0.5%~0.9%程度であるのに対し、住み替えローンの変動金利は年2%~3%程度といわれています。これは、オーバーローン分は住み替え後の土地や建物を担保にできず、銀行にとってリスクが高くなるためです。
また、ローンの総額が高額になるため、融資条件も厳しい傾向があります。ほかのローンの返済状況や年収、勤続年数、クレジットカードの利用状況など、さまざまな要素が総合的に審査されるでしょう。
売却と購入の決済日を同じ日にする必要がある
住み替えローンの利用では、今の家の売却と新居購入の決済・引渡しを同じ日に調整しなければならない点にも注意しましょう。住み替えローンでは、売却する家の抵当権の抹消と、購入する新居の抵当権の設定を行う都合上、同時に手続きをする必要があります。
決済と引渡しを同じ日にすると、旧居の売却と新居の購入に関するスケジュールがタイトになるでしょう。住み替えローンを利用する際は、不動産会社と相談しながら計画的に進めることをおすすめします。
団信に加入しないと住み替えローンを組めないことがある
住み替えローンを組むには、団信(団体信用生命保険)への加入を必須とする金融機関が多いという傾向があります。団信とは、住宅ローンの返済期間中にローンの借主が亡くなったり、病気等の不測の事態に陥ったりした場合に、返済を免除する保険のことです。
健康上の理由で団信に加入できない場合は、「ワイド団信」や配偶者名義での契約という選択肢もあります。ワイド団信とは、通常の団信に加入できない方に向けて条件が緩和された団信のことです。ただし、通常よりも保険料の金利が上乗せされる、加入できるのは住宅ローンの契約時のみといった注意点もあるため、慎重に判断しましょう。
住み替えローンを利用するときの流れ
住み替えローンを利用するときは、今住んでいる家と新しく住む家、双方の経済的な条件をクリアしながら、金融機関や不動産会社とも連携を取っていかなければなりません。具体的な流れは以下の通りです。
1.住宅ローンの残債を確認してマネープランニングをする
2.不動産会社に査定と売却を依頼する
3.利用する金融機関やプランを選ぶ
4.申し込みをして審査を受ける
5.旧居の引渡しと新居の購入を進める
ここでは、住み替えローンを利用するときのおおまかな流れをお伝えします。
1.住宅ローンの残債を確認してマネープランニングをする
住み替えローンの利用では、マネープランニングが欠かせません。まずは現在の住宅ローンの残債額と預貯金の残高を確認しましょう。そのうえで新居の購入費用と住み替えローンで借り入れする金額、毎月の返済額を見積もります。
この段階では住み替えローンの審査結果が出ておらず、売却の成約価格も仮の数字です。暫定的にでも資金計画を立てておくと、今住んでいる家の希望売却価格や新居購入の限度価格が明確になります。金融機関が提供するシミュレーションを活用するのもおすすめです。
2.不動産会社に査定と売却を依頼する
住み替えをするには、現在の家を売却するための不動産会社を選ばなければなりません。「住み替えローンを利用したい」と伝えたうえで、査定を依頼し、親身になってくれる不動産会社を選択しましょう。信頼できる不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を進めてもらいます。同時に、住み替え先の新居の情報収集も始めておけると安心です。
3.利用する金融機関やプランを選ぶ
住み替えローンは、大手銀行から地方銀行まで、さまざまな金融機関で取り扱っています。ただし、住み替えローンは、現在利用している住宅ローンと同じ銀行では組めないことが一般的です。
以下に、代表的な金融機関とプランを一覧表にまとめましたので、参考にしてください。
銀行 | ローン商品 | 主な特徴 |
---|---|---|
三井住友銀行 | WEB申込専用住み替えローン | 支払い者が難病にかかったり死亡したりした場合に返済が免除されるほか、自然災害に遭った場合には、返済が一部免除される |
みずほ銀行 | みずほ買い替えローン | 出産や子どもの進学などライフイベントに応じて返済額を増減できる |
りそな銀行 | りそな住みかえローン | 新規購入住宅の担保評価額の最高200%もしくは最高1,000万円までの、いずれか低いほうを融資金額の上限としている |
横浜銀行 | 住宅ローン(お住み替え) | 新居の購入資金に加えて、家の売却で返済しきれない残債分を最大2,000万円まで借り入れできる |
千葉銀行 | 住み替えコース | ローンの残債分と新居購入資金のほか、住み替えに伴う増改築や設備資金、住宅取得に伴う税金や諸費用の借り入れができる |
関西みらい銀行 | 住みかえ住宅ローン | 住み替えだけではなく、建て替えもサポートしてもらえる |
ろうきん(中央労働金庫) | 借換・買替ローン(不動産担保型) | 固定金利と変動金利を組み合わせた金利ミックスプランがある。それぞれの金利のメリットを生かし、将来の金利変動のリスクを抑えている |
※2025年4月時点の情報です。融資の申請に関連する必要書類や手数料は各金融機関によって異なりますので、詳しくは金融機関のサイトや店舗でご確認ください。
4.申し込みをして審査を受ける
住み替えローンも住宅ローン同様に、事前審査の後に信用保証会社による本審査があります。借主の返済能力が厳しく審査されるため、必要書類は不備なく準備しておきましょう。また、万が一、審査に通らなかったときに備えて、別の金融機関の候補先も考えておくと安心です。
5.旧居の引渡しと新居の購入を進める
住み替え前の住宅を売却する売買契約と、住み替え後の住宅を購入する売買契約を締結したら、住み替えローンを組む金融機関との契約締結に進みます。一般的に、売却代金の受け取り、住み替えローンの融資実行、住み替え後の購入代金の支払いは同日に行う流れです。
住み替えローンを利用するなら、現在の家の売却よりも新居の購入を先にしたほうがスムーズに進むことがあります。なぜなら、新居の担保評価額を割り出せるため、住み替えローンの借り入れ額を決定しやすいからです。
この場合、新居購入の売買契約時に「買い替え特約」を必ず付けましょう。買い替え特約とは、期限内に提示した条件で現在の住まいが売却されなかった場合、契約を無効にできる特約条項です。査定額よりもはるかに安い売却金額を提示されても、「期限が迫っているから」と焦らずに、安心して売却活動を進められます。
●住み替えの方法や費用についてはこちら
●マンションから戸建てへ住み替えるメリットについてはこちら
●住み替えのポイントについてはこちら
住み替えローンの返済シミュレーションをしよう!
