事故物件を売却するには?告知義務や売るためのコツを紹介

事故物件を売却する場合、通常の物件の相場よりも低い価格で取引されるのが一般的です。また、事故物件を売るには、通常の不動産売却とは違った注意点やコツがあります。この記事では、事故物件の定義から売却をスムーズに進めるコツまでご紹介します。

目次
  1. 事故物件とは?
  2. 売却時にチェック!事故物件に該当する?
  3. 事故物件であることを黙って売却するリスク
  4. 事故物件を売却するコツは?
  5. 事故物件をできるだけ高く売却する方法は?
  6. 事故物件の売却も三井のリハウスにお任せください
  7. よくある質問
記事カテゴリ 売却 マンション 一戸建て
2025.07.16

事故物件とは?

一般的に知られている事故物件は、事故や事件を原因として人が亡くなった物件を指すことが多く、不動産の取引においては、そういった不動産を心理的瑕疵(しんりてきかし)がある、またはその恐れがある物件といいます。しかし、本来、事故物件とは、事故や事件で人が亡くなった物件も含め、欠陥や欠点のある瑕疵物件のことです。瑕疵には大きく分けて以下の3種類があります。

瑕疵の種類概要
心理的瑕疵不動産を取引する際に、買主や借主が心理的な抵抗を感じる恐れがある欠陥のこと
物理的瑕疵不動産における物理的な欠陥のことで、土地の瑕疵と建物の瑕疵がある
法的瑕疵建物を建築する際にクリアしているべき建築基準法や、都市計画法などの法律を満たしていない欠陥のこと

心理的瑕疵

心理的瑕疵とは、住む人に心理的な抵抗感や嫌悪感を抱かせる瑕疵(欠陥)のことです。たとえば、殺人や自殺、自然死でも特殊清掃が必要になった物件は、心理的に住みづらさを感じてしまう心理的瑕疵があることになります。

また、心理的瑕疵のなかでも、取引の対象となる不動産の周辺環境に住みづらさを感じる欠陥を「環境的瑕疵」ということがあります。たとえば、墓地や火葬場などが近くにある、また反社会的勢力が近くに居住しているような場合、心理的(環境的)瑕疵があるといえるでしょう。

なお、国土交通省が2021年10月に公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によると、人が亡くなった物件でも、死因によっては事故物件に該当しないケースもあります。

物理的瑕疵

物理的瑕疵とは、土地や建物の物理的な欠陥を指します。土地の物理的瑕疵には、地中の埋設物や土壌汚染などが挙げられます。これらは、所有者自身も認知していないことが多い傾向があります。

建物の瑕疵は、構造や機能に関する欠陥が該当し、雨漏りや給排水管の破損、シロアリによる被害などです。また、過去の火災による残存被害がある建物も物理的瑕疵に含まれます。

法的瑕疵

法的瑕疵とは、特に建物の建築関係にかかわる法律(建築基準法や都市計画法、消防法)によって建築制限があり、既に法律に違反して建てられている物件を指します。

たとえば、建築基準法において指定されている容積率(敷地面積に対して建築可能な延床面積の割合)に違反している物件が、法的瑕疵のある物件として挙げられます。また、法律の制定前や改正前に建てられた、いわゆる「既存不適格物件」も法的瑕疵に該当します。なお、既存不適格物件では、現在の法律のもとでは同規模の建物を再建築することができない点に注意が必要です。

告知義務がある

事故物件を取引する売主や貸主、仲介する不動産会社は、買主や借主に告知事項を告知する義務があります。告知事項とは、不動産取引において買主や借主に対して開示すべき重要な情報を指し、買主や借主が物件を購入したり賃借したりするかの判断に大きな影響を与える可能性のある情報です。

事故物件を売却する際の告知義務は、売主や仲介を担当する不動産会社が、物件内で過去または現在においてどのような瑕疵があるかを買主に知らせる義務のことです。特に、不動産会社(宅地建物取引業者)には、宅地建物取引業法によって、取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼす事実について告知義務が定められており、告知しなかった場合は告知義務違反だけでなく、重要事項説明義務違反にも該当します。

特に、人の死にまつわる事故物件では、心理的瑕疵として買主の購入判断に大きな影響を与える重要な情報だといえるでしょう。告知義務を果たさずに売却すると、売主と仲介した不動産会社は、買主から損害賠償請求や契約解除を求められる可能性があるので注意が必要です。

以下で、人の死にまつわるどのような事項が告知義務の必要な事故物件に該当するかについて見ていきましょう。

事故物件のイメージ

売却時にチェック!事故物件に該当する?

