
住宅ローンを払えないとどうなる?返済が困難な場合の対処法を解説
住宅ローンを借り入れした後、収入が不安定になってしまい、払えなくなってしまう人もいます。今回は、何らかの事情で「住宅ローンの負担率が収入の25%以上になっている」という方や、「支払いがつらい」と感じている方に向けて、対処法をご紹介します。
目次
住宅ローンが払えない理由
住宅ローンが払えなくなる理由にはさまざまな要因が考えられます。今は問題なく返済できていても、突然のアクシデントによりローンを払えなくなる可能性は誰にでもあります。
住宅ローンの返済が困難になった際には、原因や自らの状況に合わせて適切に対処しなければなりません。ここではまず、住宅ローンが払えなくなる主な3つの原因をご紹介していきます。
無理のある返済計画
住宅ローンの負担率は、手取り収入に対しておよそ20%以内が理想といわれています。手取り収入で計算する理由は、30年~35年と長期間にわたって返済するケースが多い住宅ローンを、無理なく支払うためです。
負担率が25%を超えている場合や、定年後も長く払い続けるといった返済計画を立てている場合は注意が必要です。
●無理のない借り入れについて詳しくはこちら
突然のアクシデントによる収入の減少
住宅ローンを払えない原因としては、けがや病気による入院、突然のリストラで職を失ってしまうなどのケースも考えられます。予期できないアクシデントによって収入が減り、返済計画が崩れる恐れがあります。
予期せぬ支出の増加
住宅ローンを借り入れた時点では予期できなかった支出が重なってしまうと、返済が滞る原因となります。予期せぬ支出の例としては以下が挙げられます。
・医療費
・介護費用
・子どもの教育費
・家や車の修繕・修理費用
・冠婚葬祭費
・家電製品の故障・買い替え費用
・市況の変化(住宅ローン金利の上昇)
住宅ローンを払えないとどうなる?
住宅ローンの支払いが滞ると、以下のような流れで最終的には競売にかけられ、住んでいる家を明け渡さなければならなくなります。
住宅ローンの滞納期間(目安) | 住宅ローンが払えない場合に起こること |
---|---|
滞納1か月~2か月 | 金融機関から電話やメールでの案内が届く |
滞納2か月~3か月 | 督促状が届く |
滞納3か月~6か月 | 一括返済の請求が届く |
滞納6か月以降 | 競売にかけられる |
ここからは、住宅ローンを滞納し続けるとどうなってしまうのかを、段階ごとに詳しく説明していきます。
1か月~2か月滞納すると電話やメールでの案内が届く
住宅ローンの返済日に口座から引き落とせないままにしておくと、1か月~2か月たった頃に金融機関から返済の可否を尋ねる電話やメールが来ます。この時点で未払い分を返済すれば、その後も分割で支払い続けられるでしょう。
2か月~3か月延滞すると督促状が届く
住宅ローンの支払いが2か月~3か月滞ると、銀行や住宅金融支援機構といった金融機関から「期日までに未納金と延滞損害金をお支払いください」という旨の督促状が届きます。ここで支払いの見通しが立たない場合は、早急に金融機関・不動産会社へ連絡しましょう。なぜなら、信用情報機関に遅延情報が登録される恐れがあるからです。
一度、信用情報機関に登録されると、信頼性や支払い能力が欠けていると判断され、クレジットカードやローンなどの審査に通りにくくなってしまうでしょう。一般的に、住宅ローンの滞納期間が3か月を超えると遅延情報が登録されるケースが多いといわれています。これが、いわゆる「ブラックリスト入り」です。
また、督促状が届いた後も住宅ローンを滞納し続けていると催告書が届きます。催告書には、後述する「期限の利益の喪失」までの期限や、返済できない場合は法的措置をとる旨が記載されています。この段階までに適切に行動して、後の大きなダメージを避けたいところです。
3か月~6か月滞納すると一括返済の請求が届く
支払いの延滞が3か月~6か月にわたると、「期限の利益の喪失」によって一括返済を求める請求が届きます。期限の利益とは、「住宅ローンを分割で返済できる」という利益のことを指し、支払いが滞ることでその利益を失ってしまうのです。
しかし、毎月の返済が滞っているなかで一括返済できる可能性は低いので、多くは期限の利益が喪失されると保証会社が一括返済を行い、債権者が金融機関から保証会社へと移り変わります。これを「代位弁済」といい、その後は新しい債権者である保証会社に対して住宅ローンの残債を支払わなければなりません。
