
離婚時の持ち家が夫名義なら誰がどう住む?住宅ローンや財産分与などの基礎知識も解説
離婚するとき、持ち家が夫名義だったら妻の権利はどうなるのでしょうか?この記事では離婚時の住宅ローンの残債や不動産の財産分与といった基礎知識を解説します。また、離婚後、夫婦はどのように住むとよいのか、4つのパターンに分けてご紹介します。
目次
離婚時に持ち家が夫名義だった場合はどうなる?
離婚を考えたとき、夫名義の持ち家はどうなるのか気になる方もいるのではないでしょうか?そもそも婚姻中に協力して築いた持ち家は財産分与の対象です。夫の収入で土地・建物を購入して夫の単独名義になっていても、妻が家事を分担して夫を支えていたと考えられているため、夫婦の財産と評価されます。従って、婚姻中に購入した不動産であれば、離婚時の持ち家が夫名義でも、財産分与の必要があります。離婚時に持ち家をどうするかは、夫名義であっても、夫婦で離婚協議をして結論を出すことが重要なのです。
今回の記事では、まず持ち家にかかわる「名義」を整理します。具体的には建物、土地、住宅ローン、それぞれの名義です。そして、離婚に伴う住宅ローンの扱いと財産分与の基本をおさらいしたうえで、離婚後の夫婦の住み方について4つの例をご紹介します。それぞれのメリットと注意点を比較して、今後にお役立てください。
離婚のときに確認したい名義の基礎知識
不動産には「名義」があります。名義とは、不動産の所有者として登記されている人のことです。不動産の購入や新築をした場合、登記をして、所有権を持つ人の氏名を明記する決まりになっています。
なお、現実的には所有名義人以外が不動産を売却したり、他人に貸したりすることはまれです。
名義といっても、建物や土地の所有名義人と、住宅ローンの名義人がそれぞれ違うこともあります。たとえば、どちらかが単独名義ではなく、夫婦の共有名義になっているといったケースです。ここをきちんと調べないと、トラブルにつながることもあるので、誰の名義になっているかしっかりと確認することが重要です。
建物や土地の所有名義人は、法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すれば誰でも調べられます。
離婚時に夫名義かをチェック!持ち家に関する3つの確認項目
離婚時の持ち家について、確認したいのは建物、土地、住宅ローンの3つの名義です。それぞれについて以下で詳しく解説します。
建物
家の名義というと、建物の名義を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか?新築住宅の場合は、屋根・壁があって内装やインフラ工事も済み、住宅として実際に使える状態になると「建物」として登記できます。
土地
土地を取得した場合も、名義が定められます。親の土地に子どもがマイホームを建てるように、建物と土地の名義が違うこともあります。
住宅ローン
住宅ローンを組んで建物や土地を取得する場合、借り入れを行う人が住宅ローンの名義人として、ローンの審査対象となります。その際、住宅ローンの名義人は、取得した建物や土地の所有者であるのが通例です。
また、住宅ローンを組むとき、一般的には抵当権が設定されます。抵当権とは住宅ローンを組む際、金融機関をはじめとした債権者が債務者に対し、購入する不動産を担保とする権利のことです。抵当権にも登記手続きがあるため、これまで述べてきた内容と混乱しないよう注意しましょう。
上記でご紹介した建物、土地、住宅ローンのそれぞれについて、名義人が1人であることを「単独名義」、複数人いることを「共有名義(または共同名義)」と呼びます。
離婚時の持ち家について、建物、土地、住宅ローンそれぞれの名義が誰になっているのか、改めて確認してみましょう。
持ち家が夫名義で離婚するときに確認すべきこと
夫婦が離婚をするとき、持ち家の住宅ローンが完済していない場合もあるでしょう。家や住宅ローンの扱い方を決める前に、住宅ローンの残債を事前に確認しましょう。
家の売却額が住宅ローンの残債を上回る(売却額で住宅ローンを完済できる)ケースをアンダーローンといいます。一方、家の売却額が残債を下回る(売却額を充てても住宅ローンを完済できない)ケースをオーバーローンといいます。アンダーローンかオーバーローンかによって、売却するか住み続けるかといった判断が変わるため、残債を確認しておくことが重要です。
離婚時の住宅ローンについては、以下の記事で詳しく解説しています。
●離婚時の住宅ローンについて詳しい記事はこちら
持ち家が夫名義で離婚をするときに押さえたい財産分与の基本
離婚では財産分与という手続きがあります。結婚後に協力して築いてきた預貯金、家具・家財、不動産や住宅ローンの残りなどを、どうやって分け合うかを決めるものです。
財産分与の請求期限は、離婚の正式成立から2年間です。また、離婚時の財産分与の割合は夫婦で2分の1ずつとなるのが通例とされています。このとき、財産分与の合意は離婚協議書として書面に残すのがおすすめです。公正証書は証拠として残るため、トラブル防止につながるからです。もし話し合いで合意に至らなければ、弁護士を通じて財産分与を行うこととなるでしょう。
なお、冒頭でも述べたように、離婚時の持ち家が夫名義でも婚姻中に購入した不動産であれば、夫婦の財産として分与の対象になります。婚姻中に所有した持ち家を分与する方法は、以下の2つです。
・売却し、現金化して分ける
