
空き家の売却方法!費用や税金、節税方法についても解説
空き家を放置していると管理費がかかってしまいますが、売却すれば現金化できます。相続したものの、活用方法がないならば売却を検討してみませんか?今回は、空き家の売却方法やかかる費用、また節税方法についても併せて詳しく解説します。
目次
活用予定のない空き家は売却しよう!
空き家は保有することで固定資産税や管理費がかかります。そのため、将来住む、活用するといった予定がなければ経済的負担が重くなることがあります。
加えて、空き家をそのままにしておくと老朽化が進んで倒壊したり、近隣トラブルが起きたりする恐れがあるでしょう。とはいえ、空き家を売却するにも「費用や税金がかかりそう」「面倒な手続きが多そう」など、不安や疑問は多いものですね。
そこで今回は、空き家を売却したい意志はあるものの、空き家に関する疑問や悩みを抱える方のために、売却方法やかかる費用、コストを抑えるポイントなどをお伝えします。
空き家の売却方法
空き家を売却する方法は、大きく分けて主に以下の3つがあります。
・そのまま売却する
・更地にして売却する
・買取を依頼する
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
そのまま売却する
空き家を解体せずに「中古住宅」、もしくは「古家(ふるや)付き土地」として売却する方法です。中古住宅や古家付き土地は、面積や立地などが同条件の新築住宅に比べると安いため、家の購入費用を抑えたい人からのニーズが期待できます。また、解体費用をかけずに売却できるメリットもあります。
●古民家の売却に関する記事はこちら
●中古住宅の売却について詳しくはこちら
更地にして売却する
2つ目の選択肢として、空き家を解体して更地にしてから売却する方法があります。更地にするメリットは、古家付き土地として売却するより早く買い手が付く可能性が高い点にあります。なぜなら、更地として売却するケースでは、購入後に買主が解体費用を負担する必要がないためです。
更地にして売却する方法は、建物の老朽化が進んでいて倒壊の恐れがある場合や、リフォームやリノベーションに多額の費用がかかる場合におすすめです。解体費用は発生するものの、かかった費用を売却価格に上乗せできる場合があります。解体費用については後ほど見ていきましょう。
ただし、更地にすると住宅付きの土地に比べて、土地にかかる固定資産税や都市計画税が高額になります。住宅がある場合の土地の固定資産税や都市計画税は減税措置の対象ですが、空き家を解体すると減税措置の対象ではなくなるため注意しましょう。
●更地の正しい意味や活用方法に関する記事はこちら
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買取を依頼する
3つ目は、空き家を不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。買取は、とにかく早く売りたい方におすすめです。買取なら最短1週間で売買契約ができ、1か月で残代金の決済までを完了できます。ただし、売却価格は市場の相場より安くなってしまうことに注意が必要です。リフォーム代を差し引いた価格で買い取られるため、相場の約6~8割程度の価格になるでしょう。
●不動産買取に関する記事はこちら
空き家の売却にかかる費用と税金
空き家を売却するときにかかる費用を把握できれば、中長期的な資金計画が立てられます。空き家の売却にかかる費用と税金は次の通りです。
費用
空き家を売却する際に売主が負担する費用は、主に仲介手数料と解体費用です。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産会社に空き家の売却を依頼し、売却が成立した際に不動産会社に支払う成果報酬です。上限金額については、宅地建物取引業法で以下のように定められています。不動産会社によっては仲介手数料の上限より安いケースもありますが、ほとんどの場合は上限通りの金額が請求されます。
取引価格(税別) | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 取引価格 × 5%(税別) |
200万円超から400万円以下 | 取引価格 × 4% + 2万円(税別) |
400万円超 | 取引価格 × 3% + 6万円(税別) |
ただし法律が改正されたため、2024年7月から取引価格が800万円以下の場合、上記の原則による上限を超えて最大「30万円 + 消費税」が請求できることが特例で定められています。詳しくは国土交通省のウェブサイトをご確認ください。
●「低廉な空家等の媒介の特例」について詳しくはこちら
●仲介手数料に関する記事はこちら
解体費用
空き家を解体し更地にしてから売却する場合、解体工事の費用がかかります。一戸建てに多い木造建築の場合は、1坪当たり3万~5万円程度が相場です。解体費用は、主に建物の種類によって決まりますが、立地条件や老朽化の度合い、業者によっても異なります。まずは、複数の業者に見積もりを依頼し、比較検討して選ぶとよいでしょう。
●解体費用に関する記事はこちら
税金
空き家を売却した際にかかる税金は主に、譲渡所得にかかる税金、印紙税です。
譲渡所得にかかる税金
土地や一戸建て、マンションなどの不動産を売却した際に発生する利益を「譲渡所得」といいます。この譲渡所得には、金額に応じて所得税や住民税などの税金が課せられることになっており、これらは総称して「譲渡所得税」と呼ばれることもあります。
譲渡所得の算出方法は、以下の通りです。
譲渡所得 = 物件を売った金額等(譲渡収入金額) - 【物件を買った費用(取得費) + 売却時の諸費用(譲渡費用)】
譲渡所得にかかる所得税や住民税の税率は、空き家の所有期間によって異なります。
不動産所有期間 | 所得税(復興特別所得税含む) | 住民税 | 合計 |
---|---|---|---|
所有期間5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
所有期間5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
上記表が示すように、不動産の所有期間が5年以下で売却して得た所得を、「短期譲渡所得」、所有期間5年を超える場合の所得を「長期譲渡所得」と呼びます。以上の表を見れば、長期譲渡所得にかかる税率のほうが低く、結果として税額が安くなることが分かりますね。
