
海外赴任中にマンションを売却できる?国内での売却との違いや注意点を解説
海外赴任をきっかけに、所有するマンションの売却を検討する方もいるのではないでしょうか?海外赴任中でも、日本にあるマンションを売却することは可能です。この記事では、所有者が日本に居住しない場合のマンションの売却法や注意点を解説します。
目次
海外赴任中でもマンションは売却できる?
海外赴任中に、日本にあるマンションを売却することは可能です。ただし、日本国内に住所がなく、1年以上海外に居住している人は、所得税法において「非居住者」とされ、住民票がありません。そのため、通常のマンション売却とは必要書類や手続きが異なります。
この記事では、日本に住所がない非居住者が、マンションを売却するときの必要書類や注意点について解説します。
海外赴任中のマンション売却の流れ
海外赴任中のマンション売却の流れは、以下の通りです。
[ 1 ] 不動産会社を選び、査定を依頼する
[ 2 ] 代理人を選ぶ
[ 3 ] 必要書類を集める
[ 4 ] 売却活動を行う
[ 5 ] 売買契約を結ぶ
[ 6 ] 確定申告を行う
おおまかな流れは、通常のマンション売却と同様ですが、非居住者の売却では、代理人を立てるという特徴があります。代理人については、後ほど詳しく解説します。
また不動産会社によっては、非居住者の不動産売却に対応していないこともあるため、査定を依頼する際に対応可能かどうか確認しましょう。
マンション売却において非居住者に必要な書類
日本に住所がなく、住民票を持たない非居住者がマンション売却を行う場合、日本の居住者とは必要書類が異なります。
海外在住で日本にあるマンションを売却する場合の、必要な書類は以下の通りです。
必要書類 | 目的 | 発行元 | 注意事項 | 手数料 |
---|---|---|---|---|
在留証明書 | 住民票の代わりを果たす、外国に住む日本人がどこに住所を有しているかを証明する | 日本大使館・領事館 | 発給条件や必要書類あり | 1通につき1,200円相当 |
署名証明書 (サイン証明書) | 印鑑証明の代わりを果たす、申請する者の署名(サイン)が本人のものであることを証明する | 日本大使館・領事館 | 発給条件や必要書類あり | 1通につき1,700円相当 |
代理権限委任状 | 本人に代わって、法律行為が行えることを証明する | 自身で作成可能 | 代理人の選定や委任事項は慎重に検討する必要がある | なし |
それぞれの必要書類について、以下で詳しく見ていきましょう。
在留証明書
在留証明書とは、海外での住所を証明するもので、日本における住民票の役割を果たします。
在留証明書は、居住する国の日本大使館や領事館に申請することで入手できます。発給条件や申請のために必要な書類がいくつかあり、また発給までに要する日数は、居住する国の事情によって異なるため、早めに手続きしましょう。
署名証明書
署名証明書とは「サイン証明書」とも呼ばれ、非居住者にとっては、日本の印鑑証明の代わりを果たします。また、印鑑証明とは、正式には「印鑑登録証明書」といい、登録された印鑑が本物であることを証明する書類のことで、家や車の購入、ローンの契約など、重要な契約を結ぶときに提出を求められます。
しかし、海外に住所を移した場合に、日本の住民登録が抹消されると、印鑑証明も抹消されてしまいます。そのため、非居住者はマンションの売買契約の際、印鑑証明書の代わりに署名証明書の提出が必要です。
署名証明書は、居住する国の日本大使館や領事館で発行してもらえます。なお署名証明書には2種類あり、1つは、申請者が在外公館に出向いて領事の前で署名した文書と、在外公館が発行する証明書を綴り合わせて割印したもの。もう1つは、申請者の署名を単独で証明するものです。不動産売買の場合、前者の割印された形式の証明書が必要なので覚えておきましょう。
代理権限委任状
代理権限委任状とは、本人に代わって契約締結といった法律行為を行う権限を、第三者に任せることを証明する書類です。
不動産を所有するのが海外在住者の場合、日本での売買契約に立ち会えないため、代理人を立てる必要があります。なお代理人の選定条件は、法的には定められていません。司法書士や弁護士でなくてもよく、親族や友人も代理人として立てることができます。作成のために必要な書類は状況によって異なるので、詳しく知りたい方は不動産会社に相談しましょう。
海外赴任中にマンション売却する際の注意点
非居住者がマンション売却を行うときの注意点は、源泉徴収の対象となる可能性があることです。
一般的な不動産売却では、売却益が発生した場合、確定申告で年間(前年)の所得と所得税額を計算し、利益を確定させてから納税する流れとなります。しかし、非居住者が不動産を売却した場合は、購入した買主が支払い代金から所得税の見込み額を事前に源泉徴収し、税務署に前納する義務が生じるのです。そのため、売主の手元に渡るのは、売却代金から源泉徴収した後の金額となります。こうした方法をとるのは、非居住者の税金の申告漏れを防ぐためです。
