離婚後の持ち家に妻が住むには?住宅ローンがある場合のリスクも解説

離婚後も、住宅ローンが残る家に妻が住めるかどうかは、名義人や住宅ローンの残債などによって対処法が異なります。この記事では、離婚後も夫名義の家に妻が住むための適切な方法や、住み続けることのリスクについて詳しく解説しましょう。

目次
  1. 離婚後も住宅ローンが残る持ち家に妻は住み続けられる?
  2. 離婚前に持ち家について確認しておきたいポイント
  3. 離婚後も夫名義の家に妻が住む方法
  4. 離婚時に住宅ローンの残る持ち家に妻が住み続ける3つのリスク
  5. どうしても住み続けたい場合のポイント
  6. 離婚における持ち家のトラブルを避けるなら売却を検討しよう
2024.06.14

離婚後も住宅ローンが残る持ち家に妻は住み続けられる?

離婚を考えるとき、「住み慣れた場所を離れたくない」「子どもを転校させたくない」といった理由により、離婚後も今の家に住み続けたいと考える方もいるのではないでしょうか?結論からいうと、離婚後も妻が持ち家に住み続けることは可能です。しかし、夫婦でよく話し合い、お互いが納得できる方法を取らないとトラブルにつながる恐れがあります。今回は、家の名義人や住宅ローンの返済状況別に妻が持ち家に住み続ける方法をご紹介します。

家のリビングで離婚について話し合う夫婦

離婚前に持ち家について確認しておきたいポイント

離婚後に、住宅ローンが残った家に妻が住むことを想定している場合、離婚前に以下の2点を確認しておきましょう。

登記名義人

持ち家の登記名義人が夫か妻かによって、妻が住み続けるために取るべき行動が異なります。持ち家を売却したり、家を担保にして住宅ローンを組んだりできるのは名義人のみです。夫名義の家のケースでは、離婚後に妻がその家に住む場合、名義が夫のままではトラブルの原因となるため、登記上の名義人を妻に変更したほうがよいでしょう。

また、家の名義が夫か妻かの単独名義ではなく、2人の共有名義の場合もあるため、離婚前に登記事項証明書(登記簿謄本)で確認しておくことをおすすめします。

住宅ローンの名義人と残債

持ち家の登記名義人と、住宅ローンの名義人は基本的に同じですが、異なる場合もあるため確認が必要です。住宅ローンの名義人は、契約書や該当する銀行のサイトで確認できます。また、住宅ローンの残債がいくらあるかも把握しておかなくてはなりません。残債は、住宅ローンを契約した金融機関が発行する返済予定表や残高証明書で確認可能です。

住宅ローンの残債が少ない場合は、離婚前に一括返済してしまうという方法もあるでしょう。残債が多く完済まで長い期間を要する場合は、離婚後の住宅ローン返済について夫婦でよく相談しておくことが大切です。

離婚後の家の話し合いをしている夫婦

離婚後も夫名義の家に妻が住む方法

夫名義の持ち家に、離婚後も妻が住み続けることは可能です。ただしその場合、住宅ローンが残っているか否かによって対処法が異なりますので注意しておきましょう。住宅ローンが残っている場合と、残っていない場合、それぞれの対処法について説明します。

住宅ローンが残っている場合

住宅ローンの残債がある場合、今の家に妻が住み続ける対処法としては以下のものがあります。詳しく見ていきましょう。

夫が住宅ローンを返済し続ける
住宅ローンの名義は夫のままで、夫が家を出て妻と子どもが住み続けるケースもあります。離婚後も、名義人かつ家から出ていく夫が住宅ローンを返済し続けることで、妻は持ち家に住むことが可能です。ただし住宅ローンは、契約者(名義人)が住むことを条件としているものが多いため、銀行が契約違反と判断した場合は、住宅ローンの残額を一括請求される場合もあります。

もし、名義人の夫が住宅ローンを返済し続ける状況で、妻が持ち家に住み続けたい場合は、離婚のために名義人が出ていきたい意思があること、返済の目途が立っていることを金融機関に相談して、認めてもらう必要があります。

住宅ローン名義を妻に変更する
住宅ローンの名義人を妻に変更することで、その家に名義人が住むことになるため、上記で挙げた契約違反のリスクは避けられるでしょう。ただし、住宅ローンの返済中に名義変更を行うには、住宅ローンを借り入れた銀行の承諾が必要です。住宅ローンは名義人の返済能力や勤続年数などをもとに融資されるため、名義人変更の承諾は簡単ではありません

なお、持ち家が夫婦の共有名義の場合、夫婦の合計年収から融資額を決定しているため、単独名義への変更も現実的ではないでしょう。そのため、住宅ローン名義を変更したい場合は、次にご紹介するローンの借り換えを検討しましょう。

住宅ローンを借り換える
住宅ローンの借り換えとは、ほかの銀行で住宅ローンを新たに契約し、その借入金で現在の住宅ローンを完済することです。新たに契約する住宅ローンを妻名義にすれば、先述した契約違反の問題もクリアでき、持ち家の名義を妻に変更できるため安心して住み続けられるでしょう。ただし、借り換えを行う場合、妻に安定した定期収入がないと金融機関の審査に通過することは困難です。この点においても注意しておく必要があるでしょう。