建物内で人が亡くなった物件の全てが事故物件になるわけではありません。また、告知事項となる人の死がどういったものか、またいつまで告知義務があるのかについてもあいまいで分かりにくいものです。ここでは、人の死に関する告知義務について国土交通省のガイドラインをもとに詳しく紹介します。

告知義務の新基準

2021年10月、国土交通省は居住用不動産について「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。このガイドラインでは、死因や状況によって告知が必要なケースと不要なケースを例示して一定の判断基準を示しており、法的な拘束力はありませんが、不動産会社が行政処分等の判断をするときの参考にされています。以下で告知事項に該当する場合、しない場合について解説します。

事故物件に該当する告知事項

人の死にまつわる告知事項として、取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる以下のものは、原則として告知が必要です。

・他殺
・自殺
・事故死(日常生活における不慮の事故といえないもの)
・その他原因が不明な死
・自然死、不慮の事故でも特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合

なお、心理的瑕疵の告知義務が発生するのは、対象物件の室内だけでなく、マンションをはじめとした集合住宅の共用部分で発生した事故や事件も該当します。また、事件性や周辺での周知性、社会的影響などが高い事案の場合には告知義務があるので注意しましょう。

告知の範囲

告知する範囲は、事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合には発覚時期)、場所、死因(不明である場合にはその旨)および特殊清掃等が行われた場合にはその旨を知らせるとされています。

また、亡くなった方やその遺族等の名誉および生活の平穏に十分配慮し、不当に侵害することのないように、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を知らせる必要はありません。

いつまで告知義務があるか

売買を対象とする物件の場合は、人の死にまつわる告知事項の発生から告知の必要がなくなる期間の目安がありません。従って、告知事項がある場合は、事故や事件などから何年経過しても、また、取引が何回か繰り返されても告知義務があると考えたほうがよいでしょう。賃貸募集では、3年以上経過した後は告知しなくてよいケースもありますが、売買取引では経過年数にかかわらず告知事項の告知が必要です。

過去の判例として、売買の数十年以上前の事件について告知しなかったことが告知義務違反になったケースもあるので、時間の経過によって告知義務がなくなるとは一概にいえません。売却にあたって思い当たる場合は、不動産会社へ事前に相談しましょう。

告知事項に該当しない場合があるもの

告知事項に該当しない場合がある主なものは以下の通りです。

・事件性のない自然死(病死や老衰)
・該当する事案でもおおむね3年経過した場合(賃貸物件のみ)
・不慮の事故による死

ただし、事件性や周辺での周知性、社会的影響などが高い事案では告知義務が発生します。また、買主から問い合わせがあった場合、告知義務のない事例でも告知する必要があります。引渡し後に、近隣住民から買主に伝わってトラブルになる場合も考えられるため、告知義務がないと思われるものであっても、基本的には告知するのがおすすめです。

告知事項を説明する担当者

事故物件であることを黙って売却するリスク

告知事項があるのに黙って物件を売却することはやめましょう。信頼が損なわれるだけでなく、告知義務違反になり、深刻な問題が発生するリスクもあるためです。

告知義務を怠り、事故や事件の事実を隠して売却した場合、売主は損害賠償を請求されたり、契約解除されたりすることがあります。仲介した不動産会社も告知義務違反に問われることがあるため、売主が心理的瑕疵について把握している場合は必ず告知しましょう。

前述の通り、売買の場合、告知事項の告知義務には、義務が免れる期間に目安がありません。事故や事件から何年経過していても、告知事項の事実を告知する義務があり、時間がたてば分からなくなるだろうという考えは危険です。さらに、インターネットが普及した現在では、物件の過去の履歴を調べることも可能です。一時的に隠せたとしても、後から事実が発覚する可能性が高く、その場合は訴訟などにより深刻な問題に発展する恐れがあるため、必ず告知するようにしましょう。

告知義務を怠った人

事故物件を売却するコツは?

ここからは、事故物件を売却するときに注意したいポイントや上手に売却するためのコツをご紹介していきます。

できるだけきれいにする

人の死にまつわる心理的瑕疵のある事故物件を売却する場合は、事故や事件のあった現場を清掃するだけでなく、該当する室内の床や天井、壁など全て新しいものに取り替えたほうがよいでしょう。場合によっては全体的にリフォームすることもおすすめします。

一戸建てやアパートの一棟の場合は、外観の印象も変える等、通常の物件以上に印象がよくなるように心がけましょう。

一定の期間を空ける

事故や事件が発生した直後は、その印象が強く、売却活動を始めても買い手が見つかりにくい傾向があります。売主の精神的・経済的な状況にもよりますが、可能なら、数年ほど期間を空けて売却するほうが得策かもしれません。

