インスペクションとは?不動産売買でのメリットや調査費用を解説

インスペクションとは、中古住宅を売買する際、劣化状況を調べるために行われる住宅診断のことです。トラブルを防ぎ、安心して取引を行うための重要な役割を担っています。今回はインスペクションのメリットや、実際に依頼するときのポイントについて分かりやすく解説します。

目次
  1. インスペクションとは?
  2. インスペクションのメリット
  3. インスペクションを申し込む際の注意点
  4. インスペクションを行った場合の売却の流れ
  5. インスペクションの費用の相場はいくら?
  6. インスペクションの依頼はどこにするのがよい?
  7. インスペクションと瑕疵保険の検査の違い
  8. ホームインスペクションを依頼して安心安全の売却を
2025.03.30

インスペクションとは?

インスペクションとは、英語で「調査」や「点検」などの意味を持ちます。不動産売買では、中古住宅の売買契約前に行う不動産調査のことを指すのが一般的です。この調査では、住宅の劣化や欠陥を調べるほか、修理が必要な時期やかかる費用のアドバイスも行われます。インスペクションを行うのは、民間資格を取得した人や建築士などの「ホームインスペクター」と呼ばれる専門家です。

家の模型を挟んでインスペクションについて話す人

目的・重要性

中古住宅を安心して売買するために、インスペクションは重要な役割を担っています。もし、建物の欠陥に気付かずに中古住宅を売却してしまうと、引渡し後に買主とトラブルになってしまう可能性があります。事前にインスペクションを行っておくことで、専門家の客観的な診断のもと、建物のコンディションを明確にして売り出せるでしょう。なお、インスペクションの実施依頼は、売主だけでなく、買主も行えます。

近年では、中古住宅市場におけるインスペクションの重要性はますます高まっています。2018(平成30)年4月には、宅地建物取引業法(宅建業法)の改正により、不動産売買におけるインスペクションについての説明や、調査結果の報告などが、不動産会社に対して義務化されました。ただし、インスペクションの実施は義務化されていません。

また、2020(令和2)年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」へと、名称、内容が変更されました。契約不適合責任とは、契約目的に反する取引が行われた場合、その責任を売主が負うことをいいます。これにより、これまで分かりにくかった中古住宅の売買に関するルールが明確化されました。もし、欠陥や不具合に気付かずに売買したときは、売主にかかる責任がさらに重くなります。

加えて、2024(令和6)年4月には建物状況調査に係る改正宅地建物取引業法施行規則等が施行され、中古住宅売買の標準媒介契約約款が改正されました。この改正により、宅建業者がインスペクションのあっせんを無とする場合は、その理由を明記することとされています。国がインスペクションのさらなる普及に力を入れていることが分かります。

●契約不適合責任(瑕疵担保責任)についてはこちら

浴室を点検するホームインスペクター

調査方法

検査は、屋根や外壁、内壁、排水管や給湯管などの状態を専門家が目視や専門機材でチェックする方法が一般的です。さらに、修繕が必要な箇所があれば、かかる費用や実施するタイミングまでアドバイスしてくれます。インスペクションは売買契約の前に1回行うのが一般的で、物件の規模にもよりますが1時間~3時間程度かかります。

検査項目

検査項目は会社によって異なりますが、主に以下の部分を確認します。

物件の種類構造耐力上主要な部分雨水の侵入を防止する部分
一戸建て住宅基礎、壁、梁、柱、小屋組、床、土台など屋根、壁、開口部、天井など
マンション壁、床など壁、開口部など

また、建物内部にある鉄筋の状態や、戸建ての床下・屋根裏などを見る場合は、機械を使ってより精度の高い調査を行うこともあります。このような調査は、基本料金とは別にオプション料金がかかることが一般的です。詳しい料金については後ほど説明します。

室内の調査をするホームインスペクター

インスペクションのメリット

売主と買主、それぞれにとってのインスペクションのメリットを具体的に見ていきましょう。

売主側のメリット

売主側のメリット建物の状態を事前に把握できるため、安心して取引を進めることができる
早く売れる可能性が高まる
引渡し後のトラブルが未然に防げる

売主にとっての大きなメリットは、売却する不動産をインスペクション済みの物件として売り出すことで、早く、高く売れる可能性が高まることです。「プロの検査済み物件」としてインスペクション未実施の物件と差別化でき、買主が見つかりやすくなります。また、インスペクションによって適切な修繕を行うことで、成約価格が上がるかもしれません。