●離婚時に残った住宅ローンの支払いについて詳しい記事はこちら

住宅ローンが残っていない場合

住宅ローンが残っていない場合は、残っている場合に比べると対応が簡単です。対処法としては、主に以下の2つが考えられます。

財産分与を行って家を取得する
住宅ローンが残っていない持ち家に妻が住み続けたい場合は、離婚による財産分与を行い、家の名義を妻に変更することで、居住が可能です。財産分与とは、夫婦が離婚するときに、婚姻していた期間に形成した資産を分け合うことです。持ち家も財産分与の対象となり、財産分与の割合は、原則夫婦2分の1ずつとされています。

●離婚時の財産分与について詳しい記事はこちら

夫に代償金を支払う
財産分与を行う場合、対象となる財産が家しかないケースにおいては、家に住み続ける妻が夫に「代償金(だいしょうきん)」を支払うことで家の名義を得て、財産分与を行う方法もあります。たとえば、夫婦の財産である家の資産価値が4,000万円というケースで考えてみましょう。妻が財産分与で持ち家を受け取る際に、妻が夫に2,000万円を渡せば、夫婦とも取得分が2,000万円分となって平等な配分となります。

なお、代償金を一括で支払えない場合は、養育費と相殺したり、分割払いにしたりすることも可能です。家の名義変更を行うときは、公正証書を作成して取り決めた内容をきちんと残しておきましょう。公正証書については、後ほど詳しく説明します。

離婚後の家の売却を相談する夫婦

離婚時に住宅ローンの残る持ち家に妻が住み続ける3つのリスク

住宅ローンの名義変更が難しい、借り替えの手続きが面倒といった理由から、夫名義の住宅ローンが残る家に住み続ける方もいるでしょう。しかし、住み続けることで以下のようなリスクが伴います。

・夫が勝手に家を売却してしまう
・夫が住宅ローンを滞納する
・児童扶養手当(母子手当)がもらえない

1つずつ説明していきましょう。

夫が勝手に家を売却してしまう

持ち家が夫の単独名義の場合、夫は、妻の承諾がなくても家を売却できます。離婚前に家を売却しないという約束をしたとしても、勝手に売却される可能性はゼロではありません。突然、家を出なくてはならなくなり、新居を探す手間や敷金・礼金などのまとまった費用が必要になるリスクもあります。

夫が住宅ローンを滞納する

住宅ローンの残債が多い場合は、長い返済期間のなかで夫が住宅ローンを返済できない状況に陥る恐れもあります。夫が住宅ローンを滞納した場合、家が競売にかけられ、住んでいる妻が強制退去を迫られるリスクがあるでしょう。

児童扶養手当(母子手当)がもらえない

離婚後にひとり親家庭となった場合、児童扶養手当(母子手当)※の支給を受けられることがあります。児童扶養手当の給付金額は、ひとり親の所得によって異なります。家の名義がそこに住む妻の名義であれば、原則として、児童扶養手当の金額に影響はありません。しかし、夫名義の家に妻が住む場合は、夫から住居費をサポートしてもらっていると見なされ、児童扶養手当の金額が減額される可能性があります。児童扶養手当の支給額が減るのを防ぐためには、家の名義を夫から妻へと変更したほうがよいでしょう。

離婚後の持ち家や財産の分割を考えているところ

どうしても住み続けたい場合のポイント

住宅ローンが残っている夫名義の家に妻が住むことを金融機関が認めたとしても、いくつかの注意点があります。トラブルを回避するためにも把握しておきましょう。

念のため公正証書を作成する

離婚後も引き続き夫が住宅ローンの返済をしていくと約束した場合、公正証書を作成しておくと安心です。公正証書とは、法律の専門家である公証人の権限に基づいて作成する公文書のことです。取り決めた内容を公正証書の形にしておくことで、夫がローン返済に応じない場合に、財産の差し押さえといった強制執行を行うことも可能です。仮に訴訟に発展したときにも効力を持つでしょう。離婚後、住宅ローンが残った家に妻が住む場合は、話し合った内容を公正証書にしておくことをおすすめします。

●公正証書について詳しくはこちら

新しい保証人を立てる

離婚後の住宅ローンを夫が返済すると取り決めたとしても、妻が住宅ローンの連帯保証人になっているケースでは、連帯保証人としての責任がなくなるわけではありません。そのため、もし夫が住宅ローンを返済できなくなった場合、妻にも返済義務が生じることとなり、返済できなければ持ち家は競売にかけられ、強制退去となる恐れがあります。連帯保証人から外れるには、別の保証人を立てる必要がありますが容易ではありません。その場合、住宅ローンを借り換えることで連帯保証人から外れるという選択肢もあります。

離婚後も持ち家に住み続ける妻

離婚における持ち家のトラブルを避けるなら売却を検討しよう

離婚後も妻が持ち家に住み続ける方法はありますが、いずれも手間がかかり、住宅ローンの状況や夫の対応次第で、事態は大きく変わってきます。また、離婚時の夫婦の財産分与は難しい問題であり、特に、マンションや一戸建てなどの不動産は物理的に分割しにくいため、話がまとまらないこともあるでしょう。

離婚時の家に関するトラブルを避けるためには、売却という選択肢もあります。住宅ローンが残っている家を売却する場合は、まずはローンを完済する必要がありますが、今住んでいる家の価値がローンの残額を上回る場合は、家の売却代金でローンを完済できます。もし、余剰分が出た場合は夫婦でお金を分け(財産分与し)、その資金を新生活に充てることも可能です。

家の売却は、自宅の資産価値を知ることが第一歩となります。まずは不動産会社に査定を依頼し、査定額を把握したうえで、適切な財産分与の方法を考えてみてはいかがでしょう。

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※出典:児童扶養手当について,こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya/fuyou-teate
(最終確認:2024年6月3日)

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。