市街化調整区域にある不動産を手放したい!売れない土地の売却方法と注意点を解説

市街化調整区域とは、市街化を抑制するために建築の制限が設けられている地域です。原則として住宅や商業施設を新たに建てられないため、土地が売れにくいといわれています。この記事では、市街化調整区域の不動産における制約と、いかにして売却しやすくするかについて解説します。

目次
  1. 市街化調整区域とは?
  2. 3つの都市計画区域
  3. 市街化調整区域の家が売れない理由
  4. 市街化調整区域の農地を手放したい場合
  5. 市街化調整区域の家を売却する方法
  6. 市街化調整区域の家を売る前に確認したいポイント
  7. 市街化調整区域の土地を手放したいなら不動産会社に相談しよう
記事カテゴリ 売却 土地
2025.02.19

市街化調整区域とは?

市街化調整区域とは、市街化(街づくり)を行う予定のない地域を指します。無秩序な市街化を防ぐために設けられたもので、自然環境や農地を保護するため、基本的に新たな建物を建てたり、建て替えたりすることができません。そのため「市街化調整区域の土地を所有しているものの、手放したくても手放せず、不安を感じている」という方もいるのではないでしょうか?

そこで今回は、市街化調整区域について詳しく解説するとともに、区域内の不動産を売却する方法についてご紹介します。

田畑が広がる市街化調整区域

3つの都市計画区域

まず、市街化調整区域の概要について見ていきましょう。日本の土地は都市計画法により、「都市計画区域」「準都市計画区域」「都市計画区域外」に分かれています。このうち、都市計画区域は国や自治体が規制をかけて管理する地域で、以下の3つに区分されます。

・市街化区域
・市街化調整区域
・非線引き区域

それぞれについて詳しく説明します。

市街化区域

市街化区域とは、既に市街化されているか、あるいは、この先10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図る区域です。代表例は東京23区で、住宅や店舗、商業施設が建ち並び、生活インフラの整備が積極的に進められています。また、市街化区域は目的や用途に応じて21の地域地区に分けられ、そのうち「用途地域」にあたる地域は、住居系、商業系、工業系に分類され、建ぺい率や容積率、建物の高さなどに制限があります。

●用途地域について詳しくはこちら

市街化区域のビル群

市街化調整区域

市街化調整区域は、自然や資源の保護を目的とした地域で、先述の通り、無秩序な市街化を防ぐために使用制限が設けられています。原則として、新しい建物は建てられず、既存の建物も建て替えができないため、区域内の不動産は「再建築不可物件」となります。所有する土地が市街化調整区域かどうかを確認するには、Webサイトで調べる方法や、市区町村の役所に行き、都市計画課の窓口で問い合わせる方法が挙げられます。

●再建築不可物件について詳しい記事はこちら

非線引き区域

非線引き区域とは、市街化区域でも市街化調整区域でもない区域を指します。都市計画にもとづき、区域を市街化区域と市街化調整区域に分けることを「区域区分」または「線引き」といい、現時点で区域区分されていないエリアを指します。

●日本の都市計画について詳しくはこちら

市街化調整区域の家が売れない理由

市街化調整区域は用途が制限されるため、一般の土地と比べて売れにくいといわれています。なぜ売れにくいのか、詳しく見ていきましょう。

インフラが整っていない

市街化調整区域は市街化を抑制するエリアで、人が暮らすことは想定されていません。そのため、不動産の持ち主が自分でインフラを整備しなければならないケースが一般的です。不動産を購入した後、インフラを整えるには多くの費用と労力を要するため、売れにくくなります。

市街化調整区域のインフラの整備について悩む女性

新たに建物を建てられない

先述の通り、市街化調整区域内では原則として新たに建物を建てられません。建物を建築する場合、行政から開発許可や建築許可を得る必要があります。また、既存の家の建て替えやリフォーム、リノベーションを行うときも許可が必要になることがあります。さらに、開発許可が得られても、建物の容積率や建ぺい率など自治体で定められた条件に従う必要があるため、手間や制限の多さから購入を控える人が多くなるでしょう。

住宅ローンを組みにくい

土地や建物を購入する際、住宅ローンを組むのが一般的です。しかし、市街化調整区域にはさまざまな制限があるため、担保評価が低く、金融機関の審査に通りにくい傾向があります。住宅ローンを組めない場合、購入のハードルが高くなり、売れにくくなります。

市街化調整区域の制限により組めなくなった住宅ローン

市街化調整区域の農地を手放したい場合

農地を売却する場合、農地のまま売るか、他の用途で使えるように転用(農地転用)して売るか、2つの選択肢があります。農地を転用したり、転用前提で売却したりする場合は、農地の所在する市町村の農業委員会を経由して都道府県知事等に申請書を提出し、許可を得る必要があります。

