
路線価とは?地価公示価格等との違いや調べ方、計算方法を解説
路線価とは公的な土地の評価の1つで、土地等にかかる相続税や贈与税、固定資産税を算出する評価額を求めるために用いられます。この記事では、土地公示価格や固定資産税評価額、そのほか土地の評価指標と路線価の違いから、調べ方、計算方法まで解説します。
目次
路線価とは?
路線価とは、全国の民有地について行政機関が定めた、土地(宅地)等の公的評価額を算出するための基準です。後ほど解説する、公的な土地の評価の1つに該当します。個人が土地の時価を把握して適正な値付けをすることは難しいでしょう。そのため行政機関が、簡易に評価額を求められるように、公的評価の基準を定めて発表しているのです。
路線価と呼ばれる理由は、路線(道路)ごとに評価額が割り振られているからです。路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があります。以下でそれぞれ見ていきましょう。
相続税路線価
相続税路線価とは、土地等の相続税や贈与税を算出する際に使用される相続税評価額の1㎡あたりの価格です。国税庁により、毎年1月1日を評価時点として7月頃に公表されます。
路線価の設定は、1年間の地価変動等を考慮し、地価公示価格等をもとにした価格の8割程度をめどに定められています。
固定資産税路線価
固定資産税路線価とは、土地等の固定資産税や都市計画税、不動産取得税などを算出する際に使用される固定資産税評価額の1㎡あたりの価格です。市町村(東京23区は東京都)により、3年ごとの1月1日を評価時点として評価年の4月頃に公表されます。
固定資産税路線価は、地価公示価格等の7割程度をめどに定められます。
路線価が地価公示価格等の7割~8割なのはなぜ?
先述の通り、相続税路線価は地価公示価格等の8割程度、固定資産税路線価は地価公示価格等の7割程度に設定されます。その理由は、土地基本法によって公的土地評価額の相互間の均衡を図ることが要請されているからです。地価公示価格(都道府県地価調査価格)、相続税路線価、固定資産税路線価という3つの公的土地評価額のバランスを保つようにルールが設けられ、評価額が決まっています。
なお、路線価は主に税額の算出で使われますが、相続税と固定資産税では対象となる税金や評価機関が異なります。2つの路線価の特徴を、以下の表にまとめました。
比較項目 | 相続税路線価 | 固定資産税路線価 |
---|---|---|
算出される評価額 | 相続税評価額 | 固定資産税評価額 |
算出される税金 | 相続税、贈与税 | 固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税 |
評価機関 | 国税庁 | 市町村(東京23区は東京都) |
評価頻度 | 毎年 | 3年ごと |
評価時点 | 1月1日 | 評価基準年の1月1日 |
公表時期 | 7月頃 | 評価年の4月頃 |
価格水準 | 地価公示価格等の8割程度 | 地価公示価格等の7割程度 |
地価公示価格や実勢価格などとの違い
公的な土地の評価には、路線価のほかに「地価公示価格」「都道府県地価調査(基準地価格)」「固定資産税評価額」があります。固定資産税評価額とは、原則として固定資産税路線価に地積(土地の面積)を乗じて算出された、土地全体の評価額です。
また、実際に売買するときの「実勢価格(時価)」は、不動産の売り出し価格を設定する際に使われます。実勢価格は不動産市場の動向によって変動します。
それぞれの評価についての情報は、以下の表の通りです。
比較項目 | 地価公示価格 | 都道府県地価調査(基準地価格) | 固定資産税評価額 | 実勢価格(時価) |
---|---|---|---|---|
概要 | 土地の適正な評価額 | 土地の適正な評価額 | 主に固定資産税を算出する基準価格 | 実際の取引価格 |
用途 | 土地取引の指標等 | 土地収用(国や自治体が公共事業のために土地を取得すること)の算定の規準等 | 固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税の算出 | 不動産の売り出し価格の設定等 |
評価機関 | 国土交通省 | 都道府県 | 市町村(東京23区は東京都) | 市場 |
評価頻度 | 毎年 | 毎年 | 3年ごと | - |
評価時点 | 1月1日 | 7月1日 | 評価基準年の1月1日 | - |
公表時期 | 3月 | 9月 | 評価年の4月 | - |