ただし、売買の場合は、期間を空けても告知義務はなくなりません。そのため、期間を空けて事故物件を売却する場合でも、不動産会社の担当者に告知事項がある旨をきちんと知らせましょう。

更地にする

近隣の人が忘れられないような事故や事件が起きた場合は、清掃や修繕、リフォームで建物をきれいにしても、イメージを払拭できないことがあります。その場合は、建物を全て取り壊し、更地にして、物件のイメージ回復を図るのも1つの方法です。ただし、更地にしたからといって告知義務がなくなるわけではありません。

解体する場合は費用がかかりますが、事故や事件のイメージが付いた建物を売却するより売りやすくなることが多いので、検討する価値があります。なお、更地は、建物があるときよりも固定資産税や都市計画税の負担が増えるため、できるだけ速やかに売却したほうがよいでしょう。

事故や事件の印象が強く、更地にしても売却が難しい場合は、月極駐車場やコインパーキングなど別の土地活用を検討する方法もあるでしょう。

事故物件を取り壊した更地

不動産買取業者に買い取ってもらう

事故物件を急いで売りたい場合は、不動産買取業者に買い取ってもらう方法があります。昨今は多くの不動産買取業者が買取を行っており、直接買い取ってもらう最大のメリットは、短期間で売却できる点です。販売活動をする必要がなく、買取の査定額に納得できれば即売却できます

また、不動産のプロである不動産買取業者に買い取ってもらえば、事故物件という特殊な物件であっても引渡し後にトラブルになる可能性が低くなります。さらに、売主の契約不適合責任については引渡し時点で免責にしてもらえることも多く、売主の責任負担が軽くなるのは大きなメリットです。不動産買取業者に買い取ってもらう場合、契約不適合責任の扱いについては確認してみましょう。

ただし、不動産買取業者が買い取る場合、価格はかなり低くなる傾向があるのが注意点です。そのため、売却する価格にこだわるより早く手放したい方に向いている方法といえるでしょう。

事故物件をできるだけ高く売却する方法は?

前述の通り、不動産買取業者に買い取ってもらう方法は、価格よりも早さを優先したい方に向いています。逆に、事故物件でもできるだけ高く売却したい方には、仲介での売却がおすすめです。相場より安く売り出すとしても、一度提示した価格を上げるのは難しいため、少し強気な価格から始め、徐々に価格を下げていくとよいでしょう。

事故物件は通常の物件と比べて、買い手を見つけるのが難しく、売却の難易度が上がる傾向があります。そのため、物件の状態や条件を正確に見極め、なるべく高く売却できる経験豊富な不動産会社に依頼しましょう。

●仲介業者(不動産会社)の選び方についてはこちら

事故物件の売却も三井のリハウスにお任せください

通常の相場価格での売却が難しいとされる事故物件ですが、今回ご紹介したように事故物件についての理解を深めたうえで、売却する際のコツを参考にすれば、納得のいく売却につながるかもしれません。

また、事故物件にははっきりした相場がないため、信頼できる不動産会社、担当者を見つけることが重要です。経験豊富なプロからアドバイスを受けながら、二人三脚で売却活動を進めることで、事故物件でもスムーズに売却できる可能性が高くなります。

三井のリハウスでは、豊富な取引実績から蓄積した経験・知見をもとに、お客さまのご要望に合ったサービスを提供しています。まずはご所有の不動産がいくらで売れるのか、査定から始めてみませんか?不動産会社へ仲介の依頼をご検討されている方は、ぜひ一度三井のリハウスにご相談ください。

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よくある質問

事故物件についてどのように告知すればよいですか?

基本的に、購入希望者や仲介業者からの問い合わせがあれば、口頭で速やかに伝えましょう。売買契約に至った場合、重要事項説明の際に告知事項の内容を記載して、説明する必要があります。最初から隠さず、事故物件であることを伝えて売却することが大切です。

信頼できる不動産会社を利用することで、適切な手順にもとづいて告知事項を説明し、契約に至ることができれば、余計なトラブルを避け、安心して取引できるでしょう。

人の死にまつわる告知義務の必要がなくなる期間の目安はありますか?

賃貸住宅の賃貸借取引の場合、事故や事件の発生からおおむね3年を経過すると借主への告知義務はないとされています。ただし、事件性や周知性、社会へ与えた影響が大きい場合は3年をすぎても告知義務があります。一方、売買取引の場合、告知義務がなくなる期間の目安はなく、何年たったとしても告知義務があります。

秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。