以前は、農地を取得するには一定以上の耕作面積が必要という農地法の決まり(下限面積要件)があり、売り手が見つからない原因となっていました。しかし、2023(令和5)年4月の法改正で下限面積要件が廃止され、小さな面積でも農地の権利を取得できるようになり、個人が参入しやすくなりました。つまり、買い手のハードルが下がったことにより、売りやすくなったのです。

これまで、市街化調整区域にある土地のなかでも農地は特に売れにくいとされていました。農地法改正によって、農地を売りたい人や、相続した農地の処分に困っていた人が売りやすくなる可能性があります。

市街化調整区域の家を売却する方法

市街化調整区域内に土地や家を所有しているものの、使い道がなく放置している場合、固定資産税や管理費用などがかかってしまいます。そのため、売却したいと考える方も多いでしょう。市街化調整区域の不動産を売却するポイントは、建物なしの更地で売ることです。

土地の購入者は、以下のような活用方法が見込めます。

・資材置き場にする
・太陽光パネルを設置する
・駐車場経営をする

資材置き場は、業者に土地を貸し出すことで地代を得るため、最小限の管理で長期的な収入が期待できます。また、太陽光発電のパネルを設置することも1つの活用方法です。電力会社が一定期間電気を買い取ってくれる「再生可能エネルギー固定価格買取制度」のもと、安定した収入を得られます。車の交通量がある程度見込めるエリアであれば、駐車場経営も可能です。駐車場経営は設備投資がそれほどかからず、月極駐車場として長期契約を得られれば、毎月一定の賃料を得られます。

ただし、更地は、建物がある場合に比べると固定資産税が高くなってしまいます。スピーディーに売却したほうが売主の負担は少なく済むため、不安なことがあれば不動産会社に相談してみましょう。

●更地の活用方法について詳しい記事はこちら

太陽光パネルが設置された市街化調整区域

市街化調整区域の家を売る前に確認したいポイント

市街化調整区域の不動産を手放す際は、事前に確認しておくべきポイントがあります。以下の点を押さえてから、売却活動をスタートさせましょう。

自治体の区域指定制度を確認する

区域指定制度とは、市街化調整区域であっても、自治体が指定した区域内の土地であれば住宅や店舗・事業所の建築の許可を得られる制度です。要件を満たす必要はありますが、指定区域内での売却や、新しい住宅の建設も少しずつ増えていくことが予想されます。自治体の窓口やWebサイトで、所有する土地が区域指定されていないか確認しましょう。

土地の地目を確認する

土地の地目とは、不動産登記法にもとづき、土地の用途を総合的に判断して認定された土地の種類のことです。田・畑・宅地・山林などのほか、どれにも当てはまらない雑種地も含めて23種類に区分されています。特に注意したいのは地目が農地の場合で、売却するには農業委員会や都道府県への申請が必要となります。

線引き前の建物か線引き後の建物かを確認する

土地に建物が建っている場合、所有する土地が市街化調整区域に区域区分(線引き)される前からあるかどうかで売却の条件が異なります。

線引き前に建てられた建物は、行政の都合で後から市街化調整区域に指定されたため、売却のために許可を得る必要はありません。一方、線引き後に建てられた建物は、行政の開発許可を受けて建設されており、申請して認められないと建築物の増改築ができません。増改築の申請は所有者が行わなければならず、買主にとって購入後の大きな負担になることが予想されるため、売却しづらくなるでしょう。

市街化調整区域の線引きは、主に1970(昭和45)年頃に行われていますが、地域によって異なるため、自治体の窓口やWebサイトで確認しましょう。

線引き前の建物か線引き後の建物か確認する男性

市街化調整区域の土地を手放したいなら不動産会社に相談しよう

市街化調整区域の不動産は、一般の市街化区域と比べて取引が複雑で流通量も少ないため、売りにくいのが実情です。また、市街化調整区域にはさまざまな制限があり、条件の確認や適切な売却戦略が求められます。こうした不動産の処分に困っている場合は、専門的な知識や経験を持った不動産会社に相談することがおすすめです。

三井のリハウスでは、地域密着型の店舗展開と100万件を超える取引実績にもとづき、お客さまのご事情やご要望に合わせた提案を行っています。不動産のプロがご自宅を訪れて調査する訪問査定を無料で行っていますので、ぜひお気軽にご依頼、お問い合わせください。

●不動産の無料査定はこちら

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。