なお、源泉徴収の対象となるかどうかには、いくつかの判断材料があり、対象外となる場合もあります。
源泉徴収の対象外となる条件
非居住者の全てが、不動産売却における源泉徴収の対象になるわけではありません。以下の条件に当てはまる場合は、源泉徴収の対象外となります。
・売却代金が1億円以下
・買主が個人
・買主本人または買主の親族の居住用として購入
なお、ここでいう親族とは、配偶者、6親等内の血族および3親等内の姻族のことを指します。
源泉徴収の納付額
源泉徴収の対象となった場合、マンションの購入者が税務署に納付するのは、原則として、支払代金の10.21%(所得税10%、復興特別所得税0.21%)となります。
なお、納付するのは購入者ですが、売却した非居住者は確定申告を行う必要があります。確定申告をすると、源泉徴収で前納した税額や予定納税額などの過不足が精算され、不足分を納付するか、場合によっては還付を受けることもあるでしょう。確定申告をしないと追加納税につながる恐れがあるため、忘れずに行いましょう。また、非居住者が確定申告を行う場合は「納税管理人」を選び、代理で確定申告を行ってもらうことが一般的です。
譲渡所得にかかる所得税と住民税の計算方法
売主が行う確定申告では、譲渡所得にかかる所得税と住民税を計算し、非居住者が納付しなければなりません。
納税額は、譲渡所得に所得税率と住民税率をかけることで算出できますので、まずは譲渡所得の額を求めましょう。譲渡所得を求める計算式は以下の通りです。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (取得費用 + 譲渡費用)
所得税率と住民税率は、以下のように、不動産の所有期間によって異なります。
項目 | 短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 |
---|---|---|
不動産の所有期間 | 5年以下 | 5年超 |
税率 | 39.63% (所得税 30.63% + 住民税 9%) | 20.315% (所得税 15.315% + 住民税 5%) |
たとえば、8年前に6,500万円で購入したマンションを9,500万円で売却し、譲渡にかかった費用が500万円だった場合、譲渡所得の計算は以下の通りです。
9,500万円 - (6,500万円 + 500万円) = 2,500万円
加えて、8年の所有期間は長期譲渡所得に該当するため、先ほど求めた譲渡所得に20.315%をかけると、以下のような納付額となります。
2,500万円 × 20.315% = 507万8,750円
ただしこの場合、要件を満たしていれば税制の優遇措置が適用され、譲渡所得にかかる税金は控除されます。詳しくは後述します。
海外赴任中のマンション売却に関するよくある質問
ここからは、海外赴任中のマンション売却について、よくある質問を紹介します。
3,000万円特別控除は非居住者でも適用される?
3,000万円特別控除は、日本に住所のない非居住者であっても適用されます。3,000万円特別控除とは、適用条件を満たすことで、所有期間の長さに関係なく、譲渡所得から最大3,000万円が控除できる税制優遇措置のことです。なお、海外赴任により、所有するマンションが空き家となっている場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが、適用の条件となります。
10年超所有軽減税率の特例は適用される?
非居住者であっても、10年超所有軽減税率の特例は適用されます。10年超所有軽減税率の特例とは、不動産売却の税制優遇措置制度のことです。所有期間が10年を超える物件を売却した場合に、譲渡所得の課税率が軽減されます。3,000万円特別控除との併用も可能なので、売却するマンションが要件を満たすかどうか情報を確認しましょう。
海外赴任中のマンション売却はプロのサポートを受けるのがおすすめ
今回は、海外赴任に伴い、住んでいたマンションを売却する際の手続きや注意点について解説しました。非居住者がマンションを売却する場合、自身は日本におらず、通常の売却とは手続きが異なるため、不安に感じる方もいることでしょう。海外にいながら安心して売却を行うためには、実績が豊富で、信頼できる不動産会社に仲介を依頼することが大切です。
三井のリハウスでは、100万件を超える取扱件数に基づく無料査定や売却のサポートを行っております。経験、実績ともに豊富な担当者が丁寧にサポートいたしますので、マンション売却についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。


監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉
株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。