空き家税とは?関連する法律や特例、負担を抑える方法も解説

少子高齢化や人口減少によって空き家が社会問題になっています。不動産は資産とはいえ放置すると多くの問題が起こることがあるため、近年は空き家への課税を促す動きがあります。この記事では、空き家にかかる税金の概要と負担を抑える方法について解説します。

目次
  1. 空き家には税金がかかる
  2. 空き家法が定める空き家とは?
  3. 空き家に対して固定資産税・都市計画税はどうかかる?
  4. 空き家にかかる税金の負担を減らす方法4選
  5. よくある質問
  6. 空き家の税金にお悩みなら三井のリハウスにご相談を
記事カテゴリ 売却 税金 一戸建て
2025.06.27

空き家には税金がかかる

少子高齢化に伴う人口減少や相続などが原因で、空き家は全国的な社会問題になっています。空き家を放置すると防災・衛生・景観上の問題が生じることがあるため、国は2014年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家等対策特別措置法)を交付しました。この法律にもとづいて、空き家を生まないための政策を進めています。

政策のうち、特に空き家の利活用を促すための増税の内容には、空き家を所有している方は注意が必要です。たとえば、後述する「特定空き家」に指定され、改善の勧告を受けた空き家は固定資産税額が高くなります。また、京都市では2029(令和11)年から固定資産税とは別に「非居住住宅利活用促進税」(通称:空き家税)という地方税を導入します。この新税は、誰も住まない空き家や別荘によって生じる防災・防犯上の問題や、地域コミュニティの活力低下を解消するために導入されるものです。

京都市が導入する非居住住宅利活用促進税の税額は、家屋価値割と立地床面積割の合計です。それぞれ次のように計算します。

項目家屋価値割の課税標準税率計算式
家屋価値割0.7%家屋の固定資産評価額×税率
立地床面積割700万円未満0.15%敷地の土地にかかる1㎡当たり固定資産評価額×非居住住居の床面積×税率
700万円以上900万円未満0.3%
900万円以上0.6%

●京都市の非居住住宅利活用促進税についてはこちら

今後、このような地方税は、ほかの自治体にも導入される可能性があります。そのため、京都市以外の地域にお住まいの方も、空き家にかかる税金の動向に注目しておきましょう。

空き家にかかる税金の計算

空き家法が定める空き家とは?

2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家等対策特別措置法)では、空き家の定義、所有者や地方公共団体の責務、空き家の対応方法などが明文化されています。この法律によって、これまで個人が管理していた空き家に、国が関与できるようになりました。

また、空き家法では、特に厳しく取り締まる「特定空き家」が明確に示されています。2023年の法改正では、特定空き家になる前段階の「管理不全空き家」という新たな定義も加わりました。以下でそれぞれ詳しく解説します。

特定空き家

適切な管理が行われていないために、防災・衛生・景観上の問題がある空き家のことを、特定空き家といいます。たとえば、倒壊の危険がある、害虫や悪臭が発生している、地域住民の暮らしに悪影響を与えるといった状態だと、自治体によって特定空き家に認定される可能性があります。

特定空き家に認定されると、状況に応じて自治体から助言・指導、勧告、命令、行政代執行が行われます。勧告を受けると「固定資産税等の住宅用地特例」の対象から除外され、固定資産税額は更地と同じ扱いで、3倍~4倍程度になります。さらに、命令に応じない場合は、最大50万円以下の過料という罰則が科されたり、行政による強制撤去が実施されたりすることがあります。

管理不全空き家

管理不全空き家とは、そのまま放置すれば、いずれ特定空き家になる可能性が高い空き家のことです。2023年の法改正で新設され、特定空き家よりも多くの家が対象になると見込まれています。特定空き家ほど放置されてはいないものの、壁や窓など家の一部が壊れている、立木の伐採等がなされておらず腐朽が認められる、排水設備が破損している状態などは、管理不全空き家に認定される恐れがあるでしょう。

管理不全空き家も自治体によって認定され、管理が不適切だと勧告が行われます。勧告を受けた場合は特定空き家と同様に、固定資産税などの軽減措置が受けられなくなります。

管理が不十分な空き家

空き家に対して固定資産税・都市計画税はどうかかる?

空き家も含めた不動産を所有していると土地と建物に固定資産税がかかり、市街化区域内では都市計画税も課せられます。

税金概要
固定資産税・土地と建物のそれぞれに課税される
・固定資産税率=課税評価額×1.4%(標準税率)
都市計画税・市街化区域内にある土地と建物に課税される
・都市計画税率=課税評価額×0.3%(制限税率)

固定資産税と都市計画税は、空き家でも居住用の家が建っている土地には「固定資産税等の住宅用地特例」が適用され、税金の負担が減ります。特例率は以下の一覧表の通りです。

