
家を売るには?注意点やコツを解説
家を売るときには、事前にやるべきことを理解しておくことが大切。しかし、初めての家の売却では何をしたらよいのか分からず戸惑うことも多いでしょう。今回は、家を売ることを考え始めた人が知っておくべき、売却方法や注意点などを解説します。
目次
家を売るなら、情報収集から始めよう!
出産や転勤をきっかけとする住み替えや、離婚での財産分与のためなど、さまざまな理由で今の家を売却しようと思うこともありますよね。家の売却を検討し始めたら、売却方法の種類や、売却のおおまかな流れを理解することから始めましょう。家の売却には、適切なタイミングが存在します。さらには、家を売る手続きのなかで売主が負担する費用や必要書類についても知っておくとスムーズに家の売却を進められるでしょう。
そこで今回は、家を売りたいけれど方法が分からない人や、家を売ろうか迷っている人に向けて売却の流れや上手に売るコツ、売る際の注意点などを解説します。
家を売る方法は?
家を売る方法は、大きく分けて3つあります。それぞれの特徴を押さえて、自分に合った売却方法を選びましょう。それぞれを順にご紹介します。
仲介
仲介とは、不動産会社に買主を探してもらう方法です。仲介は、不動産会社が買主を探してくれるため、この後ご紹介するほかの方法と比較すると専門知識を必要とせずに自分の希望に近い価格で家を売却できる可能性が高いです。また仲介は、不動産売買のプロである不動産会社が売買活動をサポートしてくれるという安心感がある点も魅力といえます。
しかし、不動産会社を介して売却をする場合、ほかの方法と比較すると時間がかかる傾向にある点には留意しましょう。
買取
家を売る方法として、不動産会社に直接買い取ってもらう方法があり、これを「買取」といいます。買取では、不動産会社自体が買主になるので、購入希望者を募ったり、買主の購入決定を待ったりする必要がないため、仲介と比較すると短時間で売却することが可能です。
しかし、不動産会社に直接買い取ってもらう場合、仲介の方法で家を売る場合に比べて売却価格が低くなる可能性があります。詳しくは、後ほど説明します。
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不動産買取とは?仲介との違いを解説!
個人売買
仲介や買取と比較すると一般的ではないものの、「個人売買」という形で家の売却を行うことも可能です。個人売買は、不動産会社に依頼せずに、自分で買い手を探す方法です。仲介と違って不動産会社へ依頼する分の仲介手数料は発生しません。また、自分のペースで納得のいくまで売買活動を行うことができます。
しかし、個人売買では、複数の書類の作成や手続きも売主自身が全て行わなければならず、専門的な知識も必要です。そのため、初めて不動産を売買する人にとっては難しい方法といえるでしょう。
家が売れやすいタイミングとは?
家が売れやすいタイミングについて、季節や築年数から考えてみましょう。
季節
1年の間で最も家が売れやすいタイミングは、一般的に不動産売却市場の繁忙期である1~3月とされています。
家を売却するには、仲介の場合、一般的に3~6か月程度かかります。2~3月に売却したい場合は、逆算して10月~年末までに売却準備を始める必要があるでしょう。売却を検討し始めたら、可能な限り早めに動くことをおすすめします。
築年数
家の売却には築年数も大きくかかわってきます。築20年を超えると売れないということではありませんが、建物は古くなれば古くなるほど価値が減少していくため、築20年までが高い価格で売れやすいといえるでしょう。一般的に一戸建ては、築20年をすぎると建物の価値がゼロに近くなるとされています。
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家を売る基本的な流れ
家の売却として一般的な仲介による売却を例に取って、家を売るときの基本的な6つの手順について見ていきましょう。
[ 1 ] 事前準備
まず、いつまでに、どのくらいの価格で売りたいかといった希望を明確にします。このときに住宅ローンの残債がある場合はどのくらいあるかを確認しましょう。また、物件概要書、登記事項証明書、あるいは固定資産税納税通知書、間取り図、敷地測量図などの必要書類も用意しておくと、スムーズに売却しやすくなります。
[ 2 ] 査定
家の売却額を決定するために、不動産会社に査定を依頼します。査定には、Webや電話で情報を入力するだけで売却額の相場が分かる「机上査定」と、不動産会社のスタッフが現地に出向いて詳細に調査したうえで査定額を算出する「訪問査定」の2種類があります。
提出された査定額をもとにして、売り出し価格を決定します。
なお、査定結果が出るまでの期間は、机上査定の場合、一般的に翌日、訪問査定の場合は1週間程度です。
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家の査定とは?不動産査定の注意点も解説
[ 3 ] 販売活動
査定を依頼した不動産会社のなかから仲介を依頼する会社を選び、媒介契約を結ぶと販売活動がスタートします。媒介契約には契約内容に応じて種類があるため、自分に合った内容の契約を結ぶようにしましょう。販売活動では、一般的に仲介を依頼した不動産会社の広告を通じて購入希望者を募ります。その際に、売主が販売活動で行う主な作業は、購入希望者からの問い合わせの対応や内覧の準備・対応などです。
●媒介契約の種類に関する記事はこちら
媒介とは?仲介や一般媒介などの違いを一挙解説!