●地価公示価格についてはこちら
路線価の調べ方
相続税路線価と固定資産税路線価では調べ方が異なっています。
相続税路線価は、国税庁の運営する「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で閲覧できます。一方、固定資産税路線価は、「一般財団法人 資産評価システム研究センター」が運営する「全国地価マップ」でも確認できるので必要に応じて見てみましょう。
●国税庁の財産評価基準書 路線価図・評価倍率表はこちら
●全国地価マップはこちら
路線価の見方
実際の路線価図は以下のように表示されます。下記の図は相続税路線価図の一例です。
(※1)相続税路線価図(路線価図の商用利用についてはこちら)
土地に接する路線ごとに路線価が設定されています。路線に示された数字から、土地1㎡あたりの価格を読み取れます。
相続税路線価図の主な特徴は以下の通りです。
・数値は1,000円単位
・数値の末尾にアルファベットが付き、土地が借地の場合の計算に使用する借地権割合を表す
・楕円や多角形の図形は、ビル街や繁華街、商業、住宅などの地区分類を表す
一方、固定資産税路線価図には以下のような違いがあります。
・数値は1円単位
・借地権割合を示すアルファベット表記がない
・地区分類を示す図形がない
路線価の種類によって、表記が異なることに注意しながら参照しましょう。
固定資産税路線価を使った土地等の評価額の計算方法
固定資産税路線価により、土地等の評価額を算出する計算式(路線価方式)は、以下の通りです。
評価額=固定資産税路線価×画地補正率×地積
画地補正率とは、土地の奥行きや形状などを考慮するための補正割合です。国税庁が出している奥行価格補正率表で確認することができます。また、地積とは、土地の面積のことです。
●奥行価格補正率表についてはこちら
固定資産税評価額は、都税事務所や市区役所または町村役場から通知される、固定資産税の納税通知書に記載されている「課税明細書」で確認できます。そのほか「固定資産評価証明書」で見ることも可能です。
●固定資産評価証明書についてはこちら
相続税路線価を使った土地等の評価額の計算方法
相続税路線価により、土地の評価額を算出する計算式(路線価方式)は以下の通りです。
評価額=相続税路線価×画地補正率×地積
以下では、実際に想定される計算例をご紹介します。画地補正率は種類によって数値が異なるため、詳細については前述した国税庁の奥行価格補正率表で確認してみましょう。
1つの路線に接している場合
土地が1つの路線に接している場合の評価額は、以下の計算式で求められます。
評価額=路線価×奥行価格補正率×地積
たとえば、路線価が10万円、路線からの奥行きが10m、地積が100㎡の、普通商業・併用住宅地区にある土地の場合は以下のように求められます。
評価額=10万円×0.99×100=990万円
2つの路線に接している場合
2つの路線に接している場合は、接し方によって以下の2通りが考えられます。
正面と側方で路線に接するケース
土地に接している路線が正面と側方にある場合の計算式は以下の通りです。
評価額={(正面路線価×奥行価格補正率)+(側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率)}×地積
2つの路線のうち、各路線価に奥行価格補正率を乗じて高いほうが正面路線、低いほうが側方路線と判断します。
たとえば、路線価20万円、奥行価格補正率1.0の路線Aと、路線価10万円、奥行価格補正率1.0の路線Bに接する400㎡の、普通商業・併用住宅地区にある角地の場合で見てみましょう。
このとき、路線Aが(20万円×1.0=20万円)で正面路線、路線Bが(10万円×1.0=10万円)で側方路線と決まります。計算式は以下の通りです。
評価額={(20万円×1.0)+(10万円×1.0×0.08)}×400=20.8万円×400=8,320万円
正面と裏面で路線に接するケース
土地に接している路線が正面と裏面にある場合の計算式は以下の通りです。
評価額={(正面路線価×奥行価格補正率)+(裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率)}×地積
正面と側方の路線に接するケースと同様に、2つの路線のうち、各路線価に奥行価格補正率を乗じて高いほうが正面路線、低いほうが裏面路線と判断します。
路線価20万円、奥行価格補正率1.0の路線Aと、路線価10万円、奥行価格補正率1.0の路線Bに接する400㎡の、普通商業・併用住宅地区にある土地の例を見てみましょう。この場合、正面路線は路線A、裏面路線は路線Bです。