住み替えローンを実際に利用する場合、どのくらい借り入れができるのでしょうか?三井住友銀行の「住み替えローン」を例に、シミュレーションしてみましょう。
●現在の条件
店頭金利 | 年2.475% |
---|---|
年齢 | 30歳 |
年収 | 700万円 |
借り入れ期間 | 30年 |
売却予定額 | 3,500万円 |
自己資金 | 100万円 |
ローン残高 | 4,000万円 |
新居購入価格 | 4,000万円 |
●シミュレーション結果
使える資金(売却予定額+自己資金) | 3,600万円 |
---|---|
売却時諸費用 | 140万円 |
購入時諸費用 | 200万円 |
合計支払金額 (ローン残高+購入価格+各諸費用) | 8,340万円 |
必要借り入れ額 | 4,740万円 |
ゆとりを持って返済できる金額 | 3,054万円 |
※売却時の諸費用を4%、購入時の諸費用を5%で計算しています。
希望する新居の購入額が4,000万円の場合、必要な借り入れ額は4,740万円です。ゆとりを持って返済できる金額の3,054万円からは1,686万円も多くなっているため、このままでは家計の負担になりそうです。この場合、新居の購入額を下げることで、月々の返済にゆとりが出るでしょう。
三井のリハウスでは、毎月返済額や借入可能額をシミュレーションできるサービスも提供しています。必要な情報を入れるだけで即時に結果が分かりますので、ぜひご活用ください。
●三井のリハウスの住宅ローンシミュレーションについてはこちら
計画的な住み替えローンの利用で住み替えを成功させよう
住み替えローンを利用するときは、税金の控除についても知っておきましょう。住み替えでも、条件に該当すれば「住宅ローン控除」を利用できることがあります。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅の新築や購入、増改築などをした場合に、所得税(一部、翌年の住民税)から、年末のローン残高の0.7%を最大13年にわたって控除する制度です。実際に住宅ローン控除を受けたら、新居に入居した初年度は確定申告が、翌年以降は年末調整での手続きが必要です。
住み替えローンを利用する場合は、「過度な借り入れを避ける」「綿密な返済計画を立てる」「信頼できる不動産会社を選ぶ」ことで、住み替えを成功させましょう。
三井のリハウスでは、累計取扱実績100万件以上にもとづく豊富な経験を生かして、住み替えのサポートを行っています。まずは現在のお住まいの無料査定からお気軽にお問い合わせください。
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この記事のポイント<Q&A>
- Qオーバーローンでも住み替えはできる? A住み替えローンを利用すれば、旧居の売却代金と住宅ローンの残債の関係がオーバーローンであっても住み替えができます。通常、ローンの残債がある家は売却代金で残債を返済することで売却が可能です。ただし、売却代金が残債を下回っている場合は、自己資金を充てたり、「住み替えローン」や「任意売却」などを利用したりすれば売却できます。詳しくはこちらをご覧ください。
- Q住み替えローンとはどのようなものですか? A住み替えローンとは、家の住み替えをしやすくするマネープランです。特に住宅ローン返済中の人が使いやすいようにプランニングされています。「今住んでいる家を売ったうえで、自己資金を足しても、住宅ローンの返済を終えられない」といった状態でも住み替えができるように、資金面でのサポートが受けられます。詳しくはこちらをご覧ください。
- Q住み替えローンにはどのような商品がある? A住み替えローンには、さまざまなプランがあります。たとえば、融資の上限額が設定されていたり、ライフイベントに応じて返済の減額があったり、家の建て替えやリフォームに対しても融資されたりとプランによって特徴があります。詳しくはこちらをご覧ください。


宮原裕徳
株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/