[ 4 ] 売買契約
購入希望者のなかから買主が決定したら、不動産会社を通じて買主からの購入申込書を受け取ります。購入申込書の内容に問題がないようなら売主、買主、不動産会社が立ち会い、契約書への記名押印や手付金(前金)の受領など、売買契約を行います。
[ 5 ] 決済・引渡し
売買契約が締結されたら、決済と引渡しです。売買代金の残金を受け取りましょう。また、固定資産税や、マンションの場合は管理費、修繕積立金といった、売却する家に関する金銭の精算を行います。決済完了後、物件を引渡します。
[ 3 ]~[ 5 ]にかかる期間の目安は、約1〜3か月です。
[ 6 ] 確定申告
家や土地などの不動産を売って得た譲渡所得がある場合は、確定申告が必要になります。確定申告を行う時期は、家を売った翌年の2月16日~3月15日の間です。
●マンション売却の流れに関する記事はこちら
家を売る際に必要になるお金
ここからは、家を売却する際に必要になる費用についてご紹介します。
家を売るときにかかる諸費用
家を売るときには、一般的に不動産会社や司法書士に支払うお金など、諸費用が必要になります。主なものは下記の通りです。
仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼した場合は、仲介手数料を支払わなければなりません。仲介手数料は、会社によって料金設定は異なりますが、法律によって上限が定められています。また、仲介手数料は事務所の見えやすい場所に掲示するよう義務付けられているため、契約を行う前に確認をしておきましょう。
●仲介手数料に関して詳しくはこちら
登記費用
不動産の所有者変更(所有権移転)や住宅ローンの担保(抵当権)を抹消するなどの、土地や建物について法務局の不動産登記簿に登記を行う費用です。
登記手続きは自分で行えますが、司法書士へ依頼するのが一般的です。司法書士へ登記手続きを依頼する場合、司法書士へ報酬を支払う必要があり、その費用は依頼する司法書士事務所によって異なります。
また、そのほかの諸費用としては、引越し代や、住宅ローンの残債などがあります。住宅ローンを一括返済する場合、金融機関によっては、繰り上げ返済の手数料が必要になることがあるので事前に確認しておきましょう。
売却で課される税金
売却の際には税金が課せられる場合があります。主なものは下記の通りです。
印紙税
印紙税とは、売買契約書をはじめとした課税文書に対してかかる税金で、文書に収入印紙を貼り付けることで納税します。税額は、文書に書かれている金額に応じて変化します。
譲渡所得にかかる税金
家を売ることにより譲渡所得を得た場合、その譲渡所得に対して「所得税」「住民税」「復興特別所得税」などが課税されます。譲渡所得は、マンションや住宅などの建物や土地などの不動産を売却したことで発生した利益のことです。
譲渡所得にかかる税金の額は、譲渡所得に対して一定の税率をかけることで算出されます。譲渡所得の税率は、売却した家の所有期間によって異なります。
●売却にかかる税金に関する記事はこちら
マンションの売却にかかる税金はいくら?簡単な計算方法とシミュレーション
家を売る際の必要書類
家を売る際には、準備するべき書類がいくつかあります。ここでは、家の査定から売却の流れのなかで必要な書類をご紹介します。
必要なタイミング | 項目 | 内容 | 重要度 |
---|---|---|---|
査定時 家を売るとき | 登記権利証または登記識別情報 | 不動産の所有者を明確にするための書類 | 〇 |
査定時 | 確定測量図、境界確認書 | 隣接する土地の所有者とその境界を明確にする書類 | 〇 (土地の売却も行う場合) |
査定時 | 登記簿謄本 | 土地の面積や建物の構造、所有権などが記載されている書類 | △ |
査定時 | 地積測量図 | 法律によって定められた方法で作成された測量図 | △ (土地の売却も行う場合) |