評価額={(20万円×1.0)+(10万円×1.0×0.05)}×400=20.5万円×400=8,200万円
3つの路線に接している場合
正面と側面と裏面で路線に接している場合の計算式は以下の通りです。
評価額={(正面路線価×奥行価格補正率)+(側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率)+(裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率)}×地積
各路線のうち、路線価に奥行価格補正率を乗じて最も高い路線が正面と決まります。正面路線に相対しているものが裏面路線、側方に位置するものが側方路線です。
たとえば、以下の3つの路線に接する400㎡の、普通商業・併用住宅地区にある土地では以下のように計算できるでしょう。
・路線価30万円、奥行価格補正率1.0の路線A
・路線価20万円、奥行価格補正率1.0の路線B(路線Aの側方に位置する)
・路線価10万円、奥行価格補正率1.0の路線C(路線Aに相対する)
このときの正面路線は路線A、側方路線は路線B、裏面路線は路線Cです。
評価額={(30万円×1.0)+(20万円×1.0×0.08)+(10万円×1.0×0.05)}×400=32.1万円×400=1億2,840万円
土地を借りている場合
借地権が設定された土地の評価額は、自分で使用している土地(自用地)の評価額に、さらに借地権割合を乗じる必要があります。計算式は以下の通りです。
評価額=自用地の評価額×借地権割合
借地権割合は路線価図上にアルファベットで示されており、それぞれが表す数値の割合を以下の表でまとめました。路線価図上で「100B」と表示されている場合は、路線価10万円、借地権割合80%と読み取れます。
アルファベット | A | B | C | D | E | F | G |
---|---|---|---|---|---|---|---|
借地権割合 | 90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
路線価が10万円、奥行価格補正率1.0、地積100㎡、借地権割合Bの普通商業・併用住宅地区にある土地を借りている場合の評価額は以下の通りです。
評価額=10万円×1.0×100×0.8=800万円
土地を貸している場合
貸している土地の評価額は、自用地の評価額から借地権の評価額を差し引いて求めることが可能です。他人が利用している土地であり、自分で利用できないため、評価額は下がります。原則評価額は以下のように求められます。
評価額=自用地の評価額×(1-借地権割合)
たとえば、路線価が10万円、奥行価格補正率1.0、地積100㎡、借地権割合Bの普通商業・併用住宅地区にある土地を貸している場合の計算は以下の通りです。
評価額=10万円×1.0×100×0.2=200万円
路線価が設定されていない場合
都市部の郊外や山間部など、路線価が設定されていない地域もあります。その場合、「倍率方式」で相続税評価額を算出します。
倍率方式とは、固定資産税評価額に、国税庁が定める「評価倍率」を乗じて算出する方法です。
評価倍率は、相続税路線価と同様に、国税庁の運営する「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。計算式は以下の通りです。
評価額=固定資産税評価額×評価倍率
節税するには売却するのも方法の1つ
この記事では、路線価の概要から、路線価を使った土地の評価額の算出方法について解説してきました。土地を所有すると毎年固定資産税が発生しますが、売却すれば支払う必要がなくなります。
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※1出典:「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」(国税庁)
(https://www.rosenka.nta.go.jp/main_r06/tokyo/tokyo/prices/html/40045f.htm)を加工して作成
(最終確認:2025年6月3日)


不動産鑑定士 竹内英二
株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
https://grow-profit.net/