
不動産の個人売買は可能?手続きや売却の注意点も分かりやすく解説
家の売却を考えている方のなかには、不動産会社を通さずに不動産を売買する「個人売買」を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか?本記事では不動産を個人売買するメリットや注意点、流れや費用まで、詳しく解説します。
目次
不動産の個人売買は可能か
土地や建物など、不動産を売却する場合、不動産会社に仲介を依頼する方法が一般的ですが、不動産会社を通さずに個人売買することも可能です。しかし、個人間の売買となると、自ら買主との交渉を行ったり、必要書類も用意しなければならないため、手間と時間がかかります。
今回は、不動産の個人売買を検討している方に向けて、個人売買のメリットや流れ、注意点などをご紹介します。不動産を売却する際にお役立てください。
不動産を個人売買するメリット
不動産の個人売買における主なメリットは、仲介手数料や消費税を抑えられることです。不動産会社に仲介を依頼して不動産を売却する場合は、必ず仲介手数料を支払う必要がありますが、個人売買ではこの仲介手数料を支払う必要がありません。
不動産を売買する際の仲介手数料は、宅建業法(宅地建物取引業法)という法律で上限額が決められており、その上限額は物件価格によって異なります。たとえば、400万円を超える契約の場合は「物件価格 × 3% + 6万円 + 消費税」で仲介手数料の上限額を求めることが可能です。
また、不動産の個人売買では、通常買主にかかる消費税が発生しません。決して安くない費用である仲介手数料や消費税が抑えられる点は、売り手にとっても買い手にとっても大きなメリットといえるでしょう。
不動産の個人売買の流れ
個人売買のおおまかな流れは以下の通りです。
[ 1 ] 売り出し価格の決定
[ 2 ] 買主を探す
[ 3 ] 売買契約を締結する
[ 4 ] 引渡し
では具体的な流れについて、以下で詳しく解説しましょう。
[ 1 ] 売り出し価格の決定
不動産を売却するためには、まず、いくらで売り出すのかを決める必要があります。相場に合わない価格設定をしてしまうと、スムーズに買い手が付かないことがあるので、「不動産情報ライブラリ」や「REINS Market Information」を活用して現在の相場を調べ、相場に合った売り出し価格を設定しましょう。
[ 2 ] 買主を探す
個人売買をする場合、既に知人や親族など買主が決まっていることが一般的ですが、もし決まっていない場合は、買主を探すために販売活動をする必要があります。代表的な販売活動の方法としては、以下がおすすめです。
・身の回りに買いたい人がいないか、打診してみる
・不動産を売りたい人と買いたい人を引き合わせる、不動産マッチングサービスを利用する
[ 3 ] 売買契約を締結する
個人売買においては、売買価格は売主と買主の合意で決定されます。買主から値引き交渉を持ちかけられたときに慌てないように、一般的な現在の不動産相場を押さえつつ、住宅ローンの残債も考慮してどこまでなら値引きをしてもよいか、明確にしておきましょう。
売主と買主双方が金額や条件の面で合意し、売買契約に進む際には、売買契約書を複数作成する必要があります。取引によって記載内容が異なることがあるため、不安な方は司法書士に売買契約書の作成の依頼をするのがおすすめです。契約の際に必要な書類については、後ほど詳しくご説明します。
[ 4 ] 引渡し
売買契約が締結されると、その後、物件の引渡しが行われます。引渡しの際に注意したいのは、売却する物件が、住宅ローンを借りて購入した不動産の場合、抵当権の抹消手続きを行う必要があることです。抵当権とは、金融機関が住宅ローンを貸し付ける際に、土地や建物を担保として設定する権利のことですが、抵当権が設定されたままだと物件の引渡しができなくなります。忘れずに抹消するようにしましょう。
●抵当権についての詳しい記事はこちら
不動産を個人売買するときの注意点
不動産を個人売買するときの注意点は、主に次の3点です。
・手間と時間がかかる
・自分でトラブルに対処する必要がある
・買い手が住宅ローンの審査に通りにくい
この3点について、以下で1つずつ見ていきます。
手間と時間がかかる
不動産の個人売買をするとなると、現状の不動産相場を把握、売り出し価格の設定、買主を見つけて書類を作成するといったいくつかの工程を自分でこなさなければなりません。買主が知人や親戚ではなく見知らぬ第三者の場合、特にやりとりに時間がかかるため、注意が必要です。
自分でトラブルに対処する必要がある
不動産売買の過程で買主とトラブルになったとき、自分で対処しなければならないことにも注意が必要でしょう。トラブルと一言でいっても、書類の作成ミスや契約内容に関連する衝突など、起こりうるトラブルはさまざまです。
また、「契約不適合責任」についても理解しておきましょう。契約不適合責任とは、「契約内容と異なるものを売却した」と判断された場合に、売主や請負人が負わなければならない責任のことです。「家が傾いていた」「雨漏りがしていた」などの契約書に記載されていない不備や瑕疵(かし)が契約後に発見された場合、契約不適合責任のもと、損害賠償の請求や契約解除の対象になります。
以上、注意点を列挙しましたが、不動産の個人売買となると、負わなければならない責任が多いのが実情です。少しでもトラブルの原因となりそうな要素を減らしたいのであれば、不動産会社に仲介を依頼しましょう。
買い手が住宅ローンの審査に通りにくい
不動産を購入する際には、多くの人が住宅ローンを組みますが、不動産の個人売買の場合、購入者が住宅ローンを利用したくても金融機関の審査が通りにくいことにも注意が必要です。
というのも、個人売買は不正取引や貸付金の流用などのリスクが高いと判断され、リスクが及ばないように、金融機関が住宅ローンの貸し付けに消極的になる傾向があるからです。また、住宅ローンの審査を通過するためには、個人売買で入手が難しい重要事項説明書の提出が求められることがあるため、併せて注意しておきましょう。
家の個人売買と仲介の違い
ここまで不動産の個人売買の流れやメリット、注意点について解説しましたが、そもそも個人売買と、不動産会社を介した売買は、どのような点が違うのでしょうか?2つの大きな違いについて、以下で説明します。
集客力
仲介を依頼し、不動産会社と媒介契約を結ぶと、「レインズ(REINS)」というサイトに売却する家の情報が掲載されます。掲載情報を閲覧した全国の不動産会社が、購入検討者に物件を紹介したり、サイトで情報発信したりすることで告知効果が高められるという仕組みです。
なお、レインズへの登録や閲覧ができるのは、基本的に不動産会社のみであるため、不動産会社を介さない個人売買では集客力に差が出てしまいます。つまり、全国の不動産会社が広く閲覧できるレインズに物件情報を登録することができれば、不動産を購入したい人に情報が届きやすくなり、買い手も付きやすくなるといえます。
重要事項説明の有無
不動産会社に仲介を依頼すると、売買契約前に必ず重要事項説明が行われます。重要事項説明とは、宅地建物取引士が買主に向けて物件に関する重要な事項を説明することです。この説明を受けることで、買主は購入する意思決定に影響を及ぼすような重要事項についての内容を十分理解したうえで、契約締結の決定が可能となります。
家の個人売買の手続きに必要な書類と費用
先ほど、売買契約を結ぶ際には、用意するべき書類が複数あるとお伝えしましたが、ここではどのような書類が必要で、どれほどの費用がかかるかをご説明します。
売主が用意する書類
売主側が用意する書類は、買主側に比べて格段に多く、主に以下のものが挙げられます。
・本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
・登記済権利証または登記識別情報通知
・印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
・登記簿謄本
・住民票
・固定資産税、都市計画税納税通知書の写し
・固定資産評価証明書
・抵当権抹消書類
・建物図面や間取り図
・付帯設備表および告知書
どれも契約をするうえで欠かせないため、リスト化するなどして、計画的にそろえましょう。
買主が用意する書類
買主が用意する書類は、主に以下のものが挙げられます。
・本人確認書類
・印鑑証明
ただし住宅ローンを借り入れる際には、追加で住民票謄本や源泉徴収票といった書類が必要となるので注意しましょう。
●不動産売買に必要な書類についての詳しい記事はこちら
かかる費用
印紙税
売買契約書のような経済取引にかかわる書類を作成する際に発生する税を、印紙税といいます。印紙税の税額は、売買契約書に記載される価格によって異なります。
●印紙税について詳しくはこちら
登録免許税
「抵当権抹消登記」「所有権移転登記」といった登記手続きの際に発生する税を、登録免許税といいます。抵当権抹消登記にかかる費用は売主が、所有権移転登記にかかる費用は買主が負担するのが一般的です。
司法書士に売買契約書の作成依頼をする際は、これらの費用に加え、司法書士に報酬を支払う必要があります。不動産売買を行う際に必要な書類や、かかる費用について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
●不動産売買にかかる費用についての詳しい記事はこちら
家を売る際は不動産会社に仲介を相談しよう!
ここまで不動産の個人売買について、流れやメリット・注意点、必要な書類などについてお伝えしました。個人売買は売却に伴う費用が抑えられるといったメリットがある一方、手間や時間がかかったり、トラブルが発生したときに自分で対処しなければならなかったりというリスクがあります。安心して不動産売買を行いたい場合は、プロである不動産会社に仲介を依頼しましょう。
三井のリハウスでは、100万件を超える取扱件数で得た経験や知見をもとに、お客さまの不動産売買をサポートします。不動産売買を自分で進めることに不安がある方、家を売るプランが明確に決まっていない方は、ぜひ三井のリハウスにご相談ください。
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監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉
株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
https://www.izumi-ohishi.co.jp/profile.html