査定時 | 建物図面 | 建物の敷地と建物の位置関係が記載された図面 | △ |
査定時 | 公図 | 土地の形状や位置などを表した公図 | △ |
査定時 | 購入時の売買契約書 | 物件を取得する際にどういった条件で購入したかを表す書類 | △ |
査定時 | 重要事項説明書 | 物件に関する権利や条件など重要項目が記載された書類 | △ |
査定時 | 建築設計図書 | 建物の設計図面 | △ |
査定時 | 住宅性能評価書や耐震診断報告書 | 建物の性能や安全性を評価した書類 | △ |
査定時 | 固定資産税通知書または固定資産評価証明書 | その年の固定資産税の税額や不動産の価格が記載された書類 | △ |
査定時 | リフォームの実績が分かる書類 | リフォームの箇所や時期などが分かる書類 | △ |
査定時 | 管理費・修繕積立金の記載書類 | 管理費や修繕積立金の額が分かる書類 | △ |
家を売るとき | 固定資産税通知書 | その年の固定資産税の税額が記載された書類 | 〇 |
家を売るとき | 本人確認書類 | 運転免許証やパスポートなどの本人を証明する書類 | 〇 |
家を売るとき | 実印 | 売却する本人の実印 | 〇 |
家を売るとき | 印鑑証明書 | 各市区町村で登録している印鑑の証明書 | 〇 |
家を売るとき | マンションの管理規約 | マンションに居住するにあたっての規約が書かれている書類 | 〇 (マンション売却時) |
家を売るとき | 総会議事録 | 1年に1度行われる総会の議事録 | 〇 (マンション売却時) |
家を売るとき | 長期修繕計画 | マンションの長期的な修繕計画に関しての情報が載った書類 | 〇 (マンション売却時) |
家を売るとき | 管理に係る重要事項調査報告書 | マンション購入に際して、買主に説明が必要な事項をまとめた書類(管理費や専有部分の使い方などが載っている) | 〇 (マンション売却時) |
家を売るとき | 建築確認済証 | 建物の工事を行う前にその計画が建築基準法に適しているかを証明する書類 | 〇 (一戸建て売却時) |
家を売るとき | 検査済証 | 建物が建築基準法に沿って建てられたことを証明する書類 | 〇 (一戸建て売却時) |
〇…必要な書類
△…あるとよい書類
家を売る前から売った後までの注意点
家を売る一連の流れと、その都度生じる費用を押さえた後は、実際に売るときに注意すべき点を見ていきましょう。家を売る前、家を売るとき、家を売った後と時系列に沿ってご紹介します。
家を売る前の注意点
家を売る前とは、流れで表すと事前準備と査定の段階にあたります。気を付けたいポイントは以下の2点です。
不動産会社は複数から検討する
査定をしてもらう不動産会社は、複数に依頼しましょう。なぜなら、不動産会社によって得意分野や得意エリアが異なるからです。また、査定価格にも差が生じる場合があります。複数の不動産会社を比較して、より信頼できる会社を選びましょう。
不動産会社との媒介契約の内容を検討する
不動産会社と結ぶ媒介契約には3つの種類があるため、どの契約にするかを選びます。媒介契約とは、不動産会社に販売活動や契約の仲介をしてもらう際の契約のことです。
具体的には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」があります。一般媒介契約の特長は、複数の不動産会社に仲介を依頼してもらう契約ができるという点です。専任媒介契約や専属専任媒介契約は、一般媒介契約と比較すると一社としか仲介の契約ができませんが、売主への報告義務があったり、レインズへの登録義務があったりというメリットもあります。
売却目的や売却する物件に合わせて決めるのがおすすめです。
●媒介契約の種類や違いに関する記事はこちら
媒介とは?仲介や一般媒介などの違いを一挙解説!