印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書を含む課税文書を作成する際に課せられる国税です。空き家を売却する価格に応じて税額が定められています。2027年3月31日までの間に作成された契約書は、租税特別措置法による軽減措置の対象となります。軽減措置を受けた際の金額は、以下の通りです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
500万円超~1,000万円以下のもの | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超~5,000万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超~1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円超~5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
ほかにも、仲介手数料が発生した際の消費税や、登録免許税がかかる場合があります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
●不動産売却にかかる税金について詳しくはこちら
空き家売却にかかる税金を抑える補助金や特例
空き家の売却にかかる費用や税金は、極力抑えたいものですよね。ここでは、売却前に知っておきたい補助金や控除をご紹介します。
空き家解体の補助金
個人が空き家を解体する際には、全国の地方自治体が設けている空き家の解体に対する補助金を利用できる場合があります。補助金を受け取るための条件や補助金の金額、計算方法は自治体ごとに異なるため自治体のサイトや窓口で確認しましょう。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
親をはじめとした被相続人から取得した相続不動産を売る際に利用できる特別控除です。空き家をそのまま売却して譲渡所得(売却益)が出た場合に、一定の要件を満たせば、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例が適用されます。つまり、譲渡所得のうち3,000万円までは税金が控除されるのです。
●被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例について詳しくはこちら
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続や遺贈で取得した空き家を売却した場合、譲渡所得を求める際に必要な「取得費」に相続税の一部を加算できる特例です。この特例を利用するには、相続税の申告期限の翌日から3年が経過するまでに譲渡している必要があります。
●相続財産を譲渡した場合の取得費の特例について詳しくはこちら
空き家を売却する際の注意点
ここまで、空き家を売却する際の費用や税金についての注意点をご紹介してきましたが、そのほかにも気を付けたい注意点がいくつかあります。ここでは、空き家を売却する際に注意するべきことをご紹介します。
名義変更できているか確認しておく
空き家を売却する際に重要なことは、空き家の名義人と売却する人が一致しているかを確認しておくことです。不動産を取得する際は、登記簿に所有者が登録されます。この不動産の所有者を登録する手続きを「登記」といい、不動産の所有権が移り、名義を変更する手続きを「所有権移転登記」と呼びます。
万が一、空き家を売却する際に、名義が被相続人のままになっていた場合は、名義変更を行うまで売却できません。そのため、相続したばかりの不動産を売却したい場合には、まずは名義変更を行う必要があります。
●家の名義変更に関する記事はこちら
●相続登記に関する記事はこちら
状態を確認しておく
空き家を売却する際には、建物や設備、地盤の状態についても必ず確認するようにしましょう。建物や地盤の現状を把握するなかで、瑕疵(かし)が見つかった場合、不動産会社や買い手と共有できるため売買契約後のトラブル回避につながります。
建物の耐震性が低い場合や、「特定空き家」に認定されそうな場合、建物の修繕が難しいとされる場合は、建物を壊し更地として売却することも検討しましょう。特定空き家とは、国土交通省が示している衛生上で有害となる恐れがある建物や、倒壊の危険性がある建物などが該当します。特定空き家に認定された場合は、更地にした場合と同様、住宅用地に適用されている固定資産税や都市計画税の軽減措置が受けられなくなるので注意が必要です。
更地にする場合はタイミングを考える
建物を壊して更地にして売却する場合は、更地にするタイミングを考慮する必要があります。理由は、毎年1月1日時点の土地の状態で固定資産税が決定されるからです。
先ほどもお伝えしたように、建物を壊し更地にしてしまうと、土地の減税措置の対象から外れてしまいます。よって、取り壊しを行う場合は、固定資産税の課税額が決定する1月1日をすぎてから更地にすることで、土地の固定資産税額を抑えられます。
空き家売却における不動産会社の選び方
空き家の売却を行う際は、以下のような点を踏まえて、信頼できる不動産会社を見極めましょう。
・店舗の評判を口コミで確認する
・宅地建物取引業免許の更新回数を確認する
・レスポンスの早さを確認する
・契約を無理やり進めようとしていないか確認する
不動産会社は数が多いため、自分に合った最適な会社を見つけることが重要です。
空き家の売却はプロのアドバイスをもとに進めよう!
空き家の売却をスムーズに進めるには、信頼できる不動産会社への相談がおすすめです。空き家の状態に最も適した売却方法を提案してもらえるうえに、可能な限り高く売る方法も考えてくれます。高い値段で売却できれば、譲渡費用の回収にもつながるでしょう。
不動産の売り出し価格は、査定額によって決まります。売り出し価格が適正でないと売却に時間がかかったり、損をしたりすることもあるため、売り出し価格を決める際には精度の高い査定を受けることが重要です。
不動産会社は実績を多く有するほど、精度の高い査定が期待できます。累計100万件以上の取扱実績を誇る三井のリハウスは、これまでに得た知見を生かし、不動産売却をサポートいたします。空き家の売却をご検討中の方は三井のリハウスにぜひご相談ください。
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宮原裕徳
株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/