なお、債権者が保証会社に変わったとしても、借入額を一括で請求される場合が一般的です。ただし、現実的には支払えない状態であることがほとんどのため、保証会社によっては期間猶予や分割払いなどの相談に乗ってもらえるケースもあります。
その後も延滞すると競売にかけられる
競売とは、裁判所による強制的な売却のことです。「約束のお金を支払ってもらいたい」と金融機関が裁判所に申し立てをし、裁判所が受理すると、競り売りの形で売却が行われます。競売にかけられると家は差し押さえられ、売却が確定すると債務者は立ち退かなければなりません。さらに、競売の売却代金を充ててもローン残債が返済しきれない場合は、自己破産することになります。
自己破産とは、裁判所に破産申立書を提出して免責許可が得られると、ほぼ全ての債務が免除されるというものです。自己破産すると返済の請求はなくなりますが、代わりにクレジットカードやローンを5年以上利用できなくなったり、財産を処分しなければならなかったりといった制限がかけられます。
なお、連帯保証人がいる場合、連帯保証人にも返済が求められます。連帯保証人も債務者と同じく、住宅ローン返済の義務を負っているため、連帯保証人の資産も差し押さえの対象となり、最悪の場合は連帯保証人の家まで競売にかけられることもあるので注意が必要です。
●自己破産についての法律(破産法)はこちら
住宅ローンの返済が困難な場合の対処法5選
住宅ローンの支払いが滞ると、最悪の場合は競売にかけられ、自分の家から強制的に追い出されることになります。そのような事態を避けるために、住宅ローンの支払いが困難な場合の対処法として、以下があります。
・住宅ローンの返済プランと家計を見直す
・保険の保障範囲を確認する
・家を売却する
・リースバックで家を売却する
・リバースモーゲージを活用して返済額を減らす
ここでは、それぞれについて詳しくご紹介します。住宅ローンの支払いに困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
住宅ローンの返済プランと家計を見直す
住宅ローンを支払う見通しが立たない場合は、返済プランを再検討しましょう。住宅ローンを借りている金融機関に、一定期間の返済猶予や返済期間の延長といった条件を相談したり、より金利の低い住宅ローンへの借り換えを検討したりすることで月々の負担を軽減できるかもしれません。同時に家計の見直しも行い、無駄な出費がないかどうかチェックしましょう。
保険の保障範囲を確認する
住宅ローンを組んだ際に加入する団体信用生命保険(団信)は、特約によって疾病時に住宅ローン残債が保障されるケースもあります。保障される病気の種類や金額は契約によって異なりますが、なかには入院一時金の給付もあるので、契約しているプランの保障内容を確認してみましょう。
●団体信用生命保険について詳しくはこちら
家を売却する
住宅ローンの返済目途が立たない場合は、マイホームの売却も選択肢の1つです。住宅ローンが残った状態での不動産売却は、売却代金で住宅ローンの残債を完済できるかどうかに注目しましょう。
売却代金より住宅ローンの残債が少ないとき(アンダーローン)
売却代金より住宅ローンの残債が少ない場合は、家の売却後に住宅ローンを全額返済できるでしょう。家の売却を検討する場合は、まず不動産会社に物件の査定を依頼し、家の推定売却価格を試算してもらいます。その際に売却の手取り額が住宅ローンの残債よりも多そうな場合は、売却代金だけで住宅ローンを完済できる可能性が高いといえます。
三井のリハウスでは100万件を超える取引実績を生かした査定を行っており、高精度な査定が可能です。査定は無料で行っておりますので、お気軽にご相談ください。
●査定のお申し込みはこちら
売却代金より住宅ローンの残債が多いとき(オーバーローン)
住宅ローンの残債が売却代金を上回る場合は、家を売ったお金だけでは完済できず、抵当権を抹消できないという問題が起きてしまいます。本来であれば完済に足りない分は自己資金を充てて対処するのが好ましいものの、そもそも住宅ローンの返済が困難である場合、自己資金の確保は期待できないことが多いでしょう。