一般媒介を選ぶ前に知っておくべき、不動産売却の基本知識を紹介!
販売活動中の注意点
販売活動中とは、流れで表すと販売活動と売買契約の段階にあたります。買主候補者への対応だったり、実際に話した内容を契約書に落とし込んだりといった営業的な活動でのポイントです。
内覧はお客さまを招くように対応する
購入希望者に内覧へ来てもらうときには、印象よく対応しましょう。購入希望者は、物件の状態や売主の人柄などを見ています。部屋が整理整頓されていなかったり、売主の印象が悪かったりすると、物件を買う気持ちが薄れてしまうかもしれません。
片付けや掃除を徹底することはもちろん、臭い対策にも気を付けて、お客さまを招くような気持ちで対応しましょう!
売買契約書の内容を精査する
買主が決まり、取り交わす売買契約書は、隅々までチェックするようにしましょう。売買契約書には、売却する不動産の価格や引渡しの日程のほかに、買主と相談のうえ決めた内容など細々としたことが記されています。買主と口頭でやりとりした内容があったとしても、契約書に反映されていないと、双方合意の取り決めが無効になってしまいます。契約前には、細部にわたって売買契約書の内容を精査しておくようにしましょう。
家を売った後の注意点
家を売った後とは、決済・引渡しにあたります。主な注意点は以下の通りです。
引渡し前にやっておくべきことを怠らない
売買契約が成立した後、売主は物件の引渡しの前に以下の作業を行う義務があります。
・ 住宅ローン完済の手続き
・ 隣家との境界線の確認
・ 契約時に定められた設備の修復や撤去
これらの作業を行っておかないと、買主とのトラブルにつながる可能性があります。違約金を請求されることもありますので、必ず行うようにしましょう。
引渡し確認書を作成する
買主に渡す資料は、渡したことを証明できるようにしておきましょう。買主に後から「この書類を渡されていない」といわれないようにするためです。
確定申告が必要
家の売却で利益が出る場合、売却をした翌年に確定申告を行う必要があります。また、売却で損失が出た場合は、確定申告は義務付けられていませんが、確定申告をすることで特別措置を受けられる可能性があります。詳しく見ていきましょう。
売却で利益が出た場合
家の売却で利益が出る場合は、売却する翌年に確定申告をしなければいけません。家の売却で利益が出た場合、譲渡所得が発生し、その所得に対して所得税・住民税・復興特別所得税などの税金が発生するためです。譲渡所得で発生した税金は、給与とは別に課税される所得のため、自ら確定申告をする必要があります。ただし、確定申告を行うことで、家の売却益3000万円までなら特別控除を受けられたり、所有期間が10年にわたる物件を売却した場合には、軽減税率の特例を受けられたりします。
売却で損益が出た場合
家の売却で利益が出なかった場合、確定申告をする義務は免除されます。ただし、利益が出ていない場合でも確定申告をすることでメリットがある可能性があります。税の控除や還付などの特別措置を受けられる可能性があるためです。特別措置を受けるにはさまざまな要件をクリアしている必要があります。事前に要件を確認しましょう。
●売却で利益が出た場合と損失が出た場合の特例に関する記事はこちら
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家を高く、早く売るコツは?