さらに、物件の状態をきちんと説明したうえで売買契約ができるため、買主から売買後に覚えのない修理費を請求されたり、クレームをいわれたりといったトラブルを未然に防ぐことができます。

買主側のメリット

買主側のメリット安心して物件を購入できる
購入後の費用負担の予測が立てられる

買主にとって最も大きなメリットは、インスペクション済みの物件を購入できる安心感でしょう。プロによる検査で建物の状態が分かるため、検査をしていない物件よりも不具合の有無や、内容などを明確に把握できた状態で購入できます。

また、修繕が必要な箇所や劣化状況が分かるため、購入後の維持費用やリフォーム費用などが予測できることも買主にはうれしいポイントです。もし売主側でインスペクションを行っていなければ、買主側でインスペクションの実施を検討するとよいでしょう。

物件購入後の費用負担を算出するイメージ

インスペクションを申し込む際の注意点

インスペクションを申し込む際の注意点として、以下のようなものが挙げられます。

注意点修繕費が発生する可能性がある
売却の際に不利に働く恐れがある

インスペクションで不具合が見つかった場合は、売却前に修繕が必要となるケースがあります。そもそもインスペクションには一定の費用が必要です。そこに修繕費がかかると、売却による最終的な利益が減ってしまう恐れもあるでしょう。

また、少々の修繕では解決できないほどの大きな不具合が見つかった際には、売却しにくくなることもあります。不具合が目立つ検査結果は値引き交渉の要素にされやすく、想定より低い価格での売却になってしまう傾向があるためです。

インスペクションを行った場合の売却の流れ

売主がインスペクションを行ってから不動産を売りたい場合の一般的な流れは以下の通りです。

1.不動産査定を受ける
2.媒介契約を結んだ不動産会社にホームインスペクターを紹介してもらう
3.事前に図面や案内図などの必要書類を送る
4.インスペクションを実施する
5.報告書を受け取る
6.不適合の場合は修繕を検討する
7.購入希望者と売買契約を結び、後日引渡しを行う

インスペクションを依頼する際は、不動産会社と媒介契約を結ぶときに、専門家であるホームインスペクターをあっせんしてもらうのがおすすめです。不動産会社にお願いすれば、依頼先を探す手間が省けます。

ホームインスペクターを紹介する不動産会社の担当者

インスペクションの費用の相場はいくら?

インスペクションの費用は検査を請け負う業者や物件の規模によって異なりますが、相場は一戸建ての場合は6万円程度、マンションの場合は5万円程度です。ただし、この価格は基本料金の価格です。基本料金では、床下や小屋裏(屋根裏にできる空間)を外側や点検口から目視で確認するだけなのが一般的です。基本料金でどこまで点検してもらえるか、事前に確認しておきましょう。

オプションの料金がかかることがある

ホームインスペクターが建物の中に入って点検する場合や、機械を使った検査、耐震性の審査を行う場合は追加料金がかかり、10万円を超える場合もあります。一見高額に思えますが、築年数が古く、状態が不安な物件ではこうした調査をすることで、後々のトラブルを避けられます。必要があれば、前向きに検討してみましょう。

補助金の利用でお得になる

上記のように、インスペクションにかかる費用は安くありませんが、実施によって補助金を受けられる可能性があります。

補助金の制度には、国土交通省が行っている「長期優良住宅化リフォーム推進事業」に加えて各自治体が独自で行っているものもあります。たとえば、兵庫県では、売買を予定している既存の一戸建て住宅に対して、一定の基準を検査する「ひょうごインスペクション」を行う場合、最大2万5千円を補助する支援を行っています。

補助金を利用する要件に合えば節約につながります。お住まいの自治体で補助金の制度があるか、チェックしてみてくださいね。

インスペクションの依頼はどこにするのがよい?

インスペクションを行う業者には、不動産会社やリフォーム会社のほか、インスペクションの専門業者もあります。ホームインスペクションの業者を選ぶときは、以下のポイントを押さえておきましょう。

インスペクションを行う業者

会社の実績や経験が、検査する建物の特徴と合っている

依頼する会社の実績や、過去に携わってきた建物の種類はチェックすべきポイントです。インスペクションといっても、建物の種類や工法によって、見るべき点は違います。検査してもらう物件に近い建物を扱った経験があれば、より適切な診断ができるでしょう。

なお、建築士の資格を持つホームインスペクターがいるというだけで会社を決めるのはよくありません。大規模施設と一戸建て住宅では、建築や診断に必要な知識や技術がそれぞれ異なります。そのため、大規模な建築物を設計できる1級建築士だからといって適切な診断が可能とは限りません。資格よりも経験や実績、またどのような建物の検査に定評があるかを重視して適切な診断ができる会社を選びましょう。

