再建築不可物件は売却できる?物件を売りたいときの対策や方法を解説!

不動産売却を検討している方のなかには、建て替えができない再建築不可物件を所有しているケースもあるでしょう。本記事では、再建築不可物件の定義や、売却が可能なのか、また売るためにはどのような方法があるかについて解説します。

目次
  1. 再建築不可物件とは?
  2. 再建築不可となる理由
  3. 再建築不可物件は売れない?
  4. 再建築不可物件が売れにくい理由
  5. 再建築可能にして売却する
  6. 再建築不可のまま売却する
  7. 再建築不可物件の売却に迷ったらまず査定から
記事カテゴリ 売却 一戸建て
2024.07.02

再建築不可物件とは?

再建築不可物件とは、建築基準法の規定により、今ある建物を壊して新築することができない物件のことです。再建築不可物件は、都市部の住宅密集地を中心に、数多く存在します。というのは、都市部の住宅密集地には、建築基準法が施行された1950年(昭和25年)以前に建てられた家が数多く残っている傾向があり、そのなかに再建築不可物件が含まれている可能性が高いからです。

再建築不可物件であっても住み続けることはできますが、老朽化が進むと倒壊の危険性が高まるため、一部の自治体では独自のルールを設けて建て替えを進める動きもあります。また、再建築不可物件の場合、一般的に売却が難しいといわれることもありますが、ポイントを押さえることで売却も可能です。

今回は、再建築不可物件の売却を検討している方に向けて、再建築不可物件の基本的な知識から、売却を実現させるための方法まで解説します。

解体工事をしている現場

再建築不可となる理由

再建築不可となる主な理由として、以下の2つが挙げられます。

・「接道義務」を果たしていない
・「市街化調整区域」にある

私道

「接道義務」を果たしていない

「接道義務」とは、「建築基準法第43条」※1の1つで、「建築物の敷地は、原則として4m以上の幅員の道路に2m以上接していなければならない」という規定のことです。たとえば、道路にまったく接していない土地や、接している道の幅が4m未満である土地の場合は、接道義務に反していることになります。また、接している道路自体が幅4m以上であっても、その道路に面している土地の間口が2m未満という場合も同様です。

なお、この規定が設けられている主な理由は、火災や急病人が発生した際に、緊急車両が通行できる道幅を確保するためです。つまり、接道義務とは人命を守るためのものであり、義務を果たさない物件が再建築不可となります。

「市街化調整区域」にある

「市街化調整区域」※2とは、1968年(昭和43年)に制定された新都市計画法により、市街化を抑制する必要があると定められた地域のことです。そのため、市街化調整区域では、土地の活用が制限されており、原則的に建物の再建築ができません。

なお、自身の土地が市街化調整区域に該当するかどうかは、市区町村役場で確認ができます。

市区町村を訪れた様子

再建築不可物件は売れない?

再建築不可物件は一般的に売却しにくいといわれることがあります。確かに通常の物件より売却が難しい傾向にありますが、不可能ではありません。とはいえ、再建築不可物件は、一般的な物件と比較すると、5~7割程度の価格で成約されることが一般的です。また、市場より安い価格で手に入る可能性があるため、「土地や建物をできるだけ安く購入したい」という買い手が興味を示すケースも見られます。

不動産契約の様子

再建築不可物件が売れにくい理由

先ほど、お伝えしたように再建築不可物件の売却は不可能ではありませんが、一般的には売却しにくいといえます。主な理由として以下の2つが挙げられます。

建て替えができない

再建築不可物件では、新たな住宅に建て替えることができないだけでなく、増築も認可されていません。「建築確認申請(住宅を新築、増改築するときの申請)」が必要な行為は認められておらず、そのため、外壁や屋根、床、天井などの大規模な改修、交換もできません。地震や火災で倒壊したときや、老朽化が進んだ際にも再建築できないため、どうしても一般の買い手のニーズは低くなりがちです。なお、再建築不可物件は、建築確認申請が不要なリフォームは行えます。

買い手が住宅ローンを借りにくい

再建築不可物件は、住宅ローンを提供する金融機関から、担保としての価値が低いと見なされることがあります。そのため、融資をするための担保として不十分であると評価され、買い手は住宅ローンの審査が通らなかったり、通ったとしても金利が高くなったりすることが一般的でしょう。不動産を現金で一括購入できる人は少ないため、住宅ローンが使えないという理由から購入を断念せざるを得ないケースも見られます。