家を売るときには、できることならより高く、より早く売りたいですよね。そのためにやっておくとよいことをご紹介しましょう。
相場を知る
家を売るためには、自分の家がどれくらいで売れるのか、相場を知っておくのがコツです。相場を知っておくことで、売り出し価格が高過ぎたり低過ぎたりすることを避け、適切な値段設定ができます。家の売却において、買主を募る段階の売り出し価格と、希望する買主と交渉して決定する売却額には幅があります。あらかじめ値下げ交渉にも応じられる幅を考慮して、値段設定をする必要があるのです。適切な値段設定は、不動産売却価格の相場感をつかむことが大切になります。
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信頼できる不動産会社を選ぶ
パートナーとして信頼できる不動産会社を選ぶことは、高く、早く家を売ることにつながるため、以下のようなことを意識して不動産会社を選びましょう。
・売却する物件と似た条件の物件の売却実績があるか
・担当となるスタッフが親身に話を聞いてくれるか
家の印象をよくする
成約率を高くするためには家の印象をよくすることが大切です。部屋の片付けやハウスクリーニングのほか、備え付けの設備のメンテナンスも行っておきましょう。また、「ホームステージング」と呼ばれる、部屋にセンスのよい家具や小物などを並べてモデルルームのように演出することも場合によっては有効です。
●査定をする際の掃除に関する記事はこちら
家を査定するとき掃除は必要?査定額を決めるポイントを解説
価格を少し高めに設定しておく
売り出し価格は、査定価格よりも少し高めに設定しておくことをおすすめします。その理由としては、購入希望者と価格の調整をする可能性があるからです。ただし、売り出してから途中で値上げをすると購入者に不信感を与えてしまうので、購入希望者と価格調整をすることも念頭に置いて売り出し価格を設定しましょう。適切な価格で売り出すためにも、不動産会社と相談しながら売り出し価格を決めることをおすすめします。
●不動産査定の価格に関する記事はこちら
不動産査定の価格をどう参考にする?早く高く住まいを売るコツ
買取も検討する
売却を急いでいる場合は、買取を検討しましょう。買取の場合は、買い手を探す手間が省けるので、売却までスピーディーに行うことができます。加えて、買取の場合は、仲介のように手数料が発生しないのが一般的です。
ただし、先述の通り、買取の場合は、仲介で売却する場合の価格と比較すると7~8割程度に価格が下がってしまう点には注意が必要です。価格が下がる理由としては、再販するために不動産会社がリフォームやハウスクリーニングを行うことが挙げられます。
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不動産買取とは?仲介との違いを解説!
このような家を売りたいときはどうする?
これから売ろうとする家に特有の事情がある場合、それを考慮して売却活動を進める必要があります。たとえば、相続した家や住宅ローンの返済がまだ残っている家を売却する場合は、どういったことに気を付けなければならないのでしょうか?ここではそれらの注意点をお伝えします。
相続した家を売りたい
相続した家の場合、家の所有者が被相続人ではなく、売却したい人になっている必要があります。そのため、登記人が変わったことを示す「相続登記」が必要です。相続登記は、土地と建物それぞれに必要になるので注意しましょう。
また、相続した物件によっては、ここまででもお伝えしたように、3000万円の特別控除や物件を10年以上所有していた場合の軽減税率など、何らかの軽減措置の利用条件に当てはまる可能性もあります。相続した家を売る場合は、売却にかかる税金や軽減措置についてもしっかり調べておくことが重要です。
残債がある家を売りたい
ここまででもお伝えした通り、住宅ローンの残債がある家は、そのままでは売却できないため、住宅ローンを一括で完済し、抵当権の抹消手続きをしなければなりません。
住宅ローンの残債を一括返済して家を売却するためには、手持ちの資金でローンを完済するか、新たにローンを組む方法もあります。ただし、新たにローンを組む場合は、緻密に返済計画を立てないと破産してしまう可能性があるため注意が必要です。
また、住宅ローンの返済ができない場合は、「任意売却」によって売却できる可能性もあります。任意売却は、住宅ローンの支払いが厳しい場合に、債権者である金融機関の了承を得て一般市場で物件を売却する方法です。売却額や自己資金を利用しても返済が厳しい場合、金融機関に相談すると任意売却として抵当権を抹消して売却ができることがあります。
●任意売却に関する記事はこちら
任意売却とは?住宅ローンの支払いが厳しくなったら知っておくべき基礎知識
古い家を売りたい