対応や説明がしっかりしている

検査内容やその結果を説明する際、一般の人にも分かるように話しているかという点も重視しましょう。インスペクションは、建物の状態を売主や買主がきちんと把握するためのものです。優れた知識や検査の技術があっても、その内容を分かりやすく説明できなければ、インスペクションを行う意味が薄れてしまいます。

ホームインスペクターの担当者とは、検査後もやりとりをする機会があります。対応やコミュニケーションに違和感があると、その後の売買取引に影響することもあるため、対応に信頼を持てる会社を選ぶようにしましょう。

インスペクションについて説明を受ける夫婦

費用が相場と同じくらいである

適正な検査をしてもらうには、それ相応の費用が必要です。そのため、基本料金の相場を大きく下回る業者には注意しましょう。インスペクションの費用を安くする代わりに、リフォームや修繕工事を勧めて利益を得ている可能性があります。価格だけを見て決定せず、実績や経験など、会社の中身で判断することが大切です。

三井のリハウスでは、専門の調査会社をご紹介しています。詳しくは以下のリンク先をご覧ください。

●三井のリハウス建物調査についてはこちら

インスペクションと瑕疵保険の検査の違い

インスペクションと似ているものに「瑕疵(かし)保険の検査」があります。瑕疵とは、傷や故障など、売買する物件に見られる不具合を指します。瑕疵保険は「既存住宅売買瑕疵保険」とも呼ばれ、万が一物件の購入後に見つかった瑕疵について補修費用を補償するものです。買主の安心のために売主が、あるいは買主自らが加入でき、双方にメリットがあります。ただし、瑕疵保険が適用されるのは、定められた基準に適合した物件のみです。

インスペクションと瑕疵保険への疑問

瑕疵保険の検査は保険の対象部位のみ

瑕疵保険の検査目的は、あくまで保険に加入する基準を満たしているかどうかの確認です。そのため、検査の範囲は屋根や外壁など、保険の対象部位のみです。もちろん、修繕のアドバイスもされません。

インスペクションの検査は網羅的

インスペクションの検査目的は、住宅の状態を客観的に見て、把握することです。そのため依頼すれば目視以外の高度な検査もできます。

上記を踏まえた瑕疵保険の検査とインスペクションの違いは以下の通りです。

項目瑕疵保険の検査インスペクション
検査目的瑕疵保険に加入するための物件調査物件の不具合や劣化の調査
検査範囲保険の対象部位(保険の法人によって異なる)小屋裏や床下の点検口からの目視のほか、オプションで詳細診断や耐震検査など

建物に長く住めるように将来を見据えた検査をしたい場合は、瑕疵保険の検査だけでは不十分な場合もあります。また、瑕疵保険を利用する場合も、状況によってはインスペクションも行うことでより安心して売買ができるでしょう。

インスペクションの相談に対応する担当者

ホームインスペクションを依頼して安心安全の売却を

不動産売買は、売主、買主どちらにとっても生活を左右する大きな取引です。思わぬトラブルを未然に防ぐために、インスペクションは有効な対策といえます。不動産売却の際は契約前にインスペクションを行っておくと、契約後のトラブルを回避できるでしょう。

なお、インスペクションを依頼する場合、間取り図の提出を求める業者が多いため、あらかじめ準備しておくことをおすすめします。

不動産会社によっては売却、購入前に簡単な建物調査を行ってくれる会社もあります。三井のリハウスでは売却物件、または購入検討物件の住宅設備や建物の状態を、独自の基準により無償でチェックするサポートを行っております。契約締結後に契約不適合が発覚した場合も、条件を満たしたうえで保証期間内であれば、費用を負担いたします。不動産の売却、購入をご検討の方はぜひご活用ください。

●売主様向けサポート建物チェック&サポートサービスについてはこちら

●買主様向けサポート建物チェック&サポートサービスについてはこちら

不動産の売却を検討している方は、まず査定から始めましょう。納得のいく売却のためには、査定を依頼する不動産会社も慎重に選ぶ必要があります。豊富な取引実績のある三井のリハウスに、ぜひお問い合わせください。

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田村啓

さくら事務所 プロホームインスペクター。二級建築士、マンションリフォームマネージャー、木住協リフォーム診断員、東京都木造住宅耐震診断技術者、既存住宅状況調査技術者。ハウジングリテラシーの向上を目指したサポートを行う。
https://www.sakurajimusyo.com/