住宅用地の区分固定資産税都市計画税
小規模住宅用地
(住宅1戸につき200㎡以下の部分)
固定資産税評価額×1/6の1.4%固定資産税評価額×1/3の0.3%
一般住宅用地
(住宅1戸につき200㎡を超える部分)
固定資産税評価額×1/3の1.4%固定資産税評価額×2/3の0.3%
更地(建物が何もない状態)課税標準の1.4%課税標準の0.3%

特例の条件は、住宅が建っていることであるため、空き家も軽減措置の対象です。ただし、勧告を受けた特定空き家や管理不全空き家は対象外なので注意しましょう。

更地や勧告を受けた特定空き家または管理不全空き家では特例が適用されないため、空き家を放置すると税金がおおむね3倍~4倍になるといわれています。相続で家を受け継いだ場合は、住宅として機能させるか、特定空き家や管理不全空き家に認定されないよう、適切に管理しなければならないのです。

固定資産税納税通知書

空き家にかかる税金の負担を減らす方法4選

空き家にかかる税金の負担を減らすには、以下4つの方法があります。

・自分や親族で管理する
・賃貸に出す
・建物を解体して土地を売却する
・建物と土地を売却する

それぞれ順番に解説していきます。

自分や親族で管理する

自分や親族が空き家に住んだり、セカンドハウスとして定期的にメンテナンスをする方法があります。住めば住宅用地特例の適用を維持でき、定期的な管理を行えば、特定空き家や管理不全空き家に認定される心配もありません。

ただし、遠い親戚等に貸す場合は、使用貸借契約を交わしたほうが望ましいといえます。場合によっては不動産会社に仲介に入ってもらい、トラブルの対応に備えておくと安心です。

もし、すでに特定空き家や管理不全空き家に指定されている場合でも、行政から助言・指導された箇所を改善できれば解除できます。

賃貸に出す

第三者へ賃貸に出す方法であれば、空き家が住宅として機能するだけでなく家賃収入も得られます。ただし、借り手を探して賃貸借契約を結ぶ必要があるほか、物件のリフォームや修理といった管理業務が生じます。また、立地や間取り、築年数によっては入居希望者が現れず、空き家の期間が長引くリスクもあることを考慮しなければなりません。

建物を解体して土地を売却する

空き家を解体する方法であれば、建物の維持・管理が不要になります。ただし、住宅用地特例が適用されないため、固定資産税の負担は増えます。そのため、税金の負担を減らすのであれば、解体後の土地を売却するのが現実的な選択肢の1つです。

なお、解体には費用がかかりますが、解体費用の補助金制度がある自治体も多いので、事前に確認して活用するとよいでしょう。

●解体費用についてはこちら

建物と土地を売却する

空き家となった建物と土地を売却すれば、所有者ではなくなるので税金の負担もありません。さらに、売却によって利益が得られた場合は、ほかの用途に充てられるでしょう。

なお、相続した家が一定の要件を満たす空き家の場合は、売却で得た所得のうち3,000万円(もしくは2,000万円)を控除できる特例があります。正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といいます。適用には期限があり、相続日から起算して3年が経過する年の12月31日までの譲渡が対象になるため、相続した不動産の売却を検討しているなら早めに進めるとよいでしょう。

●被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(空き家の3,000万円特別控除)についてはこちら

●空き家の売却方法についてはこちら

老朽化した空き家

よくある質問

ここからは空き家にかかる税金について、よくある質問に答えていきます。

空き家税はいつからかかりますか?

京都市が導入する非居住住宅利活用促進税(通称:空き家税)は、2029年度(2029年1月1日の利用状況によるもの)から課税が始まる予定です。

そのほか、特定空き家や管理不全空き家に認定され、改善がなされない場合は、翌年の固定資産税額が増えることになります。

空き家税の対象となるのはどのような空き家ですか?

京都市が導入する非居住住宅利活用促進税(通称:空き家税)では、京都市の市街化区域内に所在する非居住住宅が対象です。住民票の有無ではなく、生活の本拠としているかどうかによって判断されます。

そのほか、各自治体によって防災・衛生・景観上の問題がある特定空き家や管理不全空き家に認定され、改善がされない場合は「固定資産税等の住宅用地特例」が適用されなくなります。倒壊や損壊の危険があったり、立木の腐朽や排水設備の破損があったりすると、税金が高くなる恐れがあるため注意しましょう。

空き家を譲渡するイメージ

空き家の税金にお悩みなら三井のリハウスにご相談を

国や地方自治体は、空き家を減らしていくための仕組みづくりを積極的に行っています。特に、京都市の非居住住宅利活用促進税は、全国に先駆けた取り組みです。今後、空き家対策の一環として、ほかの自治体でも同様の税金が導入されるかもしれません。

現在、空き家を所有していて税金の支払いに悩んでいる場合は、売却も選択肢の1つです。三井のリハウスにご相談いただければ、100万件以上にのぼる豊富な取引実績を生かし、売却を成功に導くサポートを行います。まずは所有している空き家がどのくらいの価格で売れるのか、無料査定からお気軽にお問い合わせください。

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不動産鑑定士 竹内英二

株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
https://grow-profit.net/