古い家を売る際には、そのままでは売却しにくいこともあるため、その場合は、以下の4つの方法から状況に合った売り方を選びます。
・ 「古家付き(ふるやつき)」の土地として売る
・ 更地にして土地を売る
・ 家をリフォームして売る
・ 不動産会社に買い取ってもらう
古い家を売る際の4つの方法については下記の記事で詳しくご紹介しています。
●古い家の売却に関する記事はこちら
古い家を売る6つの方法をご紹介
認知症の親が持っている家を売りたい
親が認知症によって「意思能力」を失っている場合は、一般的に不動産の売却は行えません。意思能力とは、自分の行為がどういった結果になるのかを理解する能力を指します。
しかし、認知症の程度によっては、売却できる可能性があります。たとえば、本人の身体的な能力に問題があり、不動産会社に直接行けない場合でも、代理人を立てることができれば、代理人によって売却を行うことが可能です。なお、代理人を立てる際は、本人が「この人を代理人として任命します」という意思表示ができることが前提となります。
ここまででお伝えした通り、家を売却するにはある程度の時間を要するため、親の状況を考慮して早めに動き出すようにしましょう。
売却ケース別の対策
売却したい理由は人によりさまざまで、その状況によって注意したいことがあります。ここでは3つのケースについてご紹介します。
離婚による財産分与のため
夫婦が離婚するために家を売る場合は、2人で購入した家や結婚している間に購入した家ならば、売却金は双方で清算するのが一般的です。住宅ローンが残っている場合や養育費が必要な場合は、分配方法をほかの財産と併せて話し合う必要があります。
●財産分与に関する記事はこちら
離婚に伴う財産分与…家や住宅ローンを処理する方法とは?
住み替えのため
住み替えのために家を売る場合は、売却先行か購入先行かを選択することになります。売却先行とは、今の住まいを売ってから新しい住まいを購入することです。売却先行を選択した場合、自己資金だけで新居を購入できない人にとって、家を売ったお金を購入資金に充てられるというメリットがあります。一方、購入先行は、その逆で新しい住まいを購入してから今の住まいを売ることをいいます。資金に余裕があり、新居をじっくり探したい人におすすめの方法です。
住み替えの際、今住んでいる家の住宅ローンが残っている場合は、家の売却益や自己資金で住宅ローンの一括返済ができるか判断しなければなりません。できない場合は、ローン残債と新居購入のための二重ローンとなるため、2つのローンを今後支払っていけるかどうかの判断が必要です。スムーズな住み替えを行うために、事前に綿密な資金計画を立てましょう。
●住み替えに関する記事はこちら
住み替えの方法や費用など、戸建て・マンション別に解説
住み替えローンとは?利用の注意点や手順を解説
住み替えのタイミングはいつ?ベストな時期や成功のコツを解説
すぐ現金が欲しいため
家を売ってすぐに現金が欲しいという場合は、不動産会社に買取をしてもらうことで、家を短期間で現金化することができます。買取の場合は、不動産会社が買主になります。この売却方法は、直接、不動産会社と価格を交渉し、双方が合意すればすぐに契約に進むことができるため、現金を早く必要とする人に向いているでしょう。ただし、売却額は市場の価格よりも安くなるため、注意が必要です。
また、資金を手に入れたいけど家には住み続けたい場合には、「リースバック」という方法もあります。リースバックとは、一度持ち家を売却し、その後も同じ家に賃貸として住み続ける方法です。
●リースバックに関する記事はこちら
住まいのリースバックとは?メリットや注意すべきトラブル事例を解説
家の売却は慎重かつスマートに
家を売ろうか迷っている人のなかには、まだ売却の流れをつかめていない人も多いでしょう。また、初めて家を売るとなると不安がつきものですよね。自分で調べても解決できない場合は、不動産会社にぜひ質問や相談をしてみましょう。プロのアドバイスを参考にすることで、自分に合った売却方法や売却のタイミングが見つかる可能性が高まります。
そのため、納得できる家の売却のためには、頼れる不動産会社を選ぶことが要といってもよいでしょう。また税金に関する疑問や不安があれば、税理士やファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめです。
家を売ることは、人生でもそう多くはない経験です。後悔しないように十分に計画を立てて売却を成功させてくださいね!
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村田洋一
らくだ不動産 不動産コンサルタント。宅地建物取引士、行政書士。消費者にとっての最良の不動産取引を目指し、多岐にわたる不動産トラブルの相談を受ける。
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