・住まいを片方に譲り、もう片方は現金を受け取る
どちらの方法を取るかは住宅ローンの残債状況にもよるため、慎重に判断したいところです。詳しくは以下の記事をご確認ください。
●離婚時の財産分与について詳しい記事はこちら
持ち家が夫名義のまま離婚するときの住み方のパターン4つ
ここまで、離婚時に押さえておきたい不動産にかかわる名義、住宅ローン、財産分与について解説しました。ここからは離婚時に持ち家の建物・土地の名義が夫の場合、どのような住み方があるのか、主な4つの例をご紹介します。
持ち家を売却してそれぞれが別の家に住む
財産分与するとき、持ち家を売却して現金を分け合い、それぞれが別の家に住む資金にする方法です。
メリットは持ち家が現金になるので、公平に分けやすいことです。また、離婚のタイミングにもよりますが、離婚後に家のことで元パートナーとやりとりをしなくてよいので、ストレスが減るでしょう。
一方の注意点は、家の売却ができるのは登記上の名義人に限られるため、夫の同意が必要なことです。また、売却活動の期間中、買い手が付き、引渡しが終わるまで夫と連絡を取り続けないといけません。住宅ローンの残債によっては売却代金だけでは完済できないこともあるので、まずは住宅ローンの返済状況と自宅の査定額を見比べてみましょう。
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夫が所有して住み続け、妻は別の家に引越す
夫が所有して住み続け、妻は別の家に引越すパターンは、不動産の手続きが少なくて済みます。夫側は生活環境を変えなくてよいのがメリットでしょう。妻としては、持ち家の価値から住宅ローンを控除した額の原則2分の1に相当する金銭を財産分与として請求できます。
ここで注意が必要なのは、オーバーローンの場合は「持ち家の価値から住宅ローンを控除した額」がゼロになるため、金銭の請求はできません。そのため、まずは住宅ローンの残債を確認しつつ、不動産会社に査定を依頼して、持ち家の価値がどれくらいか把握するのがおすすめです。
妻に名義を変えて妻が住み続け、夫は別の家に引越す
財産分与の話し合いによって双方が同意すれば、夫名義の家を妻名義に変更できます。この場合、名義変更を登記するための登録免許税がかかります。
ただし、夫名義のまま妻だけが住み続けるのはトラブルの火種になるため、避けたほうがよいでしょう。その理由は離婚によって夫婦間の協力・扶助義務がなくなり、妻が自宅を占有する権利が失われるからです。たとえば、夫が家を売却すると決めたら従うしかありません。
この住み方のメリットは、住み続ける妻は生活環境が変わらないこと、家を出る夫には相応の金額(代償金)が支払われることです。また、実際に住む側(妻)の名義にすれば、離婚後、元夫から立ち退きを要求されるリスクもなくなるでしょう。
注意点を挙げると、法務局で名義変更をする手間と登録免許税がかかります。特に気を付けたいのは、夫名義の住宅ローンが残っている状態で、建物や土地の名義を変えるのは現実的ではないことです。なぜなら、住宅ローンは名義人がその家に住むことが前提になっており、実態が異なる場合は規約違反と判断されるからです。
従って、この住み方を選択できるのは、住宅ローンを完済するか、返済の目途が立っている、もしくは住宅ローンを借り換える場合になるでしょう。なお、住宅ローンの借り換えでは、名義人の返済能力が審査されます。このとき、妻の返済能力が夫より低いと判断されると借り換えができないこともあるので注意しましょう。
●家の名義変更について詳しい記事はこちら
離婚後も同居を続ける
新居にすぐに移れない、子どもの転校・転園を避けたいといった事情がある場合、離婚後に同居を続けることもできます。この方法のメリットとしては、新居で暮らすための費用が抑えられることや子どもがいる場合は転校・転園をせずに済み、夫婦双方の目が届くことなどが挙げられます。
一方、注意点は、子どもがいる場合にひとり親家庭向けの児童扶養手当といった公的支援を受けられなくなる恐れがあることです。世帯分離の手続きを行うことで公的支援の受給が認められるケースもありますが、単なる同居と、事実婚のような内縁関係の同居では、扶養義務の有無にかかわり、法的な扱いが異なる点も覚えておきましょう。
離婚に伴い夫名義の持ち家の扱いに迷ったら三井のリハウスへ
これまで離婚時の持ち家が夫名義のとき、何を確認したらよいのか、今後はどのような住み方の選択肢があるのかをご紹介してきました。
いずれも明確な正解がないため、自身にとって何が最適なのか迷うこともあるでしょう。トラブルを起こさず、円満に手続きを進めたいならば、プロの力を借りてはいかがでしょうか?離婚に伴う持ち家の扱いにお悩みの場合は、信頼できる不動産会社に相談してみましょう。
三井のリハウスは累計100万件以上の取扱実績があり、お客さま一人ひとりの状況に応じてサポートを行っています。離婚による夫名義の持ち家をどうすべきか迷っている方は、以下よりお気軽にご相談ください。
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監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉
株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。