このようなときに金融機関の同意のもと、住宅ローンの残債があるまま家の抵当権を解除してもらって家を売却する方法が任意売却です。任意売却は、競売と違い市場価格に近い価格での売却が可能です。また、売却代金の配分を金融機関と相談できるので、交渉次第では引越し費用を捻出できる可能性もあります。しかし、任意売却をすると信用情報に登録されてしまうため、慎重に検討しましょう。
●任意売却について詳しい記事はこちら
リースバックで家を売却する
リースバックとは、リースバック業者や不動産会社に家を買い取ってもらいつつ、賃貸契約を結ぶ方法です。この方法なら、リースバック業者や不動産会社に家賃を払うことで元の家に住み続けられます。また、家を買い戻せる可能性が残るメリットもあります。
注意点は、リースバック方式の不動産売却では、通常の仲介による売却と比べて売却価格が安くなる場合があることです。また、売却代金で住宅ローンの残債が完済できなければ、リースバック自体の利用もできなくなります。リースバックによる売却でどのくらいの資金が手元に残るかを事前に試算しながら、計画的に行うようにしましょう。
●リースバックについて詳しい記事はこちら
リバースモーゲージを活用して返済額を減らす
定年を迎えて収入が減少したことで住宅ローンの支払いが厳しい場合は、リバースモーゲージを利用して毎月の返済額を減らす方法があります。リバースモーゲージとは、自宅に住みながら、その家を担保にして老後資金を借りるシニア向けのサービスです。金融機関により異なりますが、対象年齢の制限があり、下限は50歳、上限は80歳であることが多いです。
リバースモーゲージを利用するかの最終的な判断は、不動産会社やファイナンシャルプランナーといった専門家に相談してからにすることをおすすめします。
●リバースモーゲージについて詳しい記事はこちら
住宅ローンが払えない場合にやってはいけない対応
これまでご紹介したように、住宅ローンが払えない場合は、適切に対処しましょう。ここからは住宅ローンの支払いが困難なときに、やってはいけない対応について解説します。
新たに借り入れる
住宅ローンが払えない場合、やみくもに新たな借り入れを行うことは避け、早めに金融機関に相談しましょう。実際、キャッシングやカードローンで住宅ローンの支払いをすると、金利が高く利息も膨らんでしまいます。これにより返済がさらに困難になると、自己破産のリスクも伴うでしょう。なお、今後住宅ローンの借り換えを行う際に、キャッシングやカードローンの利用履歴があると、審査に通りにくくなるため注意が必要です。
返済を放置する
住宅ローンが支払えなくなっても、手続きせずに放置することは避けましょう。放置してもいずれ競売にかけられ、債務は残り続けます。任意売却や自己破産などを利用すれば、残債圧縮や免責が可能なケースもあるため、まずはそういった選択肢を検討してみましょう。
住宅ローンの返済に関するよくある質問
最後に、住宅ローンの返済に関する、よくある質問についてお答えします。
住宅ローンを払えない人の特徴とは?
住宅ローンを滞納してしまう可能性のある人の特徴には、以下の3つが挙げられます。
・収入に対して返済比率が25%を超える人
・完済の年齢が65歳を超える人
・団体信用生命保険に加入できない人
住宅ローンを借りる際は、無理のない返済計画を立てることが大切です。
住宅ローンが払えなくなる前に金融機関に相談を!
「住宅ローンの支払いが滞るかもしれない」と思ったときは、督促状が来る前に借入先の金融機関に相談することが大切です。住宅ローンの返済は、家計全般や人生設計に大きな影響を及ぼします。今後の生活を見据えたお金の見直しをするならば、ファイナンシャルプランナーに相談するのもよいでしょう。ファイナンシャルプランナーは、住宅ローンの返済を含めて、総合的な家計の見直しについてアドバイスしてくれます。
また住宅ローンが払えなくてお困りの場合は、先述の通り自宅の売却も選択肢の1つです。まずは査定を受けて、売却代金で住宅ローンの残債を完済できるかどうか確かめてみるのはいかがでしょうか?
三井のリハウスでは無料査定を受け付けています。売却を検討している方や、査定額を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。
●査定のお申し込みはこちら
●リハウスAI査定はこちら


村田洋一
らくだ不動産 不動産コンサルタント。宅地建物取引士、行政書士。消費者にとっての最良の不動産取引を目指し、多岐にわたる不動産トラブルの相談を受ける。
https://www.rakuda-f.com/