ただし、再建築不可物件を売却するための方法はいくつかあります。主な方法については、以下で詳しく解説します。

老朽化が進んだ古民家

再建築可能にして売却する

再建築不可物件は、再建築可能にする方法がいくつかあります。再建築が可能になれば、通常の相場価格で売却できる可能性が高まるでしょう。

再建築可能にする方法としては、主に以下の3つがあります。

・セットバックする
・隣地の一部を買い上げる
・「接道義務の特例」を申請する

それぞれの方法について、具体的に見ていきましょう。

セットバックする

セットバックとは、英語で「後退」を意味し、主に接道義務を果たすために土地の一部を道路にすることです。たとえば、土地が接している道路の幅が約3mの場合、接道部分から約1m敷地をセットバックすれば、接道義務である幅員4mの条件を満たすことができます。

セットバックの費用は、原則的に土地の所有者が負担することになりますが、自治体によっては補助金が出る場合もあります。なお、セットバックによって道路となった部分は、駐車スペースにしたり、塀や柵を設置したり、私的に利用することはできないため注意しましょう。

隣地の一部を購入する

先述したように、建築基準法の接道義務では、幅員(道幅)のほかに、建物が道路に接する間口が2m以上なければならないと定められています。道路に面する敷地の間口が2m未満の場合は、隣地の土地の一部を購入して間口を広げる方法もあります。

しかし、隣人との関係性ができておらず、話し合いが難しい場合は、不動産会社に交渉をお願いしましょう。

「接道義務の特例許可」を申請する

「接道義務の特例」とは、敷地が道路に接していない場合でも、建物の敷地の周辺状況を考慮して再建築が許可される特例のことです。正式には「建築基準法第43条第2項第2号の規定に基づく許可」※3といい、自治体の特定行政庁(建築に関するさまざまな確認を行う役所)から敷地の接道義務を緩和してもらうことで、建物を再建築できるというものです。ただし、許可の基準は特定行政庁ごとに異なるので注意しましょう。

隣地のフェンス

再建築不可のまま売却する

上で述べた方法で再建築可能にできない場合でも、売却できる可能性は考えられます。主な方法としては、以下の3つがあります。

・リフォーム・リノベーションを行う
・隣家に買取を打診する
・専門の買取業者に依頼する

それぞれの方法について、具体的に見ていきましょう。

リフォーム・リノベーションを行う

まず1つ目として、今の建物を生かしてリフォーム、リノベーションし、リフォーム・リノベーション済み中古一戸建てとして売却する方法があります。ただし、建築基準法の決まりとして、再建築不可物件の大規模な改修や修繕は認められておらず、あくまでも小規模なものに限定されることを覚えておきましょう。

また、注意しておきたいのは、再建築不可能な建物を、古いという理由で取り壊し、更地にしても、需要が低いことから、売れても安価になる恐れがあるということです。さらに更地にすると、「小規模住宅用地の特例」や「一般住宅用地の特例」といった税制の優遇措置が適用されなくなり、固定資産税が上がってしまう場合があります。かけられる費用を考えながら、迷ったときは不動産のプロに相談するとよいでしょう。

更地にする費用や固定資産税についての詳しい記事はこちら

隣家に買取を打診する

再建築不可物件に限ったことではありませんが、不動産を最も購入する可能性が高いのが売却物件の隣地といわれています。主な理由としては、隣地を購入することで敷地が広くなり、将来売却する際も高値で売却できる可能性があるためです。

また、隣地が再建築不可物件であった場合、敷地を広げることで再建築可能になることもあります。売却の際は、まず隣地の所有者に購入の意思があるかどうか声をかけてみましょう。

専門の買取業者に依頼する

仲介での売却が難しい場合は、専門の不動産買取業者に買い取ってもらう方法もあります。一般的に、買取の場合は、仲介による売却の相場よりも安い価格での取引となりますが、手を加えずに早く現金化したい場合は買取も選択肢の1つとなるでしょう。

専門の買取業者

再建築不可物件の売却に迷ったらまず査定から

昔から住んでいる家や、相続した実家が再建築不可物件である可能性があるものの、詳しく調べられていないという方もいるのではないでしょうか?再建築不可物件かどうかは、役所の窓口や自治体のサイトでも調べられますが、時間と手間がかかるうえに、専門知識がない場合は、実態が分かってもどう対処すべきか判断が付かない場合も多いでしょう。そのため、自分が住む家や実家について不安なことがある場合は、一度不動産会社に相談してみることをおすすめします。

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※1出典:建築基準法制度概要集,国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001215161.pdf
(最終確認:2024年6月20日)

※2出典:都市計画,国土交通省関東地方整備局
https://www.ktr.mlit.go.jp/city_park/chiiki/city_park_chiiki00000011.html
(最終確認:2024年6月20日)

※3出典:5.43条許可,国土交通省 国土技術政策総合研究所
https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn1076pdf/ks107603_5.pdf
(最終確認:2